2019年10月28日 決算特別委員会
千田美津子県議の総括質疑(大要)


 日本共産党の千田美津子です。会派を代表し質問いたします。

1.地域医療について

(1)医学部の定員増と教育・研修体制の充実について

(千田議員)
 まず、最初に地域医療について質問いたします。
 深刻な医師不足が続いております。しかし、厚生労働省の「医師需給分科会」は、将来、医師数は過剰になるという報告を出し続けており、「医師確保策」をもっぱら「医師偏在」に止める態度に終始しています。しかしこれでは根本の解決にはなりません。医師不足の解消のためには、医師の養成数を抜本的に増やし、計画的にOECD加盟国平均並みの医師数にしていくべきであり、そのためには、医学部定員を増やし、教育・研修体制の充実が必要と考えますが、いかがでしょうか。

(達増知事)
 委員ご提言の医学部の入学定員の増員は、医師の絶対数を確保する図る上で有効な解決手段の一つであると考えておりまして、県では岩手医科大学における入学定員の増について、これまで岩手医科大学と一体となって取り組みを進めてまいりました。この結果として、入学定員は当初の80名から現在の130名まで順次拡大が図られてきたところでありますが、国の方針では現状の定員増は令和3年度までの臨時的措置とされており、県ではこれを恒久的な措置とするよう国に対し要望を行っているところであります。
 今後、後高齢化等に伴う医療ニーズの多様化、医療の高度化・専門化が進むことに加え、医師の働き方改革を推進していく必要があり、医師の確保に最優先で取り組むとともに、医療ニーズの変化に対応した人材育成が重要でありますことから、大学医学部の入学定員増と併せて、大学の教育環境の充実についても引き続き国に対して強く働きかけかけてまいります 。
 
(千田議員)
 新たな医師確保策は、国が示した数式にもとづいて各都道府県が医師偏在指標を算出し、偏在解消の立場から医師確保計画を策定・実行していくというものです。しかし、医師の絶対的不足を解消しないまま、ただ自治体に偏在解消を号令しても地域間の医師の取り合いになるだけであり、知事にはこの立場で引き続き頑張っていただきたいと思いますが、再度伺います。

(達増知事)
 やはり全国的な医師の偏在ということがあって、岩手というところで見れば、それが医師不足という現象となってきているわけでありありますので、そういう岩手の中だけで偏在是正ということにしますと、医師不足状態を解消しないままの偏在是正というものはそれは困難なわけでありますので、やはり日本全体における医師不足の解消、医師の偏在の是正ということが必要と認識しております。

(2)不足する産科医確保対策について

(千田議員)
 不足する産科医確保対策として、抜本的な対策が必要ではないでしょうか。
 先日、県医師会の役員の皆さんとの懇談会があり、その席上、「胆江地域の産科医療は10年以内に壊滅する。」との発言がありました。胆江地域では、現在3人の産科の開業医さんが、昨年は346人の赤ちゃんを取り上げましたが、地域で生まれてくる子どもの約半数に過ぎず、里帰り出産も出来ません。この状況を知事はどのようにお考えでしょうか。

(達増知事)
 本県では胆江地域はじめ全県的に産科の医師が不足している中、産科診療所についても医師の高齢化の進行や、後継者不足等により分娩取扱いを断念せざるを得ない施設の増加が懸念されるところであり、地域における産科診療体制を確保していくことは重要な課題であると認識しております。
 県ではこうした状況に対応するため、胆江地域については県南圏域の中に配置された複数の地域周産期母子医療センター等、医療機関の機能分担等連携のもと、分娩リスクに応じた適切な医療提供体制を確保図っていますほか、産婦人科を専攻した奨学金養成医師に対する義務履行とキャリア形成の両立を可能とする、特例措置や産科診療所の確保に向けた取り上げた取り扱い診療所の再開、開設への支援などを行うことにより地域における産科医の確保に取り組んでいるところであります。

