2019年11月5日 決算特別委員会
保健福祉部に対する質疑(大要)


・台風災害等における被害調査認定の効率化・迅速化について

【斉藤委員】
 昨年の西日本豪雨災害に続き、今年は台風19号で大雨特別警報が出された。この間のこうした豪雨災害を受けて、被害認定調査の効率化・迅速化が図られてきているが、どういう内容になっているか。

【地域福祉課総括課長】
 被災した住家の調査方法および判定方法については、内閣府で運用指針を示しているが、今回の台風19号により全国各地で甚大な被害が発生していることから、被害認定調査の効率化・迅速化にかかる留意事項が示されている。
 この中で、水害についての効率化・迅速化の手法として、例えば、水流や泥流などにより一定の損傷が発生している場合は、浸水の深さにより、床上1.8m以上の浸水は全壊、床上1m以上1.8m未満の浸水は大規模半壊、1m未満の床上浸水は半壊と判定することも可能とされている。
 土砂等が住家および周辺に一様に堆積している場合は、堆積の深さにより、床上1mまで全ての部分に土砂等が滑り込んでいる場合は全壊、床までの同様の場合は大規模半壊、基礎の一定程度の高さまでの同様の場合は半壊とすることも可能などと示されている。

【斉藤委員】
 こうした迅速化・効率化を踏まえ、今回の台風19号災害の被害認定はどうなっているか。

【地域福祉課総括課長】
 特に被害の大きかった沿岸6市町村―久慈市・普代村・田野畑村・宮古市・山田町・釜石市で、11月1日現在の状況を確認したところ、いずれもおおむね調査を終了していると聞いている。
 被害状況は、本日6時現在で、全壊44棟、半壊717棟、一部破損1495棟、床上浸水39棟、床下浸水118棟となっている。
 この認定調査に基づく罹災証明書の発行については、沿岸6市町村では11月2日までに開始していると聞いている。

【斉藤委員】
 半壊717棟となっているが大規模半壊はいくらか。

【地域福祉課総括課長】
 半壊717棟が大規模半壊になるかどうかは、今後市町村において認定調査の結果を踏まえて判定すると。それを踏まえて生活再建支援金等の申請につながってくるものである。

【斉藤委員】
 被害認定には最初から「大規模半壊」というものがある。「大規模半壊」と「半壊」では大きな差がある。半壊は被災者生活再建支援法の適用にならない。だから717棟まとめて半壊ではいけないと思う。大規模半壊がどれだけその中であるのか。その判定がきわめて重大なので聞いている。

【地域福祉課総括課長】
 被害認定については、市町村から報告を受けている区分がこのようになっているということで、大規模半壊の被害認定については、生活再建支援金の支給のところで出てくる区分であり、救助法とかそれ以外のところでは出てこないということもあるので、これから再建支援金の関係もあるので、しっかり把握していきたい。

【斉藤委員】
 例えば、土砂が一様に堆積している場合は、床上1mまでで全壊、床までで大規模半壊、基礎の天端下25cmまでは半壊とはっきり示されている。そういう判定をしなかったら、被災者は実際に被災者生活再建支援金が出るかどうか分からない。あなたが言っているのは消防庁の報告で、私は被災者生活再建支援法について聞いている。市町村はきちんとそういう判定をやっていると思う。それがここで示されないというのは、県は何を把握しているのかということになる。
 被災者生活再建支援法については、山田町は適用ということになった。今日(11/5)6時現在の被害状況では、宮古市は全壊17棟で、これも被災者生活再建支援法の適用になると思う。被災者生活再建支援制度の概要を見ると、「10世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村」、「その隣接で5世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村も対象になる」と説明がある。被災者生活再建支援法は、見通しとしてどこまで対象になり得るのか。

【地域福祉課総括課長】
 本日の被害状況を踏まえ、現在は宮古市と釜石市について、その適用について内閣府と調整をしている。

【斉藤委員】
 「隣接で5世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村も対象になる」と。どういうところまで対象になり得るのか、広がるのか聞いたので。

【地域福祉課総括課長】
 被災者生活再建支援制度の適用基準は国で定めているが、いくつかあり、その中で、今回の災害では、他県でも複数の都道府県に制度が適用になった場合には、人口10万人未満の市町村にあっては5世帯以上、5万人未満の市町村では2世帯以上の住家全壊被害の発生により制度の適用対象になる。その結果、先ほど述べた宮古市・釜石市が適用になるのではないかということで調整している。

