2020年3月2日 文教委員会
変形労働時間制、県版学力テスト問題に対する質疑(大要)


・変形労働時間制導入の問題について

【斉藤委員】
 12月の文教委員会でも、国会で強行採決された直後に質問したが、この間文科省の通知も出ているようである。
 県教委として、変形労働時間制の導入の是非を含めて、どのような調査・検討をしてきたか。

【教職員課総括課長】
 この制度は、給特法の改正により、令和3年4月から施行されるものである。制度の詳細については、今後国から通知されるとのことだが、現時点では詳細が示された通知は来ていない。
 県教委としては、長時間勤務による教職員の負担を軽減するためには、まずは我々の働き方改革プランを着実に推進していくことが最優先であると考えており、制度の導入については、学校現場の実態をしっかり把握しながら慎重に対応を検討していきたい。

【斉藤委員】
 導入については慎重に対応を検討と。当然だと思うが、これは前提条件があり、「恒常的な超過勤務がない」ことが変形労働時間制の導入の前提条件である。教員の場合は、恒常的な残業どころか、異常な、100時間を超えるような残業が恒常化していると受け止めているが、教員の超過勤務の実態はどうなっているか。導入の条件はないと思うがいかがか。

【教職員課総括課長】
 働き方改革プランを進めているところだが、その過程で具体的なデータも出てきており、四半期ごとの取りまとめとしているが、第三四半期には、前年度比で時間外勤務が減っているという成果も表われてきている。ただ、目標に掲げているところには至っておらず、さらに取り組みが必要だと考えている。
 変形労働時間制については、労働基準法の解説書によると、委員がお話になった「恒常的に時間外勤務が行われていない」事業が対象だとの解説もあるので、国の詳細な通知等も見て慎重に検討していきたい。

【斉藤委員】
 これは皆さんが父兄に渡しているリーフだが、この中で、「平成30年度は80時間以上が前年比3割減、100時間以上は前年比半減にする」という目標だが、結果としてどうなっているか。令和元年度と2年度は、80時間以上はさらに3割減、100時間以上はゼロにするという目標である。令和元年度の第三四半期までの実績はどうなっているか。

【教職員課総括課長】
 基準年としている平成29年度が、80時間以上は8.8%だったのに対し、平成30年度は9.6%と増加してしまっている。令和元年度の第三四半期までの合計では、10.9%と増加しているが、第三四半期だけを見ると、30年度が11.2%だったのが7.5%と減っている。また、平成30年度の途中でタイムカードを導入し、客観的な把握が進んだこともあり、時間が変わっているが、第三四半期については、タイムカードを導入した同じ条件で比較できているので、そこを比べても3.7ポイント減っているということである。

【斉藤委員】
 平成30年度は増えてしまったと。第三四半期までは、去年と比べれば減っているが、それでも10.9%で、決して低くない数字である。こういう実態というのは、学校の現場に変形労働時間制を導入する前提はないということを感じる。
 県の場合は、県が条例制定をするかしないかがまず問われる。小中の場合も。これは選択制である。やってもやらなくてもよい。私はやるべきではないし、条例制定をする条件は、少なくともこの1年間では生まれないのではないかと思うがいかがか。

【教職員課総括課長】
 まずは長時間勤務を是正するのが最優先であり、まずそこに取り組んでいきたい。
 この制度の導入にあたっては、学校の実態もしっかり把握しながら、慎重に対応を検討したい。

【斉藤委員】
 残業がないという基準は、指針という形で法的にも位置づけられたと。それは、月45時間、年間360時間である。だから月45時間を超えている状況ではいけない。この月45時間を超えている教員の実態は把握されているか。

【教職員課総括課長】
 45時間以上については、国のガイドラインに指定されたということで、今年度から取り始めたデータだが、県立学校で第三四半期までに31.8%になっている。

【斉藤委員】
 必ず示していただきたい。この指針をクリアしないとそもそも導入できないので。
 県立学校にはタイムカードが導入されたが、しかし小中学校では、1月7日付の新聞報道で、今年度17市町村教委が実施で、半分近くが盛岡を含めて未導入。そうすると、小中は全然勤務時間が把握できない状況になる。だから、ますます変形労働時間制の導入の根拠は現段階ではまったくないのではないか。
 総括課長が言われたように、働き方改革プランを真剣に取り組んで、異常な長時間労働を大幅に減少させることが課題だと。「導入の条件がない」と、そこをはっきり言ったらどうか。

【教職員課総括課長】
 お答えしている通り、まず働き方改革プランを着実に実行し、長時間労働を削減していきたいと思っており、導入にあたっては学校現場の実態が大事なので、実態をきちんと把握し、その上できちんと対応していきたい。

