2020年6月11日 臨時県議会本会議
新型コロナ対策 第三次補正予算案に対する質疑
(大要)


1.県の検査方針、検査体制、感染防止戦略について

【斉藤議員】
 日本共産党の斉藤信でございます。議案第1号、2020年度岩手県一般会計補正予算(第3号)について達増知事に質問します。
 今回の補正予算は、245億円に及ぶものであります。現在、国会で審議されている新型コロナウイルス対策の国の第二次補正予算に対応するものであります。国の対策はあまりにも遅く、必要な支援策が届かないという重大な問題を抱えていますが、今回の第二次補正は、国民の声と運動、野党による提言と国会論戦が一定反映したものとなっています。これを踏まえて、岩手県として思い切った対策、支援策の具体化が求められています。
 新型コロナウイルス感染の状況は、6月10日現在、世界では感染者が725万人、死者は41万人を超えて拡大しています。4月30日の臨時議会以降、40日間で感染者は420万人、死者は21万人も増加しています。国内の感染者は1万7255人、死者925人で、感染者は40日間で3150人、死者では490人の倍増となっています。世界的な大流行が続き、国内でも市中感染が続いています。
 こうした中で、岩手県内では感染確認者がいまだに出ていないことは国内外から注目されています。何よりも県民一人一人が危機意識をもって誠実に感染防止に取り組んできた結果だと思います。知事をはじめ行政・医療関係者の献身的な取り組みにも敬意を表します。
 新型コロナウイルス感染の第二波が予想される中で、第一に求められていることは、検査体制の抜本的な強化で、感染者の早期発見、早期対応をめざす積極的感染拡大防止戦略に転換することであります。
 達増知事は5月11日に、18道県の知事の連名で「感染拡大を防止しながら1日も早く経済・社会活動を正常化し、日常を取り戻すための緊急提言」を行いました。その中で、「PCR検査をはじめとする検査を大規模に拡大することにより、早期に感染者を発見するとともに、接触者を徹底的に調査して感染を囲い込みつつ、感染者の重症度に応じた適切な施設での治療・療養により、感染の拡大を徹底的に防止することが重要である」「有症者に対して受動的に検査を行うのではなく、発想を転換し、偽陰性者及び擬陽性者に配慮しつつ、感染者を効率よく発見するために、適切に検査対象者を設定して検査を大規模に行い…先手を打って感染拡大を防止」すべきと提言しています。
 岩手県の検査方針、積極的感染拡大防止戦略はどうなっているでしょうか。今回の第三次補正ではどう具体化されているでしょうか。この間のPCR検査件数の実績・推移を含めて示していただきたい。
 検査体制を強化するうえで、発熱外来(地域外来・検査センター)の整備は極めて重要です。設置状況と今後の設置の見通し、運営費の内訳、これまでの検査件数を示して下さい。

【達増知事】
 検査方針等については、県ではこれまでPCR検査を拡大するため、環境保健研究センターに検査機器を増設するとともに、民間検査機関への委託を進めた結果、検査件数は3月の60件から5月には318件、うち民間検査件数は3月の3件から5月は206件へと増加しています。また、5月26日に改定した岩手県新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針では、感染が拡大した場合に備え検査機能の強化に取り組むこととし、医師が必要と認める検査を実施するほか、PCR検査等を実施する体制の充実、民間検査機関等の活用や集団発生の把握の強化を掲げているところであります。
 この方針を踏まえて今回の補正予算案では、ドライブスルー方式等の導入による地域外来・検査センターの整備促進、医療機関および県内民間検査機関におけるPCR検査機器の導入促進、妊婦に対する分娩前PCR検査の支援等の必要経費を計上したところであり、今後も検査体制を充実させ、感染者の早期発見による感染拡大防止に努めてまいります。
【保健福祉部長】
 地域外来・検査センターの設置状況については、5月18日に両磐医療圏と宮古医療圏、6月4日に胆江医療圏、6月9日に釜石医療圏、6月10日に盛岡医療圏の5医療圏において運用開始されました。その他の医療圏においても、中部医療圏の北上市において予算措置したほか、花巻市においては設置に向けて補正予算を提案済みであり、気仙医療圏の大船渡市、二戸医療圏の二戸市、久慈医療圏の久慈市においても、医師会・関係自治体等と設置に向けて調整が進められております。
 運営費の内訳については、1箇所の1月当たりの費用として、人件費、民間検査委託料、医療従事者にかかる保険料等の運営費用として446万1千円、診療報酬の収入を345万4千円としてその差額を今回の補正予算案に計上したところです。
 これまでに開設した地域外来・検査センターにおいては、6月10日現在で25件の検査を実施しております。