【斉藤委員】
 すでに福島県・宮城県・埼玉県で被災者生活再建支援法の対象になっている。だとすれば、1自治体5棟以上の全壊も対象になると理解していいか。

【地域福祉課総括課長】
 本県においては、人口10万人未満の市町村は5世帯以上、5万人未満の市町村では2世帯以上で適用になる。

【斉藤委員】
 被災者生活再建支援法の対象になる可能性があると受け止めていいと思う。
 被害認定の効率化・迅速化で、土砂災害が多かった普代村・山田町田の浜地区は、1m以上だと全壊なので、ましてや床までだと大規模半壊になるので、もっと柔軟な被害認定でやれば、全壊や大規模半壊の対象は広がるのではないかと思うが、効率化・迅速化の手法は徹底されているか。

【地域福祉課総括課長】
 効率化・迅速化の手法を踏まえた被害認定だが、この取り扱いについては、10月14日に内閣府から示され、その日のうちに市町村に周知し、さらに10月21日に市町村の住家被害認定事務の担当者を対象として、住家の被害認定調査および罹災証明書の交付等に関する説明会を開催した。この際、内閣府から講師を招き、効率化・迅速化にかかる留意事項についても説明し、周知を図ったところである。
 今回示された効率化・迅速化にかかる留意事項について、先ほど被害の大きかった沿岸6市町村に確認したところ、いずれの市町村でもこの留意事項も活用しながら認定調査を行ったということであり、その中には、土砂等が一様に堆積している場合、浸水深による簡易な判定の場合の考え方により、全壊・大規模半壊・半壊と判定した例があると聞いている。

【斉藤委員】
 一般質問では、今回の災害に対する県の支援策について、台風10号災害のときの県独自の支援策を検討すると答弁があった。あのときは、全県が被災者生活再建支援法の対象になった。平成25年の豪雨災害のときは対象にならず、全壊・大規模半壊世帯に県独自に支援した。
 平成25年の豪雨災害と平成28年の台風10号災害のときの県単独の支援を土台にして、県の支援策を実施する必要があると思うがいかがか。

【地域福祉課総括課長】
 平成25年、28年など過去の災害に際しては、被災者生活再建支援制度が適用されない場合であっても、県単独事業により同等の支援を行い、また制度で支給対象とならない半壊および床上浸水世帯に対しても支援をしてきた。
 これについては、国に対して被災者生活再建支援金の増額や支援対象の拡大など制度の充実も要望しているが、過去の災害も参考に同様の県単独事業の実施を検討している。

【斉藤委員】
 前向きな答弁をいただいた。ぜひ県が被災者に対して支援策を検討しているとアピールして被災者を励ます必要があると思うので。山田町は独自に全壊・大規模半壊に100万円、半壊・その他にも支援をするということを打ち出しているので。

・子どもの生活実態調査と対策について

【斉藤委員】
 中間報告を読ませていただいたが、この中で、特に対策が必要だと考えることについてお聞きしたい。
 子どもの健康状態というところで、中央値の2分の1未満および就学援助世帯では、2割以上が「子どもを受診させなかった」と。その理由は、「多忙で医療機関に連れて行く時間がなかった」。一方で2割以上が「医療機関で自己負担金を支払うことができなかったため」という回答になっている。これは、子どもの命と健康に関わる切実で重大な課題で、岩手県が来年度、子どもの医療費窓口無料化を中学校まで拡充するということを示したことは、大変大事な対策だと思う。
 あわせて、こうした子どもたちが安心して医療機関にかかれるような手立て・対策が必要だと思うが、どう考えているか。

【子ども子育て支援課総括課長】
 医療の関係については、受診のしやすさというところについて、こちらでも検討しなければならないということが多いと思っているが、今回の子どもの生活実態調査においても、子どもの医療費の関係についても、制度はあるがなかなか知られていない結果になっており、こうした公的な制度について周知を図っていくことが重要だと考えている。

【斉藤委員】
 これは、経済負担の軽減ということと、多忙で医療機関に連れて行く時間がなかったということだと思う。休みを取れない、時間休も取れないような劣悪な労働条件にあるということである。これは就労条件を改善しないと、いくら無料化しても連れて行けない。この問題は解決しない。
 もう1つは、病院に連れて行って、熱があったら保育所にも学校にも行けない。だから、病児保育・病後児保育の充実と、低所得者に対する病児保育・病後児保育の免除措置などの支援も必要ではないか。

【子ども子育て支援課総括課長】
 医療機関にかかる際に、親が仕事を休めずに通うことができないということがあるということで、これについてはやはり働き方改革といいますか、十分に検討させていただきながら対応していく必要があると考えている。
 病児保育については、国とともに交付金を交付して市町村を支援している。保護者の負担については、国の病児保育の事業の実施要綱においては、必要な費用の一部を保護者負担とすることができるという規定になっている。県内市町村においては、無料で利用できるところもあるが、多くは一日当たり2000円程度の利用者負担を徴収している。負担額の軽減措置としては、低所得者や生活保護世帯、住民税非課税世帯には軽減措置が行われており、国の要綱の趣旨に基づいて、事業実施主体である市町村で地域の実情等を踏まえて設定されているものと認識している。