(千田議員)
 そこで、昨今の大変な産科医不足を解消するためには、思い切った施策、抜本的な手立てが必要であります。
 例えば、自治医科大学は、医療に恵まれない僻地等における医療の確保向上及び地域住民の福祉の増進を図るため、設立されました。医学の進歩と地域住民の福祉の向上を図ることを使命としており、地域医療に責任を持つ全国の都道府県が共同して設立した学校法人によって運営されています。今、まさに自治医科大学を設立したこのような手法で、産科医に特化した産科医大学を設置することも必要ではないかと考えますが、いかがでしょうか。

(達増知事)
 自治医科大学は各都道府県の入学枠が確保され、本県では毎年3名程度入学しており、卒業後は医師として県内の公的病院等で地域医療に従事し、義務履行後も多くは岩手に残り地域医療の中核的な役割を担いながら大きな存在感を発揮しています。
 委員ご提言の産科医の養成に特化した大学の設置については、全国各地で産科医不足の深刻な状況が続く中、その解消に向け産科医を志望する学生を集め、その育成を図る点において意義を有するものと考えます。一方特定の診療科に特化した医科大学を設置する場合の医学教育課程のありがたや、多数の産科医を教員として確保することに伴う、全国の医療機関への影響などを検討すべき様々な課題も存在すると考えられ、まずは県の奨学金による医師養成等の取組を通じて、産科医確保のための施策を講じていくことが肝要と考えるものであります

2.防災・減災対策について

(1)要配慮者利用施設の避難計画策定の状況について

(千田議員)
 防災・減災対策についてお聞きします。
 要配慮者利用施設の避難計画策定の状況についてお聞きします。国土交通省は、要配慮者利用施設の避難計画策定を2021年までに策定率を100%とし、逃げ遅れによる人的被害ゼロの実現をめざすとしていますが、県内の実態はどうなっているでしょうか。  
 私は、この間、人命優先のためにも、計画策定を前倒しして策定すべきと主張して来ましたが、策定率が上がっていない市町村の理由は何か。また、策定率がゼロの市町村が3箇所あるがこれはなぜか。

(八重樫総務部長)
 県内の避難計画策定の状況でございますけれども、本年4月1日現在の対象施設は1179施設となっておりまして、そのうち避難確保計画を策定した施設は716施設60.7%となっていたところですが、本年9月1日現在で避難確保計画を策定した施設は791施設67.1%となっているところであります。
 策定率が上がらない理由についてでありますが、ただいま申し上げました本年4月と9月策定率を比較しますと策定率が上がっていないのは3市町あり、理由といたしましては市町村地域防災計画で施設の指定を行っていないこと、対象施設への計画策定の説明が十分に行われていないことがあげられています。また策定率がゼロの市町村は3村がございますが、村の地域防災計画にまだ反映できていないことが理由としてはあげられております。

(千田議員)
 避難計画は、多発する豪雨災害から人命を守る上で、まさに一刻を争う大事な課題であり、今回の連続する台風でも計画がないまま浸水した施設も多い。それ故、策定が遅れている施設には県も特段の支援を行い、100%の策定をめざすべきではないでしょうか。

(八重樫総務部長)
 県ではまずは計画未策定策施設が多い市町村を重点的に支援することとしておりまして、今年度は10月に奥州市で開催された避難計画未策定策施設向け講習会へ講師として参加し奥州市を支援したところであります。
 今後は策定率ゼロまたは策定率が上がっていない市町村向けに、市町村消防防災主管課長会議など様々な機会を通じて市町村地域防災計画に早期に反映させるよう働きかけるとともに、市町村で施設向け講習会等を開催する場合には講師を派遣するなど、積極的に計画策定促進を支援していきたいと考えています。

