2019年12月4日 12月定例県議会本会議
高田一郎県議の一般質問(大要)


【高田議員】
 日本共産党の高田一郎でございます。
 台風第19号の豪雨災害で犠牲となられた方々にお悔やみを申し上げますとともに被災されたみなさんに心からお見舞い申し上げます。

1.台風19号災害からの復旧について

・住宅再建への支援について

 まず、第一に台風19号災害の復旧の課題について質問します。
 岩手県は住宅再建、生業の再生への県独自の支援を明らかにし補正予算を措置しました。いち早く支援を示されたことに被災者からも歓迎されています。しかし、被災地を中心にした生活基盤や産業経済に甚大な被害をもたらしており、引き続き支援が必要です。被災者の方々が住宅再建と生業の再生へ見通しを持って取り組むことができるよう、以下質問します。
 第1に、住宅再建への支援であります。住家被害は11月22日現在、全壊41棟、大規模半壊51棟、半壊711棟などとなっています。住宅再建は生活再建の土台であり、一日も早く暮らせる環境をつくることが必要です。応急仮設住宅等に一時避難している方は、11月22日現在で92戸となっています。こうした被災者の方々の住宅再建の意向はどう把握されているのでしょうか。
 土砂災害による浸水で大きな被害を受けた山田町田の浜地区では、6年前に再建したばかり、中には一週間前に入居したばかりで被害に遭われました。二重の被災者をうけた被災者には特別の支援が必要と考えますがいかがでしょうか。

【達増知事】
 全壊、大規模半壊の被害は6市町村の100世帯で、11月29日現在、3市町村で62世帯を対象に住宅再建の意向を確認しており、新築や補修等が33世帯、公営住宅や賃貸住宅への入居が14世帯で、このほかの世帯は検討中などとなっています。
 被災者への支援については、国による被災者生活再建支援制度のほか、県では、同制度が適用されない市町村を対象に県単独事業を実施し、さらに、市町村では独自に上乗せの支援を行うところもあり、甚大な被害を受けた被災者に配慮した支援を行っているところです。
 近年、全国的に豪雨災害などの自然災害が多発し、より手厚い生活再建支援が求められていることに加え、本県においては、東日本大震災津波および平成28年台風第10号災害からの復興の途上にある中で、二重三重の被害を受けた地域もあることを踏まえ、県としては国に対し、被災者生活再建支援金の増額や制度の要件緩和と充実、幅広い財政需要に対応できる弾力的で自由度の高い総合的な支援制度の創設等を要望しており、今後も必要な財政措置や制度改正等について要望していきます。

・生業再生への支援について

【高田議員】
 第2に、深刻な被害となった生業の再生についてです。
 被災した事業者は、東日本大震災津波や台風第10号災害と二重三重の被害を受けました。県は「なりわい再生交付金」を打ち出しましたが、その後国は「地域企業再建支援事業」(自治体連携型補助金)という政策パッケージを示しました。これは県の事業に対し4分の3支援となっています。そうであるならば、県の「なりわい再生交付金」を4分の3にし、被災事業者負担を4分の1にしてグループ補助金並みの支援をすべきですが知事のお考えを伺います。
 被災した小規模事業者を再建する「被災小規模事業者再建事業」は、台風第10号災害の際も「使い勝手がいい」と歓迎されました。制度のPRとともに、この事業をすみやかに対応できるよう商工会等に支援を行うべきですが対応はどうなっているのでしょうか。

【達増知事】
 今回の台風災害では、東日本大震災津波や平成28年台風第10号の被災地域を含めて甚大な被害が発生していることから、被災事業者の復旧・復興の取り組みを加速し、早期に地域経済を立て直していくことが求められています。
 このため県では、国において措置された被災者の生活と生業の再建に向けた対策パッケージのメニューの1つである「自治体連携型補助金」を活用し、被災中小事業者を支援する方針であります。
 この自治体連携型補助金制度は、被災した中小事業者の復旧に要する経費の4分の3まで補助できるとするものであり、県としては、これを最大限活用することとし、必要な経費を追加して計上した予算案を今定例会最終日に提案できるよう検討を進めております。
【商工労働観光部長】
 被災小規模事業者再建事業にかかる商工会等への支援について。この事業は、被災事業者の早期事業再開を促進するため、直接被害を受けた小規模事業者が行う施設等の復旧に加え、販路開拓や新商品開発などの取り組みに要する経費を補助するものであります。
 県では、すでに東北経済産業局と合同で、市町村や商工会等の職員を対象として、この事業を含めた国と県の支援策の説明会を実施したところであり、今後、市町村と連携し、事業者向けの説明会の開催などにより周知を図ってまいります。
 また、この事業の活用に当たっては、事業者が経営計画を策定する必要があることから、商工会等と連携し事業者を支援してまいりますが、商工会等に対する支援については、その必要性など十分に話し合ってまいります。

・三陸鉄道の復旧について

【高田議員】
 第3に、三陸鉄道の復旧は、国の「特定大規模災害等鉄道施設災害復旧事業」で対応しようとしていますが、これは三陸鉄道や地元自治体が求める改良復旧での対応となるのでしょうか。国とどのような協議が行われているのか。あわせて地元自治体の負担がどうなるのかも示してください。

【政策地域部長】
 県としては国に対し、いまだ本県が東日本大震災津波からの復興途上にあることを踏まえ、国庫補助率の最大限の引き上げや地方財政措置の拡充などを要望するとともに、あわせて、将来にわたって安全性の確保に資する改良復旧ができるようにする旨を要望しているところであります。
 現在三陸鉄道では、早期復旧に加え、将来にわたる安全運行の確保と災害の再発防止を図る観点から、被災規模の大きい箇所について、国の独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」等の助言をいただきながら、復旧方針や工法等の検討を進めると聞いている。
 また、そうした箇所については、鉄道施設の復旧と合わせて、治山、砂防事業等の実施が必要となる可能性がございます。このため現在、三陸鉄道・県・市町村等による合同の現場調査を行っており、今後、被災箇所周辺における治山事業等の実施の要否など、将来にわたる安全性の確保のための対応方針等について協議していく予定としております。
 なお復旧費用については、国において、熊本地震における対応と同様、補助率を国2分の1、地元自治体2分の1とし、鉄道事業者の負担のないスキームとしたうえで、自治体負担に対しては、負担の発生した当該年度に地方債を100%充当し、後年度の元利償還費に対し、95%の普通交付税が措置される方向で検討していると聞いております。
 今後も、国等の支援をいただきながら、また、市町村等関係団体との連携を強化しながら、三陸鉄道の一日も早い全面復旧に向け、全力で取り組んでまいります。

