2019年6月28日 6月定例県議会本会議
議案に対する質疑(大要)
【斉藤議員】
日本共産党の斉藤信でございます。議案第1号、議案第3号、議案第14号について質問します。
・「ふるさと納税」の受け入れ実績や推移について
議案第1号は、岩手県税条例の一部を改正する条例の専決処分に関し承認を求めるものです。その主な内容は、「ふるさと納税」の対象を総務大臣が指定する都道府県等に対する寄付金とするというものです。
岩手県における「ふるさと納税」の受け入れ実績とその推移について、復興局で受け入れている「いわて学びの希望基金」への寄付を含めて示してください。また、返礼品の費用、具体的な活用状況を示してください。
【総務部長】
ふるさといわて応援寄付の受け入れ実績と推移について。過去5年間において、平成26年度は7560万円余、復興局で受け入れた「いわての学び希望基金」への寄付を加えると8億454万円余、同様に、平成27年度は6337万円余、復興局受け入れ分を加えると8億8047万円余、平成28年度は5984万円余、復興局受け入れ分を加えると6億3701万円余、平成29年度は9521万円余、復興局受け入れ分を加えると5億6466万円余、平成20年度は6857万円余、復興局受け入れ分を加えると4億519万円余となっている。
ふるさと納税の返礼品の費用と具体的な活用状況について。県においては、平成29年度から1万円以上の寄付に対し返礼品を送付しており、返礼品の購入に要する費用は、平成29年度が202万7千円、30年度が159万2千円となっている。返礼品の送付に要する費用は、平成29年度が31万円、30年度は20万3千円となっている。具体的な活用状況については、いわての学び希望基金へ積み立てているほか、ラグビーワールドカップ2019の開催準備や東日本大震災津波伝承館の整備などの三陸沿岸振興、ILCの実現に向けた事業などに活用している。
・ILC推進局の設置について
【斉藤議員】
議案第3号は、岩手県部局等設置条例の一部を改正する条例案であります。これは、現状の政策地域部ILC推進室を部局と同格のILC推進局として設置しようとするものです。その理由は、国際リニアコライダーの建設実現に向け、今後、さらに増加する、文部科学省をはじめとする関係省庁や、大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(KEK)など関係機関との調整を適切かつ機動的に推進していくため、専担の局を設置し、県として推進体制を整備しようとするものです。
第一に、ILCの誘致をめぐる動向について質問します。昨年12月19日、日本学術会議は、文部科学省研究振興局長からの審議依頼を受けて、「国際リニアコライダー計画の見直し案に関する所見」という回答を提出しました。その結論は、「現状で提示されている計画内容や準備状況から判断して、250GeVILC計画を日本に誘致することを日本学術会議として支持するには至らない。政府における、ILCの日本誘致の意思表明に関する判断は、慎重になされるべきである」というものでした。日本学術会議のこの回答を県としてはどう受け止めているか。また、日本学術会議が提起した具体的課題は何か示されたい。
第二に、文部科学省は、日本学術会議の回答で、「大型計画について学術会議としてさらに検討するとすれば、マスタープランの枠組みで行うのが適切」とされたことを踏まえ、国内の科学コミュニティの理解・支持を得られるかどうかも含め、正式な学術プロセス(日本学術会議が策定するマスタープラン等)で協議することが必要とし、KEKは、3月末にマスタープラン2020にILCの計画案を提出したとのことです。日本学術会議のマスタープラン2020の審議スケジュールはどうなっているのか。どのように審議されるのか、前回2017年のマスタープランの審議結果はどうだったか、申請数、重点計画となったものはどうかを示してください。
日本学術会議のマスタープラン2020の審議で、重点計画に位置付けられるのかどうか、それが当面の焦点となると思いますが、県としては何かできることがあるのかどうか。見通しを含めてどう受け止めているか示してください。
第三に、3月7日の文科省の見解は、「ILC計画に関心をもって国際的な意見交換を継続します」というものです。「関心を持つ」程度で、国際的な費用分担を含めた協議ができるのか。国際的な協議の状況と見通しを示してください。現段階でのILC計画の事業費、計画期間を含めて示してください。
