2020年3月17日 予算特別委員会
県土整備部に対する質疑(大要)
・新型コロナウイルスによる影響について
【斉藤委員】
新型コロナウイルスによる県土整備部の事業への影響、建設業への影響について。県土整備部に関わっては18件の工事中止などがあったが、要因別の件数を示していただきたい。そして、建設業全体にどういう影響が出ているか。
【技術企画指導課長】
主に委託業務については、在宅勤務だとか自宅待機というような、会社ぐるみで取り組みを行っているところがある。工事については2件あるが、これについても学校の休校にともない子どもの面倒をみるために休まざるを得ないという状況である。
【建設技術振興課総括課長】
県内建設業への影響については、県内建設業団体への聞き取りでは、民間住宅建設において、トイレや水回り設備などの中国産資材・機器において一部入手が困難になっていると。そのことにともない、住宅の納期の遅れの「懸念がある」と聞いている。
【斉藤委員】
企業局審査でも、中国からトイレが入って来ず工事中止になっていると。かなり出ていると思うので、もう少しリアルに危機感を持って実態を把握していただきたい。
・災害公営住宅におけるコミュニティ形成について
【斉藤委員】
災害公営住宅における高齢化と孤独死の状況はどうなっているか。部長は実態をどう受け止めているか。
【県土整備部長】
12月末現在で、災害公営住宅に入居している5146世帯のうち、65歳以上の高齢者を含む世帯は3191世帯・62%となっている。そのうち高齢者の一人暮らし世帯は1712世帯で全体の33.3%となっている。
孤独死の状況は、一人暮らしとは言いながら、お一人で亡くなる事実は大変痛ましいものであり、そういう事態はあってはならないことであり、極力改善していくべきものと考えている。孤独死の状況については、関係部局とも共有しているが、9月現在で45人だったが、12月末では50人と、3ヶ月で5名が亡くなっていると承知している。このような状況に鑑み、高齢者が孤立を深めることがないような見守り、コミュニティ形成に取り組んでいくことが重要と考えている。
【斉藤委員】
災害公営住宅の特徴は、生活苦と高齢化で、その中で孤立化・孤独化が進行し、孤独死が急増していると。昨年末までに災害公営住宅で累計50人、応急仮設住宅での孤独死は46人だったので、ついに逆転してしまった。特に重要なのは、この2年間で災害公営住宅での孤独死は34人になり、68%を占める。この2年間で孤独死が急増しているのが実態である。阪神淡路大震災で、20年以上孤独死が続き1000名を超えた。この轍を踏んではならないと。そういうことで、具体的な手立てを取ることを求めたい。
最近、岩手県立大学のグループと岩手大学の船戸特任助教による、それぞれの災害公営住宅入居者の生活実態調査、災害公営住宅コミュニティと生活に関する調査結果が明らかにされた。その内容をどう受け止めているか。
【建築住宅課総括課長】
県立大学等の調査結果では、「誰が入居者か分からない」69.2%、「相談相手がいない」47%など、災害公営住宅の問題点が明らかにされており、「単なる見守りにとどまらない対策が必要」とされている。
高齢者の見守りとコミュニティ確立は非常に重要な課題であると認識している。
【斉藤委員】
船戸特任助教の調査は触れなかったので紹介すると、1100人を超える回答で、特に注目するのは、コミュニティ形成の拠点である集会所が「1回も利用なし」42%、「年に数回」33%と、ほとんど使われていない実態が75%に達した。「ご自宅から隣3軒程度の方々の顔と名前はどの程度分かりますか」との問いに、「ほぼ分かる」「だいたい分かる」は47%で、5割以上が分からないと。「困った時に相談できる人、信頼できる人はどのぐらいいますか」との問いには、「いない」が28%、「今の災害公営住宅に今後も住み続けますか」との問いには「住み続ける」が58%にとどまっている。いわば家賃が上がっているから、住み続けられるかどうか分からないという不安が圧倒的に多い。実は岩手大学の調査は、具体的な生の声がたくさん出ており、一番多いのは「家賃が上がって大変だ」というものだった。
県営災害公営住宅での自治会の確立状況と集会所の活用状況はどうなっているか。
【建築住宅課総括課長】
自治会の設立状況は、12月末現在で、県管理の災害公営住宅29団地中23団地が設立済である。集会所の活用は、集会所が併設している27団地すべてで活用がされているが、1ヶ月あたりの使用回数で見ると1ヶ月当たり2回態度、多いところでは月30回を超えるような集会所もある。
【斉藤委員】
県営災害公営住宅の自治会については、昨年の決算特別委員会で聞いた際には10団地残っていたので、6団地にまでなったが、まだ6団地でつくられていないと。
