2019年10月30日 決算特別委員会
議会事務局に対する質疑(大要)
・受動喫煙防止対策について
【斉藤委員】
健康増進法の一部を改正する法律の趣旨、具体的な内容はどうなっているか。
全国の都道府県議会における受動喫煙防止対策の実施状況、県の実施状況、県内市町村議会の実施状況はどうなっているか。
【議会事務局長】
健康増進法の一部改正について。受動喫煙防止対策については、平成30年7月25日、健康増進法の一部改正の法律が公布され、平成31年2月22日に、厚労省健康局長から改正法の施行に関し、健康増進法の一部を改正する法律の施行についての通知があった。一部改正の趣旨については、望まない受動喫煙防止を図る観点から、多数の者が利用する施設等について、その区分に応じ、当該施設等の一定の場所を除き喫煙を禁止するとともに、当該施設等の管理権限者が講ずべき措置等を講ずることとしたものである。具体的内容については、学校や病院などの子どもや患者が主たる利用者となる施設や、行政機関は第一種施設として「敷地内禁煙」となり、これら以外の事務所や工場、飲食店等は第二種施設として原則「屋内禁煙」「喫煙専用施設のみ喫煙可能」となる施設に分類されるものである。
全国の都道府県議会における受動喫煙防止対策の実施状況は、令和元年9月1日時点で、「敷地内全面禁煙」5府県、「敷地内禁煙で敷地内に喫煙専用施設あり」7府県、「建物内禁煙」9都県、「建物内禁煙で喫煙専用施設あり」16道県、「その他」10県となっている。また、県内市町村議会の実施状況は、6月19日時点で、「敷地内全面禁煙」2市、「敷地内禁煙で喫煙専用施設あり」10市町村、「建物内禁煙」10市町、「建物内禁煙で喫煙専用施設あり」10市町村、「その他」1村となっている。
【斉藤委員】
全国で21都府県が建物内禁煙を含めて実施されている。きわめて重要なことだと思う。ましてや県内市町村議会を見ると、22市町村議会が建物内禁煙だと。こうした中で、県議会も敷地内全面禁煙に、本庁と一緒に実施すべきだと思う。
私たち自身が制定した岩手県の議会基本条例、がん対策推進条例の趣旨と内容について簡潔にしめしていただきたい。
【議会事務局長】
岩手県議会基本条例については、「二元代表制における県議会が担う具体的な役割と、議会を構成する議員の活動機関、さらに県民主権の実現に向けた実効ある仕組みを明らかにするとともに、議会改革に継続的に取り組み、県民の付託に応える議会のあり方を不断に追及するものであり、県議会議員が県民から選ばれた県民全体の奉仕者であるという誇りと、議会の果たすべき役割を一層自覚するとともに、この条例の内容を実践していくことにより、県民の意向を反映し、県民に開かれた議会、県民に信頼される議会を構築し、県民の福祉の向上および県政の発展に寄与することを決意」し制定されたものである。条例の主な内容は、議会の役割および議員の活動内容、県民と議会との関係、知事と議会との関係など、議会に関する基本的事項を定めている。
岩手県がん対策推進条例については、がんによる死亡の減少や、がん患者の生活の質の向上のためには、がん予防から早期診断、早期治療・手術・放射線療法および化学療法を組み合わせて行うがん医療・緩和ケアまでの包括的ながん対策が必要であり、多岐にわたる分野の取り組みを総合的かつ計画的に実施していく必要があることから、県・市町村・保健医療従事者・事業者・教育関係者・がん患者およびその家族・その他の県民が一体となって、がんの予防および早期発見、治療などがん対策に一層取り組むため、その基本的な事項を定めたものである。条例の内容としては、がん対策の推進に関し、基本理念、県・県民および保健医療従事者の責務ならびに市町村・事業者・教育関係者の役割を定めること、がん予防、がんの早期発見、医療従事者の育成および確保、がん医療の充実、緩和ケアの充実など、がん対策の推進に関する基本的施策を定めること、がん対策の推進に関する施策を実施するため、財政上の措置について定めることなどと認識している。
【斉藤委員】
