2019年3月12日 予算特別委員会
医療局に対する質疑(大要)


・医師確保対策について

【斉藤委員】
 現経営計画は今年度末までとなっているが、医師確保の計画に対する実績はどうなっているか。
 奨学金養成医師はどれだけ配置されたか。

【医師支援推進監】
 現行の経営計画では、平成26年度から30年度までの5ヶ年で109人を増員を計画したが、31年4月現在では、休職者を含む当初の現員数と比べて3名減員となっており、大変厳しい状況になっている。
 奨学金養成医師の県立病院への配置状況は、28年度16名、29年度25名、30年度40名となっている。

【斉藤委員】
 奨学金養成医師は累計で40名配置されたにもかかわらず、3名減員ということはどういうことか。岩手医大が引き上げたのか。

【医師支援推進監】
 現経営計画を達成できなかった要因については、大学院等で専門医資格の取得を目指す医師の増加により、後期研修医の採用が計画人数を下回ったこと。医学部卒業生の都市部や大規模病院志向等により、初期臨床研修医を計画通り確保できなかったこと。招へい医師の退職者が相当数発生したこと。医師の派遣元である関係大学・医局自体において、医師の絶対数が不足していることにより、派遣数が減少したこと―などによるものが主なものである。

【斉藤委員】
 せっかく奨学金養成医師を3年間で40名配置してきたが、109名増の計画にたいし3名の減になってしまった。これは本当に深刻なことだと思う。
 来年度から6ヶ年計画の新しい経営計画が始まるが、医師は81名増員の計画である。この81名増員の根拠を示していただきたい。

【医師支援推進監】
 増員のための主な取り組みとして、引き続き即戦力医師の招へい活動の推進や、関係大学等に対する医師派遣要請を行うことに加え、奨学金養成医師にたいし、県立病院に勤務しながら専門医資格の取得可能なプログラムの積極的な活用などにより、初期臨床研修後の早期に義務履行を促すこととしている。また、初期研修医を確保するため、学生向けセミナーの開催による義務履行の意義等の周知や、県外大学の医学生との面談による県内の臨床研修への勧誘のほか、県外の大学に進学にした学生に対する県人会の開催による病院見学の学生を増やす取り組みを実施していく。

【斉藤委員】
 実績が3名の減なので、今までにない手立て・対策、こちらの体制がないとうまくいかないと思う。
 岩手医大からの派遣がやはり問題ではないかと思う。昨年の決算特別委員会の総括質疑で、岩手医大にこの間どのぐらい県は補助してきたか聞いたが、総額で222億8千万円だった。これだけ補助しているのなら、岩手医大との地域医療確保の協定もあるので、しっかり要請すべきである。知事は「県立病院の体制について、やはり岩手医科大学には、地域に対する、岩手県民に対する役割を果たしてもらわなければならないと考えますので、しっかり求めていきたいと思います」と答弁した。どのように要請されてきたか。
 奨学金養成医師は、来年度からの6ヶ年計画で、純増で新たにどれだけ配置される見通しか。

【医師支援推進監】
 岩手医大への要請だが、岩手医大に「地域医療支援委員会」にたいし、県立病院から医師派遣の要請を行い、そういった中で岩手医大から医師の派遣を受けている。
 奨学金養成医師の今後の配置見通しは、来年度の公的病院への養成医師の配置数は52名の予定となっており、このうち配置先が調整中である6名を除いて、県立病院には前年度から3名増となり、43名が配置される見込みとなっている。
【経営管理課総括課長】
 奨学金養成医師の配置数については、毎年20名程度を計画しており、6年間の合計については127名としている。
 81名増員という部分は、医師の退職等も見込んでおり、全体として81名となるということである。
【医療局長】
 岩手医大に対しては、さまざまな機会に私の方から要請させていただいている。岩手医大の方も、その部分については真摯に受け止めてはいただいていると考えているが、今回の現計画が達成されなかった1つの大きな要因というのが、後期研修医が義務履行の猶予を使った形で大学院等で勉強しているということがあり、それはやはり県立病院の中で勤務していると専門医資格が取れないという認識があるのではないかと考えており、今回の計画の中では、県立病院に勤務しながら専門医資格の取得ができるプログラムを作って進めていこうと思っている。
 どうしても大学は医育機関なので、学生が向上心を持って次のステップに行きたいという者については後押ししたいと思われるので、我々としても体制を整備して、専門医資格を取りやすいような環境づくりをやっていきたい。