・台風災害の教訓を踏まえた防災・減災対策について

【高田議員】
 第4に、台風19号災害の教訓と課題についてであります。台風第19号で決壊した71河川は、140箇所の8割がバックウォーター現象で決壊しました。県内でも越水による浸水被害が発生しており、洪水ハザードマップの作成が必要だと感じています。想定最大規模(1000年に1度)の洪水ハザードマップを作成している自治体はわずか8市町となっています。すべての自治体で作成させる見通しを示してください。
 岡山県倉敷市真備町では、ハザードマップを理解していた住民は2割弱と言われています。危険災害予測だけでなく、安全な避難経路や避難場所などを自治体職員と住民とで作成し、避難訓練まで行うことなどの改善が必要と考えますがいかがでしょうか。
 山田町や普代村で、一人暮らし高齢者を夜中に間一髪で避難させたというお話を伺い、避難行動要支援者名簿を作成し個別計画を促進することが極めて大事だということを痛感しております。5月1日現在、個別計画の作成は15市町村で17103人と、全体でわずか20%であり、個別計画作成ゼロ自治体は18市町村にもなっています。要配慮者利用施設の避難計画の作成状況は、1179箇所中791箇所にとどまっています。これは、地域防災計画に反映されず、対象施設への説明すらされていない現状にあります。想定外という災害が毎年各地で起きている中にあって、なぜこうした状況になっているのか、県として取り組む対策も示してください。

【県土整備部長】
 想定最大規模の降雨に対応した洪水ハザードマップの作成は、平成27年の水防法の改正により定められたところであり、市町村が洪水ハザードマップを作成するためには、まず河川管理者が想定最大規模の浸水想定区域を指定し、それを市町村に提供する必要があります。
 県においては、最大規模の降雨に対応した浸水想定区域について、これまでに19河川の指定を行い、令和3年度末までにさらに11河川を指定する計画としています。これにより、26市町村において想定最大規模の降雨に対応した洪水ハザードマップの作成が可能となります。その他、残る市町村についても、早期に洪水ハザードマップの作成が可能となるよう、引き続き浸水想定区域の指定に取り組んでまいります。
【総務部長】
 ハザードマップに基づく避難訓練の実施についてでありますが、災害時においては、住民が迅速に避難する必要があり、日頃から住民の防災意識の高揚や、住民同士が助け合える体制の強化を図るとともに、住民参加型の避難訓練の実施などの取り組みが重要だと認識しております。
 市町村におけるハザードマップを活用した取り組みについては、本年2月時点で20市町村がハザードマップに基づく避難訓練を実施するとともに、24市町村が自主防災組織の研修や出前講座等にハザードマップを活用しています。
 また県においては、自主防災組織の組織化と活動の活性化を図るため、地域防災サポーターの派遣や自主防災組織活性化モデル事業を実施しており、住民が主体となって地域の防災マップの作成などを行っているところであります。さらに、毎年開催地域を変えて総合防災訓練を実施し、風水害による浸水や洪水災害を想定した広域避難や避難所の開設・運営など、住民参加型の訓練を行ってきたところであり、引き続き市町村や関係機関と連携し、危険災害予測も踏まえた住民避難が円滑に行われるよう取り組んでまいります。
 要配慮者利用施設の避難計画の作成についてでありますが、要配慮者利用施設の避難確保計画の策定率は、平成30年4月時点では16.7%だったが、計画未策定施設の管理者および市町村職員を対象に計画策定の具体的なポイントや手順について講習会を開催するとともに、市町村が行う講習会等へ県から講師を派遣するなどの支援に努め、本年11月時点では、70.3%となったところであります。また、一部の市町村や教育施設での策定の遅れが見られたことから、本年10月には、奥州市で計画未策定施設向けの講習会を実施したところであり、12月には教育委員会と連携し、幼稚園や小中学校などの教育施設を対象に講習会を行うこととしています。今後においては、計画未策定施設数の多い市町村や、計画策定率が上がっていない市町村への個別の働きかけを強めるとともに、他市町村の取り組み事例の紹介や、市町村が開催する講習会に県から講師の派遣を行うなど、積極的に計画策定を支援してまいります。
【保健福祉部長】
 避難行動要支援者にかかる個別計画の策定についてでありますが、県では、いわて県民計画の計画推進プランに、令和4年度までに全ての市町村が策定に取り組むことを指標として設定し、策定を働きかけてきたところであり、本年5月時点で着手済みの15市町村に加え、新たに着手したのが1団体、年度内に着手する見込みが1団体となっているほか、2団体で具体的な検討が進められ、取り組みが具体しているところであります。
 未着手の市町村や個別計画の策定が進んでいない市町村では、地域における避難支援者の確保が難しいことなどが課題として挙げられているところであります。
 市町村においては、住民や民生委員など、地域の関係者による情報交換会を開催し、避難行動要支援者の情報共有や安全な避難経路などについての話し合いを通じ、共助の意識を高め、避難支援者の確保につなげている取り組み事例もあるところであります。
 県では、こうした先進的な取り組み事例を紹介するなど、個別計画の策定が進むよう市町村を支援し、避難行動要支援者の避難支援の充実に取り組んでまいります。


2.東日本大震災津波からの復興について

・見守りとコミュニティの確立支援について

【高田議員】
 第2に、東日本大震災津波からの復興の課題について質問します。
 被災者の現状は、10月末現在で、応急仮設住宅に(みなし仮設住宅含め)1201人、災害公営住宅では8816人が暮らしています。8月末現在、災害公営住宅に入居している高齢者を含む世帯は60.8%、一人暮らし世帯は32.5%となっています。
 東北大学が行った災害公営住宅入居者調査では、転居の回数が多いほど「睡眠障害」が多く、3回の転居では33%にもなっています。健康悪化とともに、孤立化や生活苦が進行しています。災害公営住宅における孤独死は、10月末現在で46人にのぼり、昨年は18人、今年度はすでに12人と年々急増しています。見守りとコミュニティ支援の抜本的な強化は喫緊の課題です。
 災害公営住宅の集会室の使用は月2〜5回程度で、コミュニティの拠点としての役割が果たされていない実態があります。宮城県南三陸町では、60戸以上の災害公営住宅の集会室にLSA(ライフサポートアドバイザー)を2人配置し、6人体制ですべての入居者の支援を行っています。「集会室のホワイトボードには行事などがびっしり入り、見守りや自治会活動への支援など被災者からとても喜ばれている」と伺いました。南三陸町の経験に学び、せめて50戸以上の災害公営住宅には複数の支援員を配置して見守りとコミュニティ支援を強化すべきですが知事の見解を伺います。

