2019年10月21日 9月定例県議会本会議
一般質問(大要)


【斉藤議員】
 日本共産党の斉藤信でございます。台風19号の豪雨で犠牲となられた方々にお悔やみを申し上げます。被災された皆さんにお見舞いを申し上げます。
 知事選・県議選後初めての県議会ですので、公約実現、知事と締結した14項目にわたる政策協定実現の立場で質問いたします。

1.台風19号災害の復旧について

(1)被害の状況及び住宅再建への支援策について

 まず最初に、台風19号災害の被害の状況と復旧、被災者の生活再建への支援について質問します。
 被害の状況はどうなっているでしょうか。特に住宅被害の状況をどう把握されているでしょうか。全壊、半壊、一部損壊等の住宅被害の状況、そして住宅被害に対して被災者生活再建支援金の対象となるのでしょうか。
 住宅再建は生活再建の土台です。東日本大震災津波被害への対応を参考に、国に対して、また県独自に、市町村と協力して住宅再建への具体的な支援策を講じるべきと考えますがいかがでしょうか。

【達増知事】
 被害状況については、道路・水道・電気などのライフラインをはじめとして、東日本大震災津波からの復興に取り組んでいる被災地を中心に、生活基盤や産業経済に再び甚大な被害をもたらしたことが明らかになってきております。
 住宅の被害については、10月21日現在で、全壊18棟・半壊311棟・一部損壊666棟、床上浸水373棟・床下浸水742棟などとなっています。被災者生活再建支援制度については、都道府県単位で適用となる場合の要件が100世帯以上の住宅全壊被害の発生とされており、今後の調査により適用となる可能性もあると考えています。
 住宅再建への支援としては、被災者生活再建支援制度が適用された場合、全壊および大規模半壊の住家被害を受けた世帯に対し支援金が支給されますが、東日本大震災津波においては、国から特別に措置された財源を活用し、県独自の上乗せ支援を行ったところであります。また平成28年台風10号災害に際しては、同制度では支給対象とならない半壊および床上浸水世帯にたいし、県の一般財源で県単独事業を創設し、支援を行ったところであります。
 県としては、被災者一人一人に丁寧に寄り添いながら、一日も早く安心して暮らせる環境を取り戻すことが重要と考えており、引き続き被災者生活再建支援金の増額や、支援対象の半壊世帯等への拡大などの制度の充実を国に要望していくほか、平成28年台風10号災害と同様の県単独事業の実施を検討してまいります。

【斉藤議員】
 昨日県議団で、宮古市・山田町・三陸鉄道を訪問して調査してきました。
 宮古市は、全壊21棟・大規模半壊12棟。山田町は、全壊13棟・大規模半壊16棟と、県の把握より多いので、しっかり把握してやっていただきたい。
 特に山田町の場合は、田の浜地区で、津波で被災して6年前に新築した住宅が全壊・大規模半壊の被害を受けております。町長さんは「心が折れて、震災関連死が心配だ」という話もしておりました。
 宮古市・山田町からの要望をお伝えします。「大震災並みの地元負担なしの対策をぜひとってほしい」と。住宅再建については、津波災害に続く住宅被害もあるので、特段の対策をとっていただきたい。
 災害ごみ、住宅の解体・撤去についても震災並の対策をという要望をいただいたので、知事は政府要望に行くようですので、一言答弁をいただきたい。

【達増知事】
 ご指摘の通り、東日本大震災津波からの復興の途上での今回の台風19号災害でありますし、重ねて被害を受けた方々も多くいらっしゃるということで、やはりここは、東日本大震災津波の際と同様の支援を国に求めてまいりたいと思います。

(2)三陸鉄道への復旧支援について

【斉藤議員】
 三陸鉄道は、昨日の県議団の調査では、線路被害77ヶ所、電力信号通信被害15ヶ所で、釜石〜宮古間、田老〜久慈間の全面復旧に数ヶ月はかかる見込みと報告をいただきました。
 東日本大震災津波からの復興の時も、三陸鉄道の復旧・復興は被災者を励まし、復興のシンボルともいわれました。現段階での復旧の見通しと復旧に対する国、県の支援はどうなっているでしょうか。東日本大震災津波からの復興の途上での大災害であり、東日本大震災並みの国の支援を強く求めるべきと考えますがどう取り組んでいくのでしょうか。

【達増知事】
 三陸鉄道は、被災箇所が相当数にのぼり、また路盤が流出するなど大規模な被災箇所の多い中、早期の運行再開が可能な箇所については復旧作業を行うとともに、被害の大きい区間については、復旧工事に向けた調査を進めています。
 議員ご指摘の通り、三陸鉄道は東日本大震災津波による壊滅的な被害に対し、国による特例的な支援を受けて、南北リアス線の全線復旧を果たし、その後、JR東日本から山田線の宮古〜釜石間の移管を受け、本年3月、全国最長の第三セクター鉄道―三陸鉄道リアス線として開業したところであり、まさに復興のシンボルとして三陸沿岸の復興をけん引する大切な役割を担っています。したがって県としては国に対し、いまだ本県が東日本大震災津波からの復興途上にあることを踏まえ、震災時の復旧スキームと同程度の支援となるよう、国庫補助率の最大限の引き上げや地方財政措置の拡充などを要望していくとともに、今回の台風19号の甚大な被害からの一日も早い復旧に向け、県としても三陸鉄道に対し最大限の支援を行ってまいります。
 三陸鉄道は、地域の住民生活の足として、また、国内外からの観光客に移動手段や魅力的な乗車体験を提供する地域振興の基盤として必要不可欠な交通インフラであり観光資源であることから、県としては、市町村・関係団体・全国の三鉄ファンなどと一体となって一日も早い全面復旧に向けて全力で取り組んでまいります。

【斉藤議員】
 三陸鉄道は、現状復旧ではなく改良復旧をやっていただきたい。実は、宮古〜釜石間は災害に弱いといわれてきた。戦前整備をされたままの現状復旧にとどまっていると。ですから、本当に今回のような300ミリ400ミリの雨が降っても、路盤がしっかり守られる対策をぜひとってほしいということでした。

(3)今後の治水対策について

【斉藤議員】
 台風19号被害の特徴は、広範囲で大きな被害となったことです。19日現在、71河川、130ヶ所で堤防が決壊したことが被害を大きくした特徴でありました。
 決壊しにくい堤防の抜本的な強化など、治水対策の転換が求められていると考えますが、今回の災害をどう受け止め対応しようとしているでしょうか。

【達増知事】
 今般の台風19号では、大雨特別警報が1都12県に発表されるなど、これまでに経験したことのないような豪雨により、関東・甲信越や東北地方の広い範囲で堤防が決壊し、多数の家屋が浸水するなど、甚大な洪水被害がもたらされました。こうした堤防決壊による被害の状況を受けて国では、長野県の千曲川、宮城県の吉田川、宮城県と福島県にまたがる阿武隈川など7河川において、調査委員会を10月18日までに立ち上げたと承知しています。この調査委員会においては、河川工学などの有識者により、堤防決壊の原因究明と復旧工法等の検討がなされることとされており、この検討の状況を注視してまいりたいと思います。
 このような激甚化・頻発化している豪雨災害を踏まえ県としては、河川改修などの建設、河道掘削や立木の伐採などの洪水対策を着実に進めていくとともに、施設の能力を超える洪水は発生するという認識のもと、住民の円滑かつ迅速な避難を促すため、水位周知河川や洪水浸水想定区域の指定拡大などのソフト施策を合わせ、県土の強靱化に向けた取り組みを進めてまいります。


