2019年3月7日 予算特別委員会
政策地域部に対する質疑(大要)
・三陸防災復興プロジェクトについて
【斉藤委員】
2月に陸前高田市・大船渡市を訪問し、首長からもお話をうかがってきた。痛感したのは、8年を迎える中で、開催の趣旨にもあるが、「復興の先を見据えた地域振興に取り組んでいく必要がある」「新しい三陸の創造につなげていくことを目的として、三陸地域全体を舞台とする総合的な防災復興行事」と。やはり復興の先を見据えた取り組みが切実に求められていることを感じたので、復興をしっかり仕上げることと合わせて、今から復興の先を見据えた取り組み―この位置づけがとても大事だと思う。
ここまできたら、いま計画されている1つ1つの行事を成功させることが大事である。そういう点で、取り組みの状況と県の推進体制はどうなっているか。
【三陸防災復興プロジェクト2019推進室総括プロジェクト推進監】
いま22事業の磨き上げをさらに進めており、実施計画を立てる段階にきていると思っており、機運醸成についても、今月下旬から情報発信強化をしていきたいと思っており、道の駅や県内を丸ごと情報発信拠点にしようと、ポスターの掲出やガイドブックの配下などを行うほか、新聞広告、テレビCMなど、多角的な発信を行って、さらなる機運醸成を図っていきたい。
県の推進体制だが、知事を本部長とする推進本部を設置しており、このプロジェクト実行委員会が主催する事業に協力をしていくという姿勢で臨んでいる。具体的には、プロジェクトの目的にかなう関連事業の実施について調整を行っており、12月の総会においても、関連事業として提示したところだが、さらにそれがいくつかまた増えてきているという状況であり、日程も決まってきて、我々の会期に中に寄せて一緒にやっていくという流れも出てきている。引き続き、実行委員会や市町村と連携しながら取り組んでいきたい。
【斉藤委員】
ここまできたら、実行部隊の体制が必要だと思う。だいたい企画は定まってきており、1つ1つの計画・行事をしっかり成功させる実行部隊の体制を、おそらく沿岸・県北広域振興局が主体になってやるというということになると思う。我々は選挙になれば臨戦体制と言うが、そういう臨戦体制をとってやらなければいけない。
3月下旬からの情報発信というのは、他の委員からも指摘があったが遅いと思う。3種類の大型ポスターを作るというが、やはり現地市町村ごとのポスターを作るぐらいの発想でなければならないと思う。それぞれの市町村で何をやるのかと。ぜひそういう形で取り組んでいただきたい。
そして、実行委員会をどう生かすかということも大いに議論して、議員にも声をかけていただいて、成功のために我々も力を尽くすという体制を遠慮なくつくっていただきたい。
市町村との連携だが、復興の先を見据えるというのは地元市町村である。そういう意味でいけば、地元市町村との連携はきわめて重要である。本当に一緒に取り組む体制をなんとしても最後まで重視して取り組んでいただきたい。その状況はどうなっているか。また、沿岸市町村以外で企画を持っているところはどこか。
【三陸防災復興プロジェクト2019推進室総括プロジェクト推進監】
市町村との連携は非常に大事だと思っている。市町村連携会議を開催しており、相当程度足を運ばせていただいている。そういった中で、かなり濃密に意見交換できていると思っており、最初は市町村の窓口も企画部門や観光部門で固定されていたが、事業ごとに細分化されてきているという感じも受けている。そういう意味で、市町村の熱も上がってきていると感じている。具体的に、復興展示や企画のブースの出店をやるといったことも検討していただいている。
内陸市町村での展開については、例えば、遠野市では、道の駅でプロジェクトのディスプレイをデジタルでやっていただいており、矢巾町は、東京で震災の情報発信をする際にプロジェクトの情報発信も一緒にやっていただけるとか、紫波町では、三陸の食をマルシェのような形で紫波町で発信する際に三陸の食材を一緒に発信していくといったようなことをやっていただいている。盛岡市は、先日広報もりおかにプロジェクトの情報を載せていただき、「さんさ踊りを派遣します」という市長さんのコメントもあったが、そういう形でさまざま連携をいただいているので、これからもさらなる支援をいただけるよう力を入れていきたい。
【斉藤委員】
今年は、JRも岩手に焦点を当てた観光キャンペーンを展開し、三陸鉄道も全線開通する、ラグビーワールドカップもあると。そういう意味では本当にタイミングのいい三陸防災復興プロジェクトだと思う。
内陸の支援で、大震災の時にはペアレント支援があった。盛岡市は宮古市を応援する、奥州市は陸前高田市とか、そういう関係にも着目して、大いに被災地を応援すると。ツアーを組むなどといった知恵も出して、新たな転機となるように取り組んでいただきたい。
・復興にかかる応援職員の確保について
【斉藤委員】
来年度の応援職員確保の必要数と見通しはどうなっているか。
台風10号災害関連の必要数と確保の見通しはどうか。