第四に、ILC推進局の設置で、実際の体制はどう強化されるのか。専任の実人員はどう増員されるのか。具体的に強化される取り組みは何か示してください。
【総務部長】
ILC推進局の具体的な体制については、現在調整中だが、専任の局長の下、企画総務課と事業推進課の2課体制とし、関係部局の兼務職員を含め50人程度の体制とする方向で検討している。このうち、専任職員については、現地機能の強化の観点から、県南広域振興局に駐在する総括課長級のILC推進監を新設するほか、関係省庁等との連絡調整を担う職員などを増員する方向で検討している。こうした体制の強化により、国内外の研究者による議論や政府レベルの協議が円滑に進められるよう、適時適切な情報提供を行っていくとともに、国民的な理解の増進や研究者の受け入れ環境の整備など、具体的な準備を全庁あげて進めていく。
【政策地域部長】
ILC誘致をめぐる動向については、昨年12月の日本学術会議の所見だが、「ILCの学術的意義がきわめて重要である。そのことについて、世界のコンセンサスが得られていること」「世界トップクラスの高度の研究人材が育成され、世界に排出されていく拠点として発展する意義が大きいこと」「国際共同研究に日本が貢献する必要性が高いこと」「今後の素粒子物理学の進む方向性に示唆を与える可能性があること」などを評価している点が重要と受け止めている。一方で同所見では、「学術界全体の理解や支持が必要なこと」「国民的な理解や支援が広がり、建設経費やその国際分担、人材確保」などが課題として挙げられた。
日本学術会議のマスタープランの審議については、まずそのスケジュールだが、今年3月末に研究計画の申請が締め切られ、その中から大型研究計画が本年7月に、さらに特に重要な計画として、重点大型研究計画が10月ごろに選定され、最終的にマスタープラン2020は、令和2年2月に策定され公表される予定と聞いている。審査については、日本学術会議内に置かれている専門の分科会―研究計画研究資金検討分科会というが、この分科会等で評価・審議されるものであり、審査にあたっては、学術的意義を最重要の観点とし、科学者コミュニティの合意や計画の妥当性、社会的価値などが評価の観点となるものである。前回のマスタープラン2017においては、実施中および進行中の計画を除き、全体で166件の応募があった。計画の妥当性や社会的価値などの観点から、そのうち163件が大型研究計画に選定され、さらに計画の成熟度や国家として戦略性・緊急性などの観点から、その大型研究計画のうち28件が重点大型研究計画に選定されているという実績がある。
マスタープランの重点大型研究計画への位置づけ等については、マスタープランは、学術的意義を最重要の観点としており、基本的には、学術会議の審査の過程で指摘等があった場合には、その申請者である研究機関において必要な回答や対応を行うこととなっているが、さらに重点大型研究計画の審査の段階では、計画の成熟度も評価の対象となる。このため、県においては、KEKなどの関係団体と一体となり、ILCの国民的理解の増進活動を行うとともに、建設候補地として行っている地質調査等の基礎調査資料などを要請に応じて即時に提供していく考えである。このような今回のマスタープラン2020策定のプロセスを通じて、ILCに対する他分野の研究者コミュニティのコンセンサスが得られ、学術的にもILCの意義が再認識されるものと考えている。
国際的な協議の状況と見通しについて。3月7日の政府による「関心表明」は初めてのことであり、その意義は非常に大きいと認識している。加えて、今月21日に閣議決定された政府の骨太方針2019では、「世界の学術フロンティア等を先導する国際的なものを含む大型研究施設の戦略的促進」との文言が初めて盛り込まれた。国際的な協議については、本年5月17日に、欧州・北米・アジアで構成される研究者の国際ワーキンググループが設立され、費用の国際分担だとかILC研究所の組織のあり方について議論を開始した。本年9月末までに検討結果が取りまとめられる予定と聞いている。また、日米欧のILCに関する、いわゆる三極におけるディスカッショングループが設置され、国際ワーキンググループの結果も踏まえ、政府レベルで議論する段階となっている。これらは、マスタープラン2020や欧州の素粒子物理戦略に反映されていくものと考えている。
