2019年3月7日 予算特別委員会
復興局に対する質疑(大要)
・復興基金、いわての学びの希望基金について
【斉藤委員】
今年度末の活用実績の見込み、累計、来年度の予算額はどうなっているか。
また新たに拡充する中身があれば示していただきたい。
【復興推進課総括課長】
復興基金について。30年度については、2月補正原型予算額で、28事業・30億円が活用されており、これまで累計46事業・約258億円活用されている。来年度については、くらしの再建では、住宅再建費用の一部助成、国保・後期高齢者医療制度における一部負担金の免除に要する経費。安全の確保では、被災家屋等への再生可能エネルギー導入に向けた環境の整備、生業の再生については、中小企業の事業再開、産業の創出など、28事業・30億円を当初予算に盛り込んでいる。
学びの希望基金については、2月補正原型予算額で約7億2000万円余を活用することとしており、31年度については、東日本大震災津波による遺児・孤児に対する奨学金給付や教科書等の購入給付、部活動の交通費等の支援といった従来の事業に加え、来年度は新たに、ラグビーワールドカップにおいて、釜石開催の2試合に沿岸被災地の小中学生を招待する事業も考えており、23事業・8億9000万円余の活用を見込んでいる。
【斉藤委員】
学びの希望基金は総額でいくら寄付が寄せられ、累積でどのぐらい使っているか。
復興基金は310億円だったと思うので、残金は52億円ということでいいか。
【復興推進課総括課長】
平成30年度末の復興基金残高は約52億円を見込んでいる。
学びの希望基金は、1月末現在で96億1000万円余の寄付をいただいている。これまでの総額ということで、30年度末の基金残高は73億円余となっている。
【斉藤委員】
順調に、積極的に活用されていると思う。
・総合的被災者相談事業について
【斉藤委員】
今年度の取り組みと実績、来年度の取り組み方針を示していただきたい。
【生活再建課総括課長】
今年度の取り組みと実績については、沿岸4ヶ所の被災者相談支援センターにおいては、相談員による相談対応のほか、行政書士、ファイナンシャルプランナー等の専門家による相談対応を実施しており、今年度の実績は12月末で、相談件数1348件、専門家相談199件となっている。
内陸避難者支援センターについては、沿岸市町村からの依頼を受けて、内陸および県外への避難者に対する戸別訪問等による住宅再建に向けた相談対応などを行い、今年度の相談件数は12月末で2379件となっている。市町村から依頼のあった785件のうち、昨年末までに779件・99%の方が住まいの意向を決定している。来年度についても、
被災者相談支援センターおよび内陸避難者支援センターにおいて、応急仮設住宅にお住まいの方々の住宅再建や、恒久的住宅に移行された後の安定した生活に向けた相談支援が必要と考えており、必要な体制を確保したうえで事業を継続することと考えている。
【斉藤委員】
先日、内陸被災者相談支援センターに行き話も聞いてきた。大変丁寧な対応をしているし、この活動がさらに継続されると。
・仮設住宅の特定延長について
【斉藤委員】
応急仮設住宅は、いま特定延長となっている。現在の特定延長対象世帯、再延長対象世帯、再延長対象外の世帯はどうなっているか。
すでに特定延長対象外になっている世帯もあると思うが、実態はどうなっているか。
【生活再建課総括課長】
今年1月末現在で、応急仮設住宅・みなし仮設住宅を含め、入居世帯1184世帯あるが、2020年3月まで特定延長の世帯は616世帯の予定であり、今年度末までの特定延長対象世帯は438世帯、2020年3月末まで再延長となっている対象は616世帯、対象外の世帯は130世帯となっている。
この特定延長対象外の130世帯のうち、128世帯が供用期限を経過している状況にあるが、そのうち10世帯はすでに本人が恒久的住宅に移行済で家財を残しているだけという世帯で、実質残り118世帯が引き続き入居中になっている。そしてこの118世帯のうち、89世帯は再建時期が決まっており、もうすぐ移られる方々だが、29世帯が退去時期も未定という状況である。
【斉藤委員】