【市町村課総括課長】
31年度における東日本大震災津波にかかる応援職員の確保の見通しについては、現在調整中のものもあるので、今後変動する可能性もあるという前提だが、3月1日現在で取りまとめたところ、必要数437名にたいし確保見込みは420名、充足率は96.1%となる見込みである。確保見込みの420名のうち、県外からの派遣を124名、県内は146名、被災市町村による任期付職員の採用などが150名となっている。
台風10号災害については、こちらも3月1日現在で、必要数22名にたいし確保見込みは21名となっている。
【斉藤委員】
9年目を迎える中で、437名にたいし420名確保見通しというのはかなり頑張った成果だと思うし、台風10号災害関連でも必要数に近いところまでやられているということで、心から敬意を表したい。
予算の中に、岩手復興応援隊9600万円が計上され、配置・活動されると。この実績と中身を示していただきたい。
【地域振興監】
県では、国の復興支援制度を活用し、被災者の見守りや地域振興の支援などを行う岩手復興応援隊を県内外から広く募集し、これまで沿岸市町村を中心に延べ57名の隊員を配置してきた。
平成30年度においては、延べ28名の隊員が活動し、3月現在で17名が活動している。
活動の内容は、今年度から三陸地域の交流人口の拡大に向けた広域的なプロジェクトの推進のために重点的に配置しており、三陸防災復興プロジェクト2019の厚生事業の開催調整だとか、三陸ジオパーク出前授業などの地域への普及啓発やジオガイドの養成、三陸観光プランナー養成塾修了生と連携した体験プログラム等の実施・運営、三陸鉄道での沿岸地域の芸能と交流する企画列車の実施など、地域と連携したさまざまな取り組みを行っており、31年度においても、引き続き地域に根ざした活動を展開していきたい。
【斉藤委員】
31年度は24名の配置予定ということでいいわけですね。
・被災市町村の当初予算額と震災復興分、投資的経費の状況と推移について
【斉藤委員】
被災市町村の当初予算額と震災復興分、投資的経費の状況と推移について示していただきたい。
【市町村課総括課長】
市町村の当初予算における投資的経費の状況は、普通会計ベースになるが、震災前の平成22年度が987億円余だった。
直近の5ヶ年の数字で見ると、26年度4035億円余で震災分は3099億円余、27年度4193億円余で震災分3278億円余、28年度2977億円で震災分は2151億円余、29年度は2806億円余で震災分は1867億円余、30年度は2252億円余で震災分は1380億円余となっている。
【斉藤委員】
3278億円というのがピークで、30年度は1380億円で半分以下に減少している。これは復興事業がピークを超えてこのようになっているということで、本当に復興の先を見据えた取り組みの段階になっている。
・台風10号災害の復旧状況について
【斉藤委員】
被災者の生活再建―住宅確保の状況、生業の再生の状況、災害復旧事業の進捗状況、生活橋の復旧事業はどうなっているか。
【県北・沿岸振興課長】
12月末現在で、138世帯の方々が応急仮設住宅での生活を余儀なくされている。今後、岩泉町で災害公営住宅63戸、被災者移転地26戸分の整備が春にかけて行われるので、今後恒久的な住宅への移行が進むと見込んでいる。
生業再生については、局地激甚災害指定の宮古市・久慈市・岩泉町の被災事業者の早期再開のために、地域なりわい再生緊急交付金を交付している。28年度から29年度にかけて、県から3市町へ604件分・6億2900万円余を交付している。30年度は、岩泉町へ11件分・1500万円余を交付し、この事業については終了する予定となっている。
災害復旧工事については、県事業・市町村事業とも発注がおおむね完了し工事が本格化している。12月末時点での工事の完成率は、農林水産部関係で67.9%、県土整備部関係で50.9%となっている。
生活橋については、被災した生活橋が73橋、応急復旧実施済が51橋だった。このあと本格復旧が始まっており、今年度末までに7橋の本格復旧が完了するという見込みになっている。
・被災地の交通確保対策について
【斉藤委員】
特定被災地公共交通確保調査事業の取り組みと来年度の見通しはどうなっているか。
陸前高田市・大船渡市に行った際に共通して出されたのは「持続可能な地域公共交通の確保」だった。例えば、大船渡市の場合はデマンド交通―タクシーチケットを全額市の負担でやっている。陸前高田市では、公共交通が入らない地域で「支え合い交通」が必要だが、そういう制度がなく何とかしてほしいという要望があったところだが、そうした地域が必要とする、とりわけ一人暮らしで車を持っていない人たちの足の確保をどうするか、県の対策についてお聞きしたい。
【地域交通課長】
