2019年11月6日 決算特別委員会
農林水産部
(第二部)に対する質疑(大要)


・主要水産物の現状について

【斉藤委員】
 被害額は11月5日現在で25億9223万円ということだった。
 秋サケの最盛期を迎える中での秋サケ量の現状と種卵の確保の取り組みはどうか。
 ワカメ・コンブの種付けの時期を迎え、現状と対応はどうなっているか。

【水産担当技監】
 台風19号の被害のうち、懸念される秋サケの関係だが、さけ・ますふ化場は7箇所被災しており、現在金額で2億6千万円ほどとなっており、この早期復旧が求められている。一部復旧しているところもあり、なるべく早く年内の復旧を進め、サケの捕獲や採卵に支障のないように進めていきたい。
 ワカメ・コンブ・ホタテ等の養殖の関係だが、今年の春〜夏の生産量は、ワカメ10450トンで震災前の約5割、コンブ5322トンで震災前の約5割となっている。昨年度のホタテ貝の生産量は1770トンで震災前の3割となっている。養殖生産量の主な要因としては、震災後の養殖施設の減少にともない、養殖施設数が減少していることによるもので、さらに昨年はホタテ貝の貝毒が広域で発生し、出荷自主規制が長期間続いたことで、生産量が大きく減少した。
 県では養殖生産量の回復を図るため、漁協と連携し、意欲ある漁業者の生産規模拡大や、漁協自営の養殖推進、省力化器機の導入などを進めて取り組んでいきたい。
 ホタテの貝毒については、毒化の監視を継続するとともに、貝毒の発生予測や毒値を下げる技術開発を進めてまいりまして、生産の安定・安全流通に努めていく。

【斉藤委員】
 アワビ・ウニの生産量の実態と対策についてお聞きしたい。

【水産担当技監】
 昨年度のアワビ漁獲量は140トンで震災前の約4割、今年度のウニの漁獲量は88トンで震災前の約7割にとどまっており、その原因の1つとしては、エサとなるコンブ等の生育量の減少が挙げられる。
 県では、栽培漁業推進事業により、漁協のアワビ種苗の生産や放流に要する経費に対して助成しているほか、コンブの生産を促成する取り組みへの補助に要する経費を、今般の9月補正予算に盛り込んだところであり、このような取り組みを継続することにより資源の回復に努めていく。

【斉藤委員】
 魚市場の水揚げ量と水揚げ額はどうなっているか。震災前と比べてどうなっているか。

【漁業調整課長】
 平成30年の魚市場の水揚げ量は10万4千トン、金額は約198億円で、平成29年に比べ数量で1.2倍、金額は約9割となっている。震災前3ヶ年平均と比べ、数量は約6割、金額は約8割となっている。

【斉藤委員】
 水揚げ量で震災前の6割、金額では84%ということだった。
 県民計画実施状況報告書では、漁業生産額は393億円で、計画目標値の370億円を超えてAランクとなっている。水揚げ額が減少している中で、漁業生産額が計画を超えているというのはどういう要因なのか。

【水産担当技監】
 震災後、総じて水産物の価格が上がっていることと、需給関係が逼迫している関係で、養殖貝類を中心に単価が非常に高騰しており、全体の生産量は落ちているが金額面で上がっているという状況がある。

【斉藤委員】
 生産量は大幅に落ちて、水揚げ額も震災前を下回っている。その割には、漁業生産額全体で見ると393億円という、ここの理由がよく見えないので。具体的に分かるか。

【漁業調整課長】
 393億円の実績値については、29年の実績となっている。先ほど魚市場の水揚げ金額についてご説明したが、それは30年度の数字となっている。

【斉藤委員】
 あまり説得力がないが、30年度はサンマが獲れたが、それ以外が獲れて水揚げ額が増えた記憶はないのだが。正確なことが分かれば。
 水揚げ額を見ると、全体として生産量・額は落ちているが、田野畑・普代・野田は震災前より生産量・額が上回っている。この理由は分かるか。

【水産担当技監】
 主に定置網の水揚げ量が増加していることで魚市場の水揚げが上がっていると考えている。

【斉藤委員】
 震災前を大きく超えているということで、特別な理由があるのかお聞きしたので。県北が全部そうであるわけではなく、久慈は65%、種市は生産量で34%と。
 これは30年度までの計画だが、漁業生産額で評価するというのは実態を反映しないのではないか。不漁になると価格が上がるので、一番水産業の実態を示すのは生産量ではないかと思う。これからの指標でいけば、額ももちろん大事だが、ものが獲れているかどうか、ここに水産業の推移が示されるので、そのようにしていく必要があるのではないか。

