2020年3月13日 予算特別委員会
商工労働観光部に対する質疑(大要)
・新型コロナウイルスに関わる影響について
【斉藤委員】
観光については、2〜4月に13万8500人のキャンセルがあったと。3〜4月は「例年の5割以下」が65%だった。
ふっこう割の話があったが、4500万円の予算で95%の執行見込みだと。4500万円だったら、1万円以上のホテルに宿泊した場合約9000件、これは9000件にもいかなかったということになるか。
【観光課総括課長】
ふっこう割の執行率95%と申し上げたが、宿泊のカウントを今しているが、宿泊者数では9400人泊程度と見込んでいる。
【斉藤委員】
プレミアムが付いて9400人泊、キャンセルが13万8500人ということで、本当に危機的な状況だと思う。
政府の対策を見ると、「魅力的な観光コンテンツを醸成」「多言語表示等観光地の誘客先の多角化等を支援する」と。こんなことをしているうちに潰れてしまう。まったく政府の対策が噛み合っていないと思う。
この間の田野畑村議会でも、羅賀荘で1400件の予約キャンセル、新たな予約が入っていない。その影響額は倍である。13億円余の損害が出たが、その後の予約が入っていないのだから。本当に潰れない対策を考えていかないといかないのではないか。
【観光課総括課長】
国の対策については、現在のところ終息が見えないということで、直接観光・宿泊業に対する被害額の補てんというのは、まだそういう時期ではないのかなということで、内々には、終息状況を見ながら新たな大きな対策を打つという情報はいただいているが、まずは中小企業等の金融支援施策、雇用調整助成金等で雇用の維持と事業継続を図っていただくということがまずは第一と国では判断しているということである。
【斉藤委員】
国は本当にその通りで、終息の見通しが立たないのに、終息した後の対策をとっている。おかしいのではないか。
国の方針を改めて見てみたが、3月10日付の政府の対策本部では、「大規模感染のリスクを回避するため、令和2年2月26日に、多数の方が集まるような全国的なスポーツ・文化イベント等については中止等を要請した」と。ところが今、どこもかしこも自粛である。小さい集まりまで自粛である。これは完全に行き過ぎではないか。その行き過ぎの典型が、岩手県の場合、感染者は一人も出ていないのに、学校は一律に休校すると。卒業式も辞めると。そういう意味では、岩手の事情に合った、岩手の対策で必要な需要を喚起するという対策が必要ではないか。岩手の実情に全然合っていない過度の自粛、規制が行われているのではないか。
【商工労働観光部長】
いま国をあげて感染拡大防止に取り組んでいる中で、基本的には県としてもそこに歩調を合わせて取り組んでいるところであると認識している。
先ほど「買うなら岩手のもの運動」の話をしたが、これはそうした中でやれるところから最大限手を尽くしていこうと始めたものであるので、今後の動向をさらに注視しながら、やれることは素早く手を打っていきたい。
【斉藤委員】
政府の方針自身が「多数の方が集まるような全国的なスポーツ・文化イベント等については中止等を要請した」ということであって、そうしたものは中止になって当然だと思うが、例えば、産業技術短大が昨日104名の卒業式をやったと。父母は入れずに。100名程度の集まりはやっても全然おかしくない。こんなに自粛しなくてもいいと思う。
岩手県は感染者がいないのだから、「岩手に来てください」というぐらいの案内をやってもいいのではないか。そうしないと、一人も感染者が出ていないのに、一人出たら終わりである。何の対策もとれない。これ以上規制強化するしかできない。実情に合った対策をとって、新たな事態が発生したら、必要な規制措置をとると。すでに目一杯規制しているから、新たな情勢に全然対応できない。ずっとこの規制を続けるしかなくなってしまう。今一度見直すことが必要ではないか。庁議でもよく議論していただきたい。規制している間に、地域経済は疲弊し、中小企業は倒産してしまう。そういう状況である。
観光のことは分かったが、その他はどうなっているか。飲食関係は夜お客がさっぱり来ない。タクシー・観光バス、地域経済全体の動向についてはどう把握しているか。
【企画課長】
例えば、貸し切りバスのキャンセル、タクシー利用者の減少、ホテル・飲食店における謝恩会・送別会・卒業パーティーといった各種会合のキャンセルなど、幅広く影響が出ているということで承知している。
【斉藤委員】
