2019年10月30日 決算特別委員会
復興局に対する質疑(大要)
・被災者の孤立化・孤独死の実態と防止対策について
【斉藤委員】
これまでの孤独死の状況について、仮設住宅、災害公営住宅それぞれ示していただきたい。昨年度、今年度の状況はどうなっているか。
【生活再建課総括課長】
令和元年9月末現在で、一人暮らしで亡くなられた後に発見された孤独死の方については、これまでに応急仮設住宅で46人、災害公営住宅では45人となっている。このうち、昨年亡くなられた方は、応急仮設住宅で3人、災害公営住宅で18人となっている。本年については9月末現在で、応急仮設住宅では該当なし、災害公営住宅では11人となっている。
【斉藤委員】
昨年の18人というのは前年3倍で、今年もすでに11人が亡くなられ、昨年に近いレベルで推移している。特に現段階では災害公営住宅に8800人余が入居しており、高齢化・孤立化・孤独化が進行しているのが深刻な実態としてある。
災害公営住宅の一人暮らし高齢者の見守りとコミュニティの確立の取り組みが大事だと思うが、どういう取り組みになっているか。
【生活再建課総括課長】
高齢者の方々が安心して暮らすためには、個々の世帯の状況に応じた支援とともに、自治会等を中心とした地域における支え合いが重要と考えている。このため県では、岩手県社協と連携し配置している生活支援相談員や市町村が配置している支援員等が個々の世帯の状況に応じた頻度などにより、訪問活動や相談支援を行っているほか、被災者が地域で孤立を深めることがないよう自治会の設立、活動支援や地域におけるサロン活動等の支援を行っている。
【斉藤委員】
抽象的な答弁で、それがやられていないから聞いているので。
災害公営住宅における一人暮らし高齢者の人数・率はどうなっているか。
【生活再建課総括課長】
令和元年8月末現在で、災害公営住宅に入居している方は9041人、うち65歳以上の高齢者は3993人・44.2%、そのうち高齢者の一人暮らし世帯は1660世帯・32.5%となっている。
【斉藤委員】
県内で一番大きい災害公営住宅では、ここは自治会もあって活発にやっているところだが、一人暮らしの高齢者は行き場がなく、隣の市のホールにずっといる。これは部屋に一人いるよりずっといいが、行き場がない。「仮設の方がよかった」という声も出されている。仮設にはコミュニティがあった。
一般質問でも取り上げたが、県営の災害公営住宅で集会所がどのぐらい使われているかというと、月に2〜5回、週1回程度である。仮設住宅の時のような集会所・相談室のようにはなっていない。
そういう点で、いろんな地域から入居してきた高齢者が多い中で、自治会の設立を支援することと合わせて、一人一人のコミュニティを作っていくということに思い切った支援をやらなかったら、バラバラの団地になってしまう。そういう認識があるか。
【生活再建課総括課長】
コミュニティについては、生活支援相談員の方々が、頻度的には多いところでは週1回、また市町村の機関とも連携しながら週1回ペースぐらいで各戸を回れるようにしていただいているとうかがっている。
生活支援相談員のもう1つ役割としては、地域における支え合いのところで、各自治会やコミュニティの部分でサロン等の開催の支援などについても行っているとうかがっているので、これらについてさらに進めていただけるよう協力していきたい。
【斉藤委員】
あまりにも認識が弱いと思う。
社協の生活支援相談員はどのぐらい訪問しているかというと、重点見守りは最高で週1回、通常は月2回。これはダイレクトの訪問なので、近所との関係や自治会との連携もない。元気な高齢者もいる、要支援の高齢者もいるが、コミュニティというのは一緒である。これを分けてしまったらコミュニティができない。高齢者一人一人の人間的な関係をどうつくっていくのか。生活支援相談員は今どんどん縮小して、訪問が少なくなっている。