【達増知事】
 災害公営住宅への入居が進む中で、65歳以上の一人暮らし高齢者世帯が入居者の約3割となっており、災害公営住宅における見守り体制の一層の充実が必要と考えております。本県においては、市町村社会福祉協議会に配置した生活支援相談員が、民生委員や市町村が配置する支援員等と連携しながら、応急仮設住宅や災害公営住宅等に居住している被災者への見守りなどの個別支援や、住民相互に支え合うコミュニティ形成の地域支援の両面に取り組んでまいりました。
 議員ご紹介の南三陸町の取り組みについては、災害公営住宅での見守りやコミュニティ形成支援を重点的に行うため、一定規模以上の災害公営住宅に支援者を配置し、より身近なところで被災者の支援にあたっているものと承知しており、本県としても参考となる取り組みの1つであると考えております。
 本県でも今年度、生活支援相談員が身近なところを拠点として活動できるよう、県社会福祉協議会や市町村社会福祉協議会と協議し、3市町において、県営災害公営住宅の集会所や地域の空き家に配置する取り組みを始めたところであります。
 県としては今後、他の市町村においてもこうした取り組みが拡大するよう働きかけ、被災者が地域で孤立を深めることのないよう、被災者一人一人に寄り添ったきめ細かな支援に努めてまいります。

・水産加工業への支援について

【高田議員】
 水産加工業は、大不漁や原材料不足など危機的状況にあります。水産加工業の売り上げは震災前と比べどうなっているのでしょうか。従業員確保、販路拡大、原材料の不足が課題となっており、これまで以上の対応が必要と考えますが、今後どのようにこれらの課題に取り組まれるのでしょうか。グループ補助金を活用した事業者は、返済の時期を迎えています。新たな金融支援なども必要と考えますがいかがでしょうか。
 主力魚種は危機的な不漁で、5年は戻らないという認識での対応が必要であり、「魚種の転換も必要だが、設備投資や販路拡大など簡単ではない」ことも訴えられております。現在の支援制度の拡充が必要ではないかと考えますがいかがでしょうか。

【商工労働観光部長】
 東北経済産業局が行った東北4県におけるグループ補助金交付事業者へのアンケート調査では、水産・食品加工業のうち、「売上高が震災前の水準以上まで回復している」と回答した割合は32.4%にとどまっているところであります。
 従業員確保等の課題については、県では、水産加工業の人材確保に向けて、これまで就職面接会や企業見学会、岩手県U・Iターンフェアの開催や、大手就職情報サイトの活用支援等に取り組んでいるところであります。
 販路拡大については、専門家を活用した商品開発支援や、県内外での商談会の開催、大手量販店でのフェア開催、沿岸部へのバイヤー招へい、海外への販路拡大支援に取り組んでいるところであります。
 原材料不足については、魚種の変更やマーケットニーズに対応した付加価値の高い新商品の開発等、国や関係機関、専門家等と連携しながら支援しているところであります。
 今後においても、こうした取り組みをさらに充実させるとともに、生産性の向上や商品力向上、販路開拓の支援等により水産加工業の経営力の強化を図ってまいります。
 グループ補助金の自己資金分にかかる、いわゆる高度化スキーム貸付については、県は貸付を行っている広域財団法人岩手産業振興センターと連携し、貸付先の業況を確認しながら、最終償還期限の延長や毎回の返済額の低減といった条件変更により対応しているところであります。
 新たな設備投資等の支援を必要とする事業者に対しては、国の各種補助事業の導入や、設備貸与事業などの活用を促しているところであり、今年11月1日からは、設備貸与事業の貸与利率を0.1%引き上げたところであります。事業者個々の経営相談や会計指導等の経営改善の取り組みと合わせ、引き続ききめ細かに支援してまいります。


3.高齢者対策について

・特養待機者ゼロへの対応について

【高田議員】
 第3に、高齢者対策について質問します。
 県内の特別養護老人ホームの待機者は、在宅での早期入所が4月1日現在、890人に対し、今後2020年までの介護保険事業計画中における開設見込みは478床です。計画通り整備されても特別養護老人ホームの待機者は解消できません。今後の施設整備の必要性と待機者ゼロへの県としての対応策を示してください。また、第7期介護保険事業整備計画期間当初における開設見込みに対する施設整備の実績はどうなっているのか、あわせて伺います。
 厚労省審議会で、通常国会に提案する改定案作成に向けた議論が行われています。具体的には、要介護1、2の生活援助を保険給付外にすること、利用料の2割、3割負担を広げること、ケアプラン有料化などです。その影響はどう推計されているのでしょうか。利用者や家族に一層の苦難を強いる介護の切り捨てにつながるものであり、国に反対の声を上げていくべきですがいかがでしょうか。
 県内の要介護認定高齢者77391人に対し、3月末の利用率は83.4%、区分支給限度額に対する利用率は、要介護3で55.1%になっています。要介護1、2の高齢者が介護施設入所を制限されるなどサービスを受けられない高齢者も増加し、独居老人と生活苦の高齢者も増えています。花巻市では、介護サービス未利用者や介護者などに訪問相談事業を行い、支援が必要な高齢者等の掘り起こしをしています。相談を待つのではなく、アウトリーチによる積極的な相談支援が必要と考えますがいかがでしょうか。

【達増知事】
 介護保険制度の見直しについてでありますが、まず要介護1・2の方に対する訪問通所介護サービスが市町村の地域支援事業に移行した場合に、本県においては訪問介護で約6,000人 、通所介護で約11,000人に影響が及ぶものと見込まれます。
 介護保険サービス利用者の原則2割負担が導入された場合については、利用者全体の94%に当たる1割負担者約63,000人に影響が及ぶものと見込まれます。またケアプランの有料化については、介護保険のすべての利用者約67,000人に新たな負担が生じることが見込まれます。県としてはこれまでも国に対して、制度運用上の課題等を十分把握した上で必要な見直しを行うようを要望していたところであり、今後も国における議論の動向を注視しつつ、介護を要する高齢者が必要なサービスを必要な時に利用できるよう働きかけを行ってまいります。
【保健福祉部長】
 施設整備と待機者解消への県の対応策についてですが、ご指摘の通り、市町村が早期入所が必要と判断した在宅の待機者は、平成31年4月1日時点において890人となっており、引き続き施設整備が必要な状況にあると認識しています。特養ホームについては、第7期介護保険事業計画期間の3年間で773床の開設を見込んでいたところでありますが、平成30年度の248床を含め、これまで486床が開設しており、今年度中にさらに50床の開設が予定されています。県としては、今後とも市町村が介護保険事業計画に基づいて行う特養ホームや認知症高齢者グループホームなどの施設整備に対する補助を行うとともに、介護人材確保対策を進めることにより、待機者解消に向けて必要な介護サービス基盤の整備を支援してまいります。
 アウトリーチによる相談支援についてでありますが、介護を要する高齢者が必要なサービスを必要な時に利用できることが重要であり、県では、市町村において、地域包括支援センターが介護を含めた重層的な課題を抱えている高齢者世帯への個別訪問等により、介護サービスの利用など適切な支援につなげているものと認識しています。花巻市においては、市が独自に実施した在宅介護者の実態調査を踏まえ、地域包括支援センターの取り組みに加え、市社会福祉協議会に訪問相談員を配置し、一定期間サービスの利用がない要介護認定者などの見守りや、訪問相談活動を行っているものと承知しております。県としては、地域においてこうしたアウトリーチを含む多様な相談支援が行われることが望ましいと考えており、現在実施している研修等を通じて、引き続き地域包括支援センター職員の資質向上や、個々の福祉課題をサービスに結びつける地域福祉活動コーディネーター等の育成を行い、市町村が地域の実情に応じて行う相談支援の充実を支援してまいります。

