2019年11月6日 決算特別委員会
千田美津子県議の農林水産部(第一部)に対する質疑(大要)
1.国連「農民の権利宣言」について
(千田委員)
最初に国連「農民の権利宣言」についてお聞きをいたします。
国連は昨年の12月17日の国連総会において、「農民と農村で働く人々の権利宣言」いわゆる「農民の権利宣言」を決議しております。
しかし日本は残念ながら棄権しております。圧倒的多数の国々の賛成で可決をされております。この宣言は農民を始め、農村で働くすべてが農林漁業や関連産業などで生活することを権利とし、その補償や支援は国や国際機関の責務として位置づけております。まさしく国連の家族農業の10年決議と同様に、小規模家族農業生産者を強化して、これを保護・支援していくための国連決議だと考えますがどのようにとらえておられますかお聞きをします。
(藤代農業振興課総括課長)
国連におきまして昨年の12月に決議されました、「小農と農村で働く人々の権利に関する国連宣言」これについてでございますが、国連が小規模家族経営等の農家等が食料生産に果たす役割ですとか、生物多様性への貢献、こういったものを評価いたしまして、加盟国に対してこのような小規模農家等の権利を尊重・擁護などを促したものととらえているものでございます。
(千田委員)
まさにそのとおりだと思います。この宣言は全部で28条からなりますけども、例えば食料や農業政策を自ら決める食料主権、それから今お話がありましたが、種子に関する権利、自家採種の種子を利用することや交換、販売する権利、そして農村女性の権利など小規模家族農業をきちんと評価をし、この権利を守る国際的な枠組みが新たに誕生したものであります。
日本始め各国はこの宣言を実現する施策を実行することが求められると考えられますがいかがでしょうか。
(藤代農業振興課総括課長)
委員ご指摘のとおり、今回の国連宣言については全体として28カ条で構成されてございます。国連宣言の第2条にございますけども、ここについて加盟国の義務ということが規定されてございます。その中で加盟国は小農と農村で働く人々の権利を尊重・擁護・実現するために、法的、行政上その他の適切な措置を迅速に取るというふうに承知してございます。
なお、国連宣言について先ほど委員のご質問にもございましたけども、日本国は宣言の採択を棄権したというふうに報道されてございまして、国連加盟国としての対応などに関するこういったことについて国の方から県に対しての情報提供がございませんので、答弁については恐れ入りますが差し控えさせていただきます。
2.新規就農者の現状と支援策について
(千田委員)
いずれ国が棄権をしているということで本当にけしからんというふうに思います。先ほどお話があった TPPイレブンや日欧EPA、 日米FTA等の貿易協定なども本当に食料主権という観点から見ても根本的に見直さなければならないものと考えますが、これはこの程度にしたいと思います。
二つ目、新規就農者への支援ですが、支援策一点だけお聞きをしたいと思います。
平成30年度の農業次世代人材投資事業についてであります。これは28年度までは青年就農等給付金という名称だったと思いますが、この人材投資事業について支援実績と今年度の状況、今後の見通しについてお聞きをいたしますが、この件数と金額についてお答えをいただきたいと思います。
(高橋農業革新支援課長)
農業次世代人材投資資金の交付実績についてでございます。平成30年度におきます全国の交付対象者は準備型で2176人、経営開始型が1万1498人、合計1万3674人となっています。うち、本県では準備型が15人、経営開始型が288人、合計303人となっています 。
今年度の本県の交付対象者数は9月末時点で準備型が10人、経営開始型が246人、合計256人となってございます。今後の見通しということでございますけども、10月以降経営を開始する予定の対象者が7名ほどいますので、11月以降に予定されている国の追加要望に必要枠を確保していくこととしてございます。
(千田委員)
11月以降に新たに希望される方がいらっしゃるということで、その方も申請をされるということでありますが、30年度実績に比べますと結構減っていますね。30年度の実績に比べますと5800万円、大幅に減額されていると思うんですけども、これは申請者数の関係なのかどうかその点についてお聞きをいたします。
(高橋農業革新支援課長)
先ほどの答弁で金額を抜かしておりましたので追加報告させていただきます。30年度の本県の交付金額につきましては3億8500万円となってございます。本年度は今のところ約3億2700万円となっているということでございます。
対象者数が減少してるということでございましたが、主な理由といたしましてはこれから就農しようとする方々を対象とした準備型ですけども、今年度から先進農家での研修についてが、雇用事業を活用するということで準備型の対象が変わったということで、それに伴ってこれに取り組む経営体の方が少なくなったということで、対象が減っているということがございます。また経営開始型につきましては、採択が多かった年がありましたが、5年間の継続ということもありまして、その方々が30年度で終期を迎えたということがありまして、見かけ上は減少しているという状況になってございます。