2.知事選挙の結果について

【斉藤議員】
 岩手県知事選挙は、達増知事が40万2803票を獲得し、得票率72.15%、33のすべての市町村で圧勝する画期的な勝利となりました。
 私は、県政最大の課題である東日本大震災津波からの復興で、被災者の医療費・介護保険利用料の免除を9年連続で実施するなど、被災者の立場に立った復興の取り組みが県民に評価されたこと。この4年間で2度にわたり子どもの医療費助成を拡充し8月からは小学校までの窓口無料化を実施するなど、県民のくらしと福祉の充実の取り組みも評価された結果だと評価しています。
 また、官邸総ぐるみのたたかいとなった参院選と連動し、市民と野党の共闘で知事選挙をたたかったことも無党派層を含め多くの県民の支持を広げ、知事選圧勝の大きな要因となったと考えますが、達増知事はどう受け止めているでしょうか。今後の抱負を含めて示してください。

【達増知事】
 わたくしは、東日本大震災津波からの復興では、既存の国の制度にとらわれず、被災者本位の復興を推進しなければならないと考え、被災者の幸福追求権の保障を基本原則として全力で取り組み、その姿勢を県政全体にも広げながら、いわて県民計画2019−2028の策定にあたっても同じ姿勢を貫いたと考えております。
 今回の知事選挙によって、今までの復興の取り組みに評価をいただき、いわて県民計画にも賛同いただいたということは大変嬉しく受け止めております。政党との関係につきましても、ご推薦いただいた4政党に加え、いわゆる市民・無党派層とも力を合わせて選挙運動を展開することができ、県民的な大きな支持をいただくことができました。
 選挙中も何度も繰り返した東日本大震災津波の経験に基づき、引き続き復興に取り組みながら、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわての実現を目指して、いわて県民計画の遂行に取り組みながら、選挙で示された民意を尊重し、県民本位の県政を力強く進めてまいりたいと思います。


3.東日本大震災津波からの復興の課題について

(1)被災者の医療費・介護保険利用料等の免除について

【斉藤議員】
 次に、東日本大震災津波からの復興の課題について質問します。大震災から8年7ヶ月余が経過しました。知事が所信表明演述で、「被災者の医療費・介護保険利用料等の免除を来年も実施する」と言明したことは、被災者の切実な要望に応える知事の公約実現の第一歩として高く評価するものです。昨年度の実績と被災者の反応を含めて実施する意義について示してください。
 10年目となる来年も実施することは重要ですが、被災者の切実な実態と要求は10年で解消されるものではありません。この取り組みをその後にどのように継続し、活かしていくのかも検討していく必要があると考えますが、知事の所見をお伺いします。

【達増知事】
 平成31年3月末における免除対象者は、約33000人で、免除額は、国民健康保険・後期高齢者医療制度・介護保険および障がい福祉サービス合わせて年間約35億4千万円となっております。東日本大震災津波の被災地等においては、いまだに多くの被災者の方々が応急仮設住宅等で不自由な生活を余儀なくされている状況にあり、被災者の方々からは「免除延長で大変助かっている」「免除がなくなると医療費を減らしていくしかない」などの声があるものと承知しております。
 被災者の医療等の一部負担金の免除については、被災者の健康面・経済面での不安を軽減し、医療や介護サービス等を受ける機会を確保するという意義があるものと考えておりまして、こうした考えのもと、被災地や被災者状況を考慮するとともに、市町村の意向を踏まえて来年も継続することとしたところであります。
 その後については、これまで財政支援を継続するにあたっては、被災地の生活環境や被災者の受療状況等を総合的に勘案しつつ、市町村の意向を踏まえ毎年度財政支援の継続を判断してきたところであります。今後については、被災者を取り巻く環境が変化していく中、健康面で不安を抱える被災者の医療や介護サービス等を受ける機会を確保するという本制度の意義を十分に踏まえつつ、引き続き被災者が必要とする医療等を受けられる支援のあり方について、市町村と意見交換を行いながら検討をしていく必要があると考えております。

【斉藤議員】
 岩泉町は、3年前の台風10号災害が東日本大震災津波よりも大きな被害となりました。被災者に対して大震災の被災者と同様に町独自に医療費の免除を実施しています。県の支援が必要と考えますがいかがでしょうか。

【保健福祉部長】
 岩泉町が行っている免除措置に要する経費については、国民健康保険等の制度において、減免した額の8割が国の特別調整交付金で交付されているほか、県においても関係部局が連携し医療費免除等の町負担分を含む復旧・復興事業にかかる多額の一般財源負担に対し、県単独の交付金による包括的な財政支援を行ってきたところであります。
 今後も、岩泉町の復旧・復興事業の進捗や課題等を把握しつつ、町の財政状況等を踏まえたうえで必要な支援を検討してまいります。

【斉藤議員】
 県単独交付金は今も実施されているんでしょうか。

【政策地域部長】
 平成28年度・29年度と交付してきたところでありますが、30年度については町とも調整したところ、財源については特別交付税等の措置があったということで、交付の必要なしということで調整したが、いずれにしても、引き続き町の状況や要望をしっかりうかがって対応してまいりたいと考えております。

(2)災害公営住宅のコミュニティ確立への支援について

【斉藤議員】
 被災者の状況は、9月末現在、応急仮設住宅に430戸914人、みなし仮設住宅に153戸383人、合計583戸1297人となっています。災害公営住宅には、4998戸8841人が入居しています。県営の災害公営住宅の場合、65歳以上の高齢者の一人暮らし世帯が31.4%、高齢者のいる世帯は55.3%となっています。高齢者が多く、孤立化・孤独化が進行しているのが大きな課題です。
 高齢者の見守りとコミュニティの確立は緊急で切実な課題となっていますが、どう取り組まれているでしょうか。
 災害公営住宅での孤独死の状況、自治会の設立状況、入居者名簿の整備と提供、集会所の活用状況を含め示してください。

【県土整備部長】
 災害公営住宅での一人暮らしでお亡くなりになられた後に発見された、いわゆる孤独死については、令和元年9月末現在で45人がございました。
 自治会の設立状況については、令和元年8月末現在で、県管理の災害公営住宅28団地中18団地が設立済であります。自治会の入居者名簿については、令和元年8月末現在で5つの自治会で整備しているところであります。
 県から自治会へ提供する入居者情報については、自治会からの要請があった場合に、速やかに提供できるよう対応しているところであります。
 集会所の活用状況については、28団地すべてで活用があり、1ヶ月あたりの使用回数で見ると、少ないところでは月2回程度、多いところでは月20回を超えているところもあったところでございます。
 このような状況に鑑みまして、高齢者の見守りとコミュニティの確立が非常に重要な課題であり、災害公営住宅において、高齢者が孤立を深めることがないよう、コミュニティ形成支援事業などにより、コミュニティ形成に関する相談、団地内の花壇の手入れなどの美化活動や入居者交流イベントなどの開催、「共助」の場面を設定した防災訓練といったものを実施しており、引き続き入居者が相互に支え合う取り組みを進めてまいります。