8800人が入居している中で、44%が65歳以上、32.5%が一人暮らしと。この方々の見守りとコミュニティを一体で支援すると。県営の場合は、県土整備部が2人の支援員を配置している。1人は盛岡、1人は沿岸、たった2人である。これでは対応できない。本当に孤独死をなくそうと思ったら、自治会を支援するし、使われていない集会所を使われるようにして、そこをコミュニティの拠点にしていくと。
船戸助教も言っているが、「災害公営住宅というのは、ある意味高齢化社会の先取りで、そこでの取り組みは従来の延長線上ではいけない。行政が積極的な支援をしないともたない」と。行政が新たな形で、人を配置するにしても、コミュニティ形成の具体的な取り組みをするにしても、そういう大事な局面にあるのではないか。そういう認識でやらないと、孤独死防止対策にもならないと思うがいかがか。
【復興局長】
災害公営住宅と仮設住宅でコミュニティが違うというご指摘だったが、ある意味災害公営住宅は新興住宅地が新たにできたようなものであり、そこに住む人、働き盛りの人が本来新興住宅地に入るが、高齢者が多いという現状があると思う。
ご指摘の通り、重点見守りで週1回というのはその通りで、個別の訪問をすることが業務になっているので、広がりがないと言えばその通りだと思っている。かといって、生活支援相談員なりが毎日行けるぐらいの数を用意できるかといえばなかなかできない話だと思うので、あくまでも自治会という部分にある程度お願いするところは仕方がないのかなと思っている。そこで、集会所を活用し、鉄の扉から高齢者を外に出していくというような、そして皆さんで仲良くやっていける取り組みがないのかということで、これは復興局だけでもできない話であるので、例えば、市町村で行っている「健康づくり」など高齢者向けの体操のようなものを行っているが、そういったことを活用した上での取り組みができないかということで、生活再建課の方でも、沿岸部の担当者会議の中でそういった話もさせていただき、個別に市町村でいい素材を持っており、各市町村で熱心に取り組みをしようと思っているところもあるので、そういったものと組み合わせた形で何とか自治組織、コミュニティをつくる手助けができるように努めていきたい。
【斉藤委員】
高齢者の見守り、コミュニティ形成支援というのは、おそらく10年が経過しても国も必要な事業だという形になると思う。問題は、そのときに県はこういう取り組みをしているという風にしないと、継続の事業が見えない。本当に今必要な取り組みをしっかり県としてやって、継続させていくと。
かなりきめ細かにやっているのは大船渡市だと思う。これも被災者支援総合交付金事業だが、専門家の保健師・看護師・栄養士が見守りしている。そういう取り組みをぜひ研究して、事業をやっていなかったら継続できないので、思いきってやっていただきたい。
・被災者の住宅再建への支援の実績と今後の見通しについて
【斉藤委員】
決算書でも、これは市町村と協力した100万円の支援だと思うが、6億446万円余の決算額なっている。昨年度までにどれだけの住宅支援の実績となったか。
今後、自立再建の見通しはどうなっているか。まだ住宅を確保していない被災者の状況を含めて示していただきたい。
【生活再建課総括課長】
国が実施している被災者生活再建支援制度に加え、県独自の被災者住宅再建支援事業を市町村と共同で実施している。本年9月末現在で、被災者生活再建支援金を活用して住宅を建設・購入した件数は10584件で、被災者生活再建支援金に上乗せする形で実施している被災者住宅再建支援事業費の補助金支給件数は9618件となっている。
9月末現在で応急仮設住宅等には527世帯が入居しており、令和3年3月まで供用期間の延長を決定している世帯は97世帯、令和2年3月で供用期間が終了する世帯は330世帯となっている。供用期限が経過して入居している世帯が100世帯となっている。それらの被災者の方々の住宅確保の意向だが、令和3年3月までに供用期間を延長した97世帯のうち、今後完成する災害公営住宅に入居予定が22世帯、自力再建が75世帯となっている。令和2年3月で供用期間が終了する330世帯については、災害公営住宅へ入居予定世帯が40世帯、自力再建予定は290世帯となっている。供用期限経過後も入居している100世帯については、災害公営住宅入居予定が30世帯、自力再建予定が58世帯、賃貸住宅や施設入所等の予定が9世帯、意向未定が3世帯となっている。
