2020年1月15日 文教委員会
ラグビーW杯2019釜石開催に関する質疑(大要)
【斉藤委員】
ラグビーワールドカップが日本で開催されたことも歴史的だったし、同時に、日本代表の素晴らしい活躍で本当に盛り上がった大会だったと思う。特にその中で、釜石・鵜住居の新しいスタジアムでラグビーワールドカップが開催されたということも、まさに歴史的な出来事だったのではないか。ラグビーの町・釜石が開催地になったと。そして、東日本大震災津波で大きな被害を受けた鵜住居で、世界に感謝する、そういう大会にもなったということで、本当にいろんな意味でラグビーワールドカップ、釜石開催というのが、私たちにとっても大変歴史的で感動的な大会になったと思う。
最初にお聞きしたいのは、岩手釜石大会という形でおそらく記録誌が作られるのではないかと思うが、どういう形で記録して残していくのか。
【ラグビーワールドカップ推進室長】
大会そのものに関する組織委員会での記録誌というのも今作業を進めており、次のフランス大会に引き継ぐためにということで、来月を目途に作成しているということは承知しているが、我々釜石開催実行委員会の方としても、誘致から開催決定、準備のための釜石開催実行委員会のさまざまな取り組み、大会に合わせて県民のさまざまな方々が活動していただいたという部分についての記録誌を作成し、業者への入札も済んで、3月上旬くらいを目途に発行するという予定で進めている。できましたら皆様にお知らせしたい。
【斉藤委員】
私も9月25日のフィジー対ウルグアイ戦を観戦することができた。快晴の最高の天気で、試合内容も緊迫した試合で、予想外にウルグアイが勝つということで、世界レベルの大会を本当に堪能させていただいた。この成功の背景には、やはり事前の準備、特に7月に開催されたパシフィックネーションズカップが大変重要な取り組みだったのではないか。日本対フィジーなので、釜石で試合するフィジーと、何より日本代表が対戦したということで、素晴らしい企画であり、13000人余ということで、大会にほぼ匹敵する規模で行われて、そこでさまざまな課題が明らかになって、本番に向かうことができたと。そういう意味で、この取り組みは、中身もその後の対応にも大変生きたのではないかと思う。
記録誌の関係では、ぜひ新日鉄釜石が7連覇を果たし、そしてラグビーの町がつくられてきた、そしてその当時のスターが釜石でワールドカップをやろうと呼びかけてきたというところに、物語があったのではないかと思うので、歴史というのもきちんと記録されて今後に生かされるべきではないかと思う。
2つ目にお聞きしたいのは、10月13日のナミビア対カナダ戦は、台風19号が接近するということで中止となった。これはもう災害大国日本で開催したという、ある意味宿命のような感じもするが、日本で開催すればこういうことがあるという1つの教訓だったのではないかと思うが、中止になったにも関わらず、カナダ代表がボランティア活動をやったと。これが1300万人がツイッターを見たということで、これまた大変なレガシーになったのではないかと。そして、ナミビアの代表も宮古市で市民と交流すると。中止にはなったが、さすがワールドカップ代表だけあって、単なる中止にさせなかった。その取り組みも大変貴重だった。ただ気になるのは、中止の決定がぎりぎりまでかかった。すでにJRなどは計画運休を決めて、台風を何度も経験している日本だったら、もっと早く決断したのではないかと思うが、やはり生涯に一度のような大会だったので、おそらく実行委員会は最後まで開催の可能性を追求したということだったとは思うが、やはり決定は遅すぎたのではないかという感じもする。そういう点で、それが実行委員会の中ではどのような議論がされているのか。遅れたことによる影響は開催地周辺になかったのか。
【ラグビーワールドカップ推進室長】
組織委員会の方では、台風等の自然災害が発生して中止としなければならない部分の対応ということで、緊急時の対応計画というものを定めている。台風の場合については、試合の3日前に危機管理対応チームを立ち上げて具体の検討をし、キックオフの24時間前に開催に関する方針を協議し、遅くとも6時間前までに対外的な公表をするという取り扱いになっていた。