【斉藤委員】
 実は、教員の変形労働時間制の導入の目的が何かというと、夏休み等にまとめて休日を取ることが目的だと。そのために、閑散期は10時間労働を認めると。教員に閑散期などないと思うが。客観的に、夏休み期間の休日のまとめ取りは、変形労働時間制でも取れるし、実際に取っているし、そういう夏休みの業務削減は必ずやるべきだと思うがいかがか。

【教職員課総括課長】
 夏休みについても業務削減していかなければならないと思う。通常の時期についても、業務削減に務めなければならない。全体として、学校での働き方改革を進めなければならないと考えている。

【斉藤委員】
 変形労働時間制を導入しなくても、夏休み期間に休日のまとめ取りは可能だと。だとしたら、変形労働時間制はそもそも必要ないということになると思うがいかがか。

【教職員課総括課長】
 夏休みに休暇を取ることは、今の休暇制度でも可能である。国の説明によれば、夏休みなどの長期休業中の教員の業務時間が、通常の期間よりも短くなる傾向に鑑み、かつて行われていた夏休みの休日のまとめ取りのように、国は5日間程度と説明しているが、そうしたことを可能にするための制度だとしている。

【斉藤委員】
 変形労働時間制で1日10時間労働にしなくても、5日程度の夏休みのまとめ取りはできるし、やっているということではないか。この法律はいらないのではないかと。5日程度の休日のまとめ取りは、条例まで制定せずともできるし、やらなければならないのではないか。

【教職員課総括課長】
 今の休暇制度でも、休みは取れる。

【斉藤委員】
 今の議論ではっきりしたと思う。1日10時間という8時間労働制を壊すような、超過勤務を野放しにするような制度は絶対に導入しないで、しっかりと休みが取れるような取り組みこそ、皆さんの言う働き方改革プランでやっていただきたい。

・県版学力テストの問題について

【斉藤委員】
 残念ながら、この働き方改革プランは上手く進んでいない。思い切った業務の削減が必要だと思う。
 何度も取り上げているが、その最たるものは、岩手県学習状況調査=県版学力テストである。全国的には実施していないところも少なくない。実施しているのは小学校で30県、中学校では32県だったと思うが。そしてこの県版学力テストは、学校の先生が採点するという意味で、採点に10〜12時間かかるという岩教組の調査結果だった。テストづけにする、教員にも負担を押し付けると、私はこの見直しを強く求めてきた。
 この間の県教委の答弁は、「調査をしている。市町村教委と意見交換している」と、実態を踏まえて対応しているということだが、どういう調査をして、その結果はどうなのか。市町村教委との意見交換・協議はどうなっているか。

【学校教育課総括課長】
 この調査については、将来を見据えて今身につけるべき学力を問題の形で示す、つまづきを顕在化して授業改善していくという趣旨で実施していることであり、その趣旨については、適切な活用については、この2年間私も研修や会議、調査の結果公表の際に丁寧に説明してきた。それから、市町村の平均点は公表しないとか、不適切な活用をしないといったことも指導してきた。
 他方で、市町村においての調査の実態があるということも踏まえ、県としては、市町村で行われている調査について取り組みを分析してきた。書面で調査を行い、調査の学年とか教科については把握している。昨年度においては、市町村において調査を実施している市町村は、小学校については33、中学校は28だったが、今年度は小学校で29、中学校で27となっている。
 こうした調査結果も踏まえ、今般市町村との意見交換を始めたところである。2月に市町村教育長との会議において、調査のあり方に関して言及したところである。本格的な直接の意見交換については来年度からになってくると思うが、調査や調査を含めた子どもたちの学力の育成のあり方について、今後意見交換を進めていきたい。

【斉藤委員】
 実際に働き方改革プランで目に見えるような超過勤務の削減ができていない。県が襟を正して、範を示して、大幅に業務削減をすると。そのためには、県が実施している県版学力テストはやめるべきである。全国でもやっていないところが十数県もあるのだから。
 それから公表していないというが、市町村教委、学校の先生には公表している。だから競争が起きる。
 答弁では、小学校・中学校で実施市町村は減ってきており、これは良いことだと思う。国も県も市町村もやるというのは異常なことである。フィンランドは17歳まで人と比べるような試験はないと言われている。それで世界一と言われるような学力を身につけている。だから、テストをやらなければ学力が身につかないというのは神話である。そういう労力ではなく、一人一人にゆき届いた、余裕のある教育を保障することにこそ、働き方改革、教育のあり方の改革の焦点になるのではないか。

【教育長】
 課長からも答弁申し上げたが、競争になってしまっている実態、そこはあってはならないことであるので、我々としては、あくまでも授業のつまづきだとか授業改善につながるような形での調査という趣旨で取り組んでいる。ただ一方では、国の学調、県学調、市町村のテストというものもあり、重複しているところもあり、そういったところは見直しが必要ではないかということで、市町村の取り組み状況についての分析を進めながら、それを踏まえて市町村教委とあり方について意見交換を始めた。そして具体的な、本格的な協議については来年度からしっかり取り組んでいきたいと考えている。