(千田委員)
準備型で対象が変わったと、それから開始型で5年間ということから終了している人がいるという話がありましたけれども、しかし当然対象となる方々について、この減額は大幅な縮小ということで、全国で新規就農者の皆さんが不安を感じて県や国等に声を上げたようでありますけども、そういう事態は把握されていますか。
(高橋農業革新支援課長)
次世代人材投資資金につきましては、新たに農業に着く方も農業経営を安定化させるために非常に重要な施施策いうふうにとらえておりまして、この制度を活用いたしまして新規就農者が経営を安定化させるということについて、引き続き県としては支援してまいりたいと思っております。
また、一方でこの事業の対象となります就農者以外に、近年雇用就農という形で雇用された形で就農する方が伸びておりまして、そちらの方の方も含めますと全体的な新規就農者の数というのが比較的横ばいで推移しているというふうにとらえています。
(千田委員)
私は新規就農者の数のことを言っているのではなくて、本来約束したもらえる範囲からさらに予算が削られて、今おっしゃった雇用就農者を含めた方々が非常に不安を抱かれたと、それで県内でも全国的にも大きな騒ぎになって、市町村でもそれをどうするかという議論がこの間ずっと続いてきたわけですが、そのことについてお聞をしたいと思います。
(菊池農業普及技術課総括課長)
農業次世代人材投資資金の予算の状況でございますけども、委員ご指摘のとおり、平成30年度と令和元年度から見ますと、国からの当初予算は減額されてございます。
この背景を見てみますと、昨年までは市町村が要望した新規就農者の見込み数に相当する金額、予算を一括内示しておりましたけども、年度末にその見込みにならず就農しなかった人の分を返還してきているという状況がずっと続いてまいりました。このため国では、今年度から確実に就農する準備が整った分について、県あるいは市町村の方に予算を配分するという形をとっておりまして、随時追加配分と追加要望と、県が追加要望するという形で必要な額を確保していくということで準備をしております。
(千田委員)
いろいろ答弁されておりますけども、見込みがどうのこうのではなくて、本来もらえるべき金額が市町村に割り当てならなかったために、実は県の方で申請者数に対して順番をつけてくださいと、1番から9番まで優先的に満額もらう人を順番つけてくださいと、その他の次の人達は減額する人だとそういう指示までしたんじゃないですか。
(菊池農業普及技術課総括課長)
農業次世代人材投資事業の配分にあたりましては、当初はそういった形で予算が少ないであろうということがありまして、しっかりと市町村の方に確実に就農の準備が整った方を調査してください、とのお願いをいたしましたし、現時点で就農した方々についての交付金は交付されているということでございます。
3.ため池等の防災対策について
(千田委員)
新規就農者の方々は本当に大事な後継者です。そういう方々ががっかりすることのないように安心して、しっかりとした経営に望むことができるように、是非そういった立場で支援をお願いしたいと思います。
次に、ため池等の防災対策についてお聞きをいたします。大規模地震や局地的な豪雨などによる災害を未然に防止するために、老朽化した農業水利施設等の改修補強とともに、ため池等の決壊や溢水等を想定したハザードマップ作成等の減災対策が重要だと考えますが、岩手県ではどのようにどのような状況になっておりますかお聞きをいたします。
(千葉農村建設課総括課長)
ため池の減災対策についてでございますけども、県では現時点で制定しております、すべての防災重点ため池現在898箇所になりますが、こちらについて浸水想定区域図を精査作成しており、年度末には全ての箇所で完了する予定でございます。
それからハザードマップにつきましては、今申し上げました浸水想定区域図、これをもとに国庫補助も活用しながら、市町村が計画的に作成を進め平成30年度までに38箇所を作成しております。それから本年度令和頑年度は33箇所、さらに来年度、2年度は47箇所、計118箇所を来年までに作成するということを見込んでございます。
農業用ため池が決壊した場合に、被害が想定される地域の住民の安全・安心を確保するために、決壊時の影響度などを勘案しながら、ソフト対策を優先して進めていくこととしてございまして、ハザードマップ作成が促進されるよう、国に対して予算確保を働きかけると共に、関係市町村と連携を図りながら取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。
(千田委員)
防災重点ため池について合わせてお聞きをいたします。防災重点ため池は住宅や公共施設などに近く、自然災害で決壊した場合に人的被害が出る恐れがあるとして、避難対応や補強などの優先的な整備を求められているため池のことでありますけども、県内ではどのくらいあるでしょうかお聞きいたします。
(千葉農村建設課総括課長)