【斉藤議員】
 災害公営住宅での孤独死は昨年度18人と3倍に急増しました。そして今年9月までに今年度も11人がなくなっている。孤独死が急増していると。この事態は本当に深刻に受け止めて対応することが必要だと思います。
 そこで、災害公営住宅のコミュニティの核になるのは自治会です。そしてその場所は集会所です。私は、自治会に対して名簿を提供するよう一貫して求めてきました。名簿を提供するということになったけれども、その取り組みが遅々として進まない。自治会の会長さんから「要求しても出してくれなかった」という声を聞いているから取り上げているのです。しっかりやってください。
 集会所の活用ですが、部長さんの答弁は正確ではない。28団地のうち、10回以上やっているところは2箇所しかないのです。あとは全部2〜4回とか5〜6回、週1回程度なんです。いわば、コミュニティの拠点としての役割を果たしていないのが今の災害公営住宅の実態です。孤立化・孤独化する一方で、行き場がないのです。この集会所が活用されて、さまざまな交流が行われるように、県土整備部だけではない行政の具体的な支援が必要だと思いますがいかがでしょうか。

【県土整備部長】
 自治会への支援につきましては、災害公営住宅コミュニティ形成支援事業により2名のコミュニティ形成支援員を配置し、入居者からの相談に応じた市町村や支援団体等との連絡調整、入居者交流会の開催支援とか、自治会設立の支援などコミュニティ形成に向けたきめ細かな対応をしていただいていると承知しております。
 入居者名簿の提供の取り扱いについては、入居者世帯の氏名や生年月日、災害時の支援の必要性の有無などの個人情報の提供の可否について、あらかじめ全戸に対して意向確認を行っております。これにより、議員ご案内のある通り、自治会からの要請があった場合には速やかに情報として提供できるように対応してまいります。入居者情報の提供にあたっては、個人情報保護というルールもございますことから、このルール作成にかかるマニュアルを各自治会長様宛に提供しており、引き続きコミュニティ形成支援員等を活用して、こういった取り扱いルールの作成についても進むように取り組んでまいりたいと思います。
 集会所の活用につきましては、集会所が自治会活動の拠点となるような施設でもあるので、これもコミュニティ形成支援員により入居者の交流会開催を支援するなど、より活発な活用が図られるように取り組んでまいりたいと考えております。

【斉藤議員】
 これまでの取り組みがあって、災害公営住宅の自治会は10の団地でまだつくられていない。そして、集会所が週に1回か2回程度しか使われていない。だからどうするんですかと聞いているんです。今までの不十分な取り組みをここで説明しても解決にならないんです。本当にいま8800余が災害公営住宅に入居して、そしてその3割が一人暮らし高齢者です。行き場がないのです。一人一人が孤立しているのです。そこをどうやってつなげて、新しいコミュニティをつくるか、そこに思い切った支援が必要だと。
 知事一言、これまでの延長線上ではダメです。思い切ってここで対策をとらないと阪神淡路大震災の二の舞になると思います。

【達増知事】
 病気で亡くなるリスクのある高齢者が、いわば一人で放っておかれる状態ということはあってはならないことでありますので、また見守り等のケアを、個人の善意だとか、NPO団体とかの自主的な動きだけに頼るのではやはり不確かであり、自治会の活動等の制度的な対応がやはり求められていると考えます。
 自治会設立や名簿の作成などについて、県の方で対応しているという話がありましたが、やはりさらに力を入れて実質的に孤独死が起きないようなコミュニティづくりということを進めていきたいと思います。

【斉藤議員】
 ぜひ従来の延長線上ではない思い切った対策、やはり津波で助かった命を再び犠牲にしてはならないという立場でやっていただきたい。

(3)漁業と水産加工業の現状とその打開策について

【斉藤議員】
 沿岸被災地での生業の再生を図ることは地域経済と雇用の確保、地域社会の持続的発展の要をなす問題です。
 沿岸の基幹産業である漁業と水産加工業が、サケ・サンマ・スルメイカなど主要魚種の大不漁とワカメ・ホタテなど養殖生産量の減少で危機的状況に直面しています。現状とその打開策について示してください。

【農林水産部長】
 昨年の漁期における主要な水産物の水揚量ですが、震災前と比較して、サケが約4割、サンマが約5割、スルメイカが約2割、ワカメが約6割、ホタテが約3割と、いずれも下回っており、水産加工業者の多くは原料確保が課題となっております。
 このため県では、計画的な種卵確保などによるサケの資源回復を進めているほか、国の資源管理制度と連動しながら、サンマやスルメイカの資源回復にも取り組んでおります。さらに養殖生産では、漁協と連携し、ワカメやホタテの生産性向上や養殖棚の増設などを進めているほか、新たにサケ・マス類の海面養殖試験を開始しております。こうした取り組みに加え、11月からは、マイワシの小型漁船による捕獲を認めるほか、サバやイワシを捕獲する巻き網漁船の誘致も支援しており、引き続き加工原料の安定確保にも取り組んでまいります。

【斉藤議員】
 大船渡市の水産加工会社と商工会議所に行ってきましたが、サンマの危機的な不漁と言ってました。5年ぐらい戻らないという認識で対応しなければならないと。復興途上での大不漁なので、ぜひせっかく再建した水産加工業者が何とか経営を持ちこたえて、地域経済の核として前進できるように、この点でもあらゆる手立てを尽くしていただきたい。


4.子どもの医療費助成の現物給付化の拡充について

【斉藤議員】
 次に、子どもの医療費の現物給付化、窓口無料化を中学生まで拡充する課題について質問します。これも知事演述で言明された課題です。
 本会議の答弁で知事は、「来年8月の実施をめざして市町村と協議を進めている」と答えました。市町村も大歓迎する課題だと思いますが、市町村との協議の状況を含めて実現の見通しを示してください。また、小学校までの窓口無料化実施の成果をどう把握されているでしょうか。

【達増知事】
 中学生までの対象拡大については、すでに具体的な協議に向けて市町村の意向確認調査を行っており、これまでのところ拡大に反対する意見は寄せられておりません。拡大時期については市町村によりさまざまな意見がありますが、小学生までの拡大の経緯を踏まえると、最短で来年度の受給者証の更新時期である令和2年8月と想定されますことから、当面これを念頭に協議を進めていまいりたいと思います。
 小学生への対象拡大については、本年8月の実施以降、受給者や医療機関等関係者からの照会等はなく、円滑な移行が行われたものと認識しており、子育て家庭への経済的負担の軽減が図られ、子どもの適正な医療の確保につながっているものと考えております。

【斉藤議員】
 ぜひ来年の8月の実施をめざして進めていただきたい。本当に若いお母さん方が、お金の心配をしないで病院にかかれると大変な歓迎の声が私のところにも寄せられております。


5.高すぎる国保税の引き下げ・子どもの均等割りの減免について

(1)国保税と協会けんぽの保険料との格差について

【斉藤議員】
 高すぎる国保税の引き下げの課題について質問します。国民健康保険制度は、昨年度から県が国保財政に責任を持ち、市町村と共同で運営する制度となりました。最大の問題は、国保税が高すぎることです。中小企業の労働者が加入する協会けんぽと比べると、年収400万円で子ども2人、片働きの世帯主が40歳未満の4人家族の場合、協会けんぽの保険料は20万円、盛岡市の国保税は40万円です。この格差をどう受け止めているでしょうか。全国知事会は、高すぎる国保税の打開へ政府に対してどのような提言を行っているでしょうか。

【達増知事】
 国民健康保険は、構造的に被保険者の年齢構成が高く、医療費水準が高いことに加え、年金生活者や無所得世帯の割合が高く、所得水準が低いことが保険税負担が被用者保険よりも重くなっている原因であると認識しております。今般の国保制度改革においては、国の財政支援の拡充により財政基盤の強化が図られ、保険税負担の伸びの抑制が図られているものの、必ずしもこうした構造的な課題の解決に結びついていないものと考えております。
 全国知事会においては、医療保険制度間の公平と子育て支援の観点から、子どもにかかる均等割保険料軽減措置の導入について、国の責任と負担により速やかに実現を図るとともに、今後の医療費の増嵩に耐えうる財政基盤の確立を図るため、国庫負担率の引き上げ等さまざまな財政支援の方策を講じるよう、継続して提案・要望を行っているところであります。

