2019年11月5日 決算特別委員会
医療局に対する質疑(大要)


・医師確保対策について

【斉藤委員】
 県立病院等経営計画で、昨年度まで42人の奨学金養成医師が配置されたが、経営計画では医師確保がプラスになるどころかマイナスになってしまった。どれだけマイナスになったのか。奨学金養成医師が増えたにも関わらずマイナスになった要因は具体的にどこにあるのか。

【医師支援推進監】
 現経営計画においては、平成26年度から30年度までの5ヶ年で医師109名の増員を計画したところであったが、平成31年3月現在では、計画策定当初の現員数684名と比較し4名減と大変厳しい結果となっている。
 平成30年度に配置された奨学金養成医師42名のうち、40名が県立病院に配置されたが、計画を達成できなかった主な要因としては、医学部卒業生の都市部や大規模病院志向等により、初期臨床研修医を計画通り確保できなかったこと。大学等で専門医資格の取得を目指す医師の増加により、後期研修医の採用が計画人数を下回ったこと。招へい医師の退職者が相当数発生したことによるものと考えている。

【斉藤委員】
 今年度は11名の奨学金養成医師の配置になっているが、今年度は前年比で医師はどれだけ増加したか。

【医師支援推進監】
 今年度県内に配置された奨学金養成医師の配置総数は53名で、そのうち50名が県立病院に配置されている。前年度比で10名の増加となっている。
 県立病院の常勤医師数については、9月1日現在で581名となっており、30年度の9月1日医師数568名と比較し13名の増加となっている。

【斉藤委員】
 今年度は13名の増員ということで評価したい。
 先ほどの議論で、奨学金養成医師は537名あり、この間53名が配置されているが、79人が義務履行の猶予になっている。これは新たなキャパシティだと思うが、79人の今後の配置の予定計画はどうなっているか。

【医師支援推進監】
 今年度の義務履行猶予者である79名の奨学金養成医師のうち、医療局奨学生27名については、大学院での学位取得や専門医の取得などの医師としてのキャリア形成も重要であることから、配置調整会議での決定を踏まえ義務履行を猶予している。
 猶予者の今後の義務履行に向けては、これまでの義務履行中、猶予中を問わず、すべての養成医師を対象に、県立病院長経験者である医師支援調整監による面談を行っているところであり、養成医師に対して専門研修等修了後の速やかな義務履行開始を促している。
 医療局としては、県立病院に勤務しながら専門医資格の取得が可能なプログラムの積極的な活用などにより、奨学金養成医師の早期義務履行の推進を図っていく。

【斉藤委員】
 例えば、配置1期生で猶予が12名、2期生で17名とあるが、猶予というのはどのぐらいの期間で、何年後から配置が見込まれるのか。

【医師支援推進監】
 猶予については、奨学金を借りた年数ということで、基本的には大学で勉強する6年間があるので、6年間が猶予となっている。一応、配置のルールとすると、基本的には義務履行をすぐに開始していただきたいというところだが、6年間の使い方については、いま専門研修もあるので、例えば大学で2年勉強した後、基幹病院の方に勉強という形で1〜2年勤務していただき、さらに引き続き大学での研修が必要という場合は2年間という形になるので、キャリア形成と実際の現場での勤務ということを、大学の教授とも相談しながらだが、できるだけ早めに義務履行していただけるような形で取り組んでいる。

【斉藤委員】
 そうすると、6年以内には義務履行に移行すると。
 この間537人のうち、奨学金を返済したという学生はどのぐらいいるか。

【医師支援推進監】
 医療局の奨学金養成医師については、今まで4期生までいるが、そのうち4人が返還している。

【斉藤委員】
 医療局の分では4人ということだが、537人のうちどうなるか。

【医師支援推進監】
 県・市町村・医療局の三制度537名のうち、43名の方が返還している。

・看護師の深刻な実態と増員について

【斉藤委員】
 一般質問でも取り上げたが、平成30年度の看護師の年次有給休暇5日未満の看護師は798人で実に24.9%だった。宮古病院は56.9%、東和病院42.5%、山田病院40%、磐井病院32.4%となっている。5日も取得できない看護師がこれだけいるということに本当に驚いたが、なぜこうなっているか。どう改善しようとしているか。

【職員課総括課長】
 今年度から、使用者が労働者に対して年5日の年次休暇を取得させることが義務化されたことにともない、年次休暇の予定を職員に聴取のうえ状況を確認し、取得が進んでいない職員への取得を促すなど、法令に定める日数以上の年次休暇を取得していただくよう取り組んでいる。
 また、採血業務の検査技師へのタスクシフティングによる看護業務の省力化や、処理作成の簡素化などによる事務的用務の見直しを進めるとともに、夜勤専従制度や二交代勤務制度など、多様な勤務形態の運用などにより、看護師の負担軽減や働きやすい職場環境づくりに努めていきたい。

【斉藤委員】
 異常な事態がなぜ起こったのか聞いたので。看護師さんからは「必要なときに年次休暇が取れない」と。子どもの行事や授業参観などのときに取得できない。だから5日未満がこれだけ横行している。根本は、看護師があまりにも少ないことにある。
 いま、夜勤二交代制や夜勤専従と言われたが、三交代勤務だけでも看護師さんに対する健康被害というのは大きい。それを12時間二交代だとか、夜勤専従などやったら、ますます健康被害が進んでしまう。そういう認識はあるか。