事業費・計画期間については、日本学術会議に提出された資料によると、本体および測定機の建設経費は約8000億円と見積もられている。計画期間は、各国政府合意後の準備期間に4年、建設期間9年、当初のプロジェクトにかかる運転期間は20年間と予定されている。
・県営災害公営住宅(南青山アパート)について
【斉藤議員】
議案第14号は、県営住宅等条例の一部を改正する条例です。盛岡市に建設される県営災害公営住宅、県営南青山アパートを設置するものです。県営災害公営住宅では最後の整備となると思いますが、整備が遅れた理由、入居予定者の状況、県営アパート内に整備される被災者支援センターの内容、どこが運営するのか、その機能と役割はどうなっているかを示してください。
災害公営住宅のコミュニティの確立が重要な課題となっていますが、一人暮らし高齢者の入居状況、高齢者の比率、コミュニティ確立への支援と入居者名簿提供の取り組みはどう取り組まれているでしょうか。
【県土整備部長】
県営南青山アパートの完成時期については、昨年11月6日に公表した社会資本の復旧・復興ロードマップにおいて1年延伸したところだが、その理由は、昨年5月および7月に行った地元への計画説明会で、住民の方から出された意見をもとに、9月に盛岡市から、入居予定者や周辺住民の生活利便性の向上、整備にともなう周辺道路の渋滞緩和、入居後の円滑なコミュニティ形成についての要望が県に出されたことを受け、これに対応するため計画の見直しを行ったことによるものである。
入居予定者は、現在99戸の入居を予定している。
県営アパート内に整備する被災者支援センターの内容については、運営者は、被災者支援やコミュニティ形成に知見を有した団体等を想定しており、機能については、入居後のアパート内のコミュニティや地元町内会等とのコミュニティ形成の支援、入居者の見守りや相談対応等を考えている。運営や管理の役割分担については、今後盛岡市とも相談しながら検討していく。
県営災害公営住宅における一人暮らし高齢者の入居状況については、平成31年3月末現在で入居している1316世帯のうち、65歳以上の一人暮らし高齢者世帯は419世帯・約32%となっている。65歳以上の高齢者を含む世帯は744世帯・約57%となっている。コミュニティ確立への支援については、今年度も災害公営住宅コミュニティ形成支援事業により2名のコミュニティ形成支援員を配置し、入居者からの相談に応じた市町村や支援団体等との連絡調整、入居者交流会開催の支援、自治会設立の支援などのコミュニティ形成に向けたきめ細かな対応をしていただいている。
入居者名簿の作成支援の取り組みについては、災害公営住宅におけるコミュニティ形成が、災害等の緊急時における避難や日常生活におけるきめ細かな支援等において重要な役割を担うものであるという考え方から、入居世帯の氏名・生年月日・災害時の支援の必要の有無などの個人情報の提供の可否について、あらかじめ全戸に対して意向確認を行っているところであり、これにより自治会から要請があった場合には、すみやかに入居者情報として提供できるように対応している。
<再質問>
・ILC推進局の体制とILCの動向について
【斉藤議員】
兼務で50人規模ということだが、実人員でどのぐらい増えるか聞いたので。今の答弁だと、県南広域振興局に1人、東京に1人で、実人員は2人しか増えないと受け止めたが、専任でどのぐらい増えるのか。
ILCの動向だが、日本学術会議の提言というのは大変重いものがあると思う。例えば総合所見のところで、「想定される科学的成果が、それを達成するために要するとされる巨額の経費の主要部分を日本が負担することに十分見合うものであるとの認識には達しなかった」と。そして「ILCの技術的成立性に関しては、克服すべき諸課題が残されており、それを準備期間において解決するとされているものの、本計画の実施には依然として懸念材料があると言わざるを得ない。30年という長期にわたる本計画の実施に要する巨額の資金投下に関する適正な国際経費分担の見通しが明らかでない点も懸念材料である」と。こうして結論が「支持するに至らない」「判断は慎重になされるべきだ」となった。個別の課題も指摘されていたが、正確に答弁がなかった。
