2019年10月31日 決算特別委員会
政策地域部に対する質疑(大要)
・台風19号災害への対応について
【斉藤委員】
平成28年の台風10号災害に対する県独自の支援策の実施と、今回の台風19号への県独自の支援策の検討についてお聞きしたい。
【市町村課総括課長】
平成28年台風10号災害については、被害が特に甚大だった宮古市・久慈市・岩泉町にたいし、普通交付税の繰り上げ交付15.3億円が行われるとともに、特別交付税については、28年度から30年度の3ヶ年で117.5億円を確保した。
県独自の支援としては、平成28年度に、特定被災地域復興支援緊急交付金8.3億円、平成29年度に特定被災地域復興支援特別交付金8700万円を交付し、それとともに、岩泉町にたいしては、自治振興基金から3.4億円の無利子の貸付を行った。
マンパワーの確保については、内陸市町村からの人的支援、県任期付職員の採用・派遣、県外自治体に対する人的支援の要請も行い人材確保に努めてきた。
今回の台風19号災害の支援については、まず今回の台風は記録的な大雨等により県内全域に非常に大きな被害が発生していること、東日本大震災津波や台風10号災害からの復興途上にある中で、二重三重に被害に遭われた地域もあることから、まずは国に対して早期復旧に対する財政措置、生活再建に向けた制度の充実などを要望している。
このような中、県としては、被災市町村と連携し被害状況の把握に努めるとともに、市町村の要望を踏まえて、当面の資金繰りを円滑にするための普通交付税の繰り上げ交付、復旧・復興事業に携わる応援職員を確保するため、県市長会・町村会と連携し、被災を免れた内陸市町村からの派遣に向けた調整を行っている。あわせて、これから被災市町村の財政状況等を踏まえながら、特別交付税の要望などを通じた財源確保、財政支援のあり方について検討を進めていきたい。
まずは国の制度でいただけるものは最大限いただくということで、その状況を踏まえて、加えての県単での支援について検討していきたい。
【斉藤委員】
台風10号災害は、主に岩泉町・宮古市・久慈市と、特定の自治体に大きな被害を与えた。改めて見ると、全壊478世帯、大規模半壊534世帯、被害額1428億円という大被害だった。
この間、宮古市・山田町・普代村・久慈市と台風19号災害の現地調査をしてきたが、共通して言われたのは、「台風10号災害のときの地域なりわい再生緊急対策交付金と県の復興支援特別交付金が大変助かった」という声だった。いま総括課長が答弁したように、国の支援が大前提であると思う。同時に、国の支援の対象とならない事業も必ず出てくると思うので、台風10号災害で大きな効果を発揮した取り組みを前向きに検討していただきたい。
一般質問で住家被害について取り上げ、知事は「台風10号災害のときの県単事業について前向きに検討する」と。これは、半壊・床上浸水について県単補助だった。平成25年の豪雨災害のときには、被災者生活再建支援金の対象にならず、全壊・大規模半壊にも県として独自支援したという経過があるので、国の支援を最大限実現しながら、県単独の支援もぜひ並行して検討していただきたい。
答弁の中で、応援職員の調整ということが言われた。私も実際に現地からそういう要望をいただいた。特に、土木職員の応援要請があったが、実際にすでに派遣している自治体もあるようだが、状況はどうなっているか。
【市町村課総括課長】
いま私どもの方で聞いているのは、4町村から要望があり、早いところでは、今週から入っているところもある。山田町については5名の要請があり5名確保済み、他に市長会・町村会を通さない独自の確保として、紫波町や北海道池田町からも来ているというところは聞いている。それから、洋野町・普代村・田野畑村については現在調整中ということである。
これ以外にも、被害状況が明らかになり次第、今後要請したいというところで、宮古市・久慈市あたりにも派遣する必要があるのではないかと聞いている。
【斉藤委員】
かなり被災の箇所が多いので、応援職員の要請にはできるだけ機敏に対応していただきたい。
・三陸鉄道の被災状況と復旧の見通しについて