【斉藤議員】
 実は全国知事会がかなり踏み込んで大胆な提言をしています。1つは「協会けんぽ並に引き下げる」、もう1つは「医療保険間の負担の公平を図る」と。
 それで、「公費1兆円の投入による国保税の大幅な引き下げ」を全国知事会は国に求めております。合わせて、知事の答弁にもありましたが、今年の国に対する提案では、「医療保険制度の公平と子育て支援の観点から、子どもにかかる均等割の保険料軽減措置の導入について、国の責任の負担による見直しの結論を出すように」と。国保がなぜ高いかという一番の問題は、「均等割」といって世帯一人一人に課税される。盛岡だったら、一人当たり28000円、二人なら56000円になってしまう。子どもが多ければ多いほど国保税が高くなるという異常なシステム、昔の人頭割です。全国知事会も「これは国の責任で軽減すべきだ」と。
 実は、宮古市が今年4月から18歳以下の子どもの均等割は全額免除すると。これは全国から注目されている取り組みです。基本的には国の責任でやるべきだけれども、岩手県内でこういう素晴らしい先駆的な取り組みが生まれたと。これを県内市町村に広げるべきだと思いますがいかがでしょうか。

【達増知事】
 全国知事会において、国に対して国庫負担率の引き上げなどさまざまな財政措置の方策を講じ、構造的な課題を解決し、医療保険制度間の公平性を確保し、今後の医療費の増高に耐えうる財政基盤の安定化を図るよう要望してきているところですが、これについては、県としても政府予算提言要望において同様に要望してきていますが、今後も他の都道府県と連携しながら、財政措置の拡充について国に働きかけてまいりたいと思います。
 子どもの均等割の減免については、全国知事会から子どもにかかる均等割保険料軽減措置を導入するよう国に要望を行っております。宮古市では、子育て支援施策の一環として、子どもの国保税均等割の免除を実施しているところであり、これにともなう国保税収入の減少については、一般会計からの繰り出しにより対応しているものと承知しております。
 本来、子どもの均等割軽減措置等は、個別の市町村が財源負担を行いながら導入するものではなく、また各自治体の財政力の差などによらず、全国どこの地域においても同等な水準で子育て世代の負担解消が行われるべきであり、まずは全国知事会等を通じて国において必要な措置が講じられるよう求めていきたいと考えております。

【斉藤議員】
 宮古市は「ふるさと納税」を活用して、一般会計から繰り入れしてやっているということですから国も文句が出ないと。ぜひこういう取り組みを紹介して、せめて子育て支援として軽減すると、そういう取り組みを岩手県内から広げるように進めていただきたい。

(2)一般会計からの繰り入れについて

【斉藤議員】
 高すぎる国保税の値上げを抑える市町村の一般会計からの繰り入れの実績をどう評価しているかお聞きします。

【保健福祉部長】
 平成30年度においては、11市町村で総額3億4200万円余のいわゆる法定外繰り入れが行われております。法定外繰り入れについては、市町村の判断により行うことができるものと考えておりますが、市町村と協議のうえ作成した岩手県国保運営方針においては、「国保財政の健全化を図るため、決算補てんを目的とした法定外繰入は解消に努める必要がある」としています。一方で、今般の国保制度改革で算定方式が変更となったことにともなう保険税負担の激変緩和措置が行われている間においては、改革施行前後における被保険者の負担の変化にも十分配慮した対応が必要であり、県としては市町村に対して、こうしたことも踏まえた適切な対応を促しているところであります。

【斉藤議員】
 協会けんぽと比べて国保税は2倍も高いんです。その高すぎる国保税を値上げしないために11市町村が一般会計からの繰り入れしているんです。こんな素晴らしい取り組みはないじゃないですか。それに対して県の国保方針は、赤字補てんは止めるようにと。方針が間違っていると思いますよ。高すぎると認めておいて、その一般財源からの繰り入れは止めなさいという指導をしたら、県民に背を向けるということになりませんか。

【保健福祉部長】
 国保運営方針については、県のみで決めたものではなく、市町村と協議をしたうえで、市町村の合意のうえで決めたものです。したがい、県が上から市町村に対して指導というものではなく、市町村と協議して決めたものであります。
 また、先ほどの答弁で「一方で」ということで、今の状況を踏まえて対応するようにということで市町村に促しているところであります。

【斉藤議員】
 そういう責任逃れの答弁ではだめです。滞納の実態について示すと、盛岡市の場合、滞納世帯の比率が14.84%と7世帯に1世帯です。国保の制度が機能していないんです。高すぎて払えない。それを放置したら、どうやって県民の幸福を守れるのですか。一般会計から繰り入れして、せめて値上げをさせない、当たり前ではないですか。それを、赤字補てんの一般会計からの繰り入れはやらないという国保方針を堅持していたら、幸福の実現はないのではないですか。

【保健福祉部長】
 運営方針については、市町村と協議のうえ、適切な時期に見直すことになっており、ご紹介いただいたような視点なども市町村からあるかもしれませんが、さまざまな意見をいただきながら、市町村と共同で適切に改定をするものと考えております。

(3)国保税滞納者の実態とペナルティの問題について

【斉藤議員】
 もっとひどいのは、高すぎて払えない滞納者に対して保険証を取り上げて、3ヶ月の短期保険証、資格証明書を発行する、ひどいのは資産を差し押さえすると。滞納者に対してこういうペナルティをかけることが県民の幸福を実現する県政としてありえるんですか。
 以前にも紹介しましたが、滋賀県野洲市は、滞納した世帯に対して「滞納してありがとう」と、生活再建を支援して国保の納入を進めている。こういう県政こそ今必要なのではないですか。

【保健福祉部長】
 滞納処分や資格証等の取り扱いについては、適切に運用するよう県としても市町村に促しているところであります。
 ご紹介の野洲市の取り組みについては、県内市町村においても、同様にさまざま苦労して取り組んでいる事例がございますので、こうした事例について各市町村に紹介してまいりたいと考えております。

【斉藤議員】
 国民健康保険制度というのは、住民にとって一番重税感が高い。そして県政・市政の政治姿勢が表れる課題ですから、本当に県民一人一人の幸福を実現するといういわて県民計画の精神に立って、いま国保はどうあるべきか真剣に考えていただきたい。


6.幼児教育・保育の無償化について

【斉藤議員】
 幼児教育・保育の無償化の課題と市町村の対応について質問します。
 安倍政権の幼児教育・保育の無償化は、消費税増税とセットという問題とともに、3歳から5歳の場合は副食費が有償となり、0歳から2歳までの場合も非課税世帯しか無償化とならない重大な矛盾と問題を抱えたものです。
 そこで、多くの市町村が副食費の無償化、0歳から2歳児の無償化を実施していますが、その状況を示してください。

【保健福祉部長】
 3〜5歳までの副食費の無償化については、現在27市町村で実施しているところであり、そのうち全世帯に対応するものとして、すべての子どもを対象としているものが14市町村、一部世帯に対応するものとして、低所得世帯や多子世帯の子どもを対象としているのが13市町村となっております。
 また0〜2歳までの子どもについては、3市町村において副食費を含めて保育料を無償化しております。
 このように市町村においては、それぞれの地域の実情等を踏まえながら副食費の無償化を含むさまざまな子育て支援施策に取り組んでいると承知しております。
 県としては、必要に応じて効果的な事業実施に向けた助言等を通じて、保育の実施主体である市町村を支援してまいります。