そこで、マスタープラン2020で審議するとなっているが、このマスタープラン2020の内容は、2月に公表されるまで全く分からないと。マスタープラン2017においてはどうだったのか、166件の新規申請があった。その他に2014年に重点計画に認定されたのが16件、計182件のうち28件が重点大型研究施設計画に位置づけられたが、このうち18件は、前回重点計画に決められたものである。新規は10件である。そして、ここで言う大型研究施設計画というのは、せいぜい数十億円規模。だから今までILC計画というのはマスタープランの枠外で検討してきた。とても一緒に検討できるような代物ではないと。そして日本学術会議の提言が出て、またマスタープランに戻された。実は2017年のときにもILC計画が出されている。これは戻されてどれだけの変化があるかというと、そんな簡単なものではないのではないかと。そこで、重点計画に位置づけられたということであれば、もちろんこれだけで予算が付くわけではない。そこでお聞きしたいのは、マスタープラン2017で、30の重点計画が決められたが、これはどのように予算化され事業化されたのか県は把握しているか。私は、ILC計画が本物になるためには、少なくとも重点計画に位置づけられなかったらいけないのではないか。そこをしっかり見定めて対応することが必要ではないか。
【総務部長】
推進局の具体的な職員規模については現在調整中だが、現地機能の強化や関係機関との調整など、喫緊に体制強化が必要なところに職員を配置するほか、ILC推進局自体についても、数名の増員を考えており、KEKをはじめとした関係機関との連携をさらに密にし、機動的かつ適切に対応できる体制を強化するため、先端部局の設置を現在検討している。
【政策地域部長】
昨年12月の課題については、先ほど答弁で簡潔に3点ほどお話したが、これについては議員からもご紹介があったが、今後の過程の中で具体的に言うと、このマスタープランの策定に向けた審査の過程、あるいは研究者による国際ワーキンググループ、さらに政府レベルではアメリカに続きフランスやドイツでも政府間のディスカッショングループが形成されたということであるので、こういうステップの中で、課題についてもしっかり議論され、解決に向けて取り組みが進んでいくものと考えている。
マスタープラン2020が2月に公表されるまで状況が分からないということだが、たしかにこれまでの経緯等を見ていると、基本的には非公表ということだが、審査の過程においていくつかポイントが示されており、例えば計画の学術的意義だとか科学者コミュニティの合意、計画の妥当性等があるが、特に重点計画に乗っていくための成熟度という視点もある。これは準備状況も含まれるので、例えば県においてさまざまできること、国民的な理解を得る取り組みだとか、そういったことをしっかり進めることにより、来年2月のマスタープラン2020の作成に向けて取り組みをしっかり進めていきたい。
2017年の状況については、そこから国がどれだけ予算化したかということだと思うが、いま手持ちの資料がないが、事実としては166件の応募のうち28件が重点大型研究計画に選定されたという事実はある。2020年はどういう形になるかということについては情報がないところだが、いずれ県としてはやれることをしっかりやっていきたい。
・ILCの展望について
【斉藤議員】
2017年のものはよく検証して、重点計画に乗るということが大前提で、そこをしっかり見定めていく必要があるのではないか。
ただ、ノーベル賞受賞者が共通して言っているように、いま安倍政権の下で、基礎研究がまったく軽視されていて研究者が育たない、1000兆円を超える赤字があると。こういう状況が打開されなかったら、学術界の合意は難しいのではないか。安倍政権の政治姿勢がILC誘致への最大の障害になっているのではないか。
やはりリアリズムで、重点計画を踏まえた対応をすべきではないか。
【政策地域部長】
2020年2月のマスタープラン策定に向けて、研究者間の動き、アメリカ・フランス・ドイツも含めた他国との状況等をしっかり把握していきたい。
やはり重要なことは、マスタープラン2020に向けた審査の過程で、学術的意義等を含めた個々のポイントが示されているので、ポイントが審査される中で、県としてもしっかり準備し、対応できる件についてはしっかり取り組んで、最終決定に向けて取り組みを万全にしていきたい。