2019年11月8日 決算特別委員会
県土整備部
に対する質疑(大要)


・災害公営住宅におけるコミュニティ確立の取り組みについて

【斉藤委員】
 災害公営住宅での孤独死は、昨年18人と前年比3倍に急増した。今年9月末までに11人が孤独死し、累計で45人となっている。この事態を部長はどう受け止めているか。
 孤独死防止のためにどういう状況で孤独死したか検証すべきだと提言したが、どのように検討されたか。

【県土整備部長】
 一人暮らしとはいえ、お一人でお亡くなりになったという事態は大変痛ましいことであり、そうした事態はあってはならないことであり、極力改善していくべきものと考えている。孤独死の状況については、保健福祉部および警察本部と共有しており、これまで亡くなられた45人のうち、70歳以上の方が約7割と聞いており、高齢者が多い状況となっていると認識している。また、亡くなられた方々の発見までの時間だが、さまざまではあるが、1日以内の発見だったという方が19名いるという情報も共有させていただいた。
 このような状況に鑑み、高齢者が孤立を深めることがないよう、高齢者の見守りとコミュニティの形成に取り組んでいくことが大変重要な課題と考えている。

【斉藤委員】
 昨年度から災害公営住宅での孤独死が急増しているということで、繰り返し警鐘を鳴らしていた。その検証を求めたのは、どういう支援があったら孤独死を防止できたのか。そういう検証をしっかり行い、具体的対策を講じるようにしていただきたい。
 災害公営住宅入居者の特徴というのは、高齢化と生活苦である。一人暮らしの高齢者世帯が31.4%、65歳以上の高齢者は41.2%。これは全体として県平均より11.6%高い。災害公営住宅の入居基準の半分以下の低所得者が69%を占めている。いわば超低所得者である。高齢者の孤立化・孤独化を防ぐためには、高齢者の見守りと人と人との関係、コミュニティの確立が重要だと思うが、具体的にはどう取り組まれているか。

【建築住宅課総括課長】
 高齢者の見守りとコミュニティの確立は非常に重要な課題であり、災害公営住宅において高齢者が孤立を深めることのないよう、コミュニティ形成支援事業などにより、コミュニティ形成に関する相談、団地内の花壇の手入れなど美化活動や入居者交流イベントなどの開催、共助の場面を設定した防災訓練などを実施している。また、自治会名簿の作成支援も含め、引き続き入居者が相互に支え合う取り組みを進めていきたい。

【斉藤委員】
 コミュニティ形成支援員はたった2人である。県営災害公営住宅28団地に4000人が入居している中で、一人は沿岸、一人は盛岡。これではほとんどまともな活動ができていないと思う。
 阪神淡路大震災の関係で、兵庫県は2017年度でも2億円をかけて災害公営住宅に支援員を配置している。20年近く経ってもこういう形でやっている。以前にも紹介したが。いま災害公営住宅というのは、これからの高齢化社会のまさに先取りである。ここでどう手立てを取るかというのは、必ずその後のさまざまな取り組みに生かされる課題なので、一人暮らし高齢者をあなた方は分かっているのだから、しっかり訪問するし、訪問するだけではない一人一人の関係を構築していくことが必要だと思う。やはり思い切った手立てを講じるべきである。
 コミュニティの確立にとって、自治会の確立、入居者が参加する取り組みが重要だと思うが、自治会未確立の団地はどうなっているか。
 災害公営住宅の集会所が週1回程度しか使われていないのが実態だが、何が原因か。コミュニティ確立の拠点として使われるためには、どう支援すればいいのか。

【建築住宅課総括課長】
 令和元年8月末現在で、自治会が未組織となっている県営災害公営住宅は、すでに供用を開始している28団地中10団地となっている。県では、災害公営住宅コミュニティ形成支援事業により、2名のコミュニティ形成員を配置し、入居者から相談に応じた市町村や支援団体等への連絡調整、入居者交流会の開催支援、自治会設立支援などのコミュニティ形成に向けたきめ細かな対応をしていただいている。
 集会所の利用については、団地の供用開始から間もないということ、自治会組織がまだ十分でないなどが利用が少ない主な原因と考えている。活発な集会所の利用にあたっては、負担が一部に集中せず、多様な人が関わり合って、個々の意識・関心を高め、自立したコミュニティ形成に取り組むことが重要だと考えている。引き続き、災害公営住宅コミュニティ形成支援事業による自治会活動や、住民同士の交流機会となる活動の支援を行うとともに、利用が活発な団地の利用事例の共有を図るなど、関係部局とも連携しながら集会所の利用促進に取り組んでいきたい。