【斉藤委員】
三陸鉄道の全線が一貫経営に3月23日になされたが、大変好調だったと思うが、被災前までの三陸鉄道リアス線の利用客・実績はどうなっているか。
【地域交通課長】
一貫運行後の4〜8月までの5ヶ月間で、利用者数が前年の約2倍、運賃収入は前年の約2.4倍という状況で、経常収支も前年同期から9800万円余の改善となったところである。
【斉藤委員】
実は三鉄の目標は年間50万人から100万人に利用客を増やすと。利用客の数で分かるか。
【地域交通課長】
4〜8月までで49万4500人余となっている。
【斉藤委員】
そうすると昨年度の実績を5ヶ月で達成し、100万人の目標の半分までいったと。そういう中で本当に大きな被害を受けた。
いま運行しているのは163km中50kmと30%にとどまっている。そして復旧がなかなか大変だという話も聞いてきたが、復旧の見通しを示していただきたい。
そして、宮古〜釜石間というのは戦前に整備された区間で、以前から災害に弱いと言われていた。大震災津波のときも現況復旧で、しっかりした改良がなされなかったということだった。北リアス線と南リアス線はしっかり整備されていると思うが、やはり改良復旧がぜひとも必要だと思うがいかがか。
【地域交通課長】
三陸鉄道の線路被害が77箇所、電力通信被害で16箇所という状況で甚大な被害となっており、復旧の見通しとしては、三陸鉄道では、土砂の除去等により早期運行再開につながるような箇所の工事を先行して実施するとしており、具体的には、津軽石〜宮古間については11月中の運行再開を、田老〜田野畑間については12月中の運行再開を目指して復旧工事を進めていると聞いている。
改良復旧の必要性については、三陸鉄道では、被害の大きい箇所を中心に、国の鉄道運輸機構の技術支援も受けながら、被害状況調査を進めている。現在の災害復旧制度では、原型復旧が原則となっていることから、ご指摘の通り原型復旧するだけでは再び被害を受ける可能性があることから、復旧にあたっては、将来にわたる安全性の確保に資する改良復旧が可能な限りできるよう国に対して要望している。
【斉藤委員】
津波で被災し、今回の台風災害でも被災しているので、やはり改良復旧しないと、これからも豪雨災害が今まで以上の頻度で襲来することを考えれば、ぜひとも改良復旧を実現させるように取り組んでいただきたい。
もう1つ、いま代替バスを運行しているが、これは高校生の通学の切実な足となっており、ただ長期間が予想されると。保険にも入っているようだが、1日あたり90万円かかると。この代替バス運行は、三陸鉄道が果たしてきた役割を被害を受けた中でも維持していくと。それはその後にとっても大事な意味を持つと思うので、代替バス運行に対しても、必要な場合県の支援が求められると思うが、いかがか。
【地域交通課長】
三陸鉄道は地域住民にとって重要な生活の足となっており、住民の移動を確保するためには、鉄道が復旧するまで代替バス運行は必要と県としても考えている。
ご指摘あった通り、1日約90万円かかっているので、この費用について、まずは国に対して財政支援を要望していくとともに、県としても三陸鉄道が運休の間、しっかり代替バスが運行できるよう財政的にも支援を検討していく。
【斉藤委員】
前向きの答弁であった。
三陸鉄道は、大震災津波のときも復興のシンボルの役割を果たしたので、本当に今年こそ新しい転機になると思った矢先に台風10号の被害を受けたということで本当に残念なので、三陸鉄道ができるだけ早く息を吹き返すということが今回の台風10号災害の復旧・復興にとっても大変重要な課題だと思うのでよろしくお願いしたい。
・三陸防災復興プロジェクトについて
【斉藤委員】
三陸防災復興プロジェクトの成果について、本会議でも「約18万3千人の参加」「35億円を超える経済波及効果」と答弁があった。参加人数と経済波及効果以外に、復興にとって、復興後の取り組みにとっても大変重要な成果・教訓があるのではないかと思うがいかがか。
【総括プロジェクト推進監】
