2019年11月7日 決算特別委員会
商工労働観光部
に対する質疑(大要)


・台風19号による被害状況と対応について

【斉藤委員】
 商工関係の被害額は現在578件、6億1985万円となっている。
 国の支援策は、この間の新聞報道を見ると、中小企業対策として上限3000万円の補助金、これは事業主負担が4分の1以上で柔軟に設定できると報道されている。グループ補助金については、中小企業の被害が大きかった福島県などに適用する方向なので、岩手県が適用になるかは報道では不透明だと。そして、復興割の旅行代金の補助は5000円の割引ということだが、これも新聞報道では「導入は市町村単位」ということなので、国の方針をきちんと見ないと、どれだけ活用できるか分からないのではないかと思うが、どのように受け止めているか。

【経営支援課総括課長】
 新聞報道によると、中小企業者の設備復旧補助金を国が措置するということで承知している。ただ、国から直接詳細について連絡がなく、現時点ではこれ以上の内容はお示しできない。
 県としては、今議会に追加提案する補正予算で、地域なりわい再生対策緊急交付金を提案しているので、これと国の施策を組み合わせて、被災事業者の早期復旧に取り組んでいきたい。

【斉藤委員】
 新聞報道では、本日非常災害対策本部会議が開かれ、そこでまとめられて今日中に公表されると。その内容については全議員にできるだけ早くお知らせするよう委員長にお取り計らいをお願いしたい。

【決算特別委員長】
 世話人会で協議して対応したい。

【斉藤委員】
 地域なりわい再生対策緊急交付金については、台風10号災害のときに実施し、大変好評だった。先ほどの答弁を聞くと、548事業所に11億8480万円余が事業費ベースで補助されたと。
 今回2億円の補正予算が提案される予定だが、これは県の負担分で、おそらく事業費は倍の4億円ということになると思うが、前回実施した際に、事業主負担はどうだったのか。補助の上限額はいくらだったか。今回の補正額は、被害の実態を踏まえたものなのか。

【経営支援課総括課長】
 台風10号災害の際には、事業者に対して施設・設備の復旧に要する経費の2分の1を補助する内容で、県と市で2分の1ずつ補助する内容となっている。補助金の限度額は2000万円である。加えて、4000万円以上を超える被害については、補助割合を引き上げて対応するようにしている。前回の台風では非常に大きな被害を受けた製造業関係の事業者があり、できる限りこういう補助制度を活用いただきながら復旧をしていただいたものと考えている。
 今回の予算2億円については、台風10号災害の際の支援の実績や現時点で把握している被災事業者数・被害額等を踏まえたものであり、今の状況においては対応可能な額と考えている。仮に不足する場合には、増額補正の対応も検討させていただきたい。

【斉藤委員】
 今回の交付金は、台風10号災害時と同じ中身で実施すると。前回も、実際には翌年度に適用された事業者が多かったので、実態を踏まえて、国の支援策も活用して対応していただきたい。大変被災事業者を励ます内容だと思う。

・東日本大震災津波にかかる生業再生の現状と課題について

【斉藤委員】
 仮設施設の入居状況は全体で484施設になっているが、内訳についてどのように活用されているか。

【経営支援課総括課長】
 農林業2者、漁業279者、建設業39者、製造業26者、商業111者、その他27者となっている。

【斉藤委員】
 商業者はいまだに111事業者が仮設店舗で頑張っていると。このうち、本設移行、施設譲渡等の意向調査は行っているか。

【経営支援課総括課長】
 111者のうち88者が本設移行を希望しており、大半が本設移行を希望していると認識している。

【斉藤委員】
 残りの23事業者は廃業になるのか、施設の譲渡等になるのか。

【経営支援課総括課長】
 当面、仮設施設での事業を実施したいという事業者もおり、あとは廃業や別な仮設に移転してということを考えている事業者も含まれている。

【斉藤委員】
 仮設店舗の取り組みは、被災した中小業者の営業の再開にとって大変大きな役割を果たした。これが10年目まで継続されることは大変重要な取り組みだと思う。おそらく被災3県で一番活用したのは岩手県ではないか。大変大きな役割を果たしたと思う。
 最高時731店舗だったが、このうちどれだけ本設展開し、再譲渡などになったか。

【経営支援課総括課長】
 これまで仮設店舗に入居した商業者の実績は731者であり、このうち本設移行は476者、廃業等の理由により退去したのが144者、現在も入居が111者となっている。