【斉藤委員】
 6年間で純増がわずか36名ということか。少ないのではないか。

【経営管理課総括課長】
 全体で医師81名の増員計画にたいし、そのうち36名を奨学金養成医師としてみこんでいる。

【斉藤委員】
 その見通しはあまりにも少ないと思う。奨学金養成医師は、年間30〜40名確保している。ところが今平均6人にとどまっている。これから義務履行の猶予がどんどん増える計画ではないか。少しそれは違うのではないか。そんなことでは医師は増えないと思う。ずさんな計画ではないか。
 医師確保をする上でも、医師の超過勤務の状況の改善が必要だと思う。80時間を超えている、100時間を超えている医師の超過勤務の実態はどうなっているか。労基法・労働安全衛生法の改正でタイムカード導入が義務づけられているが、どのように実施されているか。

【医師支援推進監】
 平成30年12月の実績について取りまとめた調査では、80時間を超えた医師が87人で前年同期比4人増。このうち100時間超が34名で前年同期比5人減少している。
【職員課総括課長】
 労働安全衛生法の改正により、客観的な方法により労働時間の把握が必要になるところである。これを踏まえ医療局では、タイムレコーダーおよびICカードを購入し、すべての県立病院・地域診療センターおよび本庁において、平成31年4月から出勤時刻および退勤時刻の把握に取り組んでいくこととしている。

・看護師確保と大幅増員の必要性について

【斉藤委員】
 現経営計画に基づく看護師確保の実績はどうなっているか。

【職員課総括課長】
 職員配置計画に基づいて、被災病院の再建、機能分担と連携の推進や人口減にともなう患者数の減少に見合った看護職員の適正配置、さらには7対1にかかる施設基準の維持、退院調整や看護職員の教育などに携わる看護職員の専従配置などの医療の質の向上、育児休業・産前産後休暇取得者にかかる代替職員の配置などを進めてきた。
 平成26年度から30年度までの5ヶ年で118名を増員した。

【斉藤委員】
 昨年の決算特別委員会で聞いたときは、130名の目標にたいして138名を確保しているという答弁だった。ところが今年、増やすどころか20名減らした。とんでもないことだと思う。結局、130名の目標を割り、実績は118名になった。計画比-12になってしまった。なぜ今年度20名も看護師を減らしたのか。

【職員課総括課長】
 昨年は、計画期間の中途ということでそのような説明をしたが、看護職員の増減には、単純な要素ではなく、例えば、患者数の減少にともない適正配置する分がある。一方では、医療の質の向上や産育休の代替職員の充実などプラスの要素、両方の要素があって最終的な人数が出てくるので、産育休の代替職員はその通り充実してきたが、一方で患者数の減少に見合う病棟の再編などによりマイナス要素もあって118名という結果になった。

【斉藤委員】
 後で看護師の実態をリアルに紹介するが、今年度の第3四半期までに、やってはならない9日夜勤が537件も出ている。一番多いのは大船渡で124件。ところが私が説明を受けたら、大船渡病院は1病棟減らしたからその分看護師が減ったと言っている。一番9日夜勤の多いところで、それを理由に看護師を減らすのではなく、9日夜勤の改善にこそまわすべきではないか。

【職員課総括課長】
 夜勤回数は8回以内に収まることが望ましいと考えているが、新採用職員や異動職員の転入にともない第1四半期を中心とした夜勤可能な職員数が一時的に不足することや、年度の中途の病気休暇などさまざまな要素により8回を超える夜勤が発生している。
 ご指摘の大船渡病院については、8回を超える夜勤が発生しているが、病棟を近々再開する見通しも踏まえながら、8回以上の夜勤の解消と、新たな病院体制も踏まえながら体制を整備していきたい。

【斉藤委員】
 今年度、本当に厳しい状況の中で9日夜勤が発生していて、まともに年休も取れないときに、20名も減らすとはどういうことか。そして結局は5年間の目標が未達成になってしまった。
 第3四半期までに9日夜勤は537件発生した。あってはならないことである。三交代、深夜勤務自身が過酷な労働である。それを9日もやらざるを得ない。だから普通退職が110名も出てしまう。
 6ヶ年の新しい経営計画では、わずか66人の増員になっている。これで9日夜勤が解消できるのか。これで看護師は安心して年休が取れるのか。その保障はあるのか。