集会所の活用状況については答弁が不正確である。圧倒的には月2〜5回程度である。10回以上利用されているのは3箇所だけで、このうち大槌町上町と大船渡市みどり町は、生活支援相談員が複数配置されているところである。もう1箇所は栃ヶ沢アパートである。だから、きちんと手立てがとられているところは、それなりに集会所が活用されコミュニティの拠点の役割を果たしている。このことをリアルに見て、50戸以上の災害公営住宅には生活支援相談員を複数配置して、いま深刻になっている災害公営住宅のコミュニティ形成、一人暮らし高齢者などの見守りのために、生活支援相談員をしっかり配置すべきだと思うが見通しはどうなっているか。
【建築住宅課総括課長】
本年度生活支援相談員を配置いただいた上町とみどり町については、集会所の利用が増加しているほか、生活支援相談員がいるということで、自然に集会所を訪れる人が増えているなど、地域で孤立を深めることがないように、被災者一人一人に寄り添ったきめ細かな支援をいただいている。その役割については、個々の世帯の状況に応じた訪問活動や見守り支援、相談対応など、民生児童員や介護等事業者などと連携した、被災者が生活する上で必要となる支援を行っていただいていると思っている。
災害公営住宅への生活支援相談員の配置については、一定規模以上の災害公営住宅に配置していただけるよう、関係者間で情報の共有を図ったうえで、市町村社協の設置事業に協力するなど、集会所で関係機関が活動しやすいように今後取り組んでいきたい。
【斉藤委員】
この問題は、千田県議の一般質問、復興局審査、保健福祉部では高田県議が取り上げてきた。そこでの答弁は、いま3市町で、うち釜石は空き家活用で、災害公営住宅では2箇所で、「来年度は5市町で災害公営住宅に配置の見込みだ」と。若干の前進だが、先ほど紹介した災害公営住宅のアンケートにあるように、きわめて深刻な状況にあり、5市町からせめて二桁以上の自治体に配置できるように、直接的には保健福祉部の所管で、復興局は全体に関わっているが、県土整備部も含めて本当に連携して、この現状を共通認識にしていただきたい。知事の答弁は「来年は5市町だがさらに広げる」と。「さらに広げる」ということで、4月からは間に合わなくとも、5月6月にさらに広がったとなるように。
みどり町の自治会長さんからじっくり話を聞いてきたが、女性の自治会長さんでとても頑張っている。頑張っているが、結局自治会の役員が集会所に居なければ、鍵がかけられて閉まってしまう。生活支援相談員が来るときには朝に鍵を開けてお願いして、いつも開いているから入居者が安心してそこに来れる。そうした支援をして、自治会も支援すると。そして入居者のコミュニティの拠点として機能するように、ぜひ来年度さらに広げるように取り組みを進めていただきたい。
・災害公営住宅の入居者名簿の提供について
【斉藤委員】
入居者名簿の提供についてどう取り組まれているか。同意書の意向状況、個人情報保護のマニュアルなどの自治会に対する丁寧な説明、今後どう取り組まれるか示していただきたい。
【建築住宅課総括課長】
入居世帯の氏名、生年月日、災害時の支援の必要の有無などの個人情報の提供の可否について、県ではあらかじめ全戸に対し意向確認を行っている。1月24日現在、同意書配布世帯数1351戸に対し、提出いただいた世帯数は727世帯・53.8%となっている。
項目別の同意状況については、727世帯のうち、氏名は632世帯・86.9%、性別は621世帯・85.4%、生年月日は570世帯・78.4%、災害時の支援を希望するかどうかは544世帯・74.8%という状況である。
今後の取り組みについては、同意書の提出率が53.8%と十分ではないので、自治会への入居者情報の提供実績がない状況もあり、県では、単独で自治会を形成する主な自治会といったところに、個人情報保護のためのルール作成など、自治会名簿の作成の現状や効果的な取り組み方法等について、機会をとらえて協議を行ってきたところである。その中で、例えば、入退去により実際の入居者と提供される入居者情報に差異が生じているとか、個人情報保護のためのルールの作り方に手間がかかるといった課題・意見をいただいている。こうした課題の解決に向けさまざま検討を進め、入居者情報の提供につなげていきたい。
【斉藤委員】
一般の町内会と違って、いろんなところから集まってつくられているコミュニティであり自治会である。だから7割の人が「誰がどこに住んでいるか分からない」と。この入居者名簿の提供は大変重要なことで、全国的にも注目されている。同時にこれは、自治会と協力・共同してやらないとうまくいかないので、よく説明し、一緒になって取り組みが進むようにお願いしたい。
・災害公営住宅の家賃問題について
【斉藤委員】
