2019年10月23日 文教委員会
教育委員会に対する質疑(大要)
・学力向上と学力テストについて
【斉藤委員】
いま学力向上に関する議論があったが、全国学力テストの実施要領では「あくまでも学力の一部」だと。県の学習状況調査も同じで、市町村も同じことをやっている。そういう意味で、今の議論を聞いていると受験対策のための学力向上と。教育の目的はそうではないのではないか。あくまでも、一人一人の人格の完成が目標で、そして子どもたち一人一人の希望をかなえるという、そこに教育の一番の目標があるわけなので。
・高校再編について
【斉藤委員】
この間、2度3度とブロック別の検討会が開かれたと思うが、ここで出された主な意見、それを受けて県教委は今後どういうスケジュール・プロセスで高校再編後期計画を作成しようとしているか。
【高校改革課長】
高校再編計画は10年間の計画であり、平成28年度〜令和7年度までとなっている。その後半の令和3〜7年度までの後期計画の策定に向けて、昨年末から地域検討会議を開催している。昨年12月から1回目、今年5月に2回目、8月に3回目である。
出された意見だが、3回を通じて、全体として共通しているのは「地域人材の育成」という観点で、期待を抱いていただいているということがあった。それから、3学級以下の小規模校は47%にのぼっているが、「小規模校についての意義や役割」といった意見もあった。それから、「少人数教育のこれまで以上の充実」。学科については、「地域のニーズを踏まえた学科の設置」。「現在の学校・学科をできる限り残してほしい」という意見もあった。
他方で、「これだけ生徒の数が減っている中で、統合等を進めていくべきではないか。ある程度の規模の学校がなくては生徒の進路実現につながっていかないのではないか」ということもあった。
そういった意見を踏まえて、現在意見を集約して、前期計画の検証も行いながら、具体的に後期スケジュールを検討している。いただいた意見さまざまなものがあり、一つ一つを並べるといろんな方向の意見があるので、できる限り生かしながら進めていきたい。
今のところの目標としては、年度内に案をつくり、来年度のしかるべき時期に策定という流れである。
もう一度地域検討会議を開催したいと考えているが、具体的な時期については改めて決定しご案内したいと思っている。
【斉藤委員】
私もこの3回の地域検討会議の主な意見は読ませていただいた。やはり地域の高校が必要だと。小規模校でも存続させたいと、かなり強い思いが出ていた。感じるのは、前期のときと違って、市町村が地元の高校として、地元の高校の魅力化にかなり取り組んでいると。だから、この魅力化の努力を見てほしいという声も出ているのが今回の特徴だと思う。だから今までと違って、市町村が本気で地域の高校を守りたい、魅力ある高校にしたいという取り組みがなされているのが今回の後期計画をめぐっての特徴であり、大変良い傾向だと。
今までは、県立高校というのは県教委がやることという雰囲気が強かったが、今は違う。市町村が自分たちの高校を何としても魅力ある高校にしたいと。そして地域に貢献する人材も育成したいと。この新しい動き、新しい努力を県教委としてはしっかり受け止めて、評価することが大事なのではないか。
【高校改革課長】
ご紹介あった通り、各地域での意見交換会、出席されているのは首長さんや教育長さん、産業界の代表の方々だが、そういった方々から地域の高校の意義や、支援をしている実情も承知している。具体的には、通学費の補助といった経済的な支援もそうですし、公営塾のようなものを設置しているところもある。そういったことで昨年度、高校再編を考える首長懇談会というものを2回ほど開催している。そういった取り組みについては、非常に教育委員会としても心強く思っている。
こういった動きも踏まえながら、他方では、「これだけ生徒が減っている中で、一定の学校規模を確保することが大事だ」という声もあったので、その辺を両方考えながら具体的な検討を進めていきたい。
【斉藤委員】
