2019年10月30日 決算特別委員会
総務部に対する質疑(大要)
・決算額の推移について
【斉藤委員】
この間の決算額の推移について、総額、通常分、震災分について示していただきたい。
【財政課総括課長】
平成23年度は、総額1兆2511億円余、うち通常分7253億円余、震災分5258億円余となっている。
以後、震災対応分の減にともない、総額はおおむね減少基調で推移しており、平成30年度決算は総額で9577億円余、うち通常分は6629億円余、震災対応分2947億円余となっている。
【斉藤委員】
累計についても示していただきたい。
【財政課総括課長】
平成23年度から30年度までの決算の累計は、総額で8兆3686億円余、通常分5兆3010億円余、震災分3兆667億円余となっている。
【斉藤委員】
震災分で3兆円を超える決算額になっている。ただ、着実に減少し、おそらく今年度は震災分の比率は大幅に下がると思うので、これが県内経済に与える影響をよく把握して対応していただきたい。
・台風19号災害への対応について
【斉藤委員】
台風10号災害の教訓を踏まえた台風19号災害への対応について、その教訓と今後の課題についてどのように受け止めているか。
【総合防災室長】
今回の台風19号については、本県だけではなく、南東北や千葉・長野とったところを見ると、やはりハードでは守り切れない場合があるということが強く突きつけられた課題だと認識している。
また、県の災害情報システム―これは市町村が入力した数字だが、これを見ると、夜中に県民の方が避難する形となっていると。実態については市町村に聞かなければならないとは思っているが、数字上そういうものがあるので、そこも突きつけられた課題だと認識している。
私も重茂半島の被災現場を見てきたが、濁流で家が流され下流でめちゃくちゃになっているという現場も見てきた。お話を聞くと、その住民の方は地区の方に誘われて避難して無事だったということで、本当にほっとしたところだった。
やはり命を守るためには、とにかく早く避難することというのが今回の教訓であり課題であり、改めて再認識したところであるので、とにかく災害で危険があるというときには、まず早く避難しなければならないということを今後しっかり県民の皆さんにも訴えていきたい。
【斉藤委員】
先ほど佐々木朋和委員も避難のあり方、勧告のあり方について取り上げた。昨日(10/29)の岩手日報の論壇に、斎藤徳美先生が「災害避難情報の再検討を」ということで指摘されていて、私もまったく同感だった。
いま室長が夜の避難の問題を指摘されたが、やはりリアリズムで、夜の避難がどうだったのかということを把握しているかどうかということをお聞きしたい。
【総合防災室長】
災害情報システムで県と市町村で情報共有しており、そこに避難所に何人が避難したかという数字を入力しており、その数字をもって、どのタイミングでどのぐらいの方が避難所にいるかということを把握している。
実際どうだったかということについては、市町村も災害対応でバタバタしている状況が続いているので、時期を見てきちんと確認したい。
【斉藤委員】
斎藤徳美先生の指摘では、「県の災害情報システムによると、12日17時57分の県内避難者総数は2039人、同22時で6686人、13日6時3分で9930人」と。県の災害情報システムなので、誤差があったとしてもデータとして分かるのではないか。そうすると、12日の17時57分と13日の6時3分を比較すると7891人になる。12日22時の6686人と13日の6時3分を比較すると3244人が夜から真夜中に避難したと。これは問題だと思う。夜というのはどこで洪水が発生しているか分からない。25・26日の豪雨災害でも、車中で犠牲になったというのが約半数と言われている。夜の避難はかえって危険だと。
斎藤徳美先生は、「ほとんどの市町村が12日15時までに避難準備・高齢者等避難開始を勧告した。釜石市や岩泉町などは14時30分に避難勧告を発令。おそらく17時までには各沿岸市町村が発令。しかし、避難指示(緊急)は、もっとも早い大槌町でも20時と夜になってからであり、13日未明になってようやく発令した自治体もある。避難勧告では住民の避難行動に結びつかず、避難指示の発令が遅きに失したとの課題が浮き上がる」と厳しい指摘をされていたが、どのように受け止めているか。