2.医療体制の強化について

【斉藤議員】
 第二に、医療体制の強化について質問します。
 今回の第三次補正で医療体制はどう強化・拡充されるのでしょうか。6月9日の第3回県新型コロナ医療体制検討委員会では、感染者を重点的に受け入れる重点医療機関・病棟の整備を検討するとしていますが、その内容と見通しを示して下さい。
 医療体制の問題では、新型コロナ感染者が出ていない県内の病院・医療機関でも、受診抑制等によって患者が減少し、大幅な減収となっています。県立病院の場合は4月には3億円の減収とのことです。全国自治体病院協議会の全国調査では、陽性患者を受け入れた病院は4月には平均8118万円の赤字、陽性患者の受け入れがない病院は2129万円の赤字となっています。日本病院会等の調査でも、コロナ受け入れがない病院でも62.3%の病院が赤字となっています。新型コロナ感染の第二波に対応するためにも、医療機関の減収を補てんし、医療体制の強化・拡充が必要と考えます。県内の医療機関の実態をどう把握されているでしょうか。国の第二次補正の10兆円の予備費の活用を求めることを含め、対策を講じるべきと考えますが知事の考えをお聞きします。

【達増知事】
 医療機関の減収の実態と対策については、岩手県保険医協会が県内開業医を対象に実施した調査によると、医科の83%、歯科の58%において「4月の保険診療収入が前年よりも減少した」と答えています。また、4月の県立病院収支は前年同月比で3億1千万円余の減収となっています。県内の多くの医療機関において患者の受診控えや院内感染対策のコスト増加等により経営状況が悪化していると認識しております。
 医療機関の経営悪化の状況を踏まえ、国では無利子・無担保融資の拡充などの対策を講じることとしており、県の補正予算案においても医療機関の感染症対策のコスト負担軽減のため、院内感染対策への支援事業や、陽性患者を受け入れる医療機関に対する空床確保などの経費を計上しているところであります。また、さらなる支援の充実のため、県の政府予算提言要望において、診療報酬の引き上げや新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金の拡充などについて要望しているほか、全国知事会においても国に対して医療機関の経営安定化に向けた措置を求めているところです。
 今後の新型コロナウイルス感染症の感染拡大に備え、本県の地域医療体制を確保していくため、引き続き国に対して強く要請を行ってまいります。
【保健福祉部長】
 新型コロナウイルス感染症への対応として緊急に必要となる感染拡大防止や医療体制の整備等について、国の新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金を活用し、感染症患者受け入れのための病床の確保、救急・周産期・小児医療機関等の設備整備や院内感染拡大防止、医師が感染により診療を行えなくなった場合の代診医の派遣、帰宅が困難な医療従事者が宿泊施設に宿泊する場合の支援などに要する経費を計上したところであります。
 重点医療機関・病棟の整備については、5月25日に全国で緊急事態解除宣言がなされたところでありますが、5月30日付で厚労省新型コロナウイルス感染症対策推進本部から、再び感染が大きく拡大する局面を見据えた医療提供体制の維持・整備に取り組むよう通知があったところであります。このことから、6月9日に開催した第3回岩手県新型コロナウイルス感染症医療体制検討委員会において、大規模クラスター発生などに対応し、感染者を重点的に受け入れる医療機関となる重点医療機関の設置について議論したところであり、今後設置に向けて検討していくことを確認しました。限りある医療資源を有効に活用し、本県における感染者の受け入れと一般医療の両立ができる体制を構築するため、重点医療機関・病棟の設置について関係機関と調整を進めてまいります。