特定延長は基本的に今年度末までで、来年度まで延長される「再延長」が616世帯、3月で切れるのが438世帯あり、本当に1世帯ごとに丁寧に住宅確保の支援をしていく時期にあると。そういう点で丁寧な対応をしていただきたい。無理矢理追い出すということはないようだが、しっかり住宅確保の取り組みを進めていただきたい。
・一人暮らし高齢者の見守りと孤独死の対策について
【斉藤委員】
昨年1年間で18人が災害公営住宅で孤独死し、昨日のニュースだと宮古市では4人と、生活支援相談員の活動の紹介の中で出されていた。この実態と対策はどうなっているか。
【生活再建課総括課長】
昨年末現在で、応急仮設住宅と災害公営住宅で、一人暮らしで亡くなられた後に発見された孤独死は80人となっており、被災者が地域で孤立を深めることのないよう、きめ細かな対応が必要と考えている。
県としては、県社協と連携して配置している生活支援相談員や、市町村が配置している支援員等と連携しながら、被災者への個別支援だとか住民相互に支え合うコミュニティ形成などの地域支援に取り組んでいる。
来年度においても、引き続き関係部局とも連携しながら継続して取り組んでいきたい。
【斉藤委員】
入居者も増えているということもあるが、災害公営住宅での孤独死が一昨年の6人から昨年は18人と3倍になっている。本当にこれは危険信号で、この段階での対応が大変大事だと思う。
災害公営住宅の一人暮らし、高齢者世帯、高齢者比率はどうなっているか。
自治会運営への支援、コミュニティ確立への支援はどうなっているか。
【生活再建課総括課長】
昨年末現在で、災害公営住宅に入居されている4886世帯のうち、65歳以上の高齢者を含む世帯は3018世帯・61.8%となっており、そのうち高齢者の一人暮らし世帯は1558世帯・31.9%となっている。そういった高齢者が孤立しないようにするということもあり、コミュニティの確立の支援や自治会の形成・運営の支援が重要であるので、こういったことは各市町村等においてコミュニティ支援員を配置するなどによって支援の取り組みが行われているが、県としてもコミュニティ形成支援員を災害公営住宅に派遣して相談対応等を行っているほか、被災地コミュニティ支援コーディネート事業を実施し、市町村と支援団体等を調整するコーディネーターを市町村に派遣し、市町村内での体制づくりや人材育成ノウハウ等についての助言を行うなど、市町村の取り組みを支援している。引き続きそうした取り組みを行っていきたい。
【斉藤委員】
2月11日に、大規模災害公営住宅自治会の交流会が陸前高田市で開かれ、ここには、県内の自治会と、宮城県の災害公営住宅の自治会の代表も参加し、熱心な討論が行われた。私も傍聴してきたが、ここで出された問題は、「自治会の担い手がいない」「いろんな行事への参加が少ない」などといった切実なものだった。復興特別委員会でも講演された岩手大学の舩戸助教は、「自治会・民間・行政が一体となって取り組んでいかないと、自治会任せでは進まない」と。なぜかというと、1つは高齢化が進んでいること、もう1つは74%と多くの世帯が国の家賃低減対策―これは超低所得者ということになるが、それだけ対象になっている。やはり県・市町村を含めた自治会への支援を踏み込んで行うべきではないか。
9月・12月議会でも取り上げたが、自治会が頑張っているにも関わらず、入居者名簿がいまだに提供されていない。知事は「必要があれば提供する」と言っているのに、なぜ提供されていないのか。真剣に取り組まれているか。
【生活再建課総括課長】
被災者の生活再建先におけるコミュニティ形成は重要な課題であり、これは特定の誰かがやればうまくいくというものではなく、舩戸助教や委員がお話の通り、いろんな支援団体などの協力が必要であり、県としては、そういった体制づくりとかノウハウが習得できるように支援や研修会を行っており、踏み込んでやっているつもりであり、引き続きやっていきたい。
