2020年7月2日 文教委員会
教育委員会に対する質疑
(大要)


・教員の働き方改革について

【斉藤委員】
 議案第6号について連合審査できなかったので、教員の働き方改革に関わってお聞きしたい。
 この条例改正は、業務量の適切な管理等に関する指針の策定に基づいて「月45時間、年間360時間」と、教育委員会の規則で定めようとするものである。
 そこで今の教員の勤務実態について、45時間を超える実態、80時間、100時間を超える教員の実態はどうなっているか。

【教職員課総括課長】
 昨年度の状況で、45時間以上の教員の割合は27.5%、80時間以上は8.8%となっている。

【斉藤委員】
 今の数字は県立学校だけですね。実数ではどうなるか。

【教職員課総括課長】
 実数について手元に資料はないが、割合は先ほど申し上げた通りである。

【斉藤委員】
 人事委員会の調査と比べると県教委の数は少なく出ていて、それが不思議でならないが、いずれにしても45時間以上が27.5%、80時間以上が8.8%と10人に1人弱のところで過労死基準を超える状況にある。
 そこで、教育委員会規則に「月45時間、年間360時間」と規定した場合に、どういう効果が見込まれるか。

【教職員課総括課長】
 今回の条例改正に合わせて、県教委では教育委員会規則を新たに定める予定としている。その規則では、県立学校教員の勤務時間から正規の勤務時間を除いた時間の上限を「月45時間、年間360時間」の範囲内とするために、教育委員会が業務量の適切な管理を行う旨を規定する予定としている。
 これを実現するため県教委としては、すでに策定し取り組んでいる働き方改革プランの取り組みをより一層進めていきたいと考えている。

【斉藤委員】
 この間タイムカードも実施され、私が取り上げてきた範囲では教員の勤務時間は減少するどころか増えてきたのが実態だと思うが、どうとらえているか。

【教職員課総括課長】
 働き方改革プランに基づき、例えば学校閉庁日の設定、各種学校行事の見直しなどを進めている。勤務時間の状況については、たしかに平成30年度については前年度より増えたが、令和元年度の8.8%については前年度が9.6%だったので、平成30年度から取り組んでいる働き方改革の取り組みの成果がやや出始めていると考えている。

【斉藤委員】
 今まで規則がなかったものが定められるということは一歩前進、半歩前進かとは思うが、肝心なのは、民間の場合は月45時間、年間360時間を超えると罰則がある。そういう強制力がある。しかし教員の場合は、地方公務員もそうだが罰則がない。ましてや教員の場合は、超過勤務という規定がないために、45時間を超えて働いても超過勤務手当はまったく出ない。守るメリットがない。そういう意味でいくと、給特法、国の法律自身の重大な欠陥である。超過勤務という概念をなくしてしまった。これは1970年代に、当時の残業時間を算定して調整率を4%にしたと。しかし今もうその2倍3倍超過勤務をしているわけで、法律の根本的な欠陥だと思うが、やはり規則で定めるのならそれにふさわしい強制力がないと、条例に基づく規則というのも欠陥なのではないかと思う。その点はぜひ国に対して、教員も他の労働者と同じように、超過勤務手当の対象とすべきだと思うがいかがか。

【教職員課総括課長】
 今回の給特法の改正にあたっては、国で中教審の答申を受けており、中教審の中でも議論されている。答申の中では、「現在の長時間勤務を是としたまま、ただちに現行の給特法の規定する超勤4項目の廃止だとか、調整額の見直しなどをするのは、現状を追認する結果となり、働き方の改善につながらないのではないか。また日々変化する目の前の子どもたちに臨時応変に対応しなければならない学校において、現実的に対応可能か、などの観点を踏まえる必要がある」というような議論があり、結果的に国では法改正等の対応はとらなかったと承知している。