【職員課総括課長】
 時期経営計画においては、66人の増員になっているが、これには内訳があり、機能分担と連携の推進や人口減にともなう患者数の減少に見合った適正配置ということで63名を減じる予定がある。一方で、医療の質の向上として39名を増員、さらには産育休の代替職員として90名を増員という要素で、合計66名の増員という結果になっている。
 夜勤回数の抑制については、看護業務の効率化や他の職種への業務の移管、夜勤専従制度などの多様な勤務形態を整備するなど、勤務環境の改善に向けた取り組みも推進していく。そうしたことにより、夜勤回数の抑制や看護職員の業務負担の軽減を図り、このことが休暇取得日数の増加にもつながるものと考えている。
 休暇については、労働基準法の改正により、31年度から年次休暇の年5日以上の取得が義務化される。これにともない県立病院においても就業規則を改正することとしており、これを機会に改めて、看護だけではなく全職員のみなさんに周知しながら、休暇の着実な取得を推進し、ワークライフバランスの向上を図っていきたい。

【斉藤委員】
 この5年間で、不十分だったが118名増やした。しかし9日夜勤は増え続け、年休も取れなかったのが実態である。これから6年間でたった66名しか増やさなかったら、どうして年休が取れるのか。9日夜勤が解消できる試算をしたのか。いわて県民計画では、年休の取得率を4年間で75%まで上げる。20日間のうち15日間は取れるようにしようと。知事に「県職員も県立病院もこの目標をやるんですね」と聞いたら、知事は「その通りです」と。わずか66名の増員はそういう試算になっているのか。

【職員課総括課長】
 66名の増員については、適正配置と充実の双方でそうした数字になるということで、増員自体は合わせて百数十名になるので、そちらである程度職員の夜勤回数の抑制や休暇取得の推進が図られるものと考えている。

【斉藤委員】
 根拠を示していただきたい。9日夜勤解消のためにどれだけの看護師が必要で、年休の取得率75%のためにどのぐらいの看護師が必要なのか。試算して66名の増員で大丈夫というのなら納得するが。そういう試算をやっているのか。
 中央病院の看護師の実態を紹介したい。「今年の年次3日しか取れませんでした」「人手不足のせいでしょうか。モチベーションが下がります」「今年も年次は5日も取れず、もっと人が増えて10日ぐらい取れるようになりたい」「風邪も治らず働き続ける毎日」「身体を壊すぐらいなら退職も考えたくなる今日この頃です」「病休に次ぐ病休でどんどんスタッフが少なくなるのに補充はなし。残ったスタッフもギリギリです。早くマンパワーを充実させてください」「7対1がとれないとき、次長が1ヶ月だけ病棟に名前を貸すのって、ブラック企業と同じですよ。名義貸し・水増しですよ」と。こういう実態である。これを打開しなかったら、看護師を確保できない。だから110名も途中で辞めて特別募集をしているのではないか。ここに真剣に対応しなかったら、ますます看護師が確保できなくなると思うがいかがか。

【職員課総括課長】
 我々としても看護職員の確保は重要な課題であり、病院として看護職員は重要な資源だと認識しているので、もちろん計画の中で増員も図りつつ、看護業務の見直しや負担軽減策も対応したい。やはりどうしても、年度当初は多数の新規採用職員が配属され、短期間に多数の看護師を補充することはかなりハードルが高い話であるので、そこは職員のご理解をいただきながら、そうでない時期に発生する部分については、1つ1つ理由を確認しながら、看護職員の負担軽減や年休が取れる環境を目指していきたい。

【斉藤委員】
 来年度から年5日以上休暇を取らせなければならないが、県の目標は75%なので5日以上で良いとは思わないが、先ほど紹介した声では「3日しか取れない」「5日間も取れない」というものだった。5日間も取れていない方々はどのぐらいいるか。

【職員課総括課長】
 手元にあるのは全職員と看護職員もので、平成30年の1年間に全職員で取得5日未満は1585人・30.3%、看護職員では742名・23.2%となっている。

・消費税の県立病院に与える影響について

【斉藤委員】
 これまでの消費税の負担額、転嫁できない負担額は総額でどうなっているか。
 10%増税になった場合の影響額はどのように推計されているか。

【経営管理課総括課長】
 消費税が導入された平成元年度から29年度までの間の累計の消費税負担額は、総額605億円余となっている。これに対し、診療報酬の引き上げ等により補てんされていたと推計される額および一般会計からの地方消費税相当分の繰入額の合計は419億円余であり、実質的な負担額は186億円余となる。
 10%になった場合の影響額は、29年度の決算額を基に試算すると、実質的な負担額の増税による影響額は1億9000万円余と見込んでいる。