2019年12月11日 12月定例県議会最終本会議
千田美津子県議の議案および請願の不採択に対する反対討論


 日本共産党の千田美津子です。
 議案第23号「岩手県公会堂の指定管理者を指定する事に関し議決を求める事について」および請願・陳情受理番号第6号「公立・公的病院の再編・統合に反対し地域医療の拡充を求める請願」について、委員長報告に反対の立場で討論いたします。

・岩手県公会堂の指定管理者の指定について

 まず、議案第23号の「岩手県公会堂の指定管理者を指定することに関し議決を求めることについて」であります。
 岩手県公会堂は、国の有形文化財にも指定されている歴史的な価値のある建造物であり、この施設の保存と活用は県政にとって重要な課題です。しかし、文教委員会に提出された指定管理予定者の「岩手県公会堂管理運営計画および収支計画書」は極めてずさんで、職員の雇用状況も問題があることから反対するものです。
 反対する第一の理由は、岩手県の事業であるにもかかわらず、非正規労働者の比率が高く、かつ低い賃金など劣悪な労働条件となっていることです。
 職員配置計画では、正規職員は3名、うち1人は館長で週2日の勤務です。あとの6人は非正規の有期雇用となっています。非正規労働者の賃金は、時給790円から1011円で、岩手県の最低賃金となっています。県の契約に関する条例では、「適切な労働条件の確保」をめざしていますが、この計画では、県の事業でワーキングプアを拡大しているということになるのではないでしょうか。せめて時給は1000円に引き上げて雇用するようにすべきです。
 第二に、収支計画では、正規職員の人件費が5人分で1200万円、非正規職員は300万円となっています。職員配置計画と矛盾する計画となっています。
 第三に、正規職員の館長が週2日の勤務で、実質の管理責任者となる統括責任者は非正規の有期雇用職員となっています。これで責任ある管理体制を取れるのでしょうか。
 第四に、指定管理者申請したのは「希望橋グループ」の1者だけでした。競争性も確保できず、指定管理者制度が形骸化しています。指定管理者制度については、これまでの状況を検証して見直す時期に来ているのではないでしょうか。
 以上の理由から、議案第23号について、反対いたします。

・厚労省による公立・公的病院の再編・統合に反対する請願の不採択について

 次に請願陳情受理番号第6号「厚生労働省による地域医療構想推進のための公立・公的病院の再編・統合に反対し、地域医療の拡充を求める請願」でありますが、私は環境福祉委員会で不採択とした事に反対いたします。
 厚生労働省は9月26日、自治体などが運営する公立病院や日本赤十字社、済生会、JAなど厚生連が運営する公的病院を分析し、「再編統合の議論が必要」だとして全体の3割に上る424病院名を公表しましたが、ほとんどが地方の中小病院であり、救急・手術実績などをもとに機械的な一律基準で分析したため、反発の声が上がり、全国各地の説明会の開催に追い込まれました。
 そこで委員長報告に反対の第一の理由は、今議会の県当局の答弁でも、「今回の国による病院名の公表は、平成29年度の診療実績データーを用いて、機械的な分析をもとに行われており、最新の診療実績が反映されていないことや、分析対象ががんや脳卒中などの一部の診療領域に限定され、一つの病棟で幅広い医療ニーズに対応している地域の中小病院の機能が適切に評価されていないことなど、その内容には課題が多い」としておりますし、また各地で開かれた説明会でも同様の批判が寄せられています。
 10月23日仙台市で開催された、東北ブロックの「意見交換会」には、自治体や医師会、病院関係者など約200人が集まり、参加者からは、将来の医療提供体制を見直す必要性を認めつつも、424の公立・公的医療機関等の病院名が突然公表された事を問題視する声が相次ぎ、厚生労働省は、「唐突な公表となり心配をかけた事は反省している。病院名を公表したのは地域での議論を活性化する事が目的で、結論を決めつけるものではない」と弁解に終始したそうであります。これらのことからも、病院名の公表は撤回すべきであります。
 第二の理由は、今回の病院名の公表は、現場で懸命に頑張っておられる関係者の努力に水を差す結果となっています。厚生労働省は、「再編を偏在解消、働き方改革につなげる」と言いますが、削減ありきの再編の押しつけが地域医療の困難と矛盾を深めるだけではないでしょうか。
 先日、厚労省に名指しされた病院の1つである一関市の国保藤沢病院・佐藤病院管理者(院長)と懇談してまいりました。佐藤院長は「岩手県は極端に医師数が少なく県民所得も低い。さらに少ない医療費で皆頑張っている。都会とは違い、開業医もいない地域で住民が困らないようにするのが地域医療だ」と断言しておられる姿は頼もしく、頭が下がる思いでありました。まさにこのような方々の努力をしっかり応援することこそ必要なのではないでしょうか。
 第三の理由は、病院名の公表により風評が広がり、医師確保等に大きな影響を与えているという問題です。「看護師の引き抜きが始まっている」(仙台)「大学からの派遣医師の引き上げが決まった」(県南地域)「内定医師から断られた」などの深刻な風評被害が起きています。
 病院の再編統合に詳しい城西大学の教授は、「予告なく名前を公表したのは乱暴なやり方で、この病院は無くなるのかと患者などに不安を与えてしまった。風評が広がれば医師が病院から離れる事につながりかねず、反発を招いた」と指摘しています。厚生労働省は、医師の勤務地や診療科が偏る「偏在」の解消を掲げていますが、むしろ今回の病院名の公表により偏在を助長しているのが実態であり、大問題であります。
 第四の理由は、名指しされた病院は、決してベッドが余っている訳ではなく、医師が足りないために稼働出来ないのであり、それが地方にある病院の実情ではないでしょうか。
 日本の医師数は、OECDの加盟国より10万人以上も少なく絶対的に不足しています。すべての国民に必要な医療を保障するには、医師・看護師の抜本的増員に舵を切り、地域医療の確保に国が財政支援を行う事が必要です。そうしてこそ、医師の偏在も医療従事者の異常な長時間過密労働も解決できます。
 日本医師会は、医療の雇用効果は大きく、財源投入により地域経済が活性化し、地方創生への多大な貢献につながると再三指摘しております。このような取り組みこそ、今最も力を入れるべきではないでしょうか。
 以上でありますが、請願項目の1「国に対し、県内10病院を含む424病院のリストを撤回し、再編・統合の押しつけを行わない事を求めること」、請願項目の2「県は地域医療を守るため、県内10病院を含む県内医療機関の存続及び一層の充実等のため、国に財政措置等の支援を求めること」は、まさに当然の事であり、この請願の不採択は、厳しい環境のもと、現場で頑張っておられる関係者に背を向けることになるのではないでしょうか。
 よって、請願陳情受理番号第6号「公立・公的病院の再編統合に反対し、地域医療の拡充を求める請願」は採択すべきであり、不採択とする環境福祉委員長の報告に反対いたします。

 以上でありますが、何とぞご賛同賜りますようお願い申し上げまして、討論といたします。ご清聴ありがとうございました。