その通りだと思うが、高校再編の方針で疑義を呈したのは、望ましい学級規模として「4ないし6学級」と。私は、全県的な基準で一律に見れないのではないかと思う。今回の意見の中にもあるが、都市部と地域で同じ基準でいいのか。先ほど言われたように、3学級以下の高校が47%と、これは必要だから残っている。しかし基準から見たら適正ではないとなってしまう。3学級以下の高校が適正ではないというのは基準としておかしい。だから意見の中にも「『4ないし6学級』という画一的な基準を当てはめるべきではない」というものがあったが、そういうことも含めて、地域で合意できるような内容の高校再編計画を英知を結集してやっていただきたい。
先ほどの答弁で、年度内に案を作成すると。最終的に決まるのはいつ頃を考えているか。
【高校改革課長】
後期計画は令和3〜7年度までなので、令和2年度中には策定ということで、年度ぎりぎりではないとは考えているが、現段階ではそのように考えている。案については、今年度を考えている。
【斉藤委員】
県教委が高校再編にあたって、これまでも3回、地域と丁寧に協議をしてきたと。これはおそらく全国に例のないことである。そしてもう1つは、市町村に自分の地域の高校ということで真剣に考えて、高校魅力化計画にかなり全県規模で取り組んでいる。これもおそらく全国に例のない取り組みで、その点では評価するところがあるので、みなさんがしっかり意見を聞き取り、それを受け止めるということと、市町村が県教委まかせにしないで魅力ある高校づくりに積極的な取り組みが広がっていると。ここをぜひ統一した形で案が出されるように、期待したい。
・変形労働時間制の問題について
【斉藤委員】
実は臨時国会に、とんでもない法案が提出された。それは「1年単位の変形労働時間制」の導入である。これは給特法の改正という形で出ている。
この内容について簡潔に示していただきたい。
【教職員課総括課長】
学校が開かれる期間、長期休業中の期間(夏休みの期間など)で、繁閑の差に応じて勤務時間を設定しようというものである。
イメージ的には、例えば4月に一定時間、通常より長い勤務を行い、その分を夏休みの8月は少ない時間で働き、休み的に扱うという内容だと承知している。
【斉藤委員】
この法案はとんでもない。今でさえ過酷な長時間労働を強いられている教員に、さらに長時間労働を押しつけるものである。
分かりやすく言うと、「繁忙期は1日10時間まで可能」と。この繁忙期というのは「学期の期間」だと。いわば授業が行われている期間は繁忙期で、1日10時間まで可能だと。こんなことをやったら、今でさえ80時間100時間の超過勤務の教員が多いのに、もっと働かなければならない。夏休み期間に集中的に休みを取らせるなんて無理である。今でさえ取れていないのだから。そういう意味では、この中身は本当に教育委員会あげて、学校をあげて反対しないと、とんでもない長時間労働がさらに押し付けられることにならないか。
【教職員課総括課長】
この法律案については、臨時国会に提出された段階であり、委員からお話があったような論点などについて、国会の審議などで議論されていくものと承知しているので、そういった議論の状況などを注視していきたい。
【斉藤委員】
注視していたら、多勢に無勢で強行採決される。これを採決させないということが大事である。
ある調査では、8割の教員が「この制度は現実的ではない」と答えている。市区町村教育長のアンケートでは、42.2%が「導入に反対」、「賛成」13.6%(日本教育新聞1月7日付)と紹介されている。賛成はほんの一部で圧倒的には反対している。
先ほども教員の長時間労働の質問があったが、80時間以上、100時間以上の教員は実数でどうなっているか。
【教職員課総括課長】
教育委員会では、80時間以上の教員、100時間以上の教員という形で把握しており、昨年度の月平均で80時間以上は360人、そのうち100時間以上は181人となっている。
【斉藤委員】
この「平均」というのが実態を現わしていない。
人事委員会が独自に教員の長時間勤務時間実態調査をしている。高校の場合、今の8時間労働制でさえ100時間以上が670人(19%)を超えている。これが10時間になったら、勤務時間は夜7時になる。もっと働けということになる。これでは死んでしまう。実際に教員の過労死が出ている。
この変形労働時間制というのは、民間で一部導入されているが、前提があり、「恒常的な超過勤務のないところ」が前提となっている。学校現場は、深刻な、恒常的な長時間労働があるところである。こんなところで10時間労働制なんかやったら、教育どころではない。1年単位の変形労働時間制は絶対に阻止しなければならない。
