2020年3月2日 文教委員会
新型コロナウイルス対策のための一斉休校問題に対する質疑(大要)
【斉藤委員】
まず最初に、安倍首相が突然27日の夜に、全国一律に小中高の休校を要請すると。安倍首相に全国一律に休校を要請する法的権限・根拠はないと思うがいかがか。
【学校教育課総括課長】
学校保健安全法第20条に基づき「設置者が行う」ということになっているので、一義的な法的権限は設置者にあると理解している。
【斉藤委員】
2月25日の政府の対策本部、文科省の通知も「地域の状況に応じて、必要な場合には臨時休校の措置をとる」というものだった。それをたった2日後に、何ら法的権限がないのに、一方的に全国一律の休校を求めるということはまさに暴挙ではないか。
【学校教育課総括課長】
27日に総理大臣からそういう要請があったということだが、その要請の趣旨としては、感染の流行を早期に収束させるために重要な時期だと。それから、健康と安全を第一に考えて、リスクにあらかじめ備える観点だという趣旨があったと承知しており、それを受けて文科省が事務次官通知において、「この要請を受けて3月2日から春期休業までの開始日の間、臨時休業を行うように」と述べている。同時に、「期間や形態は設置者において判断する」ということが通知されたと理解している。
【斉藤委員】
25日の政府の基本方針からたった2日後に、基本方針と違うことを安倍首相は提起した。実は文科省にも打診されたが、文科省は「対応できない。準備がない」と断ったにも関わらず、あの方針が出された。異常なことである。文科省が対応できないと言っているときに、一方的に全国一律の休校の方針が提起されたことは横暴そのものだと。なぜかというと、全国一律の小中高の休校措置の科学的根拠が今だに示されていない。岩手県は発生ゼロで今24都道府県で発生が確認されている。宮城はクルーズ船から下船した人で、市中感染ではない。全国一律に休校しなくてはならない科学的根拠・合理的根拠は示されていないと思うがどう受け止めているか。
【学校教育課総括課長】
政府のこの状況に対して、都道府県として何かコメントするのはなかなか難しいところではあるが、この通知の趣旨が「日常的に長時間人が集まることによる感染リスクにあらかじめ備える」ということから示されたということに基づき、全国的にそのような対応を設置者の判断で行っているということだと理解している。
【斉藤委員】
政府の対応があまりにもずさんなので、政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が24日に見解を発表している。そこには「一律の休校」など一言も書いていない。専門家会議のメンバーも「効果は検証できない。分からない」と。「必要ない」という専門家もたくさんいる。政治的パフォーマンスではないのか。やはり科学的根拠・合理的根拠なしに、社会を混乱させるようなことをやるべきではない。
こんな横暴な、独断的な、思いつきのような提案が出されたときには、慎重に検討して対応することが必要ではないか。
【教育長】
専門家会議が24日に見解を述べられ、25日に政府が方針を示し、学校での感染対応については「都道府県レベルで判断する」という形で示されたところだった。我々もその方針に沿ってとるべき対応というものが進むものと承知していたが、まさに突然27日の夕方に、総理大臣の発表があったというのも、我々報道で知ったという状況にあった。
そして、文科省からの事務次官通知についても、当日の安倍総理が発表した後ただちにいただけるものかと思ったところ、翌日の閣議後の文科相の記者会見後に通知が発出され、28日の午前中にやっと正式な通知、正式というか、内容についてもあらかじめ事前に示されているわけではなく、報道で把握しているレベルの状況だったが、正式な通知をもって内容を確認したというところだった。
3月2日からということであり、また正式な通知が28日の午前中という中で、いろいろと対応について検討しながら、どういった対応が求められるのかと。ただ、そこにあったのは、児童生徒の健康・安全を第一に考えていかなければならないということ、それから、我々には科学的知見や専門的な情報は一切示されていないところでもあった。またその時点では、東北や本県でも患者等もいないわけで、本来であれば慎重に検討すべきところだったが何にしろそうした時間軸の中で対応が求められ、やはり最優先は児童生徒の健康・安全ということによらざるを得ないということ、それから各県立学校の方には、設置者である県として、いろいろと通知を出させていただきましたし、市町村教委の方には次官通知と合わせて、県の対応状況を参考にしていただくよう、そしてそれぞれの団体においては、設置者の判断、学校の判断を弾力的に対応していただくことも考慮していただくよう通知をさせていただいた。
その後、いろいろと対策等についても、詳細な情報提供は現時点でもございません。そういった中で、総理の記者会見等もあったわけだが、学童クラブや財政的な対応についても、具体的にどのような形で対応していくのか、具体的なところも示されていないというような中での判断だったが、児童生徒の健康・安全第一というところで対処せざるを得ないということでこのような形をとらせていただいた。
