2019年3月18日 予算特別委員会
県土整備部に対する質疑(大要)
・孤独死を出さない災害公営住宅の対策について
【斉藤委員】
災害公営住宅の入居者の状況について。一人暮らし世帯、高齢者世帯の実態はどうなっているか。
国の家賃低減対策の対象世帯はどうなっているか。
【住宅課長】
12月末現在、災害公営住宅に入居している4954世帯のうち、65歳以上の高齢者を含む世帯は3021世帯・約61%となっている。うち、高齢者の一人暮らし世帯は1559世帯で、高齢者世帯全体の約52%となっている。
国の東日本大震災特別家賃低減制度の対象世帯は、3665世帯となっている。
【斉藤委員】
災害公営住宅は、一人暮らしが約32%、高齢者世帯で見れば62%弱となる。
特別家賃低減対象世帯は、いわば低所得者が入る公営住宅の基準の半分、制令月収が8万円以下が74%を占めている。
高齢化と低所得というのが、今の災害公営住宅の特徴である。
3月12日付の朝日新聞に、「復興住宅 孤独死が急増―昨年68人、仮設の最多年の倍以上」という記事が載った。昨年、岩手県の災害公営住宅での孤独死は把握しているか。
【住宅課長】
平成30年の災害公営住宅において、一人暮らしで亡くなられた後に発見された方については18人と把握している。
平成29年度については6人と把握している。
【斉藤委員】
岩手県の孤独死の数字というのは、震災関連の自殺を含まない数で、宮城県は含めた数で集計しているので、若干違うが、昨年は18人が災害公営住宅で孤独死、前年の3倍である。累計で34人になっている。仮設住宅でこの間亡くなった方は、昨年が3人で累計46人。この1年間で確実に逆転すると思う。災害公営住宅での孤独死というのは、いま特別の対策を講じなければ、急増しかねない。阪神淡路大震災の重要な教訓である。
一人暮らし世帯の実態だが、私もこの間さまざま直接対話をしてきた。災害公営住宅というのはマンション型で、大変立派な建物だが、重い鉄のドアを閉めると孤立化・孤独化してしまう。「部屋に一人でいると牢屋のようだ」「仮設の方が良かった。助け合おうという交流があった」「今はやることがない。先が見えない」という切実な声があり、こういう形で孤立化・孤独化が進行している。
岩手大学の船戸助教が昨年自治会と共同で行った入居者調査があるが、884人が回答し、「公営住宅や周辺地域にいる信頼・相談できる人の人数」で、「一人もいない」という回答が24.6%もあった。こういう中で特別の対策が必要だと思うが、どういう対策になっているか。
【住宅課長】
県としても、災害公営住宅に入居された方が、地域だとか団地内で開催される交流会などに参加されずにそのまま地域や団地内で孤立を深めることがないような形で進めていくことが非常に大事だと考えている。
県としては、災害公営住宅の中において、入居者が互いに顔見知りになるなど、一定のコミュニティが形成できるまでは、コミュニティ形成支援員を配置させていただき、相談対応にあたっている。まずは、顔と顔が見える関係づくりに取り組んでいくということで努めていきたい。
【斉藤委員】
現在2名のコミュニティ形成支援員を配置しているが、この方々は大変頑張っていると思う。しかし、県営の災害公営住宅24団地・1322戸入居している。たった2人の支援員ではまったく足りていない。
例えば、南三陸町は60戸以上の災害公営住宅に2名の生活援助員を配置している。生活援助員は、一人一人の入居者の状況を把握している。その方が自治会と協力して、しっかりした見守りやコミュニティの形成をしている。阪神淡路大震災もそうだったが、7年経ってから、シルバーハウジングといって高齢者住宅に人を配置した。
50戸以上の一定の規模の災害公営住宅には、集会所とは別に、支援員の事務室を設置している。せっかく整備していながら、一人も配置しないのはどういうことか。本当に一人も孤独死を出さないという思い切った対策が必要だと思うがいかがか。
【住宅課長】
コミュニティ形成支援員は2名の配置となっているが、この2人が定期的に自治会やそれぞれの自宅を回ったりしながら、相談などに応じている。一方では、市町村で配置している生活支援員などで、見守るべき方について見守っていただいているということも承知している。この辺については、県は県、市町村は市町村ということのないよう、市町村の福祉部局等とも連携が必要だと考えている。この辺については、年に何回か開催されている連携会議の機会をとらえて、我々の方で整備した集会所の中にある相談支援スペースの活用などをお願いしていくということは昨年度からやっている。
また県においても、盛岡市の青山に整備を予定している災害公営住宅(99戸)について、入居者の相談対応ができるような形ということで、盛岡市と調整しながら支援センターの整備を調整している。
【斉藤委員】
答弁あったように、大変驚いたのは、これから議案が提案される盛岡市内の災害公営住宅に「被災者支援センター」が設置される。盛岡だけではなく、50戸を超えるような規模の災害公営住宅には、そういう人の配置が必要ではないか。県が配置するか市町村が配置するかは大いに調整するとして、孤独死が急増しているときに、ここでしっかりした手立てをとらなければ大変なことになる。