【斉藤議員】
 あまりにも矛盾に満ちて問題が多いから、27市町村が副食費の全面無償化・一部無償化、0〜2歳は3市町村が全面無償化しています。
 宮古市を調査してきました。宮古市の場合、これまでの保育料軽減分の削減額が1億5千万円、副食費、0〜2歳児の全面無償化の経費が1億1千万円とのことでした。こういう対策をとってもおつりが来るんです。ほとんどの市町村がこれまで保育料の軽減に取り組んでおり、新たな負担なしに宮古市のような取り組みができると考えますが、全県的な保育料軽減策が今回の無償化でどれだけ軽減される見込みでしょうか。

【保健福祉部長】
 県内市町村の保育料軽減額は、平成31年4月時点の利用児童の状況をもとに、一定の条件の下で粗い試算を行った場合、総額で年間18億5千万円程度が見込まれます。
 議員ご指摘の通り、今般の無償化の措置により、これまで市町村が利用者負担額を軽減するために独自に負担していた経費に、国・県の負担等が入ることにより、市町村独自の財政負担は軽減されることになります。こうしたことについては、9月に国から無償化の実施にあたっての留意事項に関する通知があり、その中で、「今般の無償化の実施にともなって経済的負担が増加する世帯が生じることのないよう、軽減される財政負担分を活用してさらなる子育て支援の充実等に配慮することが望まれる」とされており、県ではこれを踏まえて市町村に通知をしているところであります。市町村においては、通知の趣旨やそれぞれの地域の実情等を踏まえながら、副食費の無償化を含むさまざまな子育て支援施策に取り組んでいると承知しております。
 県としては必要に応じ、効果的な事業実施に向けた助言等を通じて、保育の実施主体である市町村を支援してまいります。

【斉藤議員】
 県内で真剣に取り組んでいる宮古市など例があるわけだから、そして決して財源的にも新たな持ち出しは必要ないと。かなりの市町村でそういう状況にあるのではないかと思います。
 保育料の軽減というのは、全県平均すると47.2%、それが18億5千万円ということになると思うんです。良い取り組みについては県が積極的に普及して、広がるようにやっていただきたい。


7.県立病院の医師・看護師確保対策について

(1)県立中部病院の産婦人科医師確保について

【斉藤議員】
 県立病院の医師・看護師確保について質問します。
 東北大学が県立中部病院から3人の産婦人科医師を引き上げるとの報道があって、地域住民の方々に大きな不安が広がりました。その後、県当局の努力もあって、岩手医科大学が対応して地域周産期母子医療センターの機能が確保されるとのことですが、現在の5人の産婦人科医師が確保される見通しでしょうか。

【医療局長】
 岩手医大から派遣される医師数については、現在調整中でございますが、医局人事の都合があるので、現時点では確定していないところでございます。医療局としては、可能な限り現在の県立中部病院の産婦人科体制が維持できるよう岩手医大に要しているところであります。
 今後も、関係部と連携し、県立中部病院や北上済生会病院などの盛岡・県南地域の周産期母子医療センターおよび開業医等の協力を得ながら、地域の方々が安心して出産できる環境の確保に努めていく考えでございます。


【斉藤議員】
 岩手医大の機敏な対応は評価したいと思います。同時に、東北大学の医師派遣が大変重要な役割を果たしているので、仕方がないというのではなく、これまで以上に東北大学に対する医師派遣の要請を強めていただきたい。

(2)県内の産婦人科医師確保について

【斉藤議員】
 産婦人科医師の確保は県内どの地域でも切実で深刻な課題です。産婦人科医師の現状と診療科がどう推移しているか。今後産婦人科医師確保のために特別の取り組みが必要と考えますが、どのように検討し、取り組まれているでしょうか。

【保健福祉部長】
 県内の産婦人科医師数は、平成24年は98人、26年が100人、28年は102人となっております。
 県内の分娩を取り扱う医療機関は、平成27年の33施設から、本年10月時点で27施設と減少傾向にあるところです。
 こうした状況の中、県ではこれまでも医師確保対策アクションプランに基づき、さまざまな取り組みを行っているところですが、昨年度からは、産婦人科・小児科を専攻した奨学金養成医師に対して、義務履行とキャリア形成の両立を支援し、義務履行の全期間を地域周産期母子医療センターでの勤務に専念できる特例措置を設けたところです。
 また、現在策定中の医師確保計画の中では、産科および小児科については、周産期医療圏・小児医療圏ごとの医師偏在指標をもとに、具体的な偏在対策を盛り込み、必要な医師の確保と偏在解消に取り組んでいく考えです。

【斉藤議員】
 今の答弁だと産婦人科医師は微増のようですが、おそらくこれは登録医師でしょう。実際に勤務されている数ではないのではないでしょうか。
 産婦人科医師、小児科医師もそうですが、この養成・確保というのは、努力されているけれども、さらなるインセンティブ、特別な手立てを講じて本気で岩手における産婦人科医師を養成・配置していく取り組みが必要だと思いますがいかがでしょうか。

【保健福祉部長】
 産婦人科医師の実態ですが、たしかに医師・歯科医師・薬剤師調査で調べておりまして、分娩取扱、婦人科だけやっている医師もこの数にカウントされていますので、分娩を取り扱う医師ということになると、実態を表していないものと認識しております。
 産科・小児科医師の確保については、我々行政にとってもきわめて重要な課題だと認識しております。したがい先ほどの答弁の通り、医師確保計画の策定を進めていますが、さらなる確保施策に向けて検討を進めていきたいと考えております。

(3)国の公立病院統廃合案について

【斉藤議員】
 厚生労働省が突然、病床削減、医療費削減の目的から、全国の公立・公的病院424病院の統廃合を検討するよう求めると、驚くべきことがありました。
 県内では、県立東和病院、江刺病院、一戸病院、軽米病院の4病院を含め盛岡市立病院など10病院が名指しで公表されました。中身も機械的で、地域医療の実態を無視するものです。公表の仕方も、検討を求めるやり方も極めて強権的で異常なものであります。
 解決すべきは、産婦人科医師など絶対的不足の状況にある医師の抜本的な増員ではないでしょうか。知事の受け止めと今後の対応についてお聞きします。

【達増知事】
 今回国が、全国一律の基準による分析のみで、再編・統合の必要性について特に議論が必要な公立・公的医療機関等の病院名を公表したことは、公立・公的病院が機械的に再編統合されるという住民の不安を招き、地域の個別事情を無視するもので、公平な視点に基づくものとは言いがたいと考えております。
 また、国が分析に用いたデータは、平成29年度のものであり、本県では、この間公表された10病院のうち8病院において一定程度の病床機能の転換や病床数の見直しが実施または検討されていることから、今回の公表内容がそのまま病院機能の大幅な見直しにつながるものではないと考えております。
 県では、今回の再検証が地域の実情に十分即したものとなるよう、国に対して知事要望を行うこととしているほか、全国知事会と連携し、さまざまな機械をとらえて国に対して訴えてまいります。
 住民が適切な医療を将来にわたって持続的に受けられる医療提供体制を構築するためには、産婦人科医師を含む医師不足と地域偏在の解消に国を挙げて取り組む必要があると考えており、県としては県境を越えた医師の適正な配置調整などについて、同様の課題を持つ医師少数県で連携して国に強く働きかけてまいります。