(2)避難行動要支援者名簿と個別計画の作成状況について

(千田議員)
 避難行動要支援者名簿と個別計画の作成は、どういう状況にあるでしょうか。

(千葉副知事)
 本年5月1日現在で行った調査によりますと、避難行動要支援者名簿は県内全市町村で策定されておりまして、その総数は85,589人で前年同期から4,166人の増となっております。
 避難行動要支援者の避難支援等を行うための個別計画は、県内15市町村において17,103人分が策定済みとなっており、前年同期から2団体315人分の増となっております。個別計画を策定していなかった18市町村のうち、現時点では新たに策定に着手したのが1団体、年度内に着手する見込みが1団体となっておりますほか、2団体で具体的な検討が進められており取り組みが拡大しているところでございます。

(3)風水害対策支援チームの取り組み状況と課題について

(千田議員)
 答弁にもありましたが、要支援者名簿の数が1年前と比べて約4、166人増えたのに対し、個別計画の作成は315人分しか増えておらず、作成率が20.6%から逆に20%に減っている。これは大問題であり、今後充分な対応をお願いします。
 風水害対策支援チームの活動についてですが、今回の台風への対応も含め、風水害対策支援チームの取り組み状況と課題についてお聞きします。

(八重樫総務部長)
 風水害対策支援チームではこれまで台風等による風水害が予想される場合に、河川や気象に関する情報などをもとに、被害が予想される地域の絞り込みなどを行うとともに、市町村が行うべき対応について助言を行ってきたところであります。
 今回の台風第19号の接近に際しては、市町村の警戒体制の構築のため風水害対策支援チーム会議を開催し、市町村に対し特に警戒を要する地域や、明るい時間帯に避難を完了すること等について2回の助言を行い必要な対応を促したところであります。
 市町村への助言にあたっては、適切なタイミングと風水害が予想さる地域の絞り込みが重要と考えておりまして、さらには助言の時期や内容を高めていく必要があることから、今回の助言に対する市町村の意見を伺いながら必要な対応について検討していきたいと考えております。

(4)避難情報について

(千田議員)
 避難情報についてお聞きします。
 避難情報は多くの住民のいのちを守るうえで、大変重要なものであり、今回の台風でも生死を分ける重要なものとなりました。そこで、避難勧告と避難指示が出されましたが、その違いについて住民にはどう指導・周知がなされているでしょうか。
 また、住民の避難行動をどう評価しているでしょうか。さらに、県内でもいくつかの市町村において、真夜中の避難勧告、避難指示が出されましたが、これへの対応の状況はどうだったでしょうか。

(八重樫総務部長)
 避難勧告等についてでありますが、国におきましては平成30年7月豪雨の教訓を踏まえ、住民の方々が避難情報等の意味が直感的に理解できるように、避難勧告等に対する関するガイドラインを改訂し、これまでの言葉による情報に加えて、警戒レベル5段階の数値で示すこととされました。これによりレベル3は避難準備・高齢者等避難開始、レベル4は避難勧告・避難指示緊急とされ、避難勧告については災害発生のおそれがある場合に、避難指示緊急については地域の状況に応じて、緊急的または重ねて避難を促す場合に発令することとされました。
 県においては、今回のガイドラインの改正の内容について、市町村消防防災主管課長会議で周知したほか、県民に対しては「いわてグラフ」や「ホームページ」を活用して広報を行いました。また市町村におきましては、広報への掲載や、地区及び消防団の集まり等で周知を図っていると聞いているところです。今回の台風第19号の接近時における市町村の避難勧告等の発令状況を踏まえ、今後とも住民への効果的な周知がなされるよう取り組んでいきます。
 続きまして住民の避難行動についてでありますけども、県からの明るい時間帯の避難完了の助言を踏まえ、ほとんどの市町村では警戒レベル3の高齢者などは避難に該当する避難準備・高齢者避難開始、または警戒レベル4の全員避難に該当する避難勧告の発令を12日の日中に行っておりまして、迅速に警戒態勢が取られたものと認識しております。
 避難者数は災害情報システム上で確認しているところでございますが、市町村によるシステム入力時間と実際に避難所に避難した時間とではタイムラグがあり、実際に真夜中に避難したかどうかは把握できていません。県としては市町村からの実際の避難を確認することなどにより、今後の災害においてより適切な住民避難につなげるよう取り組んでまいりたいと考えております。