【斉藤委員】
 政府の見解を代弁しても答弁にならない。国に強く求めるべきだと聞いたので。だいたい80時間を超えて働いても超過勤務手当が1円も出ないということは異常である。命賭けて働いているときに。
 それで給特法の改正の中には、1年単位の変形労働時間制の適用というのがあった。今回の条例改正にはそれが入っていない。そもそも、先ほど答弁あったように、45時間以上が27.5%、80時間以上が8.8%という長時間労働の実態がある中で、変形労働時間制というものは全く導入する前提・根拠がないと思うがいかがか。

【教職員課総括課長】
 1年単位の変形労働時間制については、国から運用についての通知があるとのことだが、まだない。国からの通知の内容を確認し、慎重に検討したいと考えている。

【斉藤委員】
 質問に答えてほしいのだが、国の指針があるかないかではなく、これだけの長時間労働の実態があったら、変形労働時間制を導入する前提がないではないかと。

【教職員課総括課長】
 繰り返しになるが、今回の変形労働時間制について、具体的内容についてまだ国からの通知がないので、通知を確認して検討したい。

【斉藤委員】
 労働基準法では、そういう長時間労働の実態があったら導入できないとなっている。私の質問に答えていない。

・学校における新型コロナウイルス対策について

【斉藤委員】
 マスクの着用と熱中症対策についてどのように取り組むのか。
 小中高の修学旅行の計画は具体的にどうなっているか。中止したところがあるのか。どういう形で変更になっているか。
 コロナ禍の中で経済も大きく落ち込んで、高校生の求人も大幅に減っている。しかし、リーマンショックの時には県内就職率が一番高かった。県内も厳しいが、こういう時こそ県内就職率を高める好機という立場で、今まで以上の取り組みをすることが必要ではないか。

【保健体育課総括課長】
 熱中症対策については、毎年県立学校等にたいし、こまめな水分や塩分の補給をすること、休憩をとること、熱中症の疑いがある症状が見られた場合など万全の対策を行うよう通知している。
 今年度においては、この熱中症対策と新型コロナウイルス感染症対策を合わせて進めていかなければならないという状況にある。マスクの着用については、熱中症などの健康被害が発生する可能性が高いと判断した場合にはマスクを外すように指導するなど、熱中症への対応を優先することとしている。児童生徒の本人自身の判断で適切に対応できるような指導の徹底についても通知したところである。
【義務教育課長】
 修学旅行については、県立高校については現時点では、一部行き先等について検討している学校もあるが、延期や中止の情報はなく実施する方向である。
 小中学校においては、現時点で中止の判断はなく、延期について、小学校が302校中7割程度、中学校が151校中6割程度である。
【学校調整課総括課長】
 新規高卒者の就職対策について。新規高卒者の求人情報については、新型コロナウイルス感染症の影響により、県全体で求人件数・求人数ともに減少となっている。また今年度は、ウェブによる説明会や採用試験を検討している県内企業があるとの情報もあり、各学校において可能な限り対応する必要があると考えている。
 生徒の企業についての理解を深めることは、就職希望先を決定するうえで必要であることから、感染症対策をしっかりと行いながら、企業説明会や企業訪問の実施が望ましいと考えている。県教委としては、岩手労働局や各地域のハローワーク、振興局の就業支援員等と連携しながら、状況に応じて生徒の就職を支援している。

【斉藤委員】
 マスク着用については、熱中症対策を優先するという答弁があったので、マスクの着用も、スポーツ協会の答弁が先ほどあったが、会話がない場合には外しても良いと。ただ、これを個々の生徒の判断にしたらできない。だから、担任や教科の先生が状況を見ながら、会話のない状況ならマスクを外すということをやらないと大変だと思う。そういうことが定着してくれば、生徒もどういうときに外すことができるか分かると思うので、ぜひ柔軟にやっていただきたい。