【斉藤委員】
児童生徒の健康・安全第一というが、25日の政府・文科省の基本方針、わずか2日後に変わった。変えるだけの科学的根拠は何もなかった。29日の首相の記者会見でも示されなかった。教育長が言ったように、具体的な対策についても示されなかった。「10日後に予備費を使って対応する」と。10日後の話である。何の準備もなく、方針が独断で変えられた。それによって多大な混乱が起きているのが現状だと思う。
首相・政府も混乱している。実は、28日の国会で安倍首相は「(一斉休校は)要請にすぎず法的拘束力はない。各学校地域で柔軟にご判断いただきたい」と。これは一体なんなのか。とんでもない話である。だったら27日の要請はなんだったのか。
これは衆議院文教科学委員会の理事懇話会で、文科省の柳大臣官房長は「通知が3月2日から春期休業の開始日までの間、学校保健安全法第20条に基づく臨時休業を行うようにお願いするのは、感染症がまったくない、学校の準備ができていないなどの状況に応じて柔軟に対応してほしいということだ」と述べている。一斉に休校せよという方針ではないということである。また「臨時休業の始期は3月2日でなくてよいし、終期は春休みまででなくてよい。おおむね10日程度と考えている」と。こういう話は伝わっているか。
【学校教育課総括課長】
国からの情報については、28日の通知、その後、教育課程に特化した関連通知だとか来ているが、基本的にはこの文書をもって情報を得ているところである。したがい、先ほどの具体的なお話については承知していない。
我々としては、27・28日の中で、国から示された全国的な内容を理解しつつ、どのように取り急ぎ学校や市町村教委に考え方を伝えればよいかというところで議論してきた。したがい、この連絡した内容についても、3月2日ということを書きつつ、「柔軟な」ということで、あえて具体的な日も示さずにやったというのが当時の考えである。
【斉藤委員】
安倍首相の国会答弁にしても、文科省の大臣官房長の発言にしても、きわめて曖昧である。こんなことで一斉休校が強制されるのはとんでもない。10日間だって問題だと思うが。そういうことで、まったく科学的根拠・合理的根拠もなく、具体的対策も示されない中での異常な小中高の全国一律の休校の要請だった。だからこそ、岩手県はその中身を真に受けないで、慎重に柔軟に対応すべきだった。
ところが、県立学校長宛の県教委の通知は、「原則として3月2日から春期休業に入るまでの間、一斉休校とする。なお、3月2日から5日までの間に、私物の持ち帰りや学力検査の会場準備等のため、必要に応じ登校日を1日程度設けて構わない」と。「3月2日から休校する」と県教委は指示している。どこに柔軟性があるのか。
3月というのは本当に大切な時期で、受験もある。県立学校がなぜ3月2日から休校にしなければならないのか。平日は28日しかなかった。1日は県立高校は卒業式である。まともな説明をする日は1つもなかった。もっと丁寧に、例えば休校の措置をとったときにどういう問題が考えられるのか、どんな不利益が発生するのか。そういうことを慎重に考え、3月2日から休校するという指示自身が、県教委が政府の独断的な根拠のない要請を真に受けたということにならないか。
【学校教育課総括課長】
県教委としては、27日の夕方に報道された総理の発言を受け、各児童生徒・保護者・学校、さまざま驚きや課題等をもったものと思う。その中で、ご指摘の通り、平日が28日しかなかったという状況においては、28日に国の通知が示された時点で、それを市町村や学校に伝えると。伝える際には、まさに「3月2日から一斉に、一律にではない」という部分を含めて適切に伝える必要があるという検討をしたところである。通知の文書においては、ご指摘あった通り、県立高校については「原則として2日から」と書いているが、「原則として」と一言を加えるとともに、「なお、3月2日から5日までの間に、必要に応じ、登校日を1日程度設けて構わないこと」という形で、可能な限り柔軟に運用していただきたいと。とにかく3月2日から一斉ではないということも通知をもって伝える必要があったと認識している。
また、通知の中では、「個別に進路指導等で必要があれば、学校に生徒を登校させる」と、当然それは感染防止対策も必要だと思うが、そういったことも可能にすることなども合わせて示させていただいた。
【斉藤委員】
柔軟と言いながら、県立学校に「3月2日から休校」と指示している。そこに柔軟性がまったくないと言っている。
こういうときは自主的判断が大事である。自治体では柔軟な対応をしている。島根県は「県立高校と特別支援学校の授業を継続する。感染者が確認されるまで休校措置はとらない」と。島根県出雲市でも「当面は休校せず通常通り授業を行う」と。宮城県は「県立の中学校・高校を休校としますが、特別支援学校は通常通り開校します」と。茨城県つくば市は「授業はせず、自主学習に教員が対応します。学童保育や給食も希望者に実施します」、群馬県太田市は「小学校と特別支援学校は休校とせず、通常通り授業を行います」などと、自主的に判断して対応しているところがある。