(5)避難所の環境改善について

(千田議員)
 避難所の環境改善についてお聞きします。
 連続する台風災害において、テレビで映し出された映像の中で問題だと思うのは、赤ちゃん連れの家族などが、大勢の人が避難している体育館などでは赤ちゃんの泣き声が迷惑になるため、大部屋では過ごすことができず、車等に移動している姿をみたことでした。
 このような配慮が必要な方々が安心して避難できる別の部屋などを当初から避難所には予定しておくべきではないかと考えますが、本県ではどのように対応しようとしているのか伺います。

(千葉副知事)
 本県では東日本大震災津波の経験を踏まえ、避難所を運営する市町村の参考としていただくため平成25年度に市町村避難所運営マニュアル・作成モデルを作成したところでございますが、この中で要介護高齢者、在宅療養者、障害者、乳幼児や妊産婦、感染症患者等特別な配慮を要するよう要配慮者のために、避難所におきましては医務室の近くなどには特設避難所を設けるように記載しているところであります。
 また避難所運営において配慮すべき点といたしまして、これら要配慮者の状態に応じて、本人や家族の希望を確認した上で、福祉避難所や医療機関等への移送を手配するよう記述し、配慮を求めているところでございます。
 各市町村の避難所運営マニュアルにおきましても、福祉避難室等要配慮者等への特別な部屋を設置するとともに、福祉避難所や医療機関等への移送についても記述されているところでございます。
 今後の災害におきましても避難所運営の主体でございます、市町村や福祉避難所となります施設等関係団体、医療機関等と連携しながら、避難を余儀なくされた要配慮者の方々の生活の質の維持向上に取り組んでまいりたいと考えております。

(6)災害と地球温暖化対策について

(千田議員)
 災害と地球温暖化対策についてお聞きします。近年の豪雨災害等の多発は、全国各地で大変な被害をもたらしております。これらは地球温暖化と大きな関係があるとともに、今回のようなスーパー台風が常態化するとの指摘があります。
 日本の年平均気温が長期的には100年あたり約1.2度の割合で上昇し、特に1990年以降、高温となる年が続出している事に対し多くの関係者が警鐘を鳴らしています。今まさに、防災対策の充実とともに、温室効果ガス排出・温暖化対策に真剣に取り組む必要があると考えますが、知事のご所見をお聞きします。

(達増知事)
 地球温暖化の進行に伴い、今後猛暑や豪雨のリスクがさらに高まることが予測されていることから、温室効果ガスの排出削減は喫緊の課題であります。地球温暖化対策は環境分野のみならず、エネルギー・産業経済・交通運輸・林業など各分野にわたる施策を総合的に推進していくことが重要であります。
 そのため県としては、知事を本部長とし、副知事・各部局長等で構成する岩手県地球温暖化対策推進本部を中心に、地球温暖化対策や再生可能エネルギーの導入、気候変動への適応策の推進に向けて、全庁的な施策推進の取り組みの強化や関係部局による連携を図っているところであります。自然環境や資源エネルギー、社会基盤などを持続可能なものとし、次世代に引き継いでいくことが求められており、低炭素社会の実現に向け、引き続き推進本部を中心としながら全庁あげて地球温暖化対策に取り組んでまいります。


3.児童虐待への対応について
 
(1)県内の児童虐待相談への対応状況について

(千田議員)
 児童虐待への対応についてお聞きします。
 昨年の東京目黒区の死亡事例や、今年に入り千葉県野田市での死亡事例、そして直近では札幌市の死亡事例など、子どもが犠牲となる事件が多発しており、県内でも昨年北上市で男児が死亡しています。いずれも、事例の重症度を高く見積もらなかった中で、見落としが生じ、基本的にとるべき対応として蓄積されてきた手順が充分に実施されていなかった結果、発生したのではないかと言われています。
 県内の児童虐待相談の県、市町村それぞれの件数と、児童相談所の相談種別ごとの受け付け状況は、どのような状況でしょうか。また、児童福祉司の配置の実態と一人当たりの相談対応件数はどうなっているでしょうか。