船戸助教は、「行政・民間の支援団体・災害公営住宅自治会が一体となって、新たなコミュニティ形成をやるべきだ。自治会に任せていてはいけない」と指摘している。復興庁の復興推進参与をされている田村さんは、「これからのコミュニティ形成に向けて、社会の変化を見据え、これまでと異なるアプローチが必要だ。外部の支援を組み込んだコミュニティ形成の視点が必要だ」と。これが阪神淡路大震災や東日本大震災のコミュニティ形成を支援してきた方、専門家の意見なので、ぜひそういう立場で踏み込んだコミュニティ形成、孤独死を出さない対策が必要ではないか。
【県土整備部長】
これから孤独死が増えていくということを想定しながら取り組むべきだというご指摘だが、我々、公営住宅の管理者として、コミュニティ形成支援員を確保して対応していただいているが、保健福祉部局とも相談させていただきながら、今後の必要な対応があるとすれば、どのようなことがあるのかということをしっかり勉強させていただきたい。
【斉藤委員】
ぜひこういうことは機敏に、抜本的な手立てを取っていただきたい。
・災害公営住宅のコミュニティ確立と自治会への支援について
【斉藤委員】
この間9月議会以来取り上げてきたが、県営災害公営住宅24団地のうち、入居者名簿が整備されている団地はいくらあるか。
【住宅課長】
昨年末現在で、一部の入居者名簿を作っているというのも含め5団地となっている。
【斉藤委員】
正確に言うと、自治会名簿を作成しているのが3団地で、「一部ある」のが2団地である。
9月議会以来繰り返し取り上げ、知事は決算特別委員会の総括質疑で「県営の災害公営住宅の入居者の情報については、個人情報保護の観点から、同意いただいた方の情報について、自治会にも要請に応じて提供しているところであります」と答弁している。ところが、私が聞いたところは1つもない。これは問題ではないか。知事もそのように言っているときに、なぜ提供されていないのか。
【住宅課長】
県では、県営の災害公営住宅の入居者に関する情報について、高齢者の世帯数だけとか、空き住戸の数等、個人を特定しない情報については、自治会からの要請に応じて提供している。また、県営の住宅管理において、県が保有している個人情報については、入居者の同意があった場合は提供するということにしており、9月議会・12月議会の答弁においては、県の体制だとか姿勢について述べさせていただいている。ただ、今のところ自治会からの要請がないということで、具体的に県から提供した事例はないが、我々としては、やはり活発な自治会活動が孤独死を防いだり、孤立化を防ぐという形だと考えているので、要望を待つという形ではなく、「伺う」との姿勢で取り組んでいきたいと考えており、県の関係課に対して、昨年12月に改めて県の方針を周知するとともに、こちらから災害公営住宅の自治会に出向き、意見交換や名簿の作成・管理にあたっての個人情報の管理が求められるところだが、この辺を情報提供したりして、引き続き名簿の作成の支援に努めていきたい。
【斉藤委員】
私は実際に災害公営住宅の自治会長さんからお話を聞いて質問した。「いくら要望しても入居者の情報は提供されなかった」と。3団地で入居者名簿を整備しているが、県が提供して作成したのではない。自治会が努力して各戸を訪問して作成したところである。「要望がない」というのは違う。
3月1日付の読売新聞で、「高齢者 見守り体制が急務」とあり、釜石の平田災害公営住宅の自治会長さんは、「火事などに備え、助けが必要な入居者を知りたいと、これまで入居者名簿の提供を県に求めてきた。粘り強い交渉の末、今年に入り、空き室の場所だけを教えてもらえた。だが入居者情報については『ノー』。いずれも県の提供を受けられずに、自主的に作成した」と話している。「要望がないから提供していない」というのは違うのではないか。
【住宅課長】
具体的に我々のコミュニティ形成支援員の方が自治会等に入り、要望等をうかがっている形である。私たちが直接うかがう形ではないが、報告では「要望がない」ということで、提供の事例がないということだが、県としては、自治会の要請に応じて、高齢者の空き室の情報など提供するとともに、こういう情報がほしいというのであれば、こちらで把握している情報であれば同意書をとった上で提供するという形で努めていきたい。
【斉藤委員】
私は議会の場で、そういう要望が自治会からあって、提供できるのではないかと、知事は「提供できる、している」と答えた。コミュニティ形成支援員から聞いたら要望がなかったというのは違うのではないか。9月・12月議会の知事答弁を無視するような答弁をしている。そういう姿勢でコミュニティ確立ができるのか。部長はどう受け止めているか。
【県土整備部長】
知事からは「同意いただいている方の情報については、自治会の要請に応じて提供している」とお答えている。その時点で、そういう体制下にあるという状況を我々の方でお答えさせていただいていると思っている。
実際にその時点で要請に応じて提供していたということではなく、進行形で、体制があったということでの答弁である。