【斉藤委員】
 先ほどの答弁にもあったが、111者のうち88者は本設移行を目指していると。これは最後まで支援をしっかり強めていただき、本設移行が成功できるようにしていただきたい。
 そのためにはグループ補助金も必要になってくると思うが、今後のグループ補助金の必要な見通しはどのように受け止めているか。

【経営支援課総括課長】
 一部の地域では、土地区画整理事業の完了時期が令和2年度と見込まれており、このためすぐには本設工事に着手できない事業者も見込まれている。このため国に対し、令和2年度以降のグループ補助金の継続や、複数年度にわたる事業実施のための必要な措置について国に要望したところである。引き続き国への要望を行っていくとともに、商工指導団体とも連携し、グループ補助金の申請に向けた周知や相談など、本設再開に向け被災事業者のニーズに応じたきめ細かい支援に努めていく。

・高卒・大卒の県内就職率の現状と対策について

【斉藤委員】
 2019年3月卒の高卒・大卒の県内就職率の実績と評価について示していただきたい。

【雇用推進課長】
 高卒者においては、県内就職率69.0%、前年度比3.2ポイント増、大卒者は43.1%、前年度比0.5ポイント下回っている。
 県では、いわてで働こう推進協議会を核として、高校生・大学生それぞれに向けて、企業ガイダンスや若手社員との交流会、インターンシップの推進等、県内企業を理解する取り組みを強化しており、高校生に関しては、平成13年度以降でもっとも高い県内就職率となるなど、これまでの取り組みの成果が表れてきているものと考えている。
 一方で大学生については、具体的な数値に結びついてない状況もあり、一層の取り組み強化が必要だと考えている。

【斉藤委員】
 今年から新しいいわて県民計画の下で、かなり高い県内就職率の目標で取り組んでいるが、2020年3月卒の県内就職率の目標と、取り組み状況はどうなっているか。

【雇用推進課長】
 高卒者においては84.5%、大卒者においては48.5%という目標を掲げている。
 これに向け、まずは昨今の人材不足の状況から、首都圏など県外企業からのアピールが強まっていることもあり、まずは県内企業の自社の魅力・価値を高めていただくこと。そしてその魅力・価値を高校生・大学生にしっかりアピールしていくことが重要だと考えており、そのために県では、生産性の向上に資する設備投資を支援する国の補助金「ものづくり補助金」だとか、賃上げを支援する「業務改善助成金」、働き方改革の取り組みに対する県単補助などの活用を促進するとともに、効果的な採用活動を企業に実施していただけるようなセミナーの開催により、県内企業の雇用労働環境の整備、採用力の強化を支援している。
 高校生に対しては、昨年から実施している保護者を対象とした企業ガイダンスや、県内若手社員との交流会の拡充、ものづくり産業で活躍する若手人材を紹介する動画をDVDにし、県内の高校で授業に活用してもらう取り組みなどを強化しており、5月には、知事が盛岡工業高校に出向いて、自ら生徒の保護者に直接「岩手で働き、暮らす」ことを選択する魅力を訴えたことをはじめ、それ以外にも保護者が集まる機会をとらえ、県幹部職員から現在の岩手の状況、岩手にも魅力的な企業があるということを訴え、これまでにない取り組みを進めている。
 大学生に対しては、各大学において、県内企業のインターンシップを促進するとともに、就職活動の解禁後すぐに行われている学内合同企業説明会において、県内企業の割合をかなり増やしていただいているほか、低学年から県内企業を知るようなキャラバンだとか、県内企業が連携して行っているCOC+の事業として今月23日に、ふるさと派遣大交流会を開催し、県内企業の魅力に触れる機会を増やすなどして関係機関が一丸となって目標達成に向けて取り組んでいる。

【斉藤委員】
 高校生は今年3月卒で69%になり、徐々に上がってきたことは評価するが、東芝メモリ(現キオクシア)の効果もあったのではないかと思うが、実態はどうなっているか。