10月12日の試合に関しては、9日に危機管理対応チームを立ち上げ、12日のニュージーランド対イタリア、イングランド対フランスの試合を、10日の時点で発表したということがあった。そのことが、イタリアチームの方からワールドラグビー側への反発といいますか、決定が早すぎるのではないかというようなことなどもあり、我々の方としては、釜石市では、前日の12日13時に高齢者等の避難準備情報が発令され、市の災害対策本部を設置し、14時半の時点では避難勧告が発令された旨を組織委員会の方に伝え、選手・大会関係者・観客の安全を確保するため、安全第一で命を守るという震災の教訓を伝える釜石開催の意義を踏まえ、的確な判断を早期に行うようにということで働きかけを行ってきた。そうした状況等を踏まえ、組織委員会では、12日20時半にホームページに「最終の判断は13日早朝を予定しており、最後まで実施に向けた可能性を模索するが、早朝にかけて釜石市に影響があり、試合の実施はきわめて困難であり、最終的に中止の判断をさせていただく可能性がある」というようなコメントが発出された。結果的に、組織委員会の方では13日5時半、試合開始6時間45分前に、交通機関の乱れ、土砂災害の可能性、観客・選手・ボランティアなど全ての関係者の安全を確保することが困難ということで中止を判断する発表がなされた。
釜石開催実行委員会の方では、この中止の発表に合わせて、ライナーバスやパーク&ライド、シャトルバスの運行中止にともなう払い戻しの案内、観戦チケットの払い戻しの案内、同日のファンゾーンの中止をアナウンスするほか、午前8時には盛岡でのパブリックビューイングの中止もアナウンスしたということである。
そういうことで、前日午後から東京から来る新幹線が止まったということもあったので、なかなか現地に入ることは難しいということも、組織委員会の方にお伝えし、皆さんの安全を確保するということで進めてきたところだが、そういった経緯等があり、このような形になったということで、なかなかボランティアの部分については、前日の12時には活動が難しいということで、かなりのところをキャンセルして、無理して来ないようにという形にはしたが、前日のプレスの対応とかそういう部分でボランティアをやられた方々もおられたということもあったので、そういった部分での影響はあったと考えている。
【斉藤委員】
歴史的な大会であり、あまり機会のないことだったということもあり、判断は難しかったと思うが、ただ、12日の段階ですでに沿岸自治体は避難勧告を出しているわけで、13日の未明に特別警報が出ると。そして沿岸は400ミリを超えるような今までにないような大雨が実際に降るような中では、沿岸自治体は台風対策を優先せざるを得ない。とてもじゃないがラグビーワールドカップの体制を取りきれなかったのではないか。そういうことで現地は組織委員会にもそういう旨を伝えたと思うが、これは危機管理マニュアルがあって、それにも関わらず13日の5時に最終決定というのは、災害を経験している者から見れば、遅すぎたということはあるのではないか。
これからさまざまな大会があると思うので、しっかり教訓にしていく必要があるのではないか。
3つ目に、9月25日には素晴らしいゲームが行われ、三陸鉄道も全線開通し、黒字基調で、ここまでは大変良かったと思う。ワールドカップということだけではないと思うが、ワールドカップに関わる経済効果、さまざまな観光客の入り込みはどうだったのか。それから、中止になった関わりでの経済的損失はどのように把握されているか。
【ラグビーワールドカップ推進室長】
県内の主な宿泊施設や旅行業者の方から聴取した状況によると、釜石市・大槌町・宮古市・大船渡市等の釜石周辺部では、観戦者・関係者・ボランティアで埋まり、稼働率・宿泊単価といった面でも効果があったと聞いている。盛岡市や花巻温泉でもラグビーワールドカップの宿泊もあったと聞いている。
トータルの経済効果については、現在岩手経済研究所に委託し、今月末を目途に取りまとめをしている最中なので、全体の数字はお示しできないが、スタジアム内の物販という面で見ても、9月25日は、前々日までは食べ物の持ち込みが禁止になっていたが、開幕戦の次の試合の横浜の試合で買えない方が続出したと。9月23日の試合から食べ物の持ち込みを可として、飲み物については水筒に入れるという形であれば認めるという形にはなったが、そういった形でスタジアム内の飲食という部分は、9月25日には44の業者で1600万円の売り上げがあった。テストマッチとなったパシフィックネーションズカップの祭には、食べ物も飲み物も持ち込み禁止になっていたわけだが、そのときにもほぼ同額の1600万円の売り上げがあった。10月13日に試合があれば、そのぐらいの売り上げは生まれたのではないかと思う。