・加齢性難聴者の補聴器購入等への支援について

【高田議員】
 次に、加齢性難聴者の補聴器購入等への支援についてです。加齢性難聴は、日常生活を不便にし生活の質を落とすだけに、鬱や認知症の原因にもなることが医学的にも指摘されています。厚労省の介護予防マニュアルでは「社会活動が不活発であることが認知症のリスクを上げる」としたうえで、閉じこもりの身体的要因の一つに「聴力の低下」を挙げています。
 難聴を医療のカテゴリーととらえる欧米と比べ、日本は難聴を障がい者のカテゴリーととらえているため、補聴器所有者が少ないのが現状です。しかし、補聴器は高齢者の社会生活の必需品になっています。どういう支援が必要か、県としても検討する必要があるのではないかと考えますがいかがでしょうか。

【保健福祉部長】
 現在、高度難聴および重度難聴の障がい児・者に対しては、障がい者総合支援法等に基づき、市町村が補聴器の購入費用および修理費用の9割を支給しているところであります。難聴については、認知症施策推進大綱において、認知症の危険因子の1つに挙げられている一方、その因果関係やメカニズム、難聴の補正による認知症予防の効果については、十分な調査結果等が得られていない状況にあり、国においては認知症の予防、診断、治療、ケア等のための研究の一環として、補聴器を用いた聴覚障害の補正による認知機能低下予防の効果を検証するための研究を行っていると承知しており、県としては、まずは国の研究成果等を注視していく必要があるものと考えております。

・高齢者ドライバーの事故防止対策について

【高田議員】
 次に、高齢者ドライバーの事故防止対策です。国では、高齢者が運転する自動車の安全運転支援装置購入の補助を経済対策として補正予算で措置するとの報道がされています。設置費用を支援し設置を促進すべきと考えますがいかがでしょうか。高齢者のブレーキの踏み間違いによる事故の現状はどうなっているのでしょうか。

【環境生活部長】
 アクセルとブレーキの踏み間違い防止装置や、衝突被害を軽減するブレーキの機能は、交通事故を防止する方法として有効とされており、国では、本年6月に示した交通安全緊急対策において、衝突被害軽減ブレーキの国内基準の策定や、新車への搭載の義務化、加速抑制装置の性能認定制度の導入などの施策を進めることとしております。
 ご指摘の安全運転支援装置設置への補助ですが、報道がなされていることは承知しておりますが、今のところ国から県に対し補助制度に関する情報は示されていないところです。
 県としては、県、市町村、県内事業所などで構成する岩手県交通安全対策協議会の事業として、安全運転サポート車の体験型教室を開催するなど、機能に対する理解の普及に取り組んでいるところだが、安全運転支援装置設置費用の補助については、国の動向を踏まえ、県としてどのような対応が可能か研究してまいりたいと考えております。
【警察本部長】
 高齢ドライバーによるブレーキとアクセルの踏み間違い事故は、平成30年中8件発生し、前年比2件の増加であり、死亡事故の発生はないものの、重傷事故が1件発生しております。
 本年は10月末で8件発生し、前年同期比2件の増加であり、死亡事故の発生はないものの、重傷事故が1件発生しております。


4.子どもの貧困問題と子育て支援について

・子どもの生活実態調査について

【高田議員】
 第4に、子どもの貧困問題と子育て支援について質問します。
 「子どもの生活実態調査」では、親の貧困が子どもの健康と食生活、学力の格差や子どもの自己肯定感にも影響があることが浮き彫りになった報告と私は受け止めています。
 「だれ一人として取り残さない」SDGsの視点で貧困問題に取り組む必要があると考えますが、知事は中間報告をどのように受け止めたのか、今後の取り組む基本的な考え方を示してください。
 「生活実態調査」では、経済的な理由で「遠足や修学旅行に行けなかった」が就学援助世帯で0.8%・29人、中央値2分の1未満は0.5%・7人、「給食費や教材費を払えなかった」は就学援助世帯で13.4%・490人、中央値2分の1以下は11.8%・167人にもなっています。修学援助制度の修学旅行費の概算払い及び給食費への負担軽減について県も取り組むべきと考えますがいかがでしょうか。

【達増知事】
 本年10月に公表した中間報告では、母子世帯の厳しい生活実態が浮き彫りとなった他、公的支援施策の周知が十分に行き届いていないことや公的相談窓口が十分に活用されていないこと、子供の居場所に対するニーズが高いことなどが明らかになったところであり、これらに対応するための施策の必要性を改めて認識したところであります。
 この生活実態調査については、岩手県子ども子育て会議、子どもの貧困対策推進計画部会においてさらに詳細な分析を行い、より実効性の高い施策の検討を行うこととなり、現在子どもの幸福感や自己肯定感、経済的理由による困難な経験などに関する詳細な分析を進めているところであります。今後課題と対応策の方向性を取りまとめる中で、ひとり親家庭に対する包括的な相談支援体制の構築や子供の居場所づくりの取り組みの拡大など、必要な施策を検討し次期岩手の子どもの貧困対策推進計画に盛り込んでいく考えであります。
 議員ご指摘の修学旅行や給食費等の問題については、すべての子どもに不利益がないよう対応をするべきことが基本でありますことから、関係する機関が誰一人取り残すことなく連携して対応していくことが重要であり、こうした考えも計画に盛り込み 推進してまいります。
【教育長】
 修学旅行費および給食費にかかる援助費の支給について、修学旅行費は33市町村中5市町村において、給食費は33市町村中22市町村において、就学援助世帯の一部負担が生じないよう対応しておりますが、一部市町村においては精算払いのため一時負担が生じているところです。
 県教育委員会では、就学援助世帯の負担軽減に向け、柔軟な対応となっている市町村の制度運用等について、未対応の市町村への情報提供も含め、必要な助言を行っていく考えです。