・漁業の担い手確保対策について

【斉藤委員】
 漁業の担い手確保の現状と対策についてお聞きしたい。

【漁業調整課長】
 県では、漁業担い手の確保・育成の取り組みを進めるため、平成28年3月に岩手県漁業担い手育成ビジョンを策定し、漁業経営力向上研修や漁業担い手対策の推進体制の整備、新規漁業就業者の現場での実務研修などを実施してきた。
 これらの取り組みにより新規漁業就業者数は、毎年度40〜50名程度を確保しており、漁業センサスによると、平成30年の本県漁業就業者数は6330人と平成25年時の6289人と比べ若干増加している。
 また今年4月には、いわて水産アカデミーを開校しており、漁業就業希望の研修生を対象に、漁業の基礎知識や技術、ICT等の先端技術を駆使した高度な経営手法の習得を支援し、将来の本県漁業をけん引する人材の育成に取り組んでいる。

・水産加工業の現状と支援策について

【斉藤委員】
 水産加工業は、原材料不足と価格高騰で大変な事態に直面しているが、現状と具体的支援策についてお聞きしたい。

【水産担当技監】
 平成29年の水産加工業の出荷量は震災前と比較し約8割、出荷額は震災前とほぼ同額となっている。30年8月に実施した被災事業所復興状況調査では、主要魚種の不漁などから、水産加工業者の多くが「原材料確保が課題」としている。
 県では、引き続きサケの資源回復を進めていくほか、国の資源管理制度に連動しながら、サンマやスルメイカの資源回復に取り組むとともに、養殖生産では、ワカメやホタテの生産性向上などを進め、新たにサケ・マス類の海面養殖なども支援している。さらに、サバやイワシなどを漁獲する巻き網船の誘致や、小型漁船によるマイワシの捕獲試験を認めるなど、加工原料の確保に努めていく。また、研修会や商談会などの開催により、マイワシやサバなどを代替原料として活用する方策や、新商品の開発、販路開拓なども支援しており、本県水産加工業の復興と経営の安定に取り組んでいく。

【斉藤委員】
 生産量は私がいただいた資料だと9万トンで75%、これを8割と言うのは言い過ぎではないか。生産額は684億円で95.1%なので、100%と95%では違うので、正確な答弁をしていただきたい。
 大船渡に調査に行った際に、大船渡商工会議所と気仙沼商工会議所の水産部が研究会を立ち上げ、大不漁に協力して対応するという動きもあった。ただ、水産加工会社の社長さんにもお聞きしたが、「『サンマは5年ぐらいは今の大不漁は続くのではないか。こういう認識で対応しないといけない』という専門家の提起だった」という話も聞いてきた。魚種転換ということについても、「魚1つ1つで機械が違う」と。新たな魚を加工しようとすれば新たな設備投資が必要になってくると。そういう意味でいくと、きめ細かな対応、緊急の対応、中長期的な対応をセットでやっていく必要があるのではないか。今まさに魚が獲れないわけなので。

【水産担当技監】
 大船渡地区での取り組みの事例をご紹介すると、水産加工業者が連携して、地域の水産物を確保していくと。そのためには、加工業者といえど水産資源の中長期的な動向も把握しながら、勉強しながら、それぞれで産地の水揚げを増やしていこうというところから勉強会を始めるという取り組みで、非常に中長期的な視点に立って経営を改善していこうという取り組みで賞賛されることだと思う。
 もう一方で、水産加工業者と勉強会を重ね、サケ・イカ・サンマが資源動向が厳しく、原料確保が難しい中で、一方でイワシ・ブリ・サバなどが増えている年もあるので、原料転換により新しいものづくりをするという勉強会を重ねていた。ただ、ご指摘のように、新たな設備投資となるとなかなか踏み切れないところがあるので、水産技術センターの加工実験室があるので、そこでものづくりの試作をして、いろいろな商品開発のヒントを得るなど、お試しで使っていただきながら、どの程度の商品のロッドを作っていくとか、どの規模で事業展開していくかの見通しができた先には、新しい加工機械の導入など、国の事業も導入しながら支援していきたい。

【斉藤委員】
 水産加工業はまさに沿岸の基幹産業、そして雇用の大きな場だと思うので、ぜひ県も水産加工業者や商工会議所などと一体で取り組んでいただきたい。

・大型底引き網漁と大型巻き網漁の規制強化について

【斉藤委員】
 大型底引き網漁と大型巻き網漁の規制強化について、水産資源の保護対策としてやる必要があるのではないか。
 いま資源が枯渇している中で大不漁が起きている。ところが、巻き網船だとかトロール船が根こそぎ捕っていく。これをきちんと規制しなかったら資源保護にならないのではないか。これは現場の漁民の切実な声である。現状と対応状況はどうなっているか。

【漁業調整課長】
 水産資源の保護対策については、漁船の隻数や馬力数の制限等により漁獲努力量を制限する投入量規制、編目の大きさの規制等による漁獲効率を制限する技術的規制、漁獲枠の設定などにより漁獲量を規制する産出量規制と、大きく3つの手法がある。
 大型船による沖合底引き網漁業と巻き網漁業については、大臣許可漁業として、国が効率的な観点から漁船隻数や漁獲枠などを管理しているところである。
 県としては、知事許可となっている沿岸小型漁船漁業の操業の安定と安全を確保するため、大臣許可漁業との操業のルールの調整などにおいて、小型漁船が不利とならないよう随時国とも協議しながら漁業調整に努めている。