2019年12月10日 復興特別委員会
国の復興創生期間後の基本方針に対する質疑(大要)


・社会資本整備総合交付金の事業について

【斉藤委員】
 国の復興創生期間修了後の基本方針について、20ページで、「災害復旧事業および復興交付金事業以外の復興施策として実施している社会資本整備総合交付金等のハード事業については、復興創生期間の終了をもって廃止する。なお、完了しない部分については、一般施策へ移行した上で引き続き実施する」とあるが、県内で社会資本整備総合交付金のハード事業の実態はどうなっているか。

【県土整備企画室企画課長】
 対象事業については、基幹事業と関連社会資本整備事業と効果促進事業というものがあり、基幹事業の中には、道路や港湾、下水道、海岸、都市公園、住宅などといった整備、復興支援道路や海岸防潮堤といった部分の整備をしているものである。関連社会資本整備事業は、道路と一体となって設置する信号機だとか、効果促進事業は、基幹事業と一体となって効果を高めるような事業に対して実施しているものである。金額的なもので申し上げると、県土整備部関係の所管では、県事業で今年度は191億円余、市町村事業で9億円余となっている。

・心のケアについて

【斉藤委員】
 「被災者支援総合交付金等により、事業の進捗に応じた支援を継続する」と。そしてこれは知事も意見を述べたようだが、「個別の事情を丁寧に把握し、復興創生期間後5年以内に終了しないものについては、事業の進捗に応じた支援のあり方を検討し、適切に対応する」ということで、5年後も必要な場合には継続する方向が示されたと評価したい。問題は事業の規模で、被災者支援総合交付金は、基本的には今の規模で継続することが必要ではないかと思うが、どういう事業規模で継続されるのか。

【保健福祉企画室企画課長】
 心のケアについては、相談件数自体は減ってきているが、相談内容が複雑・多様化しているということで、これは期限を設けずに中長期的な取り組みが必要だという認識である。この規模については、現在、岩手県こころのケアセンターで19名、地域こころのケアセンターで34名を置いている。沿岸部においては、そもそも精神保健医療福祉の人材が足りない地域となっており、今後もこうした規模の専門的な体制での継続が必要だと考えている。

【斉藤委員】
 子どもの心のケアは毎年度増えているので、ここに深刻さが表れていると思うので。
 被災者支援総合交付金事業の維持で、例えば、生活支援相談員の配置もこの事業で、災害公営住宅に対する支援もこの事業である。高田一郎県議も一般質問で取り上げたが、災害公営住宅の一人暮らし高齢者の見守りやコミュニティ形成は、まさに今切実な課題である。コミュニティ形成の拠点というべき集会所が、月に2〜5回ぐらいしか使われていないというのが実態で、県社協は今年は3箇所、県営住宅を含めて拠点をつくって支援すると。私たちは、南三陸町のように、50戸以上の災害公営住宅には、いま支援員を配置して、しっかりしたコミュニティ形成をしないと、本当に高齢者住宅にしてしまう。この点について、県は来年度の方向性を持っているか。

【保健福祉企画室企画課長】
 今年度はまず、大船渡市と大槌町の2箇所で県営災害公営住宅の集会所を活用して、生活支援相談員が活動している。釜石市においては、災害公営住宅がその地域のコミュニティに溶け込めるように、その交流を促進する観点から、地域の空き家を活用して活動を行っている。
 今後も県としても、地域の実情に応じて、他の市町村においても災害公営住宅の集会所はもとより、公民館や空き家などを活用しながら、地域に密着した被災者への個別支援と、コミュニティ支援などの地域支援が一体的に行われるように働きかけを行うこととしており、こうした取り組みの拡大を進めていく方針としている。

【斉藤委員】
 拡大の方針が示された。基本的にはあと5年を考えると、ぜひ思い切ってこの5年間で全ての災害公営住宅のコミュニティをしっかり確立するという風にやっていただきたい。

・教職員の加配、就学援助について

【斉藤委員】
 被災した子どもに対する支援ということで、「東日本大震災の影響に鑑み、特別に措置されている教員加配、スクールカウンセラー等の配置、修学支援員について、事業の進捗に応じた支援を継続する」と。これは大変大事なことだと思う。教員加配もかなりの規模でされていて、巡回型のスクールカウンセラーは13名だったと思うが、この枠で配置されている。これはきちんと継続される必要があると思うが、だいたい今年度ぐらいの規模で継続されると受け止めていいか。
 また、震災枠の就学援助も広げられている。これもこの枠の中に入っていると受け止めていいか。

