2020年1月17日 復興特別委員会
東北学院大学地域共生推進機構・本間特任教授に対する質疑(大要)
【斉藤委員】
本間先生ありがとうございました。
私も、災害公営住宅のコミュニティ形成というのは喫緊の大変重要な課題だと思っている。実は県内の災害公営住宅の集会所の利用状況は、月に2〜5回程度が平均で、せいぜい週に1回程度しか使われていない。本間先生のお話で、集会所というのが社会的な居場所としての役割が求められているということで、そのコミュニティ形成の拠点が災害公営住宅の集会所ではないかと。実際に、阪神淡路大震災の教訓を踏まえて、どこでも立派な集会所がつくられている。しかしそれが十分に使われていない。光熱水費の負担だとか利用者の固定化などの問題があるが、私はまだそこまでいっていないのではないかと。それぐらい十分活用されていないのが実態なのではないか。
例えば岩手の場合は、独居の世帯が31.4%、おそらく高齢者世帯だけでも5割いくのではないかと思うが、そういう形で、お年寄りが災害公営住宅に入って部屋から出てこない現象が生まれていて、つながりが構築できないでいると。そういう意味で、応急仮設住宅の集会所の教訓というのは、今の段階で生かす必要があるのではないか。応急仮設住宅の時には支援員が常駐し、いつでも入居者が交流できた。カラオケセットなどもあった。自治会は、1年ぐらい準備してつくるという取り組みはされているが、自治会の場合はつくった後の方が重い課題で、それをどう支えるのか。そして自治会を支えながら集会所を活用するような多彩な行事やコミュニティとか、そういうことが行われることが大事なのではないかと思っている。
実は、南三陸町には大変注目していた。60戸以上の災害公営住宅に複数の支援員を今でも配置し、スケジュールはびっしり詰まっていると。復興期間は5年延長となったので、最低5年の間に、コミュニティの基盤を作る必要があるのではないか。そして安定した自治会、安定したコミュニティを、5年でできるかは簡単ではないが、そういう取り組みが求められているのではないかと感じている。
そこで、先生の資料で集会所の機能を書いたところで、「行政と住民による共同管理の新たなシステムの構築が必要」だと。この中身について少し具体的にお知らせいただければと思う。
【本間教授】
まず、非常に災害公営住宅や集会所というものに対するご見識は本当に感心しました。ありがとうございます。岩手県議会すごいですね。なかなか宮城県議会の人でそのように言ってくれる人にまだお会いしていないので、嬉しく思っておりました。
誰しもが「災害公営住宅の集会所は大切」とは言うが、そこから一歩が出ないのが現実かなと思っている。それから、3割ぐらい利用されているという情報をお持ちだと。あれは河北新報で、岩手・宮城・福島を対象に大々的な調査活動をやって、とても大きな成果だと思っているが、河北新報が勢力を上げて調査した結果にもそういうものが謳われていた。中身を見ると、例えば集会所を使うといった時に、いわゆる非関税障壁のようなものがある。どういうのかというと、自治会長さんのところに行って「鍵を貸してください」とお願いして使うというような、そういうことになると、だんだんと「またか」みたいな顔で見られる。そして行っても誰もいないと。そして行くと、いつも来ている人ばかりだと。ちょっと遠慮してしまう。結果として行かなくなってしまう。そういう状況がとてもある。
なので「共同管理」という話だが、私は、行政の人には申し訳ないのだが、やはり孤立化防止施策とか介護予防対策とか、そういう名目で自治会にその事業を委託し、その委託料の算出基礎の中で光熱水費の基本料を設けるとか、そういう形でみんなが当たり前に使えるのが集会所なんだという状況をつくってあげないと、どうしても遠慮してしまうと思っている。それなので、もう少し集会所というものの管理について、行政も関わっていく必要があるだろうと思っている。でも今は「自治だから」ということで、自治会に渡していることだからあとは自治会で―ということを言われている。しかしながら、いま宮城県のあるところでは、とてもじゃないがもうやっていけないということで、「鍵を返します」というところが出てきた。行政は「自治会にお渡ししている場所なので」ということで、鍵が行ったり来たりしている状況もある。しかしこれは、宮城県が特に意識がないとかそういうことではなく、全てのところでその傾向が強いと。特に災害公営住宅の集会所については、「自治」ということで進んでいない。
繰り返しになるが、孤独死防止とか介護予防とか、名目はどのようなものでもいいので、もう少し自治活動を活発にするという名目で、何らかの事業を立てることが必要ではないかと思う。
これは、実は被災地だけの問題ではない。内陸部でも自治機能が低下している。特に、復興過程になったときに、被災地だけの施策ということを展開していくのは難しくなってくるのではないかと思うので、地域社会全体の地域力、コミュニティ力を上げると。なので、住民自治というところにスポットを当てる、住民自治機能を高めるという側面での新しい施策を打ってもいいのではないかと思っている。
昔、宮城県には、山本壮一郎という知事がいたが、昭和50年代に「新しいふるさとづくり」ということを一生懸命やった。それで住民自治というものを積極的に支えた歴史が宮城県にはある。だから、宮城県でもそれは可能なのではないかと思っている。