(千葉副知事)
 県内の児童虐待相談への対応状況でございますけども、平成30年度におきます本県の児童虐待相談対応件数は、児童相談所が対応したものが前年度から90件増の1178件、市町村が対応したものが388件増の805件となっており、県全体では1983件と前年度に比べ478件31.8%増加しているところでございます。
 また児童相談所におきます相談種別ごとの受付状況は、今申し上げました児童虐待対応件数1178件含む養護相談は1407件、障がい相談が1077件、育成相談が281件、非行相談が93件、保健相談が2件、その他の相談が105件で合計2985件と前年度に比べて162件5.8%増加しているところでございます。

(2)児童相談所の体制の強化について

(千田議員)
 児童相談所の体制の強化についてです。
 先日、児童相談所を訪問した際、新規相談は1人50件から60件、継続も含めると100件ともお聞きしました。全国的にも1人当たりの相談対応件数は140件程度とも言われています。
 ちなみに、イギリスでは一人当たり16.8ケースであり、欧米では約20ケース程度と言われておりますので、いかに日本の体制が低いのかが明らかであります。
 このように日本の一人当たりの相談対応件数が100件を超えている状況では、一つ一つのケースにしっかりと対応することは現実的に無理ではないかと考えます。日本では1人当たり相談件数40件を目標としていますが、私はさらに踏み込んで諸外国並みに人員増や組織体制の強化が必要と考えますがいかがでしょうか。

(千葉副知事)
 年々このように増加しております児童虐待相談に適切に対応していくため、県では児童福祉士等専門の職員の増員に努めているところでございまして、今年度は専任の児童福祉士を7名増員し福祉総合相談センターに25人、一関児童相談所に11人、宮古児童相談所に8人ということで合わせて44人、この中には一部兼務職員もございますが44人を配置し、令和4年度から適用される国の配置基準を前倒しで達成しているところでございます。
 またこの44人をベースに、児童福祉司1人当たりのへの対応相談件数について、平成30年度の児童虐待相談対応件数を前年度からの継続件数の合計件数から換算しますと、1人当たりの件数は37.5件となっておるところでございます。なお、ただいま委員の方からお話のございました1人50件から60件という数字につきましては、専任の児童福祉司で割り返した場合の数字でご説明したものと考えております。
 次に今後の体制の強化についてでございますが、先ほど申し上げましたことと一部重複いたしますが、昨年12月に国から示されました児童虐待防止対策、そのうち対策体制総合強化プランでは児童福祉士1人当たりの業務量が40ケース相当ととなるよう、平成31年7月時点で4万人に1人以上である児童福祉士配置基準を、令和4年度当初までに3万人に1人に引き上げることが盛り込まれたところでありございます。
 従いまして今ご答弁申し上げましたとおり今年度児童福祉司7人を増員いたしまして兼務職員を含め44人を配置し、国の基準を満たしたところでございまして、相談対応件数も37.5件と国の目標であります40件は達成したところでございます。しかしながら本年度スタートいたしました、「いわて県民計画2019〜2028政策推進プラン」におきましては、児童相談所の業務体制をさらに強化するまで令和4年度までに専任の児童福祉士のみで1人当たり40件とする指標を掲げたところでございまして、引き続き児童福祉業務を担う専任職員の計画的な増員を図ってまいること しております。

(3)市町村の体制強化について

(千田議員)
 私は広い岩手県にとっては、人口だけではなく面積も勘案した体制の強化が必要だと考えますし、現在3箇所の児童相談所の設置箇所をもっと増やすべきだと考えます。児童相談所が、住民にとってより利便性が高く、身近な存在になる事が必要ではないかと考えますが、いかがでしょうか。
 市町村の体制の強化についてお聞きします。虐待相談では身近な市町村への相談が、増えています。北上市の事例などからも、市町村における体制の充実と人材育成が重要と考えますが、県内市町村の現状はどうなっているでしょうか。また、市町村の「子ども家庭総合支援拠点」の整備の現状はどうなっているでしょうか。