・子ども食堂について

【高田議員】
 次に、子ども食堂についてうかがいます。
 「生活実態調査」では、母子世帯の土日勤務が「定期的」「不定期」合わせて79%、日曜祝日勤務は59.6%となっています。子どもと向き合う時間がなく、居場所対策の中でも子ども食堂は重要な取り組みです。県内の子ども食堂は、10月1日現在で18市町38箇所と県の支援もあって着実に広がっています。しかし、年2回の子ども食堂もあり、内容の充実とともに全県に広げることが課題です。
 滋賀県では、300箇所を目標にすべての小学校区での設置を目指しています。現在115箇所で学区では51%にもなっています。市町村・県の社会福祉協議会にコーディネーターを配置し、立ち上がり資金として20万円、2年目3年目はそれぞれ10万円の支援を行っています。本県でもすべての小学校区など目標を掲げた取り組みが必要ではないかと考えますがいかがでしょうか。

【保健福祉部長】
 子ども食堂などの子どもの居場所は、さまざまな事情を抱える子どもが安心して過ごせる場であるとともに、地域の幅広い年齢層との交流の拡大にも有効な取り組みとなっており、県では、いわて県民計画政策推進プランにおいて、全市町村への展開を目標に掲げ、子どもの居場所の立ち上げや機能強化に対して支援するなど、取り組みの拡大を図っています。
 一方、岩手県子どもの生活実態調査においては、利用を希望する子どものうち、8割以上が「住んでいる学区内」での実施を望んでおり、全市町村で実施されるとともに、より身近なところで利用できるよう、県民の理解と参画の促進を図りながら取り組みを拡大していく必要があると考えています。
 そのため、現在策定を進めている岩手の子どもの貧困対策推進計画に、子どもの居場所づくりの取り組みの拡大に向けた施策を盛り込むとともに、市町村等関係機関とも連携し、県補助制度の一層の周知や、開設可能な施設の情報提供など、積極的な広報活動に努め、子どもの居場所拡大を図ってまいります。

・保育の無償化の取り組みについて

【高田議員】
 次に保育政策について質問します。
 10月から実施された「保育の無償化」により、県内の自治体では、副食費の自己負担や所得制限が導入されました。無農薬米、地元産の安全な食材にこだわる一関市内の保育園では月5100円の副食費を徴収しています。年収360万円未満の世帯分には月4500円が措置されますが、それを上回る額については保育園の持ち出しになっています。地域の特色を生かした良質な保育に取り組んでいる保育園ほど事務量が増大したり、経営が困難になるなどしており、多くの保育園から無料化を求める声が上がっています。
 宮古市では、3〜5歳児の副食費を無料にし、0〜2歳児の課税世帯も無料としました。無償化に伴う財源は1.1億円に対し、市がこれまで行ってきた独自の軽減策は1.5億円となります。県内の自治体ではどの自治体でも独自に保育料を軽減しており、宮古市の取り組みはどの自治体でも対応できるものです。宮古市の取り組みを紹介し県内に広げていくべきと考えますが県のお考えを伺います。

【保健福祉部長】
 今般の無償化の措置により、これまで市町村が利用者負担額を軽減するために、独自に負担していた経費に、国および県の負担等が入ることにより、市町村独自の財政負担は軽減されることとなります。こうしたことについては、本年9月に国から「無償化の実施にあたっての留意事項に関する通知」があり、その中で、「今般の無償化の実施にともない、経済的負担が増加する世帯が生じることのないよう、軽減される財政負担分を活用して、さらなる子育て支援の充実等に配慮することが望まれる」とされており、県ではこれを踏まえ、市町村に通知しているところであります。市町村においては、通知の趣旨や、それぞれの地域の実情等を踏まえながら、副食費の無償化を含むさまざまな子育て支援施策に取り組んでいるところであります。
 県では、宮古市における副食費の無償化など、各市町村で実施している子育て支援にかかる独自施策の実施状況について、全市町村に情報提供しており、今後も効果的な事業実施に向けた助言等を通じて、保育の実施主体である市町村を支援してまいります。


5.日米貿易協定、担い手確保対策について

・日米貿易協定の問題について

【高田議員】
 第5に、日米貿易協定について伺います。
 日米貿易協定は、衆議院での強行採決を経て、本日午前中の参議院本会議で可決されました。交渉内容も経過も一切秘匿し、具体的な影響試算も示されないままでの合意です。しかも、国内対策も示さず、政府は「農家所得や生産量への影響はゼロ」「GDPを押し上げる」と胸を張るなど、嘘とごまかしで乗り越えようとしています。しかも協定は、米国産牛肉の関税をすぐにTPP参加国と同じ税率まで引き下げ、加えてその税率での輸入枠をTPPとは別に設け、輸入量が増えれば即座に低関税輸入枠を拡大するための協議の規定まで盛り込まれています。
 畜産県岩手にとって大きな影響は避けられません。断固たる姿勢で国に反対の声をあげるべきと考えますが知事の見解を伺います。

【達増知事】
 先般国から日米貿易協定による農産物の生産額への影響試算の暫定値が示されましたが、生産額は約600億円から約1,100億円減少するとされており、本県においても大きな影響を受けることが懸念されます。
 県ではこれまで全国知事会、北海道・東北地方知事会と連携しながら、国に対し農業に及ぼす影響などについて十分な情報開示と説明を行ない、国民的議論を尽くすとともに農業者が安心して経営を継続できるよう、国の責任において万全の対策を講じるよう求めてきたところです。
 そのような中、農業に及ぼす影響について十分な情報提供と説明がなされず、国内対策も示されないままに、本日の参議院本会議において日米貿易協定の承認案が可決されるに至ったことは残念であります。
 今後とも国の責任において早急に農業に及ぼす影響や国内対策について明らかにするとともに、農業者が安心して経営を継続できるよう万全の対策を講じるよう求めて参ります。

・担い手確保対策について

【高田議員】
 農村の当面する喫緊の課題は担い手の確保です。「次世代人材投資事業」は、今年から準備型を先進農家や農業生産法人を除外し、農業法人と直接契約を結び研修をする「農の雇用事業」に一本化にしました。予算額も減額され現場では混乱するなどしました。来年は、予算の範囲内で意欲ある就農者に限定するとの報道もあります。「意欲ある農家」というあいまいな表現で予算額も減らそうとすることは制度の趣旨からも問題です。国に改善を強く求めていくべきです。意欲あるすべての対象となる就農者に交付し、住まい、農地、中古機械あっせん、技術研修、婚活など定着するまでの支援が必要です。同時に、兼業スタート型の就農支援などにも支援し、入り口を広げる対応も必要ですがいかがでしょうか。新規就農支援の実績と県の支援策も示してください。