県としては、応急仮設住宅等に入居している世帯が一日も早く恒久的な住宅に移行できるよう、岩手内陸避難者支援センター等が相談支援を個別に行っているところである。ケース検討の実施などにより、世帯ごとの具体的な課題を関係機関と共有するなどして、引き続き市町村や関係機関と連携しながら、被災者一人一人に寄り添った支援を最後まで実施していきたい。
【斉藤委員】
生活再建の土台である住宅を確保していないという方々が527世帯あると。答弁では、423世帯が自立再建を目指すと。まだまだ自立再建を目指す方々が少なくないので、しっかり最後まで支援して住宅確保できるようにしていただきたい。
・生業の再生の取り組みについて
【斉藤委員】
昨年8月に実施された事業所状況調査では、「震災前の売り上げを回復した」との回答が全産業で45.5%、水産加工業で33%、卸売・小売で31.7%、製造業で47.5%だった。
グループ補助金の借金返済も迫られている中で、売り上げが震災前の半分以下・3割台という、再建が成り立たないような状況になってきているのではないか。
特に水産加工業の場合には、災害並の大不漁に直面し、原材料の高騰で大変な状況になっていると思うが、この状況をどう受け止め、対応・支援してきたか。
【まちづくり産業再生課総括課長】
仮設店舗の方はまず本設への移行、それから本設で再開されても持続的・安定的な経営のための支援が必要と考えており、県としては、販路開拓や売り上げ増加に向けた県内外における商談会の開催等と合わせ、商工指導団体等と連携しながら、宮古・釜石・大船渡の各商工会議所にそれぞれ1名の経営支援スタッフを配置するなどして、経営実態の把握や相談対応、新たな経営計画の策定支援など、事業所のニーズに応じたきめ細かい支援を行ってきたところであり、引き続き取り組んでいきたい。
【斉藤委員】
やはり危機的状況なのだと思う。せっかく再建し、借金を抱えながら、しかし売り上げが震災前の半分に届かないと。そういう中で特に水産の場合には大不漁に直面していると。再建を成し遂げさせるという強い決意で、金融業界とも連携して金融支援を強化するとか、原材料を確保する支援だとか、今までの延長線上ではない支援をしないと、災害並の危機的な状況なので、そういう危機感をもって対応すべきではないか。
今年も8月の事業所調査をやっていると思うが、速報値等は出ているか。
【まちづくり産業再生課総括課長】
危機感の認識ということだが、沿岸の基幹産業である水産加工業の事業者に対しての補助も持っているが、やはり原材料不足というお話は私ども歩いていて耳にするところであり、農林水産部等とも連携しながら危機感を持って取り組んでいきたい。
事業所庁舎については、昨年度までこの形で行っていたが、数値の目立った動きが見られないこと、あるいは国の方で重複する調査もあるということで、本年度は衣替えをさせていただき、被災事業者だけではなく、震災後に起業した事業者や被災していない事業者も含めた状況把握も必要ではないかということで、商工会議所・商工会を対象とした調査を現在行っており、11月中に取りまとめたいと考えている。
・復興基金について
【斉藤委員】
復興基金の活用実績と、残額の見通しはどうなっているか。
【復興推進課総括課長】
平成23年度〜30年度までに、暮らしの再建という部分では、住宅再建費用の一部助成、国民健康保険・後期高齢者医療制度における一部負担金免除に要する経費、安全の確保では、再生可能エネルギー導入促進に向けた環境整備、生業の再生では、中小企業の事業展開や被災地における起業の支援や産業創出など47事業・250億円余に基金を活用してきた。
平成30年度においては、27事業・23億円を活用し、30年度末の残高は約53億円となっている。
今年度については、今後の基金活用にかかるシミュレーションということもやっているが、令和元年度末までに累積で約267億円を充当する見込みとなっており、残高は約36億円と見込んでいる。