県議会議員が自ら制定した議会基本条例では、「議会改革に継続的に取り組む」「県民の付託に応える議会のあり方を不断に追及していく」と明記され、県議会が自ら提案して制定したがん対策推進条例では、「がん対策は緊急かつ重大な課題である。がんの予防および早期発見の推進とともに、質の高いがん医療を受けることができるように」というのが条例制定の目的だった。
そして具体的にがん対策について、第6条の「県民の責務」では、「県民は、喫煙、食生活、運動、その他の生活習慣および生活環境が健康に及ぼす影響等、がんに関する知識を持ち、がんの予防に必要な注意を払うとともに、積極的にがん検診を受けるよう努めなければならない」と。冒頭に喫煙対策が指摘されている。第2章第10条では「県はがんの予防を推進するために、次に掲げる施策を講じるものとする」ということで、最初に「喫煙、食生活、運動、その他の生活習慣、生活環境、健康に及ぼす影響、がんの原因となる恐れのある―」とある。がん対策の第一の課題として喫煙対策が提起されている。第10条の(2)では、「学校、病院、官公庁、その他公共性の高い施設における受動喫煙の防止」ということが条例で決められたことである。これは議会が提案した条例である。
こうした中で、自らがん対策を推進する決意を踏まえて条例を制定したとするなら、受動喫煙防止に岩手県議会は先頭になって取り組むべきではないか。制定した条例の趣旨はそういうことではないか。
【議会事務局長】
がん対策推進条例については、がんに対する県の責務、予防、対処の実施となっていると思う。また議会における受動喫煙防止対策については、私の方からお答えするべきことではないが、いま議会運営委員会で検討しているので、議員間で十分協議の上、お決めいただくものと考えている。
【斉藤委員】
議会運営委員会で議論し、これは全議員の協議・合意に基づいて最終的には決まると思う。そういう全議員の共通認識が必要だという立場で取り上げている。
実はこれも政府の研究会の報告書だが、年間15000人が受動喫煙で死亡している。受動喫煙による超過医療費は約3200億円と。これは科学的な調査結果で、このように報告されている。ある意味これは疑問の余地のない事実である。がん対策推進条例まで制定した岩手県議会が全国に遅れをとることがあってはならない。本庁と一体にがん対策を進める意味でも、岩手県議会ができるだけ早く敷地内禁煙に取り組むよう、皆さんにも求めたい。
それで、県議会棟に日本たばこから「喫煙室整備の寄付」を受けたと。この経過がきわめて問題だと思うので、その経過を改めてしめしていただきたい。
【議会事務局長】
現在、議会棟2階の渡り廊下に設置されている喫煙室については、議会運営委員会において平成22年度から、議会棟内の全面禁煙と分煙にかかる議論が建設的に行われ、平成26年4月1日の議会運営委員会において、喫煙室の設置場所が決定された。さらにその方針を踏まえ、庁舎管理者である管財課に喫煙室の設置を依頼したものであり、その後、管財課からは、日本たばこ産業株式会社からの寄付行為により設置する旨報告を受けたところである。
【斉藤委員】
日本たばこから寄付を受けたというが、これは日本たばこ自ら寄付の申し出があったのか、県から打診をしたのか。
【議会事務局長】
その経緯については承知していない。管財課からは、日本たばこからの寄付行為という旨だけ報告があった。
【斉藤委員】
これはきわめて重大で、日本たばこ産業株式会社というのは、受動喫煙防止の利害関係者である。その利害関係者から寄付の提供を受けてはならないというのが、たばこ規制枠組み条約の精神である。日本たばこから寄付の要請があったのは大問題で、もちろん県が寄付を要請したらもっと大問題。こういうことが県議会にまったく知らされず設置されたこともきわめて重大だった。
・県議の海外視察の実施状況について
【斉藤委員】
2018年度・2919年度の都道府県議会における海外視察の実施状況はどうなっているか。
岩手県議会の実施状況、一人当たり費用、総額はどうなっているか。
【議会事務局長】