同時に、法案が通った場合には、県の条例改正が求められる。県は条例化しない、学校はこれを採用しないということもできるし、やらなければならないと思う。これをやらなければ教員の命を守れないと思うがいかがか。
【教育長】
内容については総括課長から説明があったが、さまざま学校現場の実態というものがあると思う。そういった中で今回法案が出されるということで、私どもも現場の実態を踏まえながら、国・他県の動向等もしっかり見極めつつ、慎重に検討していきたい。
【斉藤委員】
慎重に検討もいいが、臨時国会でこれが審議・強行されようとしている緊迫した状況なので、きちんとした意思表示をする必要があるのではないか。
これは「公立教員給与特別措置法」=「給特法」の改正として出ている。給特法というのは何を決めているかというと、1971年に、「公立教員の給与を4%増額調整する」一方で、「教員に残業代を支給しない」と決めた。いわば「残業代ゼロ法」。給特法を改正するんだったら、皆さんに残業代を出していない希代の悪法こそ変えるべきである。もう1つ、なぜこのときに4%の調整額になったか。その根拠は、当時、教員の平均残業時間が週1時間14分だった。その分が4%の調整額である。今とんでもない残業時間である。だいたい残業代を出さないという悪法、これこそ見直すべきだと思うがいかがか。
【教職員課総括課長】
給特法については、働き方改革における議論の中でもテーマになり、検討もされたと承知している。そういった中で、変形労働時間制の提案もあったと承知しているが、そういう検討の中で、全国的な制度でもあるので、議論されていくものだと承知している。
【斉藤委員】
異常な長時間労働が強いられている教員の現場で、いま何が求められているか。教員の大幅な増員である。
先ほど教員の指導力という議論があった。これは大事なことで、いま長時間労働が強いられていて授業の準備ができない。例えば小学校では、当時1日の授業コマ数は4コマで、今は6コマである。授業時間数は増えているが授業の準備ができない。その他にさまざまな県教委に対する報告事項などが多くなっている。学力テストもそのうちに入る。そういうところから改善して、先生一人一人が一番大事な授業の準備ができる、授業で勝負ができるという条件をつくることこそ教育行政の一番大事な仕事だと思うがいかがか。
【教職員課総括課長】
教職員の定数については委員もご承知の通り、国の標準法により定められており、一方で、定数改善計画については定められない状況が続いているということで、教育委員会としても国に対して、定数改善計画をきちんと策定し措置していただくように要望しているところであり、今後もそういった働きかけを継続していきたい。
【斉藤委員】
OECDの中で、GDP比で教育の支出額が最低なのは日本である。教育にお金を使わないで仕事だけ増やしている。異常なことである。
一般質問でも、学力テストと県の学習状況調査の話をした。小西さんもこの問題を取り上げた。全国学力テストのときに「事前学習をやった」のは、小学校63%、中学校20%。一方で、県の学習状況調査の場合は、小学校85%、中学校36%となっている。試験だけではなく、そのためにどのぐらいの事前学習をやったか。「4時間以上」が全体の30%。だったら授業の準備がますますできなくなってしまう。本来教師には裁量権があって、一番向き合っている子どもたち一人一人に、行き届いた教育を進めるというのが教師の一番大事な仕事である。こういうテストづけの教育が、教師のそういう努力・裁量を奪っていると思う。 国も県も市町村もテストをやる―テストづけのために何回も事前学習をやる。これは歪みではないか。
【学校教育課総括課長】
子どもたちの実態に合った教育・指導を行っていくには、学習指導と、それが子どもたちにどのくらい身についているかという評価ということで、学校はいわゆるテストと呼ばれるようなものを「評価の一貫」としてやっていると認識している。それから、子どもたちのつまずき等を把握して授業改善に生かすために「調査」として県の学力調査、国の調査があって、それから市町村の主体的な判断に基づいて域内の学校の学力把握のために調査を行っていると認識している。