【教育企画推進監】
 教職員の加配については、今年度は小中学校・県立学校あわせて148名を配置している。心のサポートということで、スクールカウンセラーを巡回型・配置型あわせて88名を配置している。県教委としては、そうした支援が必要な子どもたちがいる状況において、こうした取り組みがきちんと続けられるように国に対して要望し、配置等を進めていきたい。
 就学支援については、通常の就学支援と別枠で行われているが、これらについても引き続きそうした経済的状況、震災による影響で困窮している世帯がいると承知しているので、そうしたところに対する支援が引き続き行われるよう国に対してきちんと要望し、対応するようにしていきたい。

・災害公営住宅の家賃減免について

【斉藤委員】
 21ページのところで、災害公営住宅の家賃低廉化、特別家賃低減事業について、引き続き別の補助に移行した上で支援すると。これから災害公営住宅が整備されるところ、例えば盛岡の青山とか、つい最近入居した方々も少なくないわけで、これは基本的に「入居から10年間」というのが国の特別家賃低減事業だが、そういうことで継続されると受け止めていいか。

【復興推進課総括課長】
 この基本方針を見ると、「自治体間の公平性も踏まえながら適切に支援水準の見直しを行う」というような規定もあることから、昨日の復興推進委員会で知事からも「入居時期の違いによって被災者間に不公平が生じないように適切に対応する必要がある」という意見を申しており、今後さまざま調整になってくると思うが、こうしたことで取り組みを国にもしっかり働きかけていきたい。

【斉藤委員】
 災害公営住宅の整備は被災者に責任はないわけで、遅れて整備されるところもあるので、被災者間の公平に関わる問題なので、ぜひ曖昧さを残さずやっていただきたい。

・生業の再建について

【斉藤委員】
 産業・生業だが、「事業者の責に帰さない自由によりこれまで復旧を行うことができなかった事業者に限り、グループ補助を継続する」と。いま111者の仮設店舗で営業している方々、だいたい8割方は本設移行を目指しているということで、こういう方々は当然対象になると思うが、どれだけの対象見込みか。

【経営支援課総括課長】
 土地区画整理事業が換地決定されても、取り付け道路や水道施設等の付帯工事が終わらなければ、建物の建設工事そのものに着手できない場合があると地元から聞いている。県としては、各市町村あるいは商工指導団体等に、グループ補助金のニーズ調査を実施しており、おおむねの数だが、来年度には約30事業者、それ以降は約50程度あると聞いている。

【斉藤委員】
 来年度も最大限取り組むと同時に、それ以降も50者は見込まれるということで、ぜひグループ補助金の支援が継続されるように努めていただきたい。
 県は今年、産業復興状況調査結果を新たな形で進めたが、率直に感想を言うと、分かりにくくなってしまった。今までの被災事業者復興状況調査の方が実態が分かりやすかった。1つ指摘すると、被災事業者の再開状況ということで、再開した数だけを積み上げて85.6%としているが、商工会議所・商工会の被災事業者復興状況調査は、これは4ヶ月に1回やっていると思うが、実際どんどん減って8割をきっている。なぜかというと、一度再開した人が廃業したりしている。だから、再開した数をただ積み上げるのではなく、厳しい状況の中で一度再開したが減ってしまったということも加味した実態を明らかにする調査とすべきではないか。

【まちづくり産業再生課総括課長】
 商工団体の方の調査もあるが、それぞれもの差しがあり、諸条項を両方にらみながら、必要な対策を講じていくことが必要だということで、1つの我々の調査として積み上げてきたものなので、両方見ながら進めていくと考えている。