このプロジェクトにおいては、国・国際機関・企業・団体・次世代を担う若者など、多くの方々に参画をいただいたところであり、多様な主体とのつながりも復興の力とする開かれた復興の意義を確認するとともに、岩手の復興が世界・未来に広がっていく形を共有することができたと認識している。
特にも、いわて絆まつりin宮古2019では、県民の力を結集し、三陸沿岸をはじめ県内全市町村の郷土芸能が一堂に会するとともに、県内各市町村長等にも出席いただき、改めてオール岩手で復興のゴールに向かっていく姿を示すことができたと考えている。
閉幕後に意見交換した沿岸市町村長からも、「観光客数が増加するなど顕著な効果が見られた」「市町村だけでイベントを行うには限界があることから、今回感謝している」「風化防止や防災意識の啓発にも寄与できた」といったご意見をいただくとともに、すべての市町村から何らかの形での継続実施を求める声があったところである。
【斉藤委員】
今回の三陸防災復興プロジェクトで、市町村単独で取り組まれたものはどれだけあるか。
今後、どう継続・発展させるかということについては、いわて県民計画でも「三陸防災復興ゾーンプロジェクト」としても取り組むと。問題は、具体的にこれをどう来年や再来年に向けて取り組んでいくのか、具体的に示していただきたい。
【三陸防災復興プロジェクト2019推進室長】
会期中に市町村が一緒になって実施していただいた事業だが、全部で59事業。特徴的なところでは、住田町では、木造の応急仮設住宅を再現して展示し、宮古市では、防災復興特別展示の実施、釜石市では、釜石・大船渡・気仙沼の有志と連携し、我々が実施したオープニングセレモニーに合わせて、会場外で食のイベントを開催していただき、多くの市町村で復興状況の取り組みの発信や食や観光資源を活用した交流人口の拡大に向けた取り組みを行っていただいた。
【地域連携推進監】
三陸防災復興プロジェクトの今後について。いわて県民計画の三陸防災復興ゾーンプロジェクトでは、「三陸防災復興プロジェクト2019の目指す姿と取り組みを継承し、持続的な三陸地域の振興に繋げていく」こととしている。
したがい来年度以降は、三陸防災復興ゾーンプロジェクトに位置づけて実施することとしており、詳細については、今年度実施した成果も踏まえ現在検討中である。
来年度は、復興五輪を掲げる東京2020オリンピック・パラリンピックが開催されるなど、国内外から三陸地域が注目を集める年となるので、それらの関連事業や市町村・関係団体とも連携を図りながら、東日本大震災津波の教訓や復興の姿を伝承・発信するとともに、三陸地域の多様な魅力を発信することにより、国内外との活発な交流を図っていく。
・消費税増税の影響、経済波及効果について
【斉藤委員】
総務部審査で、8%増税により県民総負担額は625億円、10%増税ではさらに331億円という答弁だった。これが与える経済波及効果はどうなるか。
全国的には、8%増税前と比較して、1世帯当たりの消費支出は20万円減少し、労働者の実質賃金は15万円減少していたが、岩手県の場合はどうなっているか。
【調査統計課総括課長】
消費税が8%に引き上げられた平成26年の県内経済においては、物価上昇の動き、百貨店・スーパー販売額・新車登録台数などに見られる個人消費の落ち込み、鉱工業生産指数や新設住宅着工戸数が前年割れするなど、税率の引き上げや駆け込み需要の反動減の影響が見られた。
消費税が10%に引き上げられたことにより同様の影響が懸念されることから、今後公表される各種経済指標の動向をしっかり注視していきたい。
消費税8%増税後の本県における1世帯当たりの消費支出額は、総務省の家計調査で、平成30年の盛岡市の2人以上の世帯で、1世帯当たりの実質消費支出は336万3167円となっており、増税前の平成25年は341万9567円と比較し5万6400円(1.6%)の減となっている。
労働者の実質賃金は、これは厚労省の毎月勤労統計調査で、平成30年の岩手県の雇用者一人当たりの実質支給総額は、従業員5人以上の事業所で、325万7732円となっており、25年の338万8837円と比較し13万1105円(3.9%)の減となっている。