【職員課総括課長】
 二交代勤務制については、メリットとしては、夜勤時の申し送りによる業務中断がないとか、職員のワークライフバランスに資する、連休を取得しやすくなるようなメリットがある。デメリットとすれば、1回当たりの勤務が長時間になるなど、身体的・精神的負担が大きいと考えられる。これらについては、休憩時間や休憩場所を適切に確保するなど、負担軽減をしながら進めていきたいと考えている。

【斉藤委員】
 三交代の看護師さんの過労死基準は60時間である。普通は80時間だが。それだけ過酷な勤務をしている。それをさらに12時間二交代とか夜勤専従などやったら、看護師が少ないから新たな過酷な労働環境で乗り切ろうとする目先の対応ではないか。これから全国的に看護師不足と言われているときに、看護師の労働条件を抜本的に改善しなかったら、県立病院の看護師を確保できなくなると思う。
 例えば、9日夜勤は平成30年度は706件、今年度の第一四半期では437件、昨年同期229件でどんどん増えている。なぜ解消できないのか。

【職員課総括課長】
 月8回を超える夜勤に従事した看護職員は、今年度6月までの実績で12病院・延べ437人になっている。30年度同期比で138人増加している。
 これまでも、育児休暇取得者等の代替職員の正規職員による配置、夜勤専従などの多様な勤務形態の導入、採血業務の臨床検査技師への移管などのタスクシフティングの推進等により、離職防止や新採用職員の確保を図るとともに、業務の繁閑に応じて県立病院間で相互応援を行うなど、看護職員の夜勤回数の抑制に向け取り組んできた。
 今年度においては、前倒し採用を行って人員確保に努めており、看護職員のワークライフバランスが図られるよう今後も引き続き夜勤回数の抑制に向けた取り組みを推進していきたい。

【斉藤委員】
 看護師の労働実態が何を引き起こしているか。1つは、普通退職者、いわば中途退職者が30年度109人で、この5年間で最高である。定年退職は17人、勧奨退職19人、中途退職が109人と。そのうち20代43人、30代38人と多くを占めている。これが深刻な実態を示しているのではないか。
 あわせて、採用試験応募者は、平成30年度157人の採用予定に対して採用者124人。今年は171人に対して191人の応募があったが採用者はいくらになったか。
 必要な看護師を確保できない、確保してもどんどん辞めてしまう。これに歯止めをかけなかったら、ザルで水を汲むようなものではないか。

【職員課総括課長】
 本年の職員採用選考試験の通常募集においては、採用予定人員173名に対して191名の応募があり、156名に採用内定を行った。通常募集において採用内定者数が採用予定数に満たなかったことから、現在秋期募集の選考試験を実施しており、必要な看護職員の確保に努めていきたい。

【斉藤委員】
 これを深刻に受け止めて、岩手県立病院の創業の精神―県下にあまねく良質な医療の均てんを―と。そして「職員の働きがい」ということも書いている。
 看護師の声を紹介すると、「毎日子どもから『お母さん今日帰ってくるの?』と聞かれる」と。毎日帰っているそうだが、夜遅く帰るから子どもは分からない。

・遠野病院の看護師の実態について

【斉藤委員】
 10月31日付の岩手日報に報道されたが、「県立遠野病院で看護師離職相次ぐ」「働き方改革が背景に」「過重な労働、悲痛な声」と。
 遠野病院の実態については事前に聞いていたが、どういう事態が起きているか。看護師がどれだけ辞めているか。医師も辞めたい人がいるのではないか。その要因をどのように受け止めているか。

【職員課総括課長】
 遠野病院における平成30年度の退職者は、定年退職を除き、医師はおらず、看護師の正規職員は6名で、退職理由は「育児など家庭事情による」が2名、「体調不良」2名、「転職」2名となっている。臨時職員は3名退職しており、理由は「出産などの家庭事情」2名、その他1名となっている。その他の医療スタッフについては、臨床検査技師1名が退職している。

【斉藤委員】
 なぜそういう事態になっているか聞いたので。
 新聞報道では、「職員が減って心身とも疲労困憊。自分も家族も守れないと怖くなった」と。「昨年4月からの1年半で少なくとも15人の看護師が辞めたことが判明」「複数の退職者が、働き方改革による労働環境の悪化を離職理由に挙げた」と。何をやったかというと、外来と病棟看護の一元化をやった。今日は病棟、明日は外来と、こんなことをやらされて、とてもではないがやっていられないと。そして12時間二交代に職員が反対しているのに、無理矢理強行しようとしていると。ここの総婦長さんは、超過勤務を書かせない、超勤簿を隠してしまうと。前の病院でもそうだったとのことである。こんなことをやっていたら辞めるのは当然だと思う。
 医師は辞めていないということだったが、他の病院に変わった。
 医療局長も、「不当労働行為があった」と口頭で労働組合に陳謝したと聞いているが、遠野病院の事態をどう受け止めているか。