あまりにもリアリズムが足りない。いま中小企業は倒産するかもしれないという危機感を持っているときに、その程度の把握だから、本当に困っている方々に響かないと思う。
岩手県商工会の専務にお聞きしたが、昨日付で商工会関係の調査をやったと。177社回答があり、うち123社・69.5%が「すでに影響が出ている」、42社・23.7%が「今後影響が出る」と。影響の大きいところは「飲食」、次いで「宿泊」。「売り上げが20%減」が77%、「40%減」が17.4%。「今後影響が出る」というのが、「製造業」「小売」「運輸」。「20%減が予想される」のが31.8%、「20〜40%」が38.7%、「40%以上」が8.5%である。こうした状況になっているのだから、もっと真剣に把握していただきたい。
中小零細企業の要望は何かというと、第一は「景気の回復」、第二は「資金繰り」、第三は「雇用調整」。特に、いま中小零細企業は廃業するかどうか悩んでいる。見通しがないから、資金繰りにしても、いま借りたらいいのかどうか悩んでいる。4月5月で見通しが立つならそこまで頑張れる。いまその見通しは立たない。「小規模事業者ほど影響が大きい」と専務は言っていた。県として実態をしっかり把握してやっていただきたい。
ぜひ県が対応してほしいのは、今の経済状況がどうなっているかということである。10〜12月のGDP確定値が発表され、-7.1%である。新型コロナウイルスの前の数字である。大変な不況で、そこに新型コロナウイルスの影響が出ている。感染防止対策に取り組みつつ、中小企業・家計を守る対策が必要である。様子を見ている間に潰れてしまう。
そこで日本共産党は、政策提言を出した。消費税の増税で景気が悪くなったのだから、すぐにでも5%に戻すべきだと。昨日のBSを観ていたら、自民党の国会議員が「ゼロに戻せ」と言っていた。国民民主党も消費税の減税が必要だと言っていた。こういう思い切ったインパクトのあることをやらないといけない。政府の第二次対策を見てがっかりした。一桁違う。例えば、無利子・無担保の融資にしても5000億円程度。リーマンショックのときには20兆円規模でやった。そういう規模で対策をとらないといけない。
そういう意味で、感染防止と合わせて、今の地域経済、倒産の危機を打開する緊急のメリハリのある対策をぜひ国に求めていただきたい。予備費の枠なんかで今の経済危機は打開できない。
そして感染者が一人もいない岩手は、岩手らしい対策を、知恵を出してやるべきである。そういうところを大いにアピールして、人を呼び込むぐらいのことをやるべきではないか。
【商工労働観光部長】
本県の実情を通じてのさまざま国に対する要望というのは、これまでも全国知事会を通じて二度要望し、直近では3月11日に要望をあげており、また総務省からリエゾン(連絡員)が配置されており、随時必要な情報をあげてほしいと言われているので、本日さまざま議論になったことも踏まえ、必要な要請は国に対して行っていきたい。
【斉藤委員】
本日の新聞報道で、県別の景況判断指数が出ているが、岩手は-21.9%である。これは10〜12月と比べ16.6ポイント悪化し、悪化率は東北で一番高かった。今の日本経済と合わせて、岩手の経済の実態、中小企業の実態をリアルに見て、中小企業を断固として守り抜くということで、国のまったく不十分な対策でやり過ごそうとは思わないで、知恵を出してやっていただきたい。
・東日本大震災津波からの復興の課題について
【斉藤委員】
商工団体会員事業所の被害状況調査(2月1日付)が出ているが、営業再開、廃業等の状況はどうなっているか。前年比でどう推移しているか。
グループ補助金の実績と倒産の状況について、東北3県では75者となっているが、岩手の状況はどうなっているか。倒産の内訳・要因、高度化資金の返済猶予の対応状況なども示していただきたい。グループ補助金の来年度以降の見通しはどうか。
【経営支援課総括課長】
商工会員事業所の営業再開については、2月1日現在の状況は、被災事業者4341者のうち、営業継続・再開が3017者、前年比35者減、営業未再開が19者で前年比5者減、休業23者で前年比3者減、転出77者で前年比1者減、廃業が1195者で前年比44者増となっている。
グループ補助金の実績は、これまで延べ1548事業者にたいし903億円を交付決定している。交付した後に倒産した事業者は、2月末現在で15者となっており、卸小売5者、水産加工5者、運送業1者、宿泊業2者、飲食業1者、産廃収集業1者となっている。倒産の要因については、事業再開後の原材料高騰、販売不振等により業績が計画通り回復せず赤字決算が続いたこと等となっている。