こういう異常な方針が出されたときには、やはり慎重で柔軟な対応をしなければならない。だいたい法的拘束力はないのだから。課長が述べたように、休校を決めるのは学校保健安全法で「設置者」となっている。県立学校だったら県教委、小中だったら市町村教委である。そういう点で、今一度、県教委が冷静に対応すべきである。
そして一番心配されるのは、ひとり親家庭の子どもたちである。小学校低学年や特別支援学校の子どもたち、行き場がないのである。だから授業を継続する、開校するという自治体もある。休校になった場合、小学校低学年はどれだけの数が影響を受けるか。学童保育に行っている数はどのぐらいか。
【教育企画推進監】
学童や放課後児童クラブ等についての数は把握していないが、保健福祉部から、県内には放課後児童クラブとして400箇所設置されていると聞いている。いま、保健福祉部でそれぞれの放課後児童クラブでどういう対応ができるのか、開所できるのかできないのか、そうしたところの調査をしている。まだ3割程度が確認中と聞いているが、保健福祉部として放課後児童クラブの開所について確認を進めている。
【斉藤委員】
影響の把握がないまま休校を開始することはあり得ない。そして自宅待機だと。実は自宅が一番危険だと言われている。WHOの報告では、「中国で55924人が感染。19歳未満の感染率は2.4%」と。子どもは感染リスクが少ない、重症化しないというのが、あれだけ感染が広がっている中国の実態である。休校する理由は、中国の例からも出てこない。だから専門家が「効果は疑問だ」と指摘している。
だいたい春休みを含めれば1ヶ月以上子どもを自宅に閉じこもらせること自身が非教育的・非健康的ではないか。
先ほど千葉盛委員が学童保育の問題を提起した。学童保育こそ、狭いところにたくさん子どもを預かっている。こんなに危険な場所はない。学校は広々として、養護教諭もいて、子どもたちの状況をしっかり把握できるところである。学校でみずに、学童保育に押し付けることはまったく正反対の話で、子どもの安全を考えた方針ではない。そう検討がなされずに休校していいのか。
【学校教育課総括課長】
ご指摘の問題意識の趣旨については共有するところである。
放課後児童クラブの状況や、県内市町村においては、小学校低学年の対応についてもさまざま検討していると承知しているので、我々としても情報提供等適切に行いながら対応していきたい。
【斉藤委員】
私が一番心配しているのは特別支援学校である。いま特別支援学校に何人在籍していて、休校した場合に受け皿はどうなっているか。
【特別支援教育課長】
今年度は1521人在籍している。
こうした場合の対応だが、放課後等デイサービスやレスパイト事業所等の利用が考えられるが、その割合については細かな数字は把握していない。
【斉藤委員】
とんでもない無責任だと思う。休校だけ決めて。特別支援学校の子どもたちは、環境が変わるとそれだけでパニックになってしまう。ここは本当にしっかりした受け皿が一人一人なかったら、休校などしてはならない。子どもの安全をどう考えているのか。
先ほど全国の自治体の例を示したが、今からでも遅くないのだから、柔軟に対応すべきではないか。本当の意味で子どもの健康・安全を守る対策をとるべきではないか。休校した後の保障がないところは絶対に休校しないと、そういう取り組みをすべきではないか。
【教育長】
今回の文部科学事務次官通知からこのような対応をさせていただいているが、実際にそれぞれの設置者や各学校現場でいろんな課題が出ているということも承知している。そういった中で、10日を目途にまとめると言いつつも、実は国では、総務省が動いており、全国知事会でも要望活動をしており、加えて、総務省では各都道府県に1名リエゾンを配置し、そして各都道府県、指定組織を総務省としてホットラインにすると。現場でどういったことが起きているか、政府への要望事項等について取りまとめるという取り組みがなされている。そして本県でも各部局それぞれ、さまざま課題出てくることに対して取りまとめのうえ、総務省に改善要望や財源措置等について万全を期すよう取りまとめをして要望する形で対応をさせていただいている。
【斉藤委員】
ぜひ特別支援学校については考え直してほしい。受け皿のない生徒は受け入れると、そのことはやらなければならないのではないか。こんなことをやったら子どもの安全は守れない。
あとは、小学校低学年で本当に1人にされる、こういうところは自主登校を認めると。先ほど紹介した自治体の例でもあるように、給食も出すと、そのぐらいのことをやるべきである。
本当に子どもの命と安全を守るということを最優先にして、どういう対策が優先されるべきか。それが休校なのか、休校でないのか。それを個別具体的に判断すべきではないか。
【特別支援教育課長】
特別支援学校の保護者の方から、学校がいろいろ要望等を受けながら、学校の実情を勘案しながら検討している。まだ休校していない学校もあり、休校を始めたところもいろいろ課題が出てくるかと思う。
放課後等デイサービスの受け入れ状況についても、いろいろ実情を勘案しながら、要望等があれば登校等も視野に入れた検討を重ねていくように考えている。