3.地域経済と雇用対策について

【斉藤議員】
 第三に、地域経済と雇用対策について質問します。
 県内地域経済と雇用危機の状況をどう把握されているでしょうか。
 県の第三次補正予算案では、@「地域企業経営継続支援事業費補助」の予算が35億円余盛り込まれました。家賃補助は、対象事業者の基準を「3か月間の売り上げで30%以上の減少」と条件が緩和されました。これによって対象事業者と補助額はどう拡大されるでしょうか。実施する市町村はどうなっているでしょうか。感染症対策補助として1店舗当たり上限10万円の補助の要件と対象事業者どうなるでしょうか。A「観光宿泊施設緊急対策事業費」が19億円余盛り込まれました。思い切った支援策と高く評価します。具体的な内容について示して下さい。宿泊応援割に取り組む市町村はどうなっているでしょうか。B「買うなら岩手のもの運動展開事業費」に9000万円余計上されています。その内容を示して下さい。C「商工業小規模経営支援事業費補助」として1億6700万円余計上されています。商工会議所及び商工会の相談体制の強化等に要する経費ですが、支援の具体的な内容を示して下さい。
 雇用危機が深刻となっています。4月の労働力調査では、全国で非正規労働者が97万人減少し、休業者597万人となっています。県内の解雇の見通しは6月5日現在で235人となっています。雇用を守るうえで、雇用調整助成金の活用は極めて重要です。これまでの相談、計画届受理、申請、支給決定の状況はどうなっているでしょうか。事前審査を事後審査にするなど制度の抜本的な改善が必要と考えますが、県はどう対応されてきたでしょうか。

【商工労働観光部長】
 家賃補助については、これまでは「1ヶ月の売り上げが前年同月比で50%以上減少した県内中小企業者」を対象としておりましたが、今回「連続する3ヶ月の売り上げが前年同期比で30%以上減少した県内中小企業者」にも対象を拡大することとしたところであります。これにより対象事業者数は約4000者増加し、全体で約9000者となる見込みです。県が負担する補助額は5億4千万円余の増額となり、全体で11億7千万円余となります。現時点で申請の受付を開始したのは25市町村となっており、他の市町村においても順次実施する方針と聞いております。
 感染症対策にかかる補助事業については、対象店舗等における感染症対策や飲食店における業態転換にともなう施設設備の改修、備品の購入等にかかる経費として1店舗当たり10万円を上限に補助率10分の10の定額補助としているところであります。また、対象事業者については、不特定多数の人が集まる来店型の店舗等における感染症対策の徹底を図るため、飲食業・小売業・サービス業・鉄道・道路旅客運送業を対象としているところであり、約3万者の利用を見込んでいるところであります。
 観光宿泊施設緊急対策事業費については、新型コロナウイルス感染症により厳しい経営を余儀なくされている宿泊事業者にたいし、感染症対策に必要な設備の整備等の支援や、県内における宿泊需要の喚起等を行い、その経営を支援しようとするものであります。具体的事業内容は、県内の宿泊施設を利用する県民の宿泊料にたいし、1泊当たり2千円を助成するとともに、市町村の行う地元の宿泊施設を利用する住民の宿泊料の助成に要する経費に対する2分の1の補助の上限額を1000円から2000円に引き上げようとするものであります。
 また、みちのくいわて観光立県第3期基本計画における観光振興に関する施策の趣旨に沿って生産性向上等の取り組みに関する独自計画を策定し実施しようとする宿泊事業者にたいし、1施設当たり100万円の支援金を支給しようとするものであります。さらに、宿泊事業者が行う新型コロナウイルス感染症対策に必要な設備の整備等に要する経費の3分の2―1施設当たり200万円を上限に補助しようとするものであります。このうち、いわゆる「地元の宿応援割」の実施市町村数は4市町村、実施に向けて検討している市町村は9市町村と把握しています。引き続き多くの市町村において実施されるよう働きかけてまいります。
 買うなら岩手のもの運動展開事業費については、新型コロナウイルス感染症の影響により物産展の相次ぐ中止や観光客の大幅な減少、さらには大都市圏の百貨店やアンテナショップの休業等も加わり、土産品や工芸品などを扱う地場産業事業者を中心に大幅な売り上げ減少が発生しておりますことから、紙面やネットを活用した販売機会の提供と新たな販路の開拓を支援しようとするものであります。具体的には、新聞折込チラシやネット通販サイト等を活用したバーチャル物産展を開催し、この物産展で顧客が県産品を購入する際、商品価格の3割相当の割引を実施するものであります。さらに、需要が減少している日本酒の消費拡大を図るため、岩手の酒と三陸の食を組み合わせた魅力発信のイベントをオンライン形式で開催するものであります。
 商工業小規模事業経営支援事業費補助については、商工会議所や商工会には、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている事業者から、資金繰りや各種支援制度の申請手続き等に関する相談が急増しており、経営指導員等が対応するとともに、専門的なアドバイスが必要な場合には専門家派遣を行っているところであります。これら事業者からの相談にさらに迅速に対応するため、経営指導員に加え、各商工会議所・商工会に窓口相談対応を行うスタッフ1名を新たに配置するための人件費や、専門家派遣の回数を増やすための経費などを今回の補正予算案に盛り込ませていただいたところであります。
 雇用調整助成金については、6月5日現在で相談件数は5243件、休業にかかる計画届受理が836件、支給申請書受理が586件、支給決定が310件と聞いております。国では、これまで数次にわたり申請手続きの簡素化を図ってきたところであり、5月19日から休業計画届の提出を不要としたこと、助成額算定方法を大幅に簡略化するとともに、小規模事業主向け支給申請マニュアルを作成するなど、事業者の申請手続きの負担軽減と支給事務の一層の迅速化を図っているところであります。
 県においては、資金繰りに不安のある事業者が躊躇なく休業手当の支給をすることができるよう、休業手当支給前の助成金申請を可能とし、概算払いの導入や定額支給を検討するよう全国知事会を通じて提言しているところであります。