【雇用推進課長】
 今年3月卒業の高校生に関しては約200名前後が入社したと聞いている。

【斉藤委員】
 おそらくその効果がかなりあったと思う。そして、今年度の目標は84.5%と、次元の違う目標を積極的に掲げた。69%から84.5%というのは、発想の転換、取り組みの転換がなければ接近しないと思う。今までの延長線上ではない取り組みが必要だと思う。
 労働局をふくめたいろんな調査で何が問題かというと、高校生も大学生も地元の企業を知らない」と。これは決定的な問題だと思う。
 国際交流協会30周年の式典と講演会があり、群馬大学の先生が、留学生の県内就職率を半分以上に高めたと。何が決め手かというと、地元の企業を知ってもらうと。それを徹底して、地元の企業でも自分たちの能力が生かせる企業があるということを知って、留学生でも半分以上が地元に就職したと聞いて大変驚いた。そういう地元のやりがいのある企業を知ってもらう、それを徹底することが最大のカギではないかと思うがいかがか。

【雇用推進課長】
 岩手県でも非常に留学生が増えていると聞いており、岩手県の外郭団体である「ふるさといわて定住財団」などでも、企業ガイダンスを年数回やっているが、今度開催する企業ガイダンスにおいては、国際交流協会と連携し、外国人の留学生歓迎や、留学生に岩手の企業を知ってもらう、就職活動の部分を説明するようなセミナーを、合同企業説明会でも取り組む予定としている。
 そのような専門分野で学んでいる大学生、その専門性を生かしたいという思いが、高校生よりもそういうところで就職先を選ぶという傾向が強いことが調査結果でも出ているので、我々もそれぞれの学部の進路指導の先生とコンタクトをとりながら、学部ごとの就職マッチングの機会だとか、低学年からOBの先輩と話し合うような機会をセッティングしていくようにしており、今年度初めて大学での企業キャラバンというのをやらせていただき、今年は7回まで進めることができている。引き続き臨機応変に対応し、機会をとらえてアピールしていきたい。

【斉藤委員】
 県教委から高校別の就職状況を聞いたが、就職者数で多いベスト3は、1位が黒沢尻工108人で県内就職率61%、2位が盛岡工96人で50.5%、3位は釜石商工81人で74.3%と、釜石商工の比率は高いが、頑張っている黒沢尻工でも61%にとどまっている。本当に全体で84.5%を目指すということは、次元の違う取り組みが求められていると思う。そのことを肝に銘じて取り組んでいただきたい。せっかく高い目標を掲げたので、それを実現するような取り組みをお願いしたい。

・消費税増税への対応について

【斉藤委員】
 キャッシュレス決済の取り組み状況はどうなっているか。
 プレミアム商品券の活用状況は3割程度と報道されているが、実態はどうか。
 商業、観光への影響はどう表れているか。

【経営支援課総括課長】
 国の事業であるキャッシュレス消費者還元事業は、消費税引き上げにともなう需要平準化対策と、国内でのキャッシュレスの推進を図ることを目的として実施されており、岩手県内における申請店舗数は10月末で7454店舗で、利用可能店舗数は5113店舗となっている。県では、今年度全国で4県が採択されている、総務省の統一QR「JPQR」普及事業に取り組み、10月18日現在で687事業所・914店舗から申込みがあり、これに加え、コンビニチェーン511店舗、ドラッグストアチェーン98店舗においてJPQRの利用が可能となったところである。なおJPQRに参加した店舗のうち、1400余の事業者はキャッシュレス消費者還元事業の対象事業者であり、双方の事業に申し込みするところである。キャッシュレス決済の普及率は、国で示している数字では、平成26年度の商業統計によると、キャッシュレス決済対応店舗の割合は26.2%、キャッシュレス決済の比率は10.59%となっている。
 プレミアム商品券については、直接の所管は政策地域部だが、対象見込み数とすれば、県内で26万5960人と聞いている。このうち、交付決定済引換券が9万7171人ということで、対象者数の36.5%となっている。
 消費税増税に関する影響については、8%になった際の本県の影響を見ると、平成26年の県内経済においては、物価上昇の動き、大型小売店舗販売額、新車登録台数などの個人消費の落ち込み、鉱工業生産指数や新設住宅着工戸数の前年割れなど、税率引き上げや駆け込み需要の反動減の影響が見られたところであり、今回も同様の影響が懸念されているが、県内一部の商店街に聞き取りしたところ、「一部商品については駆け込み需要が見られたものの、前回の増税時に比べると落ちている状況」という回答をいただいている。車や住宅等においても、「目立った駆け込み需要は見られない」との一部報道もあるが、今後発表される国・県の景況調査を注視していくとともに、引き続き商工指導団体と連携し事業者からの相談に対応していきたい。
 観光等への影響については、交通機関や宿泊施設等が値上げしているところだが、台風19号の影響もあり、増税による影響かどうかは把握できていない。