【農林水産部長】
 本県の農業農村を持続的に発展させていくためには、意欲をもって農業に取り組む若い就農者を確保・育成することが重要であります。このため県では、県内外における就農相談会の開催や、短期受け入れ研修の実施、研修受け入れ先の斡旋などに取り組むとともに、就農直後から農業次世代人材投資資金の給付や、各農業改良普及センターにおける農業経営や栽培技術に関する指導、農業大学校における発展段階に応じた経営管理能力の向上においた研修を実施するほか、中古を含めた農業機械・施設の導入支援などに取り組んできたところであります。この結果、新機農業者数は、平成20年度以降200人を超えて推移しており、平成30年度は245人となっております。
 今後、引き続き市町村や関係団体と連携し、新規就農者が早期に安定した所得を確保し、地域の担い手として定着できるよう支援してまいります。

6.地球温暖化対策と再生可能エネルギーの課題について

・気候変動への対応、温室効果ガス削減に向けた取り組みについて

【高田議員】
 第6に、地球温暖化対策と再生可能エネルギーの課題について質問します。
 深刻化する地球温暖化を前に、世界の気温上昇を産業革命前と比べて1.5℃に抑える努力目標を掲げたパリ協定が本格始動します。国連環境計画が先月26日公表した報告書では、今のペースでいけば今世紀末までに3.4〜3.9℃上昇、1.5℃でも海面上昇、豪雨や熱波、山林火災などのリスクが世界的に高まると指摘されています。
 こうした中で「国連気候行動サミット」では、先進国を中心に77ヶ国が2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにし、2020年までに国別目標を引き上げると表明し、若者たちが呼びかけた「グローバル気候マーチ」は世界158ヶ国で取り組まれています。
 しかし一方では、トランプ大統領がパリ協定からの離脱を表明し、主要国で最低の削減目標を掲げた日本政府は、二酸化炭素排出を大量に出す石炭火力発電所建設計画と海外進出への公的支援を進めています。地球温暖化問題は人類の未来にとって死活的な問題でもあります。知事はこうした気候変動への対応および世界の動き、日本政府の対応についてどのように受け止めているのでしょうか。
 知事は11月27日、本県の温室効果ガス排出量について「2050年までに実質ゼロを目指す」と表明しました。ゼロ宣言は東北では初めてであり極めて大事なことです。しかし、本県の2016年度における温室効果ガスの排出量は1397万トンであります。今後環境基本計画の見直しが行われると思いますが、削減に向けた方向について知事の現時点での考えを伺います。

【達増知事】
 本年9月の国連気候変動サミットにおいて、世界の77カ国が2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロにすることを表明するなど、世界では気候変動に対する強い危機感を背景に温室効果ガス排出削減に向けた取り組みが加速していますが、11月にパリ協定からの脱退を国連に正式に通告した、米国のトランプ大統領の対応への懸念があります。国では本年6月にパリ協定に基づく長期成長戦略を策定し、主要7か国で初めて今世紀後半のできるだけ早期に温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指すことを掲げましたが、2050年の温室効果ガス排出量の削減目標は80%にとどまることや、石炭火力発電の新設計画を取りやめていないことなどが課題と指摘されており、パリ協定の目標達成に向けてさらなる取り組みが求められていると承知しております。
 県といたしましては、地方自治体から温室効果ガスの排出削減に向けたメッセージを発信することは、パリ協定の目標達成に地域から貢献する観点からも重要であると考え、令和2年度に策定予定の次期岩手県環境基本計画に当該計画期間を超えた目標として、2050年温室効果ガス排出量の実質ゼロを掲げたいということを、11月27日の記者会見において表明いたしました。環境基本計画の見直しにあたっては、温室効果ガス排出量の2050年実質ゼロを視野に入れながら、令和3年度からの計画期間の10年間で取り組むべき、省エネルギー対策の一層の推進や再生可能エネルギーの導入促進など、脱炭素社会の実現に向けた具体的な取り組みを検討してまいります。

・メガソーラーの開発問題について

【高田議員】
 森林地帯でのメガソーラー開発が各地で問題を起こしています。
 一関市萩荘地区では、現在53haのメガソーラーが稼働しています。現在その隣接地には40haの開発の計画があり、現在県に林地開発許可申請が行われています。さらにその隣接地には、10ha規模のメガソーラーが建設中で、合計で103ha規模の開発となります。住民が一番心配しているのは、大規模な土砂災害です。長年にわたって地域が守ってきた山林を伐採し、膨大な土を採掘(80万?)、土石流災害が発生した急峻な沢へ盛土する計画だからです。林地開発許可基準では、開発区域周辺の降雨水量から、排水対策や洪水の発生する恐れがある場合は洪水調整池を設置するとしています。住民には30年確率で1時間の降雨強度は127mm/時と説明されています。しかし台風第19号では、437mm/日(110mm/時間)となりました。一度開発が行われれば森林法が及ばず、植林の義務がないことも心配する要因となっています。林地開発許可基準に課題はないのでしょうか。県は、50ha以上の開発を環境アセスの対象とする予定と聞いています。現在県内には、50個所770haを超える林地開発が許可されていますが50ha以上で許可した件数及び面積ははどの程度でしょうか。
 日光市や伊東市では、住民の合意などを明記する独自の条例を制定しており、海外に目を向けると、再生可能エネルギーの先進地ドイツでは、森林への開発は計画の6倍の林地への植林が義務づけられ、開発に当たっては供託金が必要となるなど、開発抑制の仕組みがあります。
 国が太陽光発電事業をアセスメント対象とすることと合わせて、県では令和2年4月から条例に基づくアセスメントの対象とすると聞いていますが、本県の準備状況について伺います。