【総合防災室長】
災害情報システムの数字は数字としてあるが、仮にタイムラグがあるとしても、それがどのぐらいなのかということもあるので、やはり夜間にかなりの方が避難したことは事実として受け止めざるを得ないと考えている。
今の国の発令の仕方が、レベル4で避難勧告、同じレベル4で避難指示(緊急)とあり、さらにその上にレベル5相当で大雨特別警報という位置づけになっているので、避難しようと思っている方からすると、「まだ避難勧告だ」「まだ大雨特別警報が出ていない」という心理的な部分の影響もあるのではないかと、これは個人的な感想に近いものだが、そのように受け止めている。
国の方でも、全国で今回100名近い方が亡くなられているので、そうした実態も踏まえて検証が行われるのではないかと思っているので、しっかり注視しながら今後の対応を検討していきたい。
【斉藤委員】
台風10号災害の教訓で、風水害対策チームが2度にわたって、適切な助言をしたと思う。しかし市町村の中には、避難勧告・避難指示をどう出すかということについての共通認識がまだないのではないか。そういう点は、ぜひ今回の経験・教訓をしっかり深めていただきたい。
改めて気象庁の分かりやすい資料を見たが、警戒レベルは5段階あり、大雨洪水警報が出れば避難準備=レベル3、土砂災害警戒情報が出れば避難指示・避難勧告・全員避難=レベル4と。だから避難勧告と避難指示が同じレベル4の中に入っているので、そこの判断が今回の場合には、もっと正確に出される必要があるのではないか。避難勧告で様子見して、避難指示が出されてあわてて避難すると、結果的にそうなったのではないか。そこの理解を徹底して、大雨特別警報というのは「常に災害が発生している危険がある」段階である。こうなると、この時点で避難というのは危険になる。大雨特別警報が出される前に全員避難という、きちんとした勧告や指示が出されるべきだったのではないか。
風水害対策チームの対応やこの間の検証を含めて、さらに精度を高めた防災対策を進めていただきたい。
【総務部長】
ご指摘あった通り、避難勧告と避難指示(緊急)、ともに警戒レベル4で全員避難ではあるが、そこの違いが分かりにくいという点もあり、市町村が実際に避難指示を何によって出すか。避難指示トリガー=何を引き金に避難指示を出すかというところがまちまちな部分がある。土砂災害警戒情報をもって避難指示を出しているところ、そうでないところとあるので、その辺は我々の方でもしっかり検証しながら、市町村と意見交換し、さらに、風水害対策支援チームの助言のあり方についても、さらに精度を高めて、早期の住民の避難につながるように努めていきたい。
【斉藤委員】
もう1つ避難を徹底する上での課題というのは、避難所の問題だと思う。
例えば、今回91万人余に避難勧告が出されたが、結果的に9900人を超える方々が避難した。今までと比べればかなり避難者の数は多かった。しかし対象の1%である。そして先ほどの答弁にもあったように、指定避難所は1700箇所、48万人分である。そうすると、何倍もの避難所がなかったら実際には避難できなかったとなるのではないか。大規模災害のときに、指定避難所はどうあるべきか。
もう1つは、報道を見てもそうだが、体育館に雑魚寝の避難。これだけでも避難をためらってしまう人たちが少なくないと思う。寒い体育館で毛布一枚である。高齢者や要支援者、小さな子どもさん、障がい者といった方々が安心して避難できる避難所のイメージがなかったら、なかなか勧告を出されてもすぐに避難しようとしないのではないか。かえってリスクが高くなってしまう。そうした方々が最初から福祉避難所に行くとか、もっと避難しても安心できる避難所の改善が必要ではないか。これを図らないと、本当の意味で必要な人の避難の取り組みにならないのではないか。
【総合防災室長】
避難所の収容人数については、全県で48万人分ということで、大規模災害が起きたときに足りるのかといったことは認識している。
市町村において指定避難所を指定するわけだが、国では、災害対策基本法施行令の中で、避難所の基準を定めている。例えば、「必要かつ適切な規模、速やかに受け入れて、生活関連物資を配布することが可能な構造・設備を有する」ことだったり、一番大事だと思っているのは、「想定される災害による影響が比較的少ない場所にある」ことといったいろんな制約がある中で、市町村でも避難所を指定している状況があり、なかなか市町村でも条件をクリアした避難所ということになると、100%を超えているところもあるが、なかなか難しい面もあると感じている。