(4)看護師の増員について

【斉藤議員】
 看護師の現状は厳しいものがあります。月9日を超える夜勤が昨年度は706件もありました。年次休暇の取得率は平均で7.9日です。今年度から労働基準法の改正で、年間年次休暇取得が5日未満の場合、罰則・罰金が課せられます。県立病院の実態は、1641人・31.3%が5日未満です。看護師の場合は798人・24.9%となっています。この改善のためには、大幅な看護師の増員が必要ではないでしょうか。

【医療局長】
 今年度から、使用者が労働者に対して年5日の年次休暇を取得させることが義務化されたことにともない、年次休暇の予定を職員に聴取のうえ、その状況を確認し、所得が進んでいない職員へ取得を促すなど、法令に定める日数以上の年次休暇を取得していただくよう取り組んでいるところです。
 また、採血業務の検査技師へのタスク・シフティングなどによる看護業務の省力化を図るとともに、夜勤専従制度などの多様な勤務形態の運用などにより、看護師の負担軽減や働きやすい職場環境づくりに務めているところであります。
 現経営計画に定めた職員配置計画においては、機能分担と連携の推進や人口減等に伴う患者数の減少に見合った看護職員の適正配置、医療の質の向上、育児休業および産前産後休暇等の取得者を代替する正規職員の充実など、6年間の計画期間中に66人を増員する計画としているところでございます。
 今年度におきましては、年度当初に9人を増員したほか、年度途中に、来年度採用予定者から前倒し可能な方4名を採用したところであります。
 今後も、経営状況を踏まえながら、病院の状況を確認し、必要な人員の確保に努めてまいります。

【斉藤議員】
 3人に1人が5日未満だと、調べてびっくりしました。まさにブラックそのものです。今の答弁だったら全然改善の見通しが出てこない。
 看護師の声を紹介します。「もう限界です。助けてください。家庭も体もボロボロで、続けていく自信がありません」「人員が増えない中、業務量は増えていく。年次を30日以上捨てる現実、疲れた」と。本当にこういう深刻な実態で、職員の幸福が守られるのかと。そういうことが突きつけられたと思います。医療局審査でもっと突っ込んでやりますが、改善の方向を示すようにお願いしたい。


8.教育の課題について

(1)教師による暴言・体罰問題について
・県立高校バレー部員自殺事件

【斉藤議員】
 昨年、県立高校のバレー部員が自殺するという痛ましい事件が起きました。「顧問の教師による暴言等がその要因となったのではないか」という遺族の真相の解明を求める要請に基づいて、第三者委員会が設置されました。第三者委員会の検証課題・検証項目と検証状況はどうなっているでしょうか。
 調査結果報告書公表の見通しはどうなっているでしょうか。

【教育長】
 第三者委員会の所掌事項は、当該事案に至るまでの事実経過および背景、学校および県教育委員会による事案への対応の妥当性、今後の再発防止に関する提言等となっております。
 これまで11回の委員会が開催され、全校生徒へのアンケート、部員およびその保護者、教職員、その他関係者への聞き取り調査等の結果をもとに検証を行っていると聞いています。
 調査結果報告書の公表については、委員会の主体的な判断によりまして、しかるべき時期に行われるものと認識しております。

【斉藤議員】
 第三者委員会の調査も大詰めを迎えているのではないかと。この調査結果を注目したいと思います。

・盛岡一高バレー部事件

【斉藤議員】
 これまた同じ顧問教師による暴言・体罰でありました。生徒と家族に多大な精神的苦痛を与えた事件の高裁判決が、今年2月1日に下されました。顧問教師による暴言も体罰も「教師の裁量を超えた違法行為」と認定され、一審判決より重い40万円の罰金が科されたものです。
 教育長はこの判決をどのように受け止めているでしょうか。学校が十分な調査をしなかった、顧問教師が暴言・体罰を否定してきたことを含め、何が問題だったと反省しているでしょうか。判決が確定したことを踏まえて、多大な精神的苦痛を与えた被害者とその家族に対して誠意をもった謝罪が行われるべきですが、どう対応してきたのでしょうか。

【教育長】
 高裁判決では、教諭の行為が違法行為と認定され、判決を重く受け止めております。当該教諭の行為について、県教委が本人および関係者からの聞き取りなどにより確認した事実と判決において認定された事実とが異なるものとなったことについては真摯に受け止めております。
 県教委では、判決後の3月に、判決において教員による違法行為が認定されたことについて重く受け止めるとともに、その行為により元生徒に精神的負担をおかけしたことについて深くお詫び申し上げる旨、教育長名の文書を相手方に対してお送りしたところですが、改めて、相手方に対し、お詫び申し上げたいと考えております。
 児童生徒の人権を侵害する行為は、いかなる場合であっても絶対に許されないものであり、あらゆる機会を通じて根絶に向けて取り組んでまいります。

【斉藤議員】
 一片の謝罪のタイトルもない通知で終わったというのが実態でありました。びっくりしました。まさに、さらなる精神的苦痛を与えているのが実態です。
 もう1つ、暴言と体罰が違法行為と認定された顧問教師の懲戒処分が3月1日決定されました。その内容は減給10分の1、1ヶ月というあまりにも軽いものでした。顧問教師は、学校の調査には暴言も体罰も否定した結果、被害者と家族は、真相を解明するために裁判に訴えるしかありませんでした。長期にわたって多大な精神的苦痛を与えたこの事件の処分は、県教委の懲戒処分の基準からみても軽すぎる、甘すぎるのではないでしょうか。
 県教委の懲戒処分の基準、標準処分例では、「不適切な言動により児童生徒に重度の精神的苦痛を与えた職員」は「免職又は停職」とされています。これにあたるのではないですか。

【教育長】
 仙台高等裁判所判決では、当該教諭の行為等が違法行為と認定され、この判決により認定された事実に基づき、処分に関する基準およびこれまでの処分事例等を踏まえ、厳正に処分を行ったものであります。

【斉藤議員】
 一度決定した処分というのは簡単には覆らないと思いますが、いま第三者委員会で同じ顧問教師が問われているので、この結果次第も含めて。しかし今までの体罰の処分は全体として甘すぎます。甘すぎる例を前提にして今回もやられているのです。これだけ裁判に訴えざるを得なかった、多大な精神的苦痛を与えた―わずか減給1ヶ月です。こんな話はないでしょう。県民の常識からかけ離れています。そのことを指摘しておきたいと思います。

(2)テストづけ教育の課題―国連子どもの権利委員会の勧告と不登校の実態について

【斉藤議員】
 子どもたちを苦しめている課題にテストづけの教育の問題があります。
 3月5日公表された国連子どもの権利委員会の日本政府に対する「総括所見」では、「ストレスの多い学校環境(過度に競争的なシステムを含む)から子どもを解放するための措置を強化すること」を勧告しています。私は、子どもたちが苦しんでいる一つの表れが不登校の増加に示されているのではないかと思います。
 先週10月17日に公表された「平成30年度 児童生徒の問題行動・不登校生徒指導上の諸課題に関する調査結果」では、年間30日以上欠席した中学生の不登校の生徒は、昨年より1万人以上増えて全国で11万9687人となっています。
 日本財団の調査では、「学校には行くが教室に入れない、授業を受けられない」などの不登校傾向がある「隠れ不登校」が約33万人、不登校の約3倍、10人に1人にあたると報告しています。不登校生徒と合わせれば7人に1人となります。岩手県における不登校の実態、国連子どもの権利委員会の「総括所見」を教育長はどう受け止めているでしょうか。

