2020年3月16日 予算特別委員会
千田美津子県議の農林水産部に対する質疑(大要)
・小規模農家に光があたる政策を
(千田美津子委員)
まず米政策についてお聞きします。今年産米の総体取引価格、それから規模別の生産費はどのような状況になっているか、どういう規模の農家の採算が取れ、赤字農家の実態はどうなのか、規模別にお知らせいただきたい。
(佐藤水田農業課長)
稲作農家の収入の状況です。令和元年産のひとめぼれの相対取引価格は出回りから令和2年の1月までの公表値で、60 kg当たりで15,336円となっています。
次に米の生産費ですが、例年、翌年の10月末の公表となっており、令和元年産についてはまだ公表されておらず、現時点での最新のデータである平成 30年産と比較しますと、規模別の生産費は60 kg当たり、1haから2?では16,174円、2?から3?では14,163円であり、2?以上の規模で相対取引価格が生産費を上回っているところです。2?未満の稲作農家の状況ですが、2015年の農林業センサスによると、経営体としては86%、それから面積の割合として42%となっているところです。
(千田美津子委員)
規模別の経営体の中で一体どれだけの農家が赤字になっているのかという部分では、2?以下が86%という答弁でした。採算ベースは2?以上でないと生産費を賄えないということで、私も一町歩ちょっとしかならないので大幅な赤字になっているなと思います。
経営体数42%ということでしたが、岩手の実態が86%採算が取れない、国連が「家族農業の10年」を定めて小規模家族農業が果たしている役割が非常に大きいということで、10年間これを延長いたしました。国連が提唱したように、小さな家族農業、岩手であれば86%でありますから大半が家族農業と言われますけども、やはり大規模農家だけの政策ではなく、この86%の小規模農家に光が当たるような政策が必要と思います。
そういった点で国の現状がそうはなっていないとは思いますが、県としてはこれらの現状と、これからの対策についてどのように考えているかお聞きします。
(佐藤水田農業課長)
今後の対策ですが、相対取引価格と生産費を比較致しますと、大きく赤字となっています。経営を黒字化するためには、効率の良い営農をやらなければならないということで、規模拡大し集約し、効率良い経営体を育成し、赤字を回避するというような取り組みと、生産費をいかに引き下げるかという努力がありますので、資材なり作業効率などを工夫し、生産コストを下げる取り組みを推進してまいりたいと考えてございます。
(千田美津子委員)
相当な努力があり黒字化されて頑張って集落営農をやったり、営農組織を立ち上げたりして頑張ってるところはいいのですが、そうはならない部分についてやはり政策が必要だと思います。効率の追求、そういうことだけ続けていたら破綻してしまうのではないかと思います。その点もう一度お聞きします。
(佐藤水田農業課長)
稲作を産業と捉えた場合、まず効率を上げてコストを下げて収益を上げるという部分がありますし、それから効率以外の地域政策として中山間地等の水田作を考えた場合、機能の維持というものも必要なってくるのかなというふうに思います。
・水田活用直接支払交付金について
(千田美津子委員)
飼料用米についてお聞きします。飼料用米の作付面積が全国でどんどん減っています。17年産が92000haとピークでしたが、19年産が73000haまで減少しています。このために水田活用直接支払交付金が減額されていますが、岩手の飼料用米の作付面積はどのようになっていますか、それから交付金額の実績をお知らせください。
(佐藤水田農業課長)
岩手県の飼料用米の作付面積ですが、ピークであった平成29年産は4676haであり、令和元年産は3724haとなっております。
なお交付額については、国はまだ公表してないため不明ですが、ただ飼料用米含めました、麦、大豆等を作付した場合に交付される戦略作物助成と、二毛作や耕畜連携など産地づくりに向けた取り組みに支援される産地交付金を合わせた水田活用直接交付金額は、平成29年度137億円、平成30年度は129億円となってございます。
・水田農業高収益化推進助成について
(千田美津子委員)
もう一つ、水田農業高収益化推進助成についてお聞きします。国は飼料用米の生産支援を強化してきたわけですが、そういう政策から野菜や果樹など収益作物への支援にシフトをしようとしています。そういう中で水田農業高収益化推進助成が新設されようとしています。