高度化資金の返済猶予等の対応状況は、2月末現在で、これまで23者49件について、償還期限の延長や毎回の返済額の減額などの対応を行ったところである。
グループ補助金の来年度以降の見通しは、市町村・商工指導団体と連携し、需要把握に努めており、土地区画整理事業の進捗により来年度は新規申請が増加すると見込んでおり、37件の申請を予定している。この中には、復興工事の終了にともない、建設用地が確定し来年度に着工可能となる商業者・製造者などを含んでいる。
【斉藤委員】
再開してもこの1年間で35者が減って、廃業が44者増えたと。やはり再開しても営業継続するのが大変だと。グループ補助金を受けた中では15者が倒産、そのうち水産加工が5者ということで、再建したものの、不況や消費税増税、大不漁が影響している。本当にきめ細かい支援策を強化していただきたい。
仮設店舗の本設移行について、これまでの実績と現状、今後の本設移行への支援について示していただきたい。
あわせて、水産加工業への従来の枠を超えた支援策について示していただきたい。
【経営支援課総括課長】
令和元年12月末現在で、仮設店舗に入居している商業者は66者、これまでの入居実績が731者、退去数は665者となっている。退去者のうち、仮設施設の再譲渡を受けた商業者を含めた本設移行した商業者は518者となっている。廃業とその他の理由により退去した商業者は147者である。現在仮設店舗に入居している66者のうち、本設移行を希望しているのが45者、仮設施設の再譲渡等の希望が10者となっており、引き続き市町村・関係団体と連携し円滑に本設移行が進むよう支援していく。
【産業経済交流課総括課長】
水産加工の支援については、これまで復興支援ということで、平成24年度から三陸復興商品向上力プロジェクトということで、県と工業技術センター、岩手県産(株)といったところが共同で、さまざまな商品開発や県内外での商談会、フェアの開催等により支援をしてきた。近年は、これまでと違い、不漁による加工原料の確保が課題となっており、魚種の変更やマーケットニーズに対応した、さらに付加価値の高い商品づくりというところを、国や関係機関、専門家との連携により支援している。
販路拡大についても、こういった新しい商品については、いろいろ支援していく中で、今年度新たに、沿岸部にもバイヤー商品により水産加工業者の支援を強化している。
さまざまこういった取り組みを今後も充実させていくとともに、生産性の向上、関係機関と連携した金融面も含めた取り組みを引き続ききめ細やかに支援していきたい。
・台風19号災害からの復旧・復興について
【斉藤委員】
地域企業再建支援事業費補助の活用見込みと取り組みはどうなっているか。
地域なりわい再生緊急対策交付金は、今回は観光対策で対応するということだったが、活用の状況を示していただきたい。
【経営支援課総括課長】
地域企業再建支援事業費補助の活用見込みは、今後545件を見込んでいる。この補助金は、市町村を通じて支援するスキームとしていることから、これまで県と市町村が連携し、被災事業者向けの制度説明会、個別相談会を開催し制度の周知を図ってきた。現在、市町村において、事業者の申請意向を確認するとともに、交付申請の手続きなどを指導している。現時点で申請に至っていない事業者についても、今後交付申請できるよう今年度の予算を繰り越して対応することとしており、引き続き市町村と連携し被災事業者の施設等の復旧を支援していく。
【観光課総括課長】
地域なりわい再生緊急対策交付金については、市町村が実施する観光施設の復旧整備への支援である観光施設復旧緊急対策事業と、市町村が実施する観光イベントの開催費用、特産品PRイベントの出店費用等への支援となる、誘客販売緊急対策事業という、ハード・ソフト2つの事業メニューに実施している。
観光施設復旧緊急対策事業については、宮古市・久慈市・釜石市・山田町・田野畑村にたいし、計12件・3160万4千円の交付を現在も内示させていただいている。うち4件については、工事が来年度に繰り越しとなる予定である。
誘客販売緊急対策事業については、釜石市・山田町・田野畑村が今年度実施したイベント等にたいし、8件・225万円の交付を内示しており、現在それぞれ交付決定の手続きに入っている。