【教育長】
 本県の小中学校はここ数年、全国と同様に不登校の出現率が増加傾向にございます。一方で高等学校は2年連続で減少しております。本県は全国と比較すると、不登校の出現率は低い傾向がしばらく続いているところではございます。
 この不登校の要因や背景は、多様化・複雑化しているところであり、本人にかかる要因、学校にかかる要因、家庭にかかる要因が複合的に絡んでいるというふうに把握しているところでございます。
 国連子どもの権利委員会の総括所見の受け止めについては、社会性を身につける途上にある児童生徒が、集団で活動する場合には、しばしば対人的なストレスの他、悩みや緊張などのストレスの発生の側面があることは承知しているところでございます。不登校やいじめなどの生徒指導上の課題に対する未然防止の取り組みとして、学校においては、児童生徒が安心して自己存在感や充実感が感じられる居場所づくりの取り組み、すべての児童生徒が主体的に取り組む活動を通し、自らが絆を感じ取り、紡いでいく「絆づくり」の取り組みを進めています。

【斉藤議員】
 日本財団の「不登校傾向にある子どもの実態調査」では、中学校に行きたくない理由は、「授業がよく分からない」「良い成績が取れない」「テストを受けたくない」など学習面での理由が指摘されています。競争主義とテストづけの教育に悲鳴を上げているのではないでしょうか。
 そして、隠れ不登校の問題は、5月のNHKスペシャル「44万人の衝撃」ということで、NHK独自の調査を含めて報道された内容です。隠れ不登校の実態は把握されているでしょうか。

【教育長】
 不登校の要因については、先ほども答弁申し上げましたように、本人にかかる要因、学校や家庭にかかる要因ということで、背景が複雑に絡み合っているということでありますし、隠れ不登校ということについては、やはりこういった子どもたち日々よく観察し、一人一人それぞれ自分のペースで学びたいとか、いろいろ特性や個性を持つ子どももいると思いますので、やはりそういった一人一人に寄り添った形で支援を行っていく必要があると認識しております。

【斉藤議員】
 隠れ不登校の実態は把握されていないと。学校には行くけれども教室に入れないという子どもがいるんです。これだけ社会問題になっているのだから、県教委としてもしっかり把握すべきです。
 不登校の原因で、学校の報告と子どもたちの訴えに大きな差があります。NHKが18000人の子どもたちをLINEで調査しました。子どもたちの訴えは、「先生との関係」23%、「いじめを受けた」21%、「決まりや校則になじめない」21%。学校の報告と大きな乖離があるんです。だから学校の勝手な解釈ではなくて、子どもたちの声に耳を傾けるべきだと、率直にこのことを訴えたいと思います。

(3)子どもを苦しめる学力テストの実態と教師の多忙化について

【斉藤議員】
 テストづけの教育の実態は深刻です。4月末に実施される小学校6年生と中学校3年生を対象とする全国学力テスト、県教委による県中学校新入生学習状況調査、10月2日には、県小・中学校学習定着度状況調査が小学校5年生と中学校2年生対象に行われます。さらに、すべての市町村教育委員会が独自に小学生、中学生を対象に学力テストを実施しています。
 重大なことは、各学力テストのたびに過去問題などの事前学習が実施されていることです。まさにテストづけと点数で評価され、子どもたちが苦しめられているとともに、その採点などで教員に過度の負担を押しつけるものとなっているのではないでしょうか。
 全国では、県独自の学力テストをやっていないところも十数県あります。今こそ、県独自の学力テストは見直し、中止すべきと思いますがいかがでしょうか。

【教育長】
 まずは諸調査の趣旨についてですが、国や県の諸調査は、児童生徒の学習上の課題を踏まえ、身につけるべき学力を具体的な問題の形で示しており、学習上のつまづきや教員の学習指導上の課題などを明らかにしながら、授業改善を推進し、学習状況の改善や学習意欲の向上を含むたしかな学力の定着を目指すものでございます。
 県教委としては、市町村や学校等の序列化や過度な競争が生じないよう県全体の状況のみを公表するとともに、そうした趣旨を市町村教委や各学校に指導しているところでございます。また、過去問等による事前対策についても、平成29年度にガイドラインを作成し、厳に慎むように指導しているところでございます。
 全国の実施状況と県学調のあり方については、平成30年度に、議員ご指摘の通り、独自の学力調査を実施した都道府県は、小学校30道府県、中学校は32都府県でございます。県学調のあり方については、現在、他県の実施状況に関する情報収集などを行っているところであり、また県内においては、各市町村で独自に調査を実施している実態もあります。こうしたことから、市町村教委等と意見交換を行いながら、全体的な全体的な調査のあり方について、引き続き慎重に検討を進めていく考えです。

【斉藤議員】
 全国学力テストの実施要領では、「調査により測定できるのは学力の特定の一部分であること。学校における教育活動の一側面であることなどを踏まえるとともに、序列化や過度な競争が生じないようにするなど、教育上の効果や影響に十分配慮することが重要だ」と。
 県教委は、「過去の諸調査問題の活用ガイドラインについて」と、いわば過去問などを適正にやりなさいという指示を出しています。これは抜け穴だと思います。ここでは、「不適切かつ効果のない活用例」ということで、「調査実施前に、授業時間や授業外の時間を使って集中的に過去の調査問題を練習させる」ことは止めなさいと。このガイドラインに基づいて実態を把握していますか。

【教育長】
 このガイドラインでは、単に数値データの上昇のみを目的としていると取られかねないような取り扱いは「不適切かつ効果のない活用例」であるということで指導しているところでございます。

【斉藤議員】
 答弁していないんですよ。ガイドラインに基づいて実態を把握しているかと。
 小学校の6割は全国学力テストの過去問をやっているんです。県学習状況調査でもそうです。これは岩教組が調べているんです。県教委がガイドラインを出したのならきちんと調査すべきではないですか。
 テストづけだということを私は厳しく指摘しておきたい。これは世界の非常識です。本当に子どもたち一人一人に寄り添った、子どもたちが学ぶ喜びを培えるような教育・学校をぜひ実現していただきたい。


9.消費税増税問題―消費税の導入がもたらしたものは何か、5%減税こそ必要

【斉藤議員】
 次に、国政にかかわる重大問題について質問します。
 消費税の10%増税が10月から強行されました。多くの県民・事業者から「とても暮らしていけない」「商売をやっていられない」など切実な声が広がっています。消費不況と実質賃金が下落する中での増税はまさに愚策というべきものであり、私たちのくらしと経済を破壊させるものです。
 消費税が導入されて31年となりますが、消費税の導入がもたらしたものは何かを検証すべきです。第一に、消費税は「社会保障のためにも、財政再建のため」にもつかわれませんでした。31年間の消費税収は397兆円、一方で、法人3税の税収は298兆円減り、所得税・住民税の税収も275兆円減りました。結局、庶民・弱者から吸い上げ、大企業と富裕層を潤す―これが消費税の実態だったのではないでしょうか。第二に、消費税の導入と引き上げによって、日本は世界でも異常な「経済成長できない国」になってしまいました。この20年間でアメリカはGDPが2.3倍、イギリスは1.7倍、フランスは1.8倍、ドイツは1.7倍に伸びています。ところが日本は20年間でGDPは1.02倍、わずか2%しか伸びていません。OECDの36カ国で断トツの最下位となっています。その原因は、消費税の増税によって消費不況に陥ったこと。特に5年前の8%増税以来、年間の消費支出は1世帯当たり20万円も減少し、労働者の実質賃金も年間で15万円も下がりました。安倍政権は2度にわたって消費税を5%から10%に、13兆円もの大増税を強行しました。
 日本共産党は、安倍政権の増税前の5%に減税を実施することこそ国民のくらしと日本経済を立て直す緊急課題として国民に提案をしています。
 消費税増税がもたらしたもの、その打開の道について、知事の見解を求めます。