【斉藤委員】
 切実で具体的な実態が明らかになったら、それを改善する手立てを考えると。これから最終報告が出て、さらに貧困対策の方針が作られると思うが、実態を踏まえた対策をぜひ検討していただきたい。病児保育・病後児保育にしても、県内市町村の一部でしかまだ実施されていない。そして免除も限られているので。
 2つ目に、母子家庭の場合の就労条件の問題で、土曜日出勤が母子世帯の場合35.9%、「不定期にあり」を含めると80%。日曜日出勤は母子世帯で18.4%、「不定期にあり」を含めると60%になる。就労条件が厳しい中で、土日にこれだけ勤務がある。いわば子どもの居場所がない。子どもと接する時間が圧倒的にないというのが、子どもの貧困問題の重要な課題ではないか。子どもの居場所づくりの現状と今後の対策はどうなっているか。

【子ども子育て支援課総括課長】
 保護者が就労等により休日に家庭にいない子どもに対しては、これまで放課後児童クラブだとかさまざまな遊びや生活の場の確保を図ってきたところだが、ご指摘の通り、子どもの居場所についても、休日に安心して過ごすことができる居場所というのは重要な取り組みの1つと考えている。
 子どもの生活実態調査においては、収入に関わらず約半数の子どもが「子ども食堂に行きたい」と回答しており、県としては、子どもの居場所づくりの取り組みを全市町村へ展開することを目指しており、これまで子どもの居場所づくりネットワーク岩手を通じた開設・運営に関する支援、子どもの居場所の立ち上げ等への補助を行ってきたが、29年度末の11市町19箇所から、30年度には5市11箇所、本年度はさらに2町8箇所が増加し、10月1日現在で計18市町38箇所まで拡大してきた。
 県としては、今後これらの支援に引き続き取り組むとともに、市町村の広報紙等を活用するなど関係機関とも連携し、県補助制度の一層の周知や開設可能な施設の情報提供など、積極的な広報活動に努め、子どもの居場所の拡大を図っていきたい。

【斉藤委員】
 子どもの居場所づくりというのは、貧困対策の中心的課題の1つだと思う。
 沖縄県は、県内150箇所以上に子どもの居場所をつくっており、学習支援もしている。
 たしかに子ども食堂が38箇所まで広がったことは評価したい。そして資料を見ると、食事の提供と合わせて学習支援をしているのが22箇所と多数となっているのも子どもの食堂の質的な発展を示していると思う。ただ、あまりにも少なすぎる。当面、中学校区ぐらいには子どもの居場所があっていいのではないか。そういう規模と発想で居場所づくりを検討していただきたい。
 3つ目の問題として、「学校の授業がどのぐらい分かるか」という質問にたいし、中央値2分の1以下では、「だいたい分かる」が65%だと。そうすると35%が「分からない」ということになる。実は子どもの貧困の具体的な表れとして「貧富の学力格差」が大問題になっている。今度の調査で、経済力による学力格差がはっきり示されたのではないか。やはり学習支援、学習の保障が求められていると思うが、現状と対策はどうなっているか。

【子ども子育て支援課総括課長】
 学習支援は非常に重要に取り組みだと思っている。子どもの貧困対策として、子どもの貧困の世代間の連鎖をなくすという観点からも学習支援は重要な取り組みだと思っている。
 学習支援については、生活困窮者の子ども等を対象とした子どもの学習生活支援事業もあり、これは市町村が独自に取り組んでいる内容だが、いわゆる公営塾という取り組みも行われている。また委員からご紹介があった通り、子ども食堂など子どもの居場所における学習支援も12市町で行われており、県としては、今回新しいいわて県民計画、政策推進プランの中においても、この取り組みを全市町村に広げていくというところで目標を立てているところであり、子ども食堂を中心としながらも、学習支援の取り組みについても引き続き取り組んでいきたい。

【斉藤委員】
 実は東京都が同じような調査をやって、生活困窮世帯で「学校の授業が分からない」というのが小学5年生で約3割、中学校2年生で約5割だった。「いつから分からなくなったか」というのが小学校5年生の場合「小学校1〜3年生」、中学校2年生の場合「小学校から分からない」が3割いた。分からないまま数年学校に通っている。このぐらい辛いことはない。これは教育委員会に関わるので、よく連携して、教育における貧富の経済的な学力の格差は岩手の調査でも明らかになったので、ぜひこの問題に光を当ててしっかりした対策をとっていただきたい。

【子ども子育て支援課総括課長】
 教育の重要性は委員からご紹介いただいた通りであり、県としても重点的に取り組む必要があると考えている。
 保健福祉部においては、生活困窮者の対策として学習支援があり、子どもの貧困対策として、子ども食堂とセットの形での取り組みを進めていきたいと考えている。
 教育委員会ともしっかり連携しながら取り組んでいきたい。