【環境生活部長】
 県では本年11月に、国の法制度改正を踏まえ、太陽光発電事業について、アセスメントを必須とする第一種事業を面積50ヘクタール以上、アセスメントの要否を個別に判断する第二種事業を面積20ヘクタール以上とする、岩手県環境影響評価条例施行規則の一部改正案についてパブリックコメントを実施しましたが、異を唱えるような意見はなかったところです。
 現在、懸案通りの内容で体制手続きを進めており、今後改正作業を行う岩手県環境影響評価技術指針と合わせて、来年4月に国と同時施行し、太陽光発電事業条例に基づくアセスメントの対象とする予定としています。
【農林水産部長】
 林地開発許可の課題についてでありますが、森林法では、「知事は、開発行為が災害の防止、水害の防止、水の確保、環境の保全の4つの基準に適合すると認めるときは、これを許可しなければならない」とされており、県ではこれまで、国の示す許可基準に基づき許可事務を行ってきたところであります。
 一方、平成24年に、再生可能エネルギー電気の固定価格買い取り制度が創設されて以降、太陽光発電施設の設置を目的とした林地開発許可の案件が増加し、中には、周辺住民等が太陽光発電施設の建設に反対する案件や、大規模な森林の改変をともなう案件が見られるようになったところであります。
 こうした動きに対して、いくつかの自治体からは、林地開発許可の規制を強化するよう国に対して要望があったと承知しており、岩手県議会におかれても本年10月25日付で、両院議長および関係大臣に対して意見書が提出されたところであります。
 このような状況を踏まえ、現在国では、太陽光発電にかかる林地開発許可基準のあり方に関する検討会を設置し、さまざまな分野の専門家により太陽光発電にかかる林地開発許可基準の強化等について検討が行われると聞いており、県としてもその動向を注視し、必要に応じて提言等を行っていく考えであります。
 50ヘクタール以上の許可件数と面積については、事業区域面積が50ヘクタール以上の林地開発許可は、本年11月末で9件、全体の事業区域面積は1006ヘクタールとなっております。そのうち、開発行為にかかる森林面積は447ヘクタールとなっております。


7.学力テストと教員の多忙化の問題について

・学力テストの問題について

【高田議員】
 第7に、教員の多忙化対策と学力テストの問題について質問します。
 先生は、子どもと向き合う時間、授業の準備に取り組む時間を最大限保障すべきです。そのために繰り返し学力テストの廃止や「標準授業時間数」を大幅に上回る授業時間数の見直しを求めてきました。全国、県、市町村の実施する学力テストが行われ、そのために過去問の実施、県の学力テストでは自己採点の実施など、学校現場での業務量が大きくなっています。「過去問等学力テスト対策に追われ、難しいテスト問題が子どもにできないという意識を植え付けさせ、点数競争の弊害を大きくするだけ」「豊かな学力をつけることに役に立たず、子どもの実態に合った教育を困難にし、教員の大きな負担にもなっている」との声が出ています。県版学力テストは廃止すべきと考えますが、この間の検討状況、全国の実施状況はどうなっているのでしょうか。

【教育長】
 県の学習定着度状況調査は、本県の児童生徒の学習上の課題を踏まえ、身につけるべき学力を具体的な問題の形で示し、調査の有効な活用によって授業改善を推進するために行っているものであります。県教委としては、現在市町村教委の取り組みの実態把握を行っているところであり、今後、訪問を行うなど具体的に意見交換を進めていく考えです。
 なお、平成30年度に独自の学力調査を実施した都道府県は、小学校30都府県、中学校32都府県となっております。

・標準授業時間数について

【高田議員】
 「標準授業時間数」は小学校で年980時間ですが、29年度の時間数は平均で1038.6時間・20.7%の学校で100時間を超えています。2020年度の学習指導要領の本格実施によって授業時間数はさらに増加すると思いますがどれだけ増加するのでしょうか。

【教育長】
 新学習指導要領が小学校で令和2年度から、中学校で令和3年度から全面実施になることにともない、中学校では標準時数の増減はありませんが、小学校においては第3学年から第6学年までに外国語が位置づけられ、標準時数が各35時間の増加となるところです。
 このことから県教委としては、県内各学校でカリキュラムマネジメントの視点から、教育課程全体の質的改善が一層図られるよう、子どもたちに育みたい資質・能力を明確化した上で、行事や各種取り組みを見直すことなどについて、引き続き指導・助言を行っていく考えです。

・変形労働時間制の導入について

【高田議員】
 次に、教員をさらに長時間働かせる1年単位の変形労働時間制導入についてです。
 人事委員会の調査によると、県立学校では月100時間以上の超過勤務をしている教職員が19%にもなっており、教職員の長時間労働は依然として深刻です。ところが今国会で、公立学校の教員に「1年単位の変形労働時間制」を導入する法案が審議され、本日午前中に参議院で可決成立しました。「繁忙期」に1日10時間労働まで可能とし「閑散期」と合わせ平均で1日8時間に収める制度です。制度導入の唯一の理由は、学期中を「繁忙期」とする代わりに、夏に休みを増やすというものです。そもそも夏休み中に休暇もとれない状況では更なる長時間労働となってしまいます。連合の調査では、8割の教員が「現実的ではない」と答えています。学校は子どもの状況などで臨時的な対応が絶えず求められる職場です。しかしこの制度は、最低でも向こう30日間の日々の労働時間を決め、途中の変更を許しません。長時間労働をさらに拡大させるような変形労働時間制には反対の声を上げるべきですが、教育長の見解を伺います。

【教育長】
 この制度は、夏休み等の長期休業期間中の教員の業務の時間が、学期中よりも短くなる傾向に鑑み、学期中の業務の縮減に加え、かつて行われていた夏休み中の休日はまとめ取りのように、集中的に休日を確保することが可能となるよう、地方公共団体の判断により適用するものと聞いております。
 この制度にかかる法案は、本日参議院本会議において可決されたところですが、県教委としては、長時間勤務による教職員の負担を軽減するためには、働き方改革プランに掲げる取り組みを着実に推進していくことが最優先であると考えております。

<再質問>

・台風19号災害からの復旧―国の自治体連携型補助金について

【高田議員】
 この国の制度を活用して、被災事業者を支援したいということで、最終日に補正予算を提案すると。これは、被災事業者の負担を4分の1にして、グループ補助金並みの対応をすべきだということで質問したが、こういう対応をされるということか。交付金なので、最終的には市町村の判断になるが、こういう支援のスキームになるのか。

【商工労働観光部長】
 9月補正予算において措置させていただいた「地域なりわい再生緊急対策交付金」は、市町村が直接行う事業に対する交付金としてメニューにあるので、これはこれで残すが、被災中小事業者に対する支援としては、国の自治体連携型補助金を最大限活用し、事業者に対する補助率4分の3の新たな補助金制度を実施する方針で検討を進めている。