・子どもの生活実態調査―授業の理解度について

【斉藤委員】
 子どもの生活実態調査について、かなり時間をかけて分厚い報告書が出された。それに基づいて、環境福祉委員会でも、子どもの貧困対策推進計画、岩手県子どもの幸せ応援計画というものが、ほぼ最終案だと思うが報告されたと思う。
 ここで大変注目したのは、子どもの授業の理解度に関する調査で、収入の中央値の2分の1未満の場合、「全体が分かる」「だいたいが分かる」子どもの割合は71%。そうすると3割近くが「よく分からない」ということになる。中央値未満の74.4%が「分かる」、中央値以上は83%。やはりこの所得水準で教育格差が明確に表われている。特に中央値の2分の1未満は約3割が「分からない」と。きわめて深刻だと思う。
 実は、重点施策の第一はどうなっているかというと、「子どもの授業の理解度に関する支援」となっている。そこでは、「家庭で落ち着いて学習できる環境をつくる」ことと合わせて、「学校において、子どもが家庭環境に左右されることなく、学力を身につけることができるよう、たしかな学力を育成するためのきめ細かな指導を推進します」となっている。約3割近くが「よく分からない」という深刻な実態を、どのように学校として、誰一人取り残さないSDGsの立場からも、学校の役割・責任はきわめて重要ではないかと思うが、どう取り組もうとしているか。

【学校教育課総括課長】
 子どもが家庭環境に左右されることなく確かな学力を実現していくためには、分かる授業を全県的に推進していく必要があり、県教委としては、いわて県民計画において「学校授業がよく分かる児童生徒の割合」を指標として掲げ、研修会や専門指導等により子どもたちの実態やつまづきに応じた授業改善の推進に取り組んでいるところである。
 また、基本的な生活習慣の定着と基礎学力の向上を図るため、市町村立小学校にチームティーチングや補充学習等を行う指導員を配置しており、きめ細やかな指導体制の充実に取り組んでいるところである。
 加えて、ギガスクール構想により、小学校におけるICT環境が整備される中、児童生徒の定着度等に応じた個別最適化された学びの推進についても、市町村教委と連携して取り組んでいきたい。

【斉藤委員】
 重点施策の第二は、「子どもの就学に関する支援」で、ここでは「スクールソーシャルワーカーの配置」が提起されている。
 先日県立大学で話を聞いてきたが、県立大の社会福祉学部では、スクールソーシャルワーカーを今養成していると。これは修士課程卒、大学院卒で、来年度から供給できると。おそらくこれは岩手県と県立大の話し合いを通じてソーシャルワーカーの養成が取り組まれてきたと思う。実は社会福祉学部では児童福祉司も養成していて、最近大量に児童福祉司が岩手県に採用されており大きな役割を果たしている。こういう時期にこそ、スクールソーシャルワーカーを専門職として思い切って採用・配置すべきだと。
 福岡市教育委員会は69名のスクールソーシャルワーカーを配置している。これは特別多いわけではなく、中学校区に1人―これが国の方針である。そういう規模で配置すべきではないかと思うが、実態を含めて、今後の見通しについて示していただきたい。

【学校調整課総括課長】
 今年度のスクールソーシャルワーカーの配置状況は、各教育事務所ごとに配置しており、予算上は18名配置としていたが、勤務実態の希望等により21名でカバーしている。県立学校においては、これとは別に、岩手県社会福祉士会に業務委託する形で出張相談・電話相談等に対応いただいている。
 今後の見通しは、スクールソーシャルワーカーの増員については、協力を得られる有資格者が現在きわめて限られているという状況にある。先ほどの21名の方々でも、フルタイムということで厳しい状況にある。
 こうした状況にあるので、数年前から岩手県立大学とスクールソーシャルワーカーの養成について協議し、ようやくこの4月から同大学・大学院において養成を開始している状況である。

【斉藤委員】
 県立大学からの要請に応えて配置するということか。

【学校調整課総括課長】
 卒業までまだ2年あるが、そういった卒業生を活用してまいりたい。