水田農業高収益化計画に基き連携し、基盤整備あるいは栽培技術や機械の導入、水田での高収益作物への転換を推進するものだと思いますが、これまで進めてきた戦略作物である麦、大豆等への支援が現在で10アール当たり35,000円ですが、これらに比べると畑地化支援ですと105,000円と3倍の支援となります。さらに飼料用米への支援が10アール当たり55,000円ですので戦略作物が軽視されてきた、そういう状況にあるのではないかなと思いますが、この新たな水田農業高収益化推進助成制度についてお聞きします。
(佐藤水田農業課長)
高収益作物畑地化支援についてですが、高収益作物による畑地化の取り組みに対し1回限りですが、10アール当たり105,000円が交付されるものであり、本支援を受けた水田については水田活用の直接支払交付金の交付対象水田から除外されることになり、以降交付金を受けることはできなくなります。
(千田美津子委員)
畑地化ですから田んぼを畑に誘導するという政策だと思います。もう一つ、畑地化と合わせて高収益作物定着促進支援があります。これについてもご説明お願いします。
(佐藤水田農業課長)
高収益作物の推進計画に基づきまして高収益作物を作付けした場合に、10アール当たり2万円、これは5年間交付されるという制度でございます。
(千田美津子委員)
高収益作物定着支援と様々名称が出てきますが、これが5年間交付されるということで、いわば水田を減らしていく政策が今度出てきたということになるわけでありますが、岩手県としてはこの事業をどのように推進しようとしているのかお聞きします。
(佐藤水田農業課長)
高収益作物に対する推進方針ですが、生産者の所得を向上させていくためにも優良農地である水田を有効的に活用していくことは重要ですので、麦、大豆も確かに重要ですけども、高収益を得られる園芸なども今後推進してまいりたいということで、水田で高収益作物を推進するための施策を展開しているというところでございます。
(千田美津子委員)
岩手県ではこの推進計画を作って推進するとしていますが、農業者や農協さんとは議論し、こういうふうに進めていこうとか話し合いはされているのですか。
(佐藤水田農業課長)
この制度、今年になり事業内容が分かってきたということもありますが、名称等については事前に担当者会議等で振興局、あるいは市町村、農協の方にも連絡してあり、座談会においてこういう事業がありますということは紹介しているところです。これから計画の本番となってきますので振興局と連携して事業を推進してまいります。
(千田美津子委員)
同僚委員の質問の時に技監から、例えば園芸農産地化という部分で県南の方ではそれは田んぼでやると、県北では畑でやるというような話がありました。これは畑地化して高収益作物を定着化させようという新たな事業ですが、この事業は県北にやるということなのか、それとも県南の水田に増やそうとしているのかそういう方針はないですか。
(小岩技監兼農政担当技監兼県産米戦略室長)
私が県南の方は田んぼで、県北の方は畑でと言いましたのは、まずは土地利用型野菜の分でこれはやりたいと思っておりますし、あと中山間地域のあまり広くないような土地の部分では施設園芸をやりたいということで述べました。
米に関しては、全体を見ますと毎年12〜13万トンずつ米を食べる日本全体の胃袋が小さくなってきています。ですから国、全国の都道府県が一緒の方向で動いていますが、売れる米づくりは需要を見ながら作っていかなければならない状況です。その上で田んぼを有効に活用していくための方策として今回のような事業もあるものと思っています。
あくまでも各地域、地域での生産者、そこに市町村も入って、我々も入ってこの地域はどのようなもので農業振興を図っていくのか、ということを話し合った上でこの事業に手をあげる、あるいはあげないと判断していくべきものだと思っており、私どもとしましては正確な情報を皆さんにお伝えしていくということに努めていきたいと思います。
(千田美津子委員)
了解しました。どう地域を作っていくか、どういう農業にしていくか、そういうことを十分に話し合ってもらうと、そこが大前提ということでわかりました。
それで飼料用米のことに戻りますが、作付面積が縮小したのは減反政策の廃止によって主食用米の生産が増えたためで、米を食べる量が減っていることもありますけども、米の需給が大変不安定になっている問題が根底にあると思います。国として責任ある対策を取る必要があるというふうに考えますがどうでしょうか。
(佐藤水田農業課長)
令和元年産はここ数年の主食用米の高値基調により主食用米の生産が増加したため、飼料用米の作付面積が減少したところです。今後全国的に需要に応じた主食用米の生産が行われないと需給バランスが崩れることが懸念されます。このため県では国全体での米の需給の安定が図られることが重要と考え、これまで国に対して実効性のある推進体制を確立するよう要望したところであり、引き続き必要な対策を国に求めてまいります。