・災害公営住宅コミュニティ支援について

【高田議員】
 知事からは、南三陸町の取り組みを参考に取り組みたいという答弁があった。南三陸町は、集会室に2人配置し、723世帯を6人で対応していると。これは1人約110〜120戸で、だいたい顔が見えると。だから名簿の作成もできるということである。そして集会所に配置しているので、人が集まってくると。岩手の課題というのは、集会所が活用されていない。自治会が未整備のところが10箇所、自治会に名簿が提出されているのが5団地しかないということを考えると、南三陸町の取り組みは非常に教訓的ではないか。
 私は、50戸以上の災害公営住宅には人を配置すべきだという具体的な提案をしてきた。これは今回だけではなく、何度も提案してきた。ぜひそういう対応をしていただきたい。
 孤独死がどんどん増えているという問題を含めて述べたが、災害公営住宅の見守りやコミュニティ支援というのは、本当に今強化しなければならない転換期にあると。自治会の役員が70代、80歳近くになっている方々が中心になっている。今の時点で支援をしないと大変な状況になるのではないか。
 それから、見守り支援を行う中で、生活支援相談員の役割は大変大きいと感じている。現在141人に対して20人が不足し121人体制だが、いろいろお聞きすると、1年限りの任用という不安定な雇用状況になっているのも一因だが、新年度に向けてしっかり確保し、コミュニティ形成支援員と連携して取り組むことが必要だと思うがいかがか。

【県土整備部長】
 災害公営住宅コミュニティ形成支援事業における支援員の増員については、県では災害公営住宅コミュニティ形成支援事業において2名のコミュニティ形成支援員を配置しており、入居者からの相談に応じた市町村や支援団体等との連絡調整、入居者交流会の支援、自治会設立の支援などのきめ細かな対応をいただいているところだが、県が県社協と連携して配置している生活支援相談員や、市町村が配置する支援員等による被災者の見守り、相談支援および集会所を利用した交流会の開催なども行われており、こうした活動と連携して対応していただきたいと考えているが、ご紹介のあった南三陸町の事例等も踏まえて、今後強化等についても検討していきたい。
【保健福祉部長】
 生活支援相談員については、ご紹介あった通り141名に対して120名が配置されており、民生委員の方々や市町村の支援員の方々と連携し、見守りやコミュニティ形成支援について、被災地で重要な役割を担っているものと県でも認識している。したがい、来年度に向けても必要な人員の確保に向けて努力をしていきたい。

<再々質問>

・自治体連携型補助金について

【高田議員】
 自治体連携型補助金を活用して、岩手県が補正措置した「なりわい再生緊急対策交付金」と合体してやるのではなく、それぞれ別々のメニューだということですね。それは、一方は4分の3補助、一方は2分の1補助と理解していいのか。

【商工労働観光部長】
 被災中小事業者の施設の復旧・復興に要する費用に対する支援としては、新たに設けようとしている補助金制度で4分の3補助をするというものである。

・子どもの居場所づくりについて

【高田議員】
 誰一人として取り残さないという知事の答弁をいただいた。実態調査から、居場所のニーズが非常に重要だということで、これについてもいろんな取り組みをしっかり取り組んでいきたいという前向きの答弁をいただいた。今後の施策の展開に期待したい。
 私はここで2つのことを取り上げたいが、1つは子どもの居場所について。子ども食堂については了解したが、子ども食堂といっても、県内の取り組みの実態を見れば、だいたい月1回とか年に2回という状況もある。こういう点では内容の充実も大事だが、生活に困窮している日常的な子どもの居場所の確保というのは本当に大事である。学童クラブがあるが、小学校は低学年とか、月7000〜8000円かかってしまう。これではなかなか困窮している子どもたちの居場所にはなりにくく、この改善が必要ではないか。

【保健福祉部長】
 子どもの居場所づくりとして子ども食堂があるが、食事を提供する以外にも、学習支援等さまざまな支援に取り組んでいるものと承知しており、こちらについては充実に向けて取り組んでいく。
 放課後児童クラブについては、たしかに利用者の負担については、所得に応じて負担なしから18000円程度までさまざまある。こちらについても多くの施設や市町村において、負担軽減のために、兄弟のいる世帯、ひとり親世帯、低所得世帯に対する利用料の減免制度も設けられてると承知している。こちらについても、実施主体である市町村やクラブにおいて、地域の実情に応じて支援について検討・実施されるものと承知しており、県としても引き続き、運営費や施設整備に対して補助を行うなど支援を着実に進めていきたい。

・就学援助制度について

【高田議員】
 小中学校の貧困対策で大事なのは、教育長からも答弁があったが、就学援助の問題である。決算特別委員会でも質問したが、県内の児童生徒に対する就学援助金の支給率は、一番多いところで久慈市の24.1%、金ヶ崎町は5.49%と大きな差がある。生活実態調査を見ても、就学援助を支給されている子どもでも、修学旅行に行けないとか、給食費が払えないとか、こういう問題が起きている。支給額や対象、支給方法など、今の就学援助制度に対して、本当に修学困難な家庭への支援になっているのか。経済的に困難な家庭へ支援する制度になっているのか。これは市町村が実施主体なので、県と市町村がしっかり協議して、子どもの貧困対策を進めていくうえでも就学援助制度のあり方について検証していくべきではないか。

【教育長】
 市町村とよく連携し、実態等を調査・分析し、修学旅行に行けないなどということのないように対応していきたい。

・特養ホームの建設補助について

【高田議員】
 待機者解消施策については、部長の答弁を聞いていても中身が見えてこない。施設整備計画に対しても、なかなか計画通りにいっていない状況である。私は、ある特養ホームの施設長さんに実態を聞いた。1つは、建設費の補助が少なすぎると。「小規模特養1箇所建設するのに6億円、それに対しての行政の支援は1億円程度。これからの経営の見通しを考えていくと、とても建てる気持ちになれない」と。さらに人材不足である。だから、本当に新たな支援をしていかないと、施設整備はこれからますますできなくなる。「第8期計画では手を挙げる人はいない」という話もいただいた。土地を提供するとか、建設費の補助を拡大するとか、新たな支援策が本当に必要ではないか。

【保健福祉部長】
 なかなか整備が進まない要因としてはさまざまあるが、介護人材の不足、工期の遅れ、工期の遅れについては議員から建築費が高いというご指摘もあった。施設の補助については、一例を申し上げると、国が示した基準単価があるが、それに対して県としても順次単価を引き上げてきた。30人以上の特養の施設整備に対する補助については、平成30年度に単価の引き上げを行ったところであり、この単価は、他県の調査だが、回答のあった44都道府県のうち上から8番目となっており、本県の補助のレベルが他県に比較して低いというものではないとは理解しているが、一方でそうした現場の声があるということは承知しており、こうしたそもそもの制度については、計画の運営主体である市町村とも意見交換しながら、課題を踏まえて、国等に対して要望を行っていきたい。