2020年10月13日 9月定例県議会本会議