防災重点ため池についてでございますが、平成30年7月の西日本豪雨において小規模なため池の決壊等によりまして甚大な被害が生じたということを受けまして、国では防災重点ため池設定の考え方の見直しを行ったということでございます。
これを受けまして従来43箇所ということでこれまで防災重点ため池選定しておりましたが、この国の考え方を受けまして、新たな選定基準によりまして本県における防災重点ため池これを5月末までに再選定した結果、農業用ため池は1925箇所、そのうち防災重点ため池の施設数が898箇所ということで先ほど申し上げた数字となってございます。
(千田委員)
見直しをして898箇所ということで了解しました。ハザードマップの作成について予算も日数もかかるということで、国に対して要望する、あるいは市町村との連携をやっていくということですが、ハザードマップを898箇所全部で作られることが大事になってくるわけですが、どのように市町村と連携してやっていくかその点についてお聞きをいたします。
(千葉農村建設課総括課長)
今、現在ハザードマップについては、国の3か年の緊急対策期間、平成30年度から令和2年度までにおいて、全ての防災重点ため池で作成するということは予算的にも委員おっしゃるとおり、非常に困難ととらえておりますので、まずは国に対しましてこの現行助成制度の期間の延長ですとか、予算の確保についてはまずは要請していきたいと考えてございます。
しそれからすでに決壊した場合の浸水想定区域図は、既に本年度いっぱいで作成されるという見込みでございますので、それをもってまずはため池の下流の及ぼす影響度合い、住宅の戸数ですとか、公共施設の箇所数といったもので全てのため池の優先順位をまずは見ながら、影響度に応じて予算を出来る限り有効に活用しながら、その順番に応じて市町村と、それは市町村の方でハザードマップを作成するとなりますので、市町村の作業のキャパというそういったところもいろいろと打ち合わせをしながら出来る限り前倒しで作成したいと考えてございます。
(千田委員)
是非そのようにお願いしたいわけですが、ため池のうち最後になりますけども、実は会計検査院が調査をした中で、防災重点ため池の内約4割で豪雨の対策工事の必要性が適切に判断されていなかったことが明らかになったという報道がありました。自治体市町村等の調査基準が国の指針よりも低くて改修が必要なため池が見逃されていたということだったということでありますが、岩手県ではどのような状況でしょうか。
(千葉農村建設課総括課長)
昨年度の会計検査院の調査の結果でそういった他県の事例がございましたけども、堤体余裕高ですとか設計の洪水流量など国の定める設計基準に満たしていない、ということで指摘を受けている状況、そういった中で本県でも確認をしてまいったところですが、国の設計指針に基づきまして、そのとおり設計基準を設定してございます。200年確率、洪水流量、それから今までの最大の洪水流量、さらには近傍の気象条件、類似する地域の近傍流域における流量、そういった結果から推定される最大の洪水流量につきまして本、県ではその基準を設定しながら検討進めておりまして、対策工事の必要性を適切に判定しているという状況でございます。
4.いわて地域農業マスタープラン実践支援事業について
(千田委員)
それでは最後の質問になりますが、いわて地域農業マスタープラン実践支援事業についてお聞きいたします。いわて地域農業マスタープラン実践支援事業の成果と現状、今後の見通しについてお聞きをいたします。
(藤代農業振興課総括課長)
いわて地域農業マスタープラン実践支援事業についてでございますけども、この事業は平成25年度から実施しております県単独事業でございますして、地域自らの話し合いに基づき策定されました地域マスタープランの実現に向けまして、地域の中心となる経営体の規模拡大等に必要な機械ですとか施設、 こういったようなものの導入を支援しているものでございまして、毎年度約2億円程度の県予算を確保いたしまして事業を行っております。本年度につきましては前年度に比べまして約900万円増の2億1千万円余の予算を確保いたしまして、約100経営体の取り組みを支援してございます。今後とも予算の確保に努めまして、市町村と連携しながらより効果的な事業が実施されるよう取り組んでいくこととしております。
(千田委員)
この事業を希望する方が非常に多いと聞いておりますがどのような状況でしょうか。
(藤代農業振興課総括課長)
いわて地域農業マスタープラン実践支援事業につきましては非常にご要望をいただきまして、先ほど答弁を申し上げましたけども、今年度予算2億1千万円ほど措置したところでございますけども、市町村からいただいた要望額については約2億7000万円というような状況になってございまして、約6千万円ほどギャップが生じているところでございますけども、そうしたギャップにつきましては市町村と連携しながらこの事業に加えまして、同様の機械施設等を導入できる国庫補助事業などございますので、そういったものも活用することを進めているところでございます。
(千田委員)
非常に農家にとっても要求が多い事業だと聞いておりますので、引き続きの取組支援をお願いいたします。