【斉藤委員】
 いま災害公営住宅の集会所がどうなっているか。月に2〜4回、良くて5〜6回である。週に1回使われるかどうか。ほとんど使われていないのが実態である。集会所がなぜ整備されたかというと、阪神淡路大震災の教訓を踏まえ、コミュニティを形成・確立する拠点として立派な集会所がほとんどのところでつくられている。それが活用されていないというところに危機感を持って取り組む必要があると思う。自治会ができたところも、みんな苦労していて、自治会の機能が果たされていない。まだ自治会も作られていないところが10団地ある。
 結論的に言うと、2人のコミュニティ形成支援員を配置するだけでは何ともならない。保健福祉部などともよく協議して、50戸以上の災害公営住宅には支援員を配置すると。集会所には支援員の事務室も整備されている。建物はそのようになったが、中身はそうなっていないので、そこのギャップをしっかり受け止めてやっていただきたい。
 コミュニティ形成の上で、入居者名簿の提供ということを提起してきた。県も「入居者の同意を得た上で提供する」と。個人情報保護の一定のマニュアルも作ってやっているが、どこか典型をつくってやっていかないと進まないと思う。そこで、入居者の同意数はどのぐらいになっているか。9割10割の回答をしっかり求めるべきだし、きちんと提供して、入居者の全体を自治会役員の方々が把握して活動することが必要ではないか。

【建築住宅課総括課長】
 令和元年9月末現在、同意書を配布した1343世帯にたいし、提出いただいた世帯は719世帯・53.5%となっている。項目別の同意状況は、提出世帯数719世帯のうち、氏名625世帯・86.9%、性別614世帯・85.4%、生年月日563世帯・78.3%、災害時の支援を希望する世帯が537世帯・74.7%となっている。
 提出率がまだ低い状況で十分ではない状況にあり、引き続き提出を求めていくとともに、自治会の活動との場を通じて、入居者への説明などに取り組んでいきたい。

【斉藤委員】
 私の一般質問に対して達増知事は、「自治会設立や名簿の作成などについて、県の方で対応しているという話があったが、やはりさらに力を入れて、実質的に孤独死が起きないように、コミュニティづくりということを進めていきたい」という答弁をしており、この答弁を踏まえて、ぜひ名簿を提供できるような自治会を2つ3つと作って、普及していただきたい。
 入居者名簿の提供をするという前向きの態度を示した岩手県は全国から注目されている。普通の町内会は、子どもが小学校や中学校に入れば記念品を贈る、二十歳になったり敬老の日にはお祝いする、これが町内会・自治会である。ところが誰が入学したか、二十歳を迎えるのか、敬老の日を迎えるのか分からない。そういうことでしっかり名簿を提供できるようにやっていただきたい。県営栃ヶ沢団地は、全世帯に「安心キット」を配っていると。なぜかというと、高齢者が倒れたり毎日のように救急車が来ると。いろいろ議論して、何かあったときに対応できるような取り組みをしている。そうしたことも参考にぜひ進めていただきたい。

・洪水ハザードマップの作成状況について

【斉藤委員】
 先ほども議論があったが、28市町村でハザードマップが作られているが、これは旧基準だと。最大の想定で作られている市町村はどのぐらいか。

【河川課総括課長】
 洪水ハザードマップを作成済の28市町村のうち、想定最大規模に対応したハザードマップを作成しているのは8市町である。

【斉藤委員】
 洪水ハザードマップがなぜ大事なのか。例えば、昨年の西日本豪雨で51人の犠牲者を出した岡山県倉敷市真備町は、想定浸水域と実際の浸水域がほぼ一致したものの、その後の県の調査では、マップの内容を把握していた世帯は2割強にとどまったと。あれだけ大きな豪雨も、ハザードマップの想定浸水域と一致したが、それを自覚していた住民は2割強だったと。今回の場合も同じような状況になっているのではないか。
 平成27年度に水防法が改正されて、最大の浸水、雨量ということが基準になった。去年今年の大雨洪水を見れば、まさに想定外と言ってられない、最大規模の大雨洪水が起きている中で、自分がどれだけ危険なところに生活しているのかを自覚してこそ、避難の指示も生きる。
 まだ想定最大規模での作成は8市町にとどまっているので、どういう形で全市町村に広げていくのか。具体的な取り組み、見通しを示していただきたい。

【河川課総括課長】
 想定最大のものに切り替えていくためには、まずは県が各河川において想定最大規模の浸水想定区域の指定をすると。まずはそれがあって、それを提供して市町村のハザードマップに反映していただくという形になるかと思う。
 現在県では、大規模氾濫減災協議会において計画を立てた、平成29年〜令和3年までの間に、30河川の浸水想定を指定するという目標に向けて進めている。現時点で、計画30河川のうち、19河川を指定したところである。今後もこの計画に沿ってできるだけ早期に最大規模の浸水想定の指定が図られるよう努めていきたい。