特定被災地公共交通確保調査事業は、応急仮設住宅を経由する被災地の公共交通にたいして10分の10の補助率で、これは応急仮設住宅の数にもよるが6000万円を上限に、国から市町村に直接補助されるものであり、被災地の地域内公共交通を支えてきた重要な事業であると認識している。今年度は、コミュニティバスやデマンド交通など6市町村67路線にたいして2億円余の補助が交付決定されている。来年度は、現在国において市町村に事業規模を確認中であるということであり、金額については把握していないが、復興まちづくりも進展し、応急仮設住宅の撤去も進んでいるということから、事業の対象となる路線は縮小していくものと考えている。
地域にとって必要な交通の確保については、交通弱者と言われる高齢者にとっては、やはりバス停まで行くのが大変だということもあり、デマンド交通や自宅まで来てくれるような自家用有償運送といった制度が有効ということで、各市町村においてもデマンド交通等の導入が進んでおり、県内においては、デマンド交通は14市町村46系統で運行されている。「支え合い交通」というお話があったが、公共交通空白地有償運送という制度があり、これはNPO等がバスやタクシーの事業許可を受けることなく、自家用自動車を利用して運行できるというもので、これについては現在4市町村4団体で実施されている。なかなかこちらについても「ドアtoドア」のサービスが提供できるというメリットはあるが、やはり運営の面で、市町村やNPO法人において運営費の負担が課題だと聞いている。
【斉藤委員】
公共交通空白地有償運送の事例をぜひ陸前高田市にも紹介して、相談に乗っていただきたい。
3月6日付の河北新報に、石巻市のNPO法人が「移動支援サービス」を行っている。これは2キロまで100円という形で、石巻を拠点に女川などの地域まで行って実施しており、国から補助ももらっていると。これは震災関係の補助のようだが。
このようにいろんな取り組みがあるので、被災地というのは課題の先進地で、おそらくこれからどの地域でも出てくる問題。だから今本当に必要な公共交通の確保という課題として県も受け止めて対応していただきたい。
・三陸鉄道リアス線の運行について
【斉藤委員】
鉄道事業再構築実施計画はもう認定されたと思うが、認定されたらどういうことになるのか。
一貫運行の新たな対策はどうなっているか。
いわて県民計画では、利用客が52万人から110万人という計画が示されているが、その根拠はなにか。
斎藤徳美先生が三陸鉄道に命を燃やし、学びの希望基金で子どもたちの交通費は支援するが、「高齢者にも通院などへのそうした支援があってもいいのではないか」と問題提起された。県も考えていると思うが、本当に地元の人が使う鉄道になってこそ、三陸鉄道というのは地元の動脈となって生き残れる、大事な役割を果たすのではないか。
【地域交通課長】
鉄道事業再構築実施計画は、JR東日本から山田線の移管を受け、リアス線として一貫運行を行う三陸鉄道の収支の均衡と、安全で安定した運行の維持確保を図るため、県・関係市町村・三陸鉄道が共同で策定し、今年1月に国の認定を受けた。これにより、鉄道施設の整備工事にかかる国庫補助率が3分の1から2分の1に引き上げられることに加え、予算の優先配分や固定資産税の減免といったメリットがあるものである。計画においては、一貫運行による経営の改善、市町村による鉄道資産の所有による固定資産税の軽減、県と市町村の連携による利用促進策の推進を掲げるとともに、国の支援を受けつつ、JRからの移管協力金も活用しながら、県と市町村が連携して設備維持費や修繕維持管理費への補助を行うことにより、三陸鉄道の経営を支援していくこととしている。
一貫運行に向けた新たな対策については、鉄道事業再構築実施計画において、国・県・市町村による財政的な支援や計画的な設備投資の実施に加え、これまで久慈と盛にあった運行本部を統合して宮古に設置するなど、一貫運行による経営の改善、利用促進策による収入の確保に取り組むこととしている。利用促進策としては、新たに開業するリアス線―釜石〜宮古間への誘客や、長距離周遊利用の促進を図るとともに、復興支援道路の整備による交通アクセスの改善や、訪日外国人観光客の増加など、国内外からの観光誘客の機会を捉え、情報発信あるいは販売促進活動の強化により観光利用の拡大を図ること。地元利用については、地域ニーズを掘り起こす企画列車の運行、マイレール意識の醸成、沿線市町村による利用の奨励などに地元利用の引き上げ、また新駅の設置や駅周辺の施設の整備などもしているので、そういった沿線市町村による駅を中心としたまちづくりと連携した利用促進に取り組んでいく。
利用者の増加に向けた取り組みについては、アクションプランでは110万人という目標を設定しているが、これは南北リアス線の年間利用者数の現状値52万人に、移管を受けて開業する山田線の部分の利用者を加えて見込んだものである。新聞報道にもあった高齢者への支援については、山田線区間においては、高齢者への利用促進として、運賃が急に上がり、JRからの移管協力金を活用して、割引率の高い回数券―10枚の料金で15枚分が利用できるものを、山田線区間に限るが発行することとしており、高齢者の利用や地元の利用の促進を図っていきたい。