<再質問>

【斉藤議員】
 知事に質問します。新型コロナ感染対策は長期にわたる課題であります。「新しい生活様式」への移行が求められていますが、これは、国民や事業者等への新たな自粛の要請でもあります。県民・事業者等へのくらしと経営を守る支援は1回きりではなく、継続的な支援が必要と考えますが、今後の見通しを含めて県の対応を示して下さい。

【達増知事】
 5月25日に全国で緊急事態解除宣言がなされましたが、新型コロナウイルス感染症への対応は、国の専門家会議において「長丁場を覚悟しなければならない」と指摘されています。この「長丁場」に対応するためには、「新しい生活様式」に沿って生活や仕事、学びの場で感染防止策を徹底的に講じ、感染拡大防止と社会経済活動の維持を両立させる必要があります。県は市町村・関係団体等と連携しながら、県民の皆さんが生活や仕事、学びの場で感染防止策を講じることを支援し、国の第二次補正予算などを踏まえ、医療提供体制を充実する取り組み、日常生活を支える取り組み、地域経済活動の回復に向けた取り組みなど、総合的に対策を取りまとめ、今般補正予算案を提案したところであります。
 昨日、国に対して緊急要望を行ったところであり、今後も国の対応を見据えながら、県としても適時適切に対応してまいります。

【斉藤議員】
 雇用危機が極めて切実な課題となっています。すでに全国的には非正規労働者が97万人減少、多くが雇い止め・解雇だと思います。そして、休業者が597万人です。この雇用を守ることがいま切実な課題ですが、解雇・離職者を出さない緊急の雇用対策が必要と考えます。県の対応策を示して下さい。

【商工労働観光部長】
 県では、雇用調整助成金の特例措置等を最大限活用し雇用の維持に努めていただくよう、4月と5月の2回にわたり県内各経済団体に対し要請活動を行ったところであります。また、各広域振興局においても、地域の商工団体等に対して要請活動を行うとともに、事業所訪問の際に各種支援制度を紹介しながら、安定的な雇用維持確保に向けた働きかけをしているところであります。引き続き雇用調整助成金の周知や活用促進を図りながら、雇用の維持を働きかけてまいります。
 また、本議会に提案している家賃補助、買うなら岩手のもの運動展開事業、観光宿泊事業者に対する支援等を十分に活用いただくことにより、県内企業の経営の安定を図り、雇用の維持につなげてまいりたいと考えております。

【斉藤議員】
 地方創生臨時交付金が国の第二次補正で2兆円盛り込まれました。県の第三次補正までに臨時交付金の活用はどうなっているでしょうか。聞くところによれば、第一次の臨時交付金もまだ県・市町村に届いていないと。いま深刻な状況のもとで、県も市町村も新型コロナ対策のさまざまな事業を進めている中で、国から財源が届かないことはまったく異常なことだと思います。第一次の臨時交付金はいつ交付される見通しなのでしょうか。今後の見通し、第二次補正での臨時交付金の今後の活用の見通しを含めて示して下さい。

【総務部長】
 本臨時会に提案しております第3号補正予算案と、すでに4月に議決いただいた第2号補正予算において計上しております臨時交付金の合計額は109億4400万円余となっております。内訳は、単独事業分として83億1500万円余、国庫補助事業の地方負担分として26億2900万円余となっております。
 国からの交付時期等については、国からは、単独事業分の本県への交付限度額として58億9300万円が示されており、6月中に交付決定がなされる見込みとなっております。
 また、二次補正予算案に盛り込まれました交付金の2兆円の増額により、本県への交付限度額がどの程度引き上げられるかは現時点では不明でありますが、今回の県の第3号補正予算案に盛り込んだ対策を確実に実施していけるよう引き続き国に対して本県の地域事情等を踏まえた十分な額の確実な交付を求めてまいります。