入居者名簿については、自治会で入居者名簿を作成して避難活動等に活用したいという取り組みはとても有効であり、良いことだと考えており、知事答弁でも「入居者の同意が得られたものについては提供する」と答えており、これも県営災害公営住宅のことであるので、県土整備部と連携して対応しているが、やはり個人情報保護の関係で、入居者の同意を得られれば提供できるということも、県土整備部の方から関係先に周知し説明等も行っている。「同意が得られたものについては提供する」ということで、それについては周知を図っており、同意を得なくても提供できるような「高齢者世帯数」や「空き住戸」については提供できるということで対応している。問題は、入居者の同意が得られるかということと、個人情報の取り扱いは、個人情報保護法の改正が施行になり、小さい自治会も適用になるということで、取り扱いのルールなどをしっかりした上であれば提供できるということになっており、手続きなどは難しいようだが、その辺をきちんとできるように一緒になって支援をしている。
【斉藤委員】
現場でそういう説明がされていないので取り上げたので。今までは「提供しない」と言っていたので。
・生業再生の課題について
【斉藤委員】
水産加工と障がい福祉マッチング事業というのが新たに提起された。この狙いは何か。
三陸なりわい創出支援事業―これは今までのチャレンジ事業の形を変えたものだと思うが、今までの実績と起業の実績、新たな中身はあるのか。
【産業再生課総括課長】
水産加工障がい福祉マッチング事業は、被災地域の基幹産業である水産加工業について、震災以降は有効求人倍率が高止まりになっていると。沿岸地域の有効求人倍率に比べても水産加工業はきわめて高いと、2倍を超える状況が続いているので、それでこれまで地域外からの人を呼び込む施策として地域間産業人材確保事業ということで宿舎整備をやっていたが、それだけではなかなか有効求人倍率が下がらず人手不足がそのままだということで、沿岸局で勤務ということで高齢者や子育て世代で短時間しか働けない方に対する導入支援は行っているが、さらに地域内で働いていただける方がいらっしゃらないかというところで障がい者の方々に、どうしても水産加工というのは決まった作業を根気強くやったりする作業もあるが、そういうところについて障がい者の方々の特性を生かした形で働いていただける部分があるのではないかということで、ただ、これまでなかなか水産加工業と福祉作業所は接点がなかったということで、今回こうしたマッチング事業ということでコーディネーターを配置し、その辺をつなげるような取り組みをしていきたい。
三陸なりわい創出支援事業は、今年度まで実施している三陸チャレンジ推進事業の後継事業という位置づけになるが、見直した点としては、いま初期費用補助について実施しているが、そちらについて地域経済への波及効果や、事業者の方々に早期に自立する意識を高めていただきたいということで、補助要件に「新規に一人以上の雇用を創出する事業」または「クラウドファンディングにより資金調達を別途行う事業」というのをどちらかやっていただきたいということで要件を加え、早期に自立することを意識した上で、事業計画をつくっていただきたいということで事業を見直した。それから、これまでも商品開発等それぞれやっていたが、どうしても自分の思いだけで先に商品をつくってこれは良い物だと言っている方もいるが、そうではなく、消費者ニーズのところからじっくり考えて専門家の意見を聞きながら商品開発していこうということで、新商品等品評会を開催するということで、その辺は事業を見直している。
これまでの事業成果については、平成25年度から27年度まで三陸チャレンジ推進事業の前身事業をやっており59事業者、そこでは起業者への支援、28年度から30年度までは、起業者に加え、新事業活動を行う方についても支援対象にし、計82事業者にたいし初期費用補助を行ってきた。合計で140を超える事業者を支援してきた。今後はこの事業者の方々の事業の継続・拡大できるように引き続き支援を強化していきたい。
・東日本大震災津波伝承館について
【斉藤委員】
夏にオープンするが、館長の人選はいつまでにやるのか。管理体制はどうなるか。人員は4月から準備されるのか。
【まちづくり再生課総括課長】
館長については、復旧・復興の取り組みに携わり、伝承館の設置目的や意義をよく理解している方が相応しいと考えており、現在人選を進めている。
伝承館は管理運営することとし、3年程度の運営実績を積み上げたうえでその後の管理形態を考えていきたい。職員については、職員のほかに、非常勤の展示解説員を一定数配置したいと考えているが、具体的には、組織体制と合わせて、8月または9月を予定している開館に向けて精査しており、引き続き関係部局と調整していく。