【医療局長】
 先ほど30年度の退職の理由については総括課長が答弁した通りである。
 病棟・外来の一元化については、病棟と外来の看護業務を一体的に運用することで、外来から入院、入院から在宅へと切れ目なく患者を看護できるようになることから、これまで以上にきめ細かな患者サービスの提供が可能となると聞いている。また、職員にとっても、病棟業務と外来業務にかかる専門的知識や幅広い技術経験を身につけることができるというメリットがある。加えて、柔軟な勤務シフトの作成が可能となることから、育児や介護など職員の事情に配慮した適正な人員配置を行うことができ、休暇も取得しやすくなるなど、職員のワークライフバランスに資する面があるものと認識している。
 二交代制の関係については、始業・終業時間の変更、休憩時間の変更等の勤務条件の変更がともなうものであるので、労働組合や職員の過半数を代表する者と労働条件に関して協議をしてきたところである。
 遠野病院においては、職員の過半数を代表する労働組合がないことから、選挙により選出された過半数代表者と協議し、合意を得た上で、勤務している職員にアンケートを行い、職員が全て「導入したい」という意向結果だったことから、過半数代表者と協議を行って合意を得た上で、今月から一部の病棟で試行を開始した。
 超勤を受け付けないというご指摘があったが、勤務時間内に業務が終わらないことが見込まれる場合には、超過勤務命令権者である病棟師長等に報告し、まずは業務の調整等を行うが、それでも調整できずに超過勤務を行った場合には、実際に業務を行った時間を超過勤務として処理すべきであり、遠野病院でもそのように運用していると認識している。

【斉藤委員】
 局長がそういう認識だったら遠野病院の混乱は解決しない。
 新聞報道では、「病院側が超過勤務手当の削減を進める一方、複数の退職者から『月に60時間のただ働きを強いられた』」と。労基署にも訴えられているではないか。
 元遠野病院長のコメントでは、「看護師が気持ちよく働ける環境づくりが医療の質を保つ原点。病棟と外来看護の一元化は、看護師を増やして成り立つもので、このままでは地域医療の崩壊につながる」と。
 職員の合意も得ないで一方的にこういうことをやる、超勤も認めない。だから混乱が起きているのではないか。

【医療局長】
 遠野病院の看護職員にかかる平成30年度の一月平均の超過勤務時間は2.0時間となっている。今年度の4〜8月の時間数は0.3時間となっており、前年度より1.7時間の減となっている。大幅に減少したのは、看護師2人がパートナーとなり、お互いに補完し協力し合うことができる新しい形の看護提供体制であるパートナーシップナーシングシステムの運用を本格的に開始したことが主な要因と認識している。

【斉藤委員】
 実際に混乱が起きて、新聞報道もされていて、医療局長が院長や超勤を認めない総師長をかばっていたらダメである。

・医師の患者に対する暴言・パワハラについて

【斉藤委員】
 医療局・各病院への医師の暴言・パワハラの相談・抗議の状況、医療局の対応について示していただきたい。どこの病院の医師のパワハラや苦情が多いのか。

【業務支援課総括課長】
 患者や家族から寄せられる苦情や心配事の相談、病院に対しての意見や要望を聞くため、各県立病院および医療局本庁に「医療相談コーナー」を設置している。その他に、各県立病院では、投書箱であるふれあいポストを設置して、利用者のサービス向上に向けて取り組みを行っている。
 寄せられた提言や相談のうち、医師に関するものは、平成29年度が全体で384件、30年度は369件となっており、この中には苦情等も含まれている。苦情の主な内容としては、診察時の話し方や態度、治療内容の説明が分かりにくいといった声が寄せられている。寄せられた提言・相談に対しては、対策を講じ、病院内に回答を掲示するなどして利用者の声を反映させるように努めている。提言については病院内で共有し、苦情については常勤医または病院長から直接本人に注意・指導を行っている。

【斉藤委員】
 私に直接寄せられた沿岸南部の病院、県北の病院では、毎年苦情が寄せられている。「カルテを投げる」「暴言を吐く」と。患者がどんどん逃げていく。それが2年3年経っても改善されていない。
 やはり患者中心の医療というのが県立病院の創業の精神ではないか。ぜひこれを改善していただきたい。

【医療局長】
 ご指摘の通り、県立病院の使命は、県民から信頼される医療を提供すること、患者中心の安全安心な医療を提供することである。この観点から、医師に限らず、職員による患者への暴言等は絶対に許されないものであり、あってはならないものと認識している。
 先ほど申し上げた取り組みに加え、やはり患者と医療側の対話を促進し、認知齟齬の予防や調整を行うための医療メディエーターの養成・配置を引き続き行うとともに、病院長と医師との定期的な面談の場を今後設定していきたいと思っている。そういったところで、病院の目的意識の共有や意思疎通を図っていくと。また、医療クラークといったもので医師の負担軽減を図る取り組みをさらに強化していきたい。
 万が一、委員ご指摘のような了知した場合には、病院長から徹底した指導、程度によっては医療局本庁も介入する等、再発防止の徹底に適切な対応をしていきたい。