・農業人材力強化総合支援事業について
(千田美津子委員)
次ですが、農業人材力強化総合支援事業についてお尋ねします。政府の目標では23年までに40歳代以下の農業者を40万人に拡大するという方針がありますが、18年度実績では334,000人と言われております。岩手の状況はどうでしょうか。
(菊池農業普及技術課総括課長)
本県における40歳代以下の農業者数でありますが、国が今回試算した数値の県別のデータがないため、直近の2015年の農林業センサスで出しますと40歳代以下の基幹的農業従事者数は4074人、45歳未満の雇用就農者数は2312人となっています、
県では新規就農者確保目標を年間260人としており、平成20年度以降200人を超えて推移し、平成30年度は245人となっています。今後引き続き市町村、関係団体と連携し新規就農者の確保・定着を支援してまいります
(千田美津子委員)
県別のデータもない、それから2015年のセンサスの発表ということで40万人に拡大する方針はいいのですが、そこに到達するような政策が見えないのですがどうでしょうか。
(菊池農業普及技術課総括課長)
県としては、若い就農者を増やすために先ほど申したように年間確保目標を定めております。これを実現するために様々な機関、市町村と連携し新規就農者の確保、そして経営が安定するような支援をしており、これは引き続き続けていきたいと考えております。
・農業次世代人材投資事業について
(千田美津子委員)
次に農業次世代人材投資事業についてお尋ねします。今年度国は当初予算を20億6000万円も大幅に減額したために、市町村から年齢を引き上げ対象拡大したのに予算を減らすのはおかしい、追加配分をして欲しいとか、受給できる前提で営農計画を組んでいる若者に全く説明できないなどの批判が相次ぎ、国は予備費で対応したようであります。
この農業次世代人材投資事業は、これからの若い人たちに希望が持てるような事業にしていく必要がありますが、来年度の見通しについてお尋ねします。
(菊池農業普及技術課総括課長)
次世代人材投資事業の来年度の見通しですが、その前に今年の実績についてお話をさせていただきます。今年度の2月末時点での交付実績は準備型が10名、経営開始型が250名、合計が260名でありまして全市町村の要望を充足しております。
次に来年度の予算の見通しですが、農林水産省の令和2年度予算の概算決定額は160億600万円であり、令和元年度予算154億7000万円に対して3%の増額です。来年度の予算配分は国が4月、8月末、12月末の3回に分けて追加配分することとしており、県では市町村の執行状況を確認しながら、国に追加要望を行い必要額を確保してまいります。
(千田美津子委員)
国の予算が3%増えるということはわかりました。配分スケジュールが示されたとのことですけども、岩手ではこの事業に応募する方の見通しはどうでしょうか。
(菊池農業普及技術課総括課長)
来年度の次世代投資事業の要望状況、現時点で把握している分ですが準備型は継続が4名、新規が14名、経営開始型が継続179名、新規44名の合計223名という集計になっています。準備型と経営開始型を合わせて237名となっております。
(千田美津子委員)
せっかく国でも3%増という予算を組まれたようですので、是非、若い皆さんが積極的に手をあげられるよう指導をしていただきたいなと思います。
・家畜保健衛生所の検査機器の整備等について
(千田美津子委員)
最後に家畜保健衛生所の検査機器の整備についてお尋ねします。国は家畜伝染病の早期発見、封じ込め、水際検査強化対策として、家畜保健衛生所の検査機器の整備をし監視体制の整備を行うとしておりますが、県内の検査機器の整備の状況、合わせて検査体制、人員体制についてもお尋ねします。
(村上畜産課特命参事兼振興・衛生課長)
家畜保健衛生所の検査機器の整備について、県はこれまで熱病などを含めた家畜伝染病の診断体制を維持するため、国の予算も活用しながら計画的に検査機器の整備・更新をしているところです。来年度もリアルタイム PCR の予算を盛り込ませて頂いております。
また人的な体制の面では迅速、かつ正確な診断に向けて家畜保健衛生所の獣医師職員を対象に、国が開催する研修等受講させるなど職員の育成などにも取り組んでおります。
(千田美津子委員)
家畜保健衛生所は県内に県北、中央、県南の3か所ですが、検査機器はいろいろ整備されていますが、3箇所に必要な機器が備わっていると考えてよろしいですか。
(村上畜産課特命参事兼振興・衛生課長)
それぞれの家畜保健衛生所で必要な機器を整備させていただいております。特に中央家畜保健衛生所に病性鑑定課というより高度で精密な検査をする部署がございまして、遺伝子検査機器とか専門的な機器を配備しております。