ファンゾーンの方でいくと、28日間ということで、開催都市の中では最長ということになるが、延べでいくと売り上げが1000万円。あわせて、釜石の丸ごと味覚フェスティバルだとか三陸グループ食堂など、主に週末に類似の周辺のイベントを行い、そういったイベント等では850万円の売り上げがあったと聞いているので、さまざまな形での効果があったのではないかと考えている。
中止に関わっての部分になると、宿泊予約されていて12日にすでに来られた方もおり、そうでない場合はキャンセルという形もあった。
【斉藤委員】
今回の歴史的な感動的なワールドカップの開催を今後にどう生かすのかということで、資料の中で、これまでニュージーランドの高校生を招いたラグビーと防災学習を通じた交流が2018年・2019年と続いて、こういう取り組みはぜひ継続していただきたい。観戦した9月25日にも小中学生の応援があり素晴らしいものだった。やはり子どもたちの中で、釜石のレガシーを継続させていく、国際的な交流を継続していくということが大切ではないか。内陸も含めた全県的なものにしていくことも大事だと思う。
もう1つ、切実な課題は、鵜住居スタジアム・グラウンドをどのように今後活用・維持していくかと。釜石市は民間に任せるような検討もされているということだが、どのような形で活用していくのか。新たな釜石のまちづくりどう生かしていくのか。これで終わりとしないで、これも復興の取り組みの一環だと思う。鵜住居は釜石市で一番被害の大きかったところで、そこにああいうスタジアムをつくり、立派な大会をやった。それがまちづくり・復興の力になったと。これは大変大事な課題だと思うので、そういう点でも県の継続的な支援、全県的な取り組みが必要ではないか。
【ラグビーワールドカップ推進室長】
こういったラグビー機運の盛り上がりが持続するように、県としても具体的な取り組みという部分については、県ラグビー協会とよく相談しながら進めていきたい。今回、大会を契機に高まった本県への興味・関心が継続するようにということで、大会期間中に行った情報発信等も継続して取り組んでいきたい。
今後の具体的な取り組みだが、メモリアルイベントの開催だとか、鵜住居復興スタジアムを活用した大会・合宿の誘致、県内や海外との交流、ラグビー体験会や小中学生向けのラグビー体験会、選手等との交流会の実施など、ラグビー県・岩手の定着に向けた取り組みを行うようにということで、来年度予算に向けても調整を進めている。
スタジアムの活用については、釜石市では、昨年10月にスタジアム利活用に向けて釜石鵜住居復興スタジアムの運営委員会を立ち上げ、県がオブザーバー参加しているところである。ご指摘の通り、今後スタジアムの運営主体を釜石市から民間主導に、令和3年4月の移行を目指して検討しているということである。
来年に向けたスタジアムの利用についても、子どもたち、高校生、社会人、シニアの皆さんといったさまざまな世代の活用ということも予定されているが、県としては、このスタジアムが釜石市民のみならず、県民にとってラグビーなどのスポーツをはじめとした、教育・文化・観光などさまざまな分野で積極的な活用が図られることが重要だと考えており、県としては、釜石市をはじめとする関係者との協議にしっかり参画していきたい。
【斉藤委員】
ナミビア対カナダ戦の再戦というのがさまざまなところから期待されているが、この点についてはどのような取り組みがなされているか。可能性はどういう形であるのか。
【ラグビーワールドカップ推進室大会運営課長】
実現性に向けては、県ラグビー協会・釜石市・県などが一緒になって検討し、さらに主催する日本ラグビー協会にも相談を持ちかけている状況である。また、日本ラグビー協会の下にある関東ラグビー協会とも連携を図りながら、実現の可能性について、ワールドラグビー側、対戦国となるナミビア・カナダのラグビー協会に打診している。
今後についても、今回のラグビーワールドカップの運営主体となっていた組織委員会ともしっかり連携を図りながら相談していきたい。