【斉藤委員】
 5ヶ年計画で30河川、現在19河川だと。30河川指定すればいくつの市町村でハザードマップができるのか。

【河川課総括課長】
 26市町村である。

【斉藤委員】
 先日NHKで、北上川の最大想定のハザードマップの報道があった。改めて驚いたが、想定最大規模で大雨が降った場合、盛岡駅が5m浸水すると。そういうことを自覚している県民というのはほとんどいないのではないか。ハザードマップをしっかり作成し、それが県民の認識・自覚になるように、丁寧に説明し対策を考えていただくという風にしないといけない。自主防災組織にも説明するとか、そういうことをやらないと、ハザードマップを全戸配布したが、分かっているのは2割弱だったという実態に陥っているのではないか。ぜひ想定最大規模のハザードマップが作成されるようにしっかり進めていただきたい。
 今回の大雨洪水災害でもう1つ特徴的なのは「内水氾濫」である。久慈市に調査に行った際に、長内川支流の小屋畑川、久慈川支流の沢川が氾濫して、大変な被害をもたらした。今日の新聞報道を見ると、小屋畑川の河道は掘削するという対応が示されて良かったと思うが、久慈市から要望されたのは、「沢川は県管理で、治水対策を早く示してほしい」ということだったが、どのような対応になっているか。

【河川課総括課長】
 今回の台風19号において、ご指摘の通り沢川の周辺においても浸水被害が生じたということは承知している。県では、今回の内水氾濫にかかる浸水範囲や洪水の痕跡などの調査を進めている。今後その調査を踏まえ、必要な対策について検討していきたい。

【斉藤委員】
 もう1つ洪水対策でお聞きしたいのは、いま簗川ダムが完成に近いところまできているが、私はいろんな問題があると今まで指摘してきたが、この簗川ダムの計画洪水水量というのは2日間で210mmである。いま210mmといったらダムは溢れてしまう。今回の台風19号で宮古市や普代村は400mm、多くのところで300mmの降水量である。簗川ダムはそういう規模の雨が降ったら溢れてしまうということになるのではないか。そのことも含め、一定規模の大雨には対応できるが、今回のような大雨には対応できないということもしっかり示して、そういうときの対策もセットでやるべきだと思うがいかがか。

【河川開発課長】
 計画規模を上回る豪雨への対応だが、簗川ダムの治水計画については、平成3年度の建設採択時に検討を進めており、雨量としては、簗川流域に降った大正5年〜平成2年までの75年間の実績降雨を基に、治水安全度である100年に1回起こりえる豪雨を算定しており、それが簗川の計画豪雨で、流域全体に降った場合を想定した雨量として「2日間で210mm」としている。
 当然簗川ダムは自然調節方式であるので、さらに210mmを超えた場合ということだが、洪水調節容量にやはり限界があるので、ダムの天端付近から洪水吐きを設定しているので、こちらから越流するということになり、ダム下流への放流量が増加することとなる。そういった場合においても、事前に関係機関への周知を行うことや、住民への警報活動を行うことなどで対応を考えている。
 ダムに限らず、「施設の能力を超える洪水は発生する」という認識のもとで、住民の円滑・迅速な避難を促すため、盛岡市や関係機関と一層の連携を図っていく。

【斉藤委員】
 簗川ダムは75年間の実績降雨で210mmと決めたのかもしれないが、しかしそれを超える大雨が県内各地で降っている。治水対策の一番の要は堤防の強化だと思う。破堤しない堤防をつくると。ダムによってこの堤防強化がおろそかにされてきたというのが今までの治水対策の結果である。そういう原点に立ち返った治水対策を進めていただきたい。

・国道340号押角トンネル前後の道路整備について

【斉藤委員】
 トンネル前後の道路整備の取り組み状況はどうなっているか。

【道路建設課総括課長】
 押角トンネルを含む押角峠工区については、令和2年度の開通を目指して現在トンネル舗装工事等を進めている。
 押角トンネル前後については、ルートや構造、優先区間の検討を行い、まずは早期の事業工区が見込まれる押角峠工区の接続する宮古側の2キロ区間について、令和2年度の新規事業化を目指し、公共事業評価の手続きを進めている。

【斉藤委員】
 宮古側しか答えなかったので。宮古側も4キロのうちの2キロである。
 岩泉町長さんは「岩泉側も早期に」と。これは切実な声なので、岩泉側は今後どのように取り組むのか。

【道路建設課総括課長】
 岩泉側についても、押角峠工区と同様の規格で整備が必要と認識はしている。現在、ルートや構造、優先区間の検討を行っており、押角峠工区や宮古側の進捗も踏まえながら、引き続き事業化の時期を検討していきたい。