(千葉副知事)
 児童相談所の増設についてでございますが、児童福祉法におきまして市町村が子育て家庭の様々な相談に応じ、身近な窓口になることが求められていることに対してまして、児童相談所は児童に関する専門的知識及び技術が必要とされる相談に応じることとなっております。そのため児童福祉司や児童心理士等の専門職員が児童虐待に対応するための専門性を身につけるためには、長期的に相当な期間をかけて、組織的に教育訓練を行うことが必要不可欠でございまして、また専門的な児童相談体制にはこのような訓練を受けた一定規模の職員数が必要と考えております。
 従いまして、県といたしましてはまずは現状の3児童相談所体制でこの増員となっております。児童福祉司、児童心理士等の専門職員を育成しながら、市町村が教育機関、警察などの参画を得て設置しております、要保護児童地域対策協議等、関係機関との一斉の連携による地域の見守り体制の充実を図り、児童虐待の発生予防から、早期発見、早期対応、再発予防に至るまでの児童虐待防止対策のを進めていくことがまずは当面の取り組みと考えております。
 次に市町村の体制強化についてでございますが、現在、県内の市町村では虐待相談に関係機関が連携して対応していくために、今申し上げました市町村要保護児童対策地域協議会におきまして、対応ケースの進行管理と、全体調整を行う専門職員として74名の有資格者を配置しまして、昨年度に比較して15名増加しているところでございます。これらの専門職員は虐待通告の対応などにおいて高度な知見を必要といたしますところから、その人材の確保と育成及び専門性の向上が課題となっておりまして、児童福祉司任用前講習会や調整担当者研修などを通じて対応力のさらなる強化を図っているところでございます。
 また児童福祉法におきまして市町村の虐待相談対応の中心的役割を担う組織でございますこども家庭総合支援拠点につきましては、昨年度設置いたしました盛岡市についで本年度遠野市が設置したところであり、今後一市において設置を検討していると伺っているところでございます
 国におきましてはこの子ども家庭総合支援拠点が全市町村で設置するよう求めているところでございまして、県といたしましては今申し上げましたように、先行事例あるいは国庫補助制度の活用などについて情報を提供することなどにより、市町村の体制強化の取り組みを支援をしてまいりたいと考えております。

(4)児童虐待を生みださない地域づくりについて

(千田議員)
 3年未満の経験の少ない職員が増えてきているとういう現状もあります。これらの改善も含め前向きな検討・対応をお願いいたします。
 最後に、児童虐待を生みださない地域づくりについてお聞きします。
 子どもは国の宝、地域の宝であります。これまで全国で虐待により子どもが犠牲となる痛ましい事件が多発している背景には、子育て家庭が地域から孤立していることが原因の一つであると考えられます。児童虐待を生みださないためには、子育て家庭を地域から孤立させない、児童虐待を許さない地域づくりが重要と考えますが、知事の所見を伺います。

(達増知事)
 子育ての孤立化を防ぎ、児童虐待の発生を予防するためには、育児等の相談しやすい環境の整備が必要でありますことから、県では児童虐待防止アクションプランに基づき、市町村等と連携し、民生委員、児童委員、ボランティア、子育て支援組織などの地域の資源やネットワークを活用しながら、子どもや子育て家庭への支援の充実に努めてまいりました。
 また、昨年4月に北上市で発生した虐待による死亡事案の検証報告において、地域での見守り支援体制の充実や、住民に対する意識啓発などにより地域全体で児童虐待防止の取り組みを推進するよう提言されたところであり、子供や保護者を支えていくための地域づくりの重要性を改めて認識したところであります。
 県では児童虐待防止フォーラムの開催や、オレンジリボンキャンペーン等による県民への啓発を行い行うほか、警察との相互連携の推進、民生委員、児童委員を対象としたスキルアップ研修などにより、地域による見守り活動等を支援し市町村と連携しながら児童虐待のない地域づくりを推進してまいります。