【斉藤委員】
 再開の数を積み上げるだけでは実態が反映されないのではないかと聞いた。商工会議所・商工会の調査はどんどん減っている。実態調査というなら、そういう実態を示すような調査でなければいけないのではないか。85%再開という数字は、すでに廃業した数も含まれているのではないか。
 今までの調査では、震災前との売り上げの比較があった。「基本的に震災前の売り上げを回復した」「5割回復した」「それ以下」と。かなり復興状況が分かったが、東北経済産業局が行った調査では、「水産食品加工業の場合は、売上高が震災前の水準以上まで回復している」が32.4%だった。岩手県はどうなのかと。そういうことを浮き彫りにするのが本来の調査ではないか。そうしたことが見えなくなってしまった。例えば、県からいただいた資料の5ページを見ると、水産加工業では、事業者の数ではなく団体の数で出している。これでは分からない。新しい形で調査したという指標は間違いではないが、全体として震災前の売り上げの水準と比べてどうなのか、本当に重要なポイントだと思う。期待していた被災事業者産業復興状況調査というのは、大変分かりにくい、実態が示されないものになってしまったと思うがいかがか。

【まちづくり産業再生課総括課長】
 今年度この調査の方法を見直しているわけだが、昨年度までは被災した事業者のみが対象ということで、地域の経済を生み出すためには、被災していない事業者や、被災後に新たに起業された事業者も含めた地域の景気・経済の状況も見る必要があるということで、今回は地元の商業者をはじめ、産業状況についてもっとも詳しい商工会議所・商工会にお聞きする形にしたということであり、ご質問にあった国の調査等で重複する項目があったので、その調査で得られるものはそちらで把握しながら、経済状況を見て取り組みを進めていきたい。

【斉藤委員】
 真意が伝わらないのだが、東北4県のデータが出ればいいのか、違うのではないか。水産業だってそれぞれ特徴がある。今まではきちんと出ていた。岩手は、去年までは震災前の33%程度である。7割は震災前を取り戻せていない。被災していない事業者も含めて調査する手法はいいが、結果として実態が浮き彫りにならないと、今までよりもさらに見えなくなったらおかしいと指摘しているので、やはり県民が見て現状が分かるような調査に改善すべきではないか。

【復興局長】
 事業者の再開の部分については、去年までと同じ調査方法でやっている。それ以外の部分について、商工会からのアンケートという形になっているが、おっしゃるとおり、東北全体のそれぞれの産業別の、震災前と比べた売り上げの数字的なものは出てきていないと委員は課題認識を持たれていると思う。実際に、今回各地域の商工会で課題として掲げている課題については、今回の調査で逆に分かったので、それを東北各県の数字上の比較で岩手県がどこが弱いのかとか、そうした分析を今後していかなければならないと思っている。これについては来年度に向けて、商工団体が課題認識を持っているかどうかが分かるだけではなく、東北各県と比べてどうなのかという分析ができるような手法を考えてみたい。

【斉藤委員】
 これまでの被災事業者復興状況調査で私が一番活用したのは、産業別の売り上げ実績である。建設業・水産加工業・卸売・小売、それぞれ実態が分かるものだった。それが今回見えなくなったのは残念なことなので、答弁したように、ぜひ産業別に売り上げの実態が分かるように、そして支援する方向が示されるような調査をしていただきたい。

・職員派遣等について

【斉藤委員】
 基本方針の「地方単独事業等」ということで、人材確保対策、職員派遣、任期付職員の採用等について支援を継続すると。これは大変大事な中身だったと。来年度も334人の必要数でかなりの規模である。
 調べて驚いたのは、雇用被保険者数は今年の10月で66931人で、震災前は63538人、復興事業のピークは過ぎているが、労働者は決して減っていない。そういう意味でいくと、まだまだ11年目以降の事業もかなり残るのではないか。そういう点で、職員派遣・任期付職員を継続することは大変重要なことだと思うが、来年の数は示されたが、11年目以降はどのぐらいの規模で必要なのか。

【市町村課総括課長】
 令和2年度は334人ということで、それ以降については具体的な数字は把握していない。前年に聞いても事業の進捗状況で翌年にずれが生じてしまうので、ただハード事業については令和2年度でほぼ目途をつけるということで各市町村頑張っているが、どうしても区画整理事業の残務処理や、心のケア等の事業が残ることになるので、そちらに必要な人員というのは今お示しできないが、事業にかかる人員は引き続き必要になるものと考えている。
 来年度は復興創生期間の最終年度ということで、なるべくプロパー職員で行政をまわせるように、沿岸市町村についても指導や引き継ぎをうまくやるようにということは、市町村課と各市町村で話しているが、ただどうしてもプロパーだけではやり切れない業務も出てくると思うので、しっかり人員確保するよう努めていきたい。