【達増知事】
 消費税率の引き上げは、経済的に弱い立場にある方々や我が国の経済を支える多数の中小企業に負担を強いることになるため、国民生活に多大な影響を及ぼすことが懸念されます。また、東日本大震災津波や平成28年台風10号災害、先般発生した台風19号災害の被害を受けた地域においては、暮らしの再建や生業の再生の妨げとなることが危惧されます。
 消費税率が8%となった際の本県の影響を見ると、平成26年の県内経済においては、物価上昇の動き、大型小売店舗販売額、新車登録台数など個人消費の落ち込み、鉱工業生産指数、新設住宅着工戸数の前年割れなど、税率引き上げや駆け込み需要の反動減などの影響が見られたところであり、今回も同様の影響が懸念されます。
 県としては、経済的に弱い立場にある方々が困窮することがないよう、また地域に根ざした産業に十分配慮して、地方経済の落ち込みや復興の遅れを招くことがないよう、本年6月に政府予算提言要望を行ったところであり、引き続き全国知事会などと連携し、十分な対策を講じるよう国に対応を求めてまいります。

【斉藤議員】
 安倍政権による2度の増税、これは何の時期だったか。東日本大震災の被災地で、復興に取り組む中で、2度にわたって消費税が5%から10%に増税された。復興にも被災者の生活再建にも事業者の再建にとっても大きな打撃となったのではないでしょうか。

【達増知事】
 国家的な大災害、国民経済、また社会的にも非常に打撃を受けているような状況であれば、被害を受けた方々、弱っている部分について、むしろ減税のような措置が望まれたのではないかなと思います。


10.警察本部にかかわる諸問題について

(1)競馬組合の禁止薬物事件について

【斉藤議員】
 警察本部長に質問します。岩手競馬にかかわる禁止薬物事件が昨年の7月、9月、10月、12月の4回にわたって発生しました。極めて異常で悪質な事件であります。今年1月23日に県競馬組合によって刑事告発が行われましたが、捜査の状況はどうなっているでしょうか。

【警察本部長】
 現在も鋭意捜査を継続しております。その具体的内容につきましては、内容を明らかにすることによって、捜査の相手方に手の内をさらすことになり、捜査に支障を及ぼす恐れがあるので、答弁を差し控えさせていただきます。

(2)岩手医科大学への県警捜査責任者の天下りについて

【斉藤議員】
 競馬事件については鋭意捜査中だと。
 それではお聞きしますが、2014年7月の週刊文春で報道された「岩手医科大学教授(当時)による覚せい剤疑惑事件」について、当事者の教授は翌年の3月末までに岩手医科大学を退職されました。すでに5年以上が経過しましたが、捜査はされたのでしょうか。もみ消されたのではないでしょうか。

【警察本部長】
 一般論として、個別の事件を捜査しているか、していないか、あるいはその捜査状況については、捜査の相手方に手の内をさらし、今後の捜査に支障を及ぼすおそれがありますので、答弁を差し控えさせていただきます。
 次に、「もみ消されたのではないか」とのご質問がありましたが、もみ消しておりません。

【斉藤議員】
 いま重大な答弁がありました。「もみ消していない」と。もみ消していない根拠はどこにあるのですか。

【警察本部長】
 もみ消していないので、なぜもみ消していないのかと言われても、もみ消しがない以上、もみ消していないということでございます。

【斉藤議員】
 この事件はきわめて深刻な事件で、週刊文春に報道されるまさにその時期に、岩手医大は調査特別委員会を設置したのです。私は素早い対応だと思いました。ところが、この調査特別委員会は何の結果も出さなかった。大変有名な教授で、日本内視鏡外科学会の会長を務めていて、岩手医大の看板教授だった。それが何の理由も示さずに3月に辞めたんです。おかしいのではないですか。
 それで一番ひどいのは、当時の捜査の責任者であった刑事部長が、事件発生の翌年に岩手医科大学の病院長顧問に再就職、いわゆる天下りしたことです。覚せい剤疑惑事件が発生し、捜査の状況もあいまいなまま、当事者というべき大学に捜査の責任者が再就職するなどということが全国的にあるのでしょうか。
 現在岩手医科大学に警察本部職員はどのぐらい再就職しているのでしょうか。

【警察本部長】
 退職者の再就職は、雇用主と退職職員本人との雇用契約に基づいているものと承知しており、ご質問のような事例が全国にあるかどうかは把握しておりません。
 岩手医大にかかる警察本部職員の再就職については、元刑事部長が平成27年4月に、元紫波警察署長が平成29年4月に、元宮古警察署長が平成31年4月に、それぞれ岩手医大に再就職した事実について承知しております。

【斉藤議員】
 いわばこの事件は、覚せい剤を打たれたという相手の愛人の女性が告発したのです。本来ならただちに捜査して、尿検査なりすればすぐに立件できた。5年以上経って、捜査しているかいないかも明らかにできない。やっていないということでしょう。これを「もみ消し」と言わないで何と言うんですか。
 公安委員長に質問します。いま私ここでかなりリアルにお話ししました。
 岩手医科大学の教授(当時)による覚せい剤疑惑事件は直ちに捜査すべき事件だと考えますが、覚せい剤事件に対する基本認識をお聞きします。
 覚せい剤疑惑事件が発生し、岩手医科大学も調査委員会を設置しました。ところが、調査結果も出さずに、当事者の教授を辞めさせてもみ消した。その大学に捜査の責任者である刑事部長が再就職するなどということがあっていいのか。いかがですか。

【公安委員会委員長】
 覚せい剤事件に対する基本認識についてでございますが、覚せい剤等薬物事件については、治安維持上、重要な事件と認識しております。
 岩手医大に対する元刑事部長の再就職については、県警察からは、これまでの県議会における斉藤議員からのご質問と、これに対する答弁の内容について報告を受け、関係法令に照らして違反行為と認められる事実はなく、適正に行われているものと説明を受けております。癒着はないものと認識しております。
 公安委員会としては、退職者の再就職について、民間企業等がどのような人材を必要とし、どのような採用を行うかについては、あくまで当該企業等の独自の判断によるところであり、再就職は、雇用主と退職職員本人との雇用契約に基づいているものと承知しております。

【斉藤議員】
 公安委員会というのは、市民の立場で警察を管理するのです。今の答弁は市民の感覚と完全にずれています。
 覚せい剤事件というのは初動が大事なんです。ましてや覚せい剤を打たれた当事者が告発した事件です。ただちに捜査すればすぐに立件できた。5年間も放置するような事件ではないのです。覚せい剤事件に対する対応がまったく不十分だったと思いませんか。
 そして、そのことが疑われている大学に、刑事部長=当時の捜査の責任者が天下りする。これは市民の感覚では「癒着」というんです。
 公安委員長は市民の代表なんだから、丸め込まれないで、市民の常識で物事を判断し、そしてこれは個別の事件じゃない。警察のあり方が問われている問題なので、最後お聞きをしたい。

【公安委員会委員長】
 繰り返しになりますが、元刑事部長の再就職については、関係法令に照らして違反行為と認める事実や癒着が疑われるような事実は承知しておりません。
 公安委員会が行う管理は、個々の事務執行を含まず、大綱方針を定めて、これによる事前事後の監督を行うものと承知しております。
 私ども公安委員会は、県民の代表として誠実に職務に当たっているところであり、今後とも県警察をしっかり管理してまいります。