2018年度においては、「実施」30府県、「実施せず」が本県を含め17都道県。2019年度は8月1日現在で、「実施」15県、「実施せず」8県、「未定」24都道府県となっている。
岩手県議会は2018年度および2019年度(改選前)は、議員から希望がなく海外視察は実施していない。
参考として2017年度は、派遣議員数12名、旅費・現地通訳料等総額で1073万円余、一人当たり89万円余となっている。2016年度は、派遣議員数12名、旅費・現地通訳料等総額で939万円余、一人当たり78万円余となっている。
【斉藤委員】
2018年度は岩手県議会を含め17都道県で実施しておらず、2019年度は統一地方選挙があったということもあり、実施したのは15県にとどまっている。岩手県は2年続けて実施せずということだった。
県議会の海外視察というのは、いくつか問題がある。1つは、東日本大震災津波からの復興途上で、議員が公費を使った海外視察を行うことは県民の理解が得られるのか。
2つ目の問題は、県議の特権的視察ということである。県議になれば4年に1回海外視察ができる。こういう仕組みでいいのか。
3つ目には、政務活動費があるわけで、政務活動費を使って海外視察を行っている議員もいる。本来ならこういう形でやられるべきではないのか。必要な海外視察があるのであれば、その都度議会で、どういう目的で必要なのかということを議決して行うという可能性は否定しない。全国でそういう例もあるので。
そういう意味で海外視察のあり方というのは改善されるべきではないか。全国の状況を事務局長はどう受け止めているか。
【議会事務局長】
議員の海外行政視察については、平成14年6月28日の議会運営委員会において、決定され、議員派遣の運用に基づき実施しているところであり、実施に際しては、議会の議決を経て議員派遣として行っているところである。制度上、議会事務局としては、議員の皆様が円滑に視察できるようにサポートしていきたい。
・政務活動費の領収書のホームページでの公開について
【斉藤委員】
これは改選前の議会運営委員会においても検討され、結論が出ていなかった。継続協議の課題だったと思う。
全国都道府県議会における政務活動費の領収書のホームページでの公開状況はどうなっているか。
県内市町村議会での公開状況はどうなっているか。
【議会事務局長】
岩手県議会事務局において調べたところ、9月30日現在で、公開しているのは大阪・兵庫など17都府県。今後の予定としては、沖縄県で平成30年度交付分から、秋田県などでは平成31年度交付分から公開を予定していると聞いている。
県内市町村議会では、盛岡市・宮古市など9市町で公開している。
【斉藤委員】
政務活動費に領収書を添付するということを一番最初にやったのは岩手県議会で、この時点では岩手の議会改革というのはまさに全国の先頭をきっていた。ところが領収書のホームページでの公開には至っていない。実施予定も含めて20都府県まで広がっているのに、岩手県が遅々として進まない原因は何なのか。費用はどのぐらいかかるのか。
【議会事務局長】
やはり全国の動向も踏まえながら議員間で協議されていくべきものと考えている。
領収書をホームページで公開する場合の新たな費用は、具体的な金額は把握していないが、想定としては、PDF等のデータファイルを作成する必要があり、それを提出されたすべての書類についてスキャンの上行うという大量の作業が必要となることから、職員の業務量が増加することになる。そうすると、費用としては超過勤務の費用が生じるものと見込まれる。
【斉藤委員】
超過勤務の費用はかかるが、それ以外はかからずにできると。これは改選前の協議でそのまま曖昧になっているので、改めてこの場をお借りして、議会運営委員会でやるのか、議会改革の委員会でやるのかはあると思うが、全国のこうした取り組み状況、県内でも9市町でやっているので、岩手県議会が遅れをとってはいいのかと。議会基本条例の精神に立って、会派の皆さん、議員の皆さんが積極的に議会改革に取り組まれるようにお願いしたい。