岩手大学の調査では、「現在の生活で不安や課題を感じること」第1位が「家賃・生活費」、第2位が「健康・運動」、第3位が「仕事・収入」だった。一番の切実な課題が家賃である。
国の家賃低減措置の対象世帯、値上げの状況、県の軽減措置への移行状況、収入超過者の状況、収入超過者は3年間はいいとなっているので、これからも含めて収入超過している方がどのぐらいで、3年過ぎて値上げの対象がどのぐらいいるかも含めて示していただきたい。
【建築住宅課総括課長】
12月末現在の国の家賃特別低減事業の対象世帯数は929世帯で全1354世帯における割合は68.6%となっている。このうち、県の減免制度に移行が可能な世帯は891世帯・65.8%となっている。
釜石市の平田アパートは平成31年2月から、山田町の豊間根アパートは令和元年8月から、供用開始から5年が経過し家賃が段階的に上がっていく対象団地になっている。
収入超過者については、12月末現在で、未申告者を除く収入超過者認定世帯数は41世帯となっている。
【斉藤委員】
国の特別家賃低減事業は5年間軽減で6年目から値上がっていくが、この6年目からの値上がりに悲鳴が上がっている。岩手県や被災市町村は、国の減免とほぼ同等の減免制度を持っているので、これはきちんとそうした制度を徹底していただきたい。
切実なのは収入超過者で、実際に県の災害公営住宅で収入基準を超えているのは165世帯ある。うち一般が144世帯で、3年経過すると4年目から値上がる。もう4年目になっているのが48世帯である。この方々は、例えば、収入基準が15万8千円〜18万6千円の方は、3年間は39600円である。4年目は47100円、5年目は54700円、8年目77400円と。実に倍近くに上がる。こうなったら災害公営住宅を出て行ってくださいというものである。災害公営住宅というのは、15万8千円の政令月収を超えても入居できる。しかし収入超過者は4年目から家賃が値上がり、倍近くまでに至ってしまう。これではやっていけない。すでにそういう理由で退去者が出ている。みどり町の災害公営住宅で、40代の自治会の主要なメンバーの方が収入超過者になり退去を決めたと。自治会はもう支えられないと悲鳴が出ている。
そこで、中堅所得層も収入超過者も安心して生活できるような災害公営住宅にすべきである。陸前高田市は、みなし特定公共賃貸住宅という制度を国交省の了解も得てやっている。中堅所得層も収入超過者も居住を継続できる制度で去年の5月から導入している。県営災害公営住宅もこうした措置をとり、災害公営住宅から事実上退去させるようなやり方は絶対にやってはならないと思うがいかがか。
【建築住宅課総括課長】
収入未申告者を除く収入超過者世帯は41世帯あるが、県では、沿岸部における民間賃貸住宅が不足しているということに鑑み、災害公営住宅の入居世帯が収入基準を超過した場合でも、直ちに明け渡しということではなく、引き続き入居していただくことが可能というような取り扱いをしている。また、入居後3年が経過した後に収入基準を超過している世帯については、当該住宅の建設費をもとに算定される家賃が適用されるが、復興事業の集中等による建設費の上昇などにより、一部の団地が高額となることから、入居者間の公平性を確保するということで、家賃の上限を設け、超過分を減免する制度を実施している。
陸前高田市が行っている中堅所得者向けに災害公営住宅の一部を提供する「みなし特定公共賃貸住宅」の導入にあたっては、国との協議の上で一般公営住宅としての活用が認められたところで、その上で空き住戸状態が継続していること、それぞれの市町村内に中堅所得者向けの賃貸住宅が不足しているといったことで、公営住宅の本来の趣旨が保たれるような活用が要件とされている。
県管理の沿岸の災害公営住宅においては、昨年8月から先月までに全県を対象とした3回の追加募集を行ったところである。これまでの結果に基づき、県内全域において被災された方の入居に対応できているかどうかを判断した上で、空き室への一般募集の具体化を検討していきたい。
県によるみなし特定公共賃貸住宅の制度の導入については、一般公営住宅として運用した上で、入居者のニーズや市町村等の意見を参考にしながら検討していきたい。
【斉藤委員】
みなし特定公共賃貸住宅は陸前高田市がやったのだから。同じ市内にある県営栃ヶ沢アパートでもやるべきである。いま収入超過者が退去している実態がある。それで若い世代がいなくなり、自治会が支えられなくなって悲鳴が上がっている。早急に一般入居をやって、そしてみなし特定公共賃貸住宅の制度を導入すべきである。家賃が値上がり退去が迫られ、時間との勝負なのだから。今後の取り組み方向をはっきり示していただきたい。
【県土整備部長】
一般公募について速やかに検討を進めさせていただきたい。その後に、みなし特定公共賃貸住宅の制度導入についても検討させていただきたい。