調査については、あくまで子どもたちの学習・つまずきに寄り添った教育を行うために授業改善を推進するという趣旨で行っている。またその調査の活用については、先ほど事前学習ということがあったが、テストのための事前学習かどうかというところについては、当方として把握していない。先般改定した個々の諸調査問題の活用のガイドラインにおいては、調査実施前に授業時間や授業外の時間を使って集中的に過去の調査問題を練習するなど、数値データの上昇のみを目的にしているととられかねないような取り扱いについては、「不適切かつ効果のない活用例」と明記したところである。これまでは「不適切」としていたが、「不適切かつ効果のない活用例」というところまで示し、通知によって周知し、研修等でも周知している。
あくまで、調査を子どもたちの授業準備、授業研究にも活用していただくということが大事だと思う。
なお、さまざまな調査があるということはご指摘の通りなので、今後市町村教委等との意見交換も行いながら、全体的な調査のあり方について検討していきたい。
【斉藤委員】
間違っているのは、本来一人一人の学力、どこでつまずいているか分かるのは教師である。あなた方は、テストで点数で出さなければ安心しない。この中毒にかかっているのではないかと思うぐらいテストづけである。世界で学力一、二を争うフィンラインドでは試験がない。それでもPISAの試験をやると世界でもトップクラスになる。
ガイドラインというのであれば、きちんとそれが徹底されているか調査すべきである。教職員組合は調査してきちんとデータを示しているのだから。
・大学入試にかかる英語の民間試験の問題について
【斉藤委員】
これは全国の高校長協会が「延期してほしい」「今のまま実施してはならない」と。なぜかというと、7つの試験機関があるが、それぞれ統一したものではない。これは受験料もかかるし、どこで開かれるかも分からない。そういう民間試験が、大学入試の共通の基準として成り立つのか。いま受験生が一番不安に感じている。そういう点で、おそらく県の高校長会も大変な不安を感じている。これについてどのように把握し、県教委は対応しているか。
【高校教育課長】
たしかに場所が未定のところもあり、大学が利用する・しないというのもはっきりしないまま、今月上旬に出たのが、4年生大学660校のうち539校70.9%が利用すると。未定の学校はそのまま未定のままでいいという判断がなされた。それに従い、今までずっと国や実施団体等に要望はしてきたが、生徒の不安を何とか解消し受け入れができるようにということで、いろいろ業者等にも、高校の会場でお願いしたりという形で調整してきている。
【斉藤委員】
全国の高校長協会のアンケートでは、「大いに不安」78.9%、民間試験利用について解決しなければ課題については、「経済格差」74.5%、「試験の公平性・公正性の確保」74.3%、「地域格差」70%、「制度設計そのものが問題」60%―となっている。
全国校長会は7月に「不安の解消を求める要望書」を出した。9月10日には「延期および制度の見直しを求める要望書」を提出した。全国の高校長の圧倒的多数がこのままではできないと言っているときに、強行すること自体が教育の論理に反する。一度強行したらその弊害がずっと続く。そういう意味でも、この問題はどこでやられるか、どのぐらいお金がかかるか―出された不安というのは深刻なもので、これから教育の体系を考えるときに、こういう無謀なやり方は止めさせることが必要ではないか。
【教育長】
国の方でいろいろな動きがあって進めているところだが、そういった中で、実際に受験する生徒の不安、それから学校、指導する立場の方も不安になっていることであり、生徒の親もそうであり、その先どのような形でしっかりとした対応ができるかと。都市部であれば、さまざま会場や交通の利便性等の条件があるが、本県のように広大な面積を有している中で、どういった会場地が準備されるのか、そこで生徒たちが実際に受験するわけなので、さまざま不安を抱えながら、実際に経費もかかる想定される。
我々とすれば、とにかくそういった不安の解消に向けて、あらゆる情報の収集や、学校現場を通じて、生徒たちの不安の払拭に努めるよう、適時適切に情報収集しながら伝達していきたい。