【斉藤委員】
私は、頑張っている自治会長さん何人もの要望を受けて、「県に要求したが出してくれなかった」というのが声である。それを「要望がなかった」という無視するやり方。「必要な情報は提供できる」のだから、必要な通知を出すべきである。情報を出すにあたって、必要な条件があれば、きちんと支援すると、そのようにしていただきたい。
何度もこの場でこの問題を質問したくないので。ぜひそういう通知を出して、自治会と一緒にコミュニティ形成に取り組んでいただきたい。
・災害公営住宅の家賃について
【斉藤委員】
特別家賃低減世帯は3665世帯・74%(12月末)で、6年を迎えると10年目に向けて値上げになる。この値上げ対象になっている世帯は把握しているか。
【住宅課長】
国の東日本大震災特別家賃低減措置は、基準以下の収入の世帯については、災害公営住宅の管理開始の5年間は一定の家賃低減の措置がとられる。こちらは5年経過すると6年目から段階的に家賃が本来の家賃に移行するが、県営の災害公営住宅については、6年目となるのが平田アパート126世帯が4月から対象になる。
【斉藤委員】
県には、国の低減対策と同等の減免規定があり、各市町村も県に準じてやっている。ぜひそういう減免規定があるということを徹底してやっていただきたい。
問題は収入超過者で、収入超過者も災害公営住宅には入居できるとなっている。ところが3年経過すると退去勧告を受けている。入居できるのに退去勧告というのは直ちに是正すべきである。収入超過者に対しては、平田災害公営住宅の77400円を基準にして、それ以上上げないとしているが、それでも2倍3倍になる世帯が出てくる。国交省が認めている収入基準を25万円まで引き上げるとか、今回陸前高田市が「みなし特定公共住宅」ということで、収入基準は四十数万円まで引き上げて、そうした形で災害公営住宅に被災地にふさわしい家賃低減対策を講じるべきではないか。
【住宅課長】
収入超過者については、たしかに3年経過後に収入を算定し、家賃算定で収入超過となった場合は、収入超過者という形での通知がいく形になっている。こちらについては、県としては当面は、被災地において退去したとしても、民間の賃貸住宅が不足している等の事情があるので、この辺は猶予するという取り扱いにしている。この辺は十分に周知されなかったということもあったので、2月に収入超過者の通知がいった方については、改めて県の取り扱いを文書で通知させていただいている。
陸前高田市で設けた「みなし特定公共賃貸住宅」という制度は、こちらはたしかに48万7000円までの方は入居できるという形になっている。県では、現在収入超過の方を上限額という形で、最大77400円という形の家賃設定、減免制度を昨年4月から導入しているが、この制度の導入おいては、ご指摘の収入分位を引き上げるといったことも検討させていただいた。こちらについては、一般の公営住宅との均衡を図るということで、家賃の上限額を設けた制度としている。ただ、当面は明け渡しを求めないという形でもある。こちらは、収入分位50%―25万9000円まで引き上げたとしても、それを超過すると退去勧告が出る可能性もあるので、この辺については、現在の制度を運用しながら状況を見て判断していきたい。
【斉藤委員】
例えば、年老いた両親を看るために首都圏などから被災地に帰ってきて面倒をみるために災害公営住宅に入ったが、親が亡くなり退去を迫られるということがあった。これは改善される必要があるのではないか。県の対応はどうなっているか。
【住宅課長】
災害公営住宅の入居にかかる要件として、被災者であることが条件となる。入居されている被災者の方が世帯主という形で、亡くなった場合は、被災されていない親族の方については入居要件を満たさないという形でこれまで運用してきた。災害公営住宅については、元々住宅のあった方が被災されて入居されているということで考えている。被災者である親の面倒をみるという形で、支援するために入居されている方については、現状、民間賃貸住宅の整備が不足しているという状況も鑑み、何らかの対策をとらなければいけないということで、市町村に意見照会し、だいたいの市町村からは「それぞれ個別の状況に応じて判断してもいいのではないか」と回答をいただいている。
現在、宮城県・福島県に状況の照会をしており、この辺を取りまとめてなるべく早く対応を通知させていただきたい。
・国道340号・押角トンネルにかかる道路整備について
【斉藤委員】
押角トンネル前後の今後の道路整備の見通しはどうなっているか。
【道路建設課総括課長】
2020年度の開通を目指して整備を進めている押角峠工区の前後区間について。道路現況としては、一車線道路であり急カーブが多いことから、道路規格の連続性の確保や物資輸送、救急搬送などの面から、押角峠工区と同様の二車線の規格での整備が必要と考えている。
これまで前後区間については、ルートや構造、優先区間の検討を進めてきたが、まずは早期の事業効果が見込まれる押角峠工区が接続する宮古側の約2キロの区間について、2020年度の新規事業化に向けて、来年度は具体的な調査設計や公共事業評価の手続き等を進めていきたい。