避難所の環境については、本当に避難・ケアを必要としている方がきちんと守られる福祉避難所等に優先的に避難ができる体制をつくっていく必要があり、それ以外の避難所についても、落ち着いて過ごせるような環境づくりというところが大事になってくると思うので、その辺は担当部局ともしっかり話していきたいと考えている。
【斉藤委員】
もう1つお聞きしたいのは、住宅被害の被害判定について。消防庁と罹災証明のための被害判定と違っている。毎日いただいている災害対策本部の資料は消防庁報告で、全壊・半壊・一部損壊と。しかし被災者生活支援法の適用となると、全壊・大規模半壊・半壊・一部損壊となる。これは統一した方がいいのではないか。そういうことをやらないと、どれだけの被害なのか、補償がどれだけできるのか分かりにくいと思うがいかがか。
【総合防災室長】
住宅被害の認定については、消防庁においては、豪雨や洪水など災害時の住家被害を破格するために、災害報告取り扱い要領というのを定めており、地方自治体に報告を求めるというものがある。この要領では、住家の損壊もしくは流出した床面積の割合、経済的被害の割合に応じて、全壊・半壊・一部損壊等と。その他には、床上浸水・床下浸水といった区分で報告することとされている。
もう1つ、被災者に罹災証明書の交付や各種被災者支援策の活用の前段となる住家の被害認定については、損害割合に応じて、全壊・大規模半壊・半壊と区分しており、認定に際しては、市町村職員等が被災した住家を実際にまわり、住家の傾斜や屋根・壁等の損傷状況を実地に調査している。
そういった住宅被害の把握の方法として2つあるわけだが、市町村から報告を受けて県が取りまとめている対応状況報告については、消防庁が定める全国共通の取り扱い要領に基づくものであり、これにより被害の状況把握に国として努めているものである。
県としても、被災者に対する罹災証明書の交付をいち早く行う必要があると認識しており、現在広域振興局等から被災市町村に人員を派遣し、家屋の調査や罹災証明書関係事務について一生懸命支援を行っている。
・会計年度任用職員の問題について
【斉藤委員】
会計年度任用職員が昨年度の条例改正で決められたが、具体的に対象となる職員数、臨時・非常勤職員の実態を示していただきたい。
【人事課総括課長】
今年4月時点で任用している臨時・非常勤職員については、普通会計ベースで4020人となっている。内訳は、フルタイム698人、パート3322人となっている。この数値については、会計年度任用職員に移行しない嘱託医(学校医などの医師)および臨時的任用教員を除いたものである。
県としては、現在任用している臨時・非常勤職員が就いている職のほとんどは、会計年度任用職員に移行するものと見込んでいる。
【斉藤委員】
ほとんどが会計年度任用職員に移行すると。
実は臨時と非常勤で待遇がかなり違う。今フルタイムの臨時の方がパートにされるということは絶対にあってはならないと思うがいかがか。
もう1つ、改善されるところと、待遇が引き下げられるところを示していただきたい。
【人事課総括課長】
今の臨時・非常勤職員から、会計年度任用職員に移行するにあたり、総務省から示された事務処理マニュアルにおいても、今の任用そのものを前提とするのではなく、しっかり勤務条件や必要性を考慮した上で新しい制度に移行するようにと、マニュアルでも定められている。したがい、県としては、勤務時間等の勤務条件の変更がない限りは、基本的に処遇等を引き下げるという対応はないものと考えている。
処遇の確保という点で申し上げると、会計年度任用職員については、臨時・非常勤職員に支給していなかった手当が支給されることとなっており、例えば、任用期間が6ヶ月以上で週15時間30分以上の勤務時間の職員に対して、常勤職員と同じ支給率で期末手当を支給することとしており、フルタイムの会計年度任用職員で月18日以上の勤務が6ヶ月を超える職員には退職手当を支給することとなっている。
処遇引き下げということだが、新しい制度に移行して、全体として処遇の確保という観点では、知事部局で任用する職員についてはそういった対応はないものと考えている。
【斉藤委員】
特別休暇―例えば、法定の予防接種、健康診断、ボランティア休暇、妊婦の休息時間や産前産後休暇、育児時間、配偶者出産休暇―こういうものは、今までフルタイムの臨時職員にはあったものが、なくなってしまう。まさに改悪だと思う。産前産後休暇が有給から無給になったら、女性が安心して働けるのか。男女共同参画の精神にも反するのではないか。病気休暇も、公務災害でも無給になってしまう。病気になった場合、今までは病気休暇はあったが、これもなくなる。大変な改悪というべきものになってしまうのではないか。医療局では、病気休暇は会計年度任用職員も継続するということだが、こういう改悪はいかがなものか。
【人事課総括課長】
今回の会計年度任用職員の休暇制度については、国から示された事務処理マニュアルにおいて「国の非常勤職員との権衡の観点を踏まえること」とされており、それに沿った制度設計を考えている。
ただ岩手県としては、人材確保という観点もあるので、国の非常勤職員において無給としている一部の特別休暇―夏期休暇や子の看護休暇といったものについては有給としたところである。
また、臨時的任用職員については、これまで認められていなかった年次休暇の繰越が可能となるなど、休暇制度全体としては処遇の確保が図られているものと考えている。
【斉藤委員】
国のマニュアルがそうだから今まで保障されていた病気休暇や産前産後休暇がなくなるというのは改悪である。男女共同参画にも反する。これはやはり国のマニュアルが問題なので、改善を求めていただきたい。
今回新しく会計年度任用職員の制度移行にあたり、全員がハローワークに求職しなければならないと。国会決議では「現行の臨時的任用職員および非常勤職員から会計年度任用職員の移行にあたっては、不利益が生じることなく、適正な勤務条件の確保が行われなければならない。そのために、地方公共団体に対して適切な助言を行う」とされている。今働いている人たちが首を切られたら元も子もない。そういう人たちの雇用がしっかり守られる手立てを国会の付帯決議に基づいてしっかり対応すべきではないか。
【人事課総括課長】
やはり臨時・非常勤職員から新たな制度、新しい地方公務員法・地方自治法に基づいて導入される一般非常勤職員という新しい制度として会計年度任用職員が導入されるので、その最初の任用の部分については、やはりハローワーク等を通じた公募ということになるが、当然これまで任用されてきた職員の方々も応募できるということであり、そういう意味においては、今回の法改正の趣旨が「適正な任用と勤務条件の確保」となっているので、それに沿って対応していきたい。
・消費税8%増税の影響と10%増税の県民負担について
【斉藤委員】
消費税の8%・10%の増税に関わる県民負担について示していただきたい。
【税務課総括課長】
国・地方合わせて、消費税率8%になったときの負担増については、地方消費税にかかる平成25年度と平成28年度の決算額に基づき推計すると、県民一人当たり年間約52000円、一世帯当たり年間約11万6000円、県民総負担は年間約625億円と推計される。
消費税率10%になったときの県民負担増については、政府の試算をもとに推計すると、軽減税率の適用後で県民一人当たり年間約27000円、一世帯当たり年間約62000円、県民総負担は年間約331億円と推計している。
・旧盛岡短期大学跡地の利活用について
【斉藤委員】
5000万円の予算ついたが、盛岡市との協議、予算に基づく取り組みはどうなっているか。
【管財課総括課長】
盛岡市からは、跡地の一部を山王児童老人福祉センターの移転候補地としたいとの意向が示されており、地元の方々からも県に対し、盛岡市との協議を円滑に進めてほしい旨の要望を受けている。跡地については、17000平米余の広大な土地であることから、合わせて県での有効活用も検討している。盛岡市とはこれまでも事務レベルで情報交換を行ってきたところであり、引き続き十分な調整を行いながら、跡地の利活用が図られるよう検討していきたい。
解体・設計費の実施状況については、本年8月に建物解体工事設計業務にかかる委託契約を締結したところである。現在、建物解体に向けた設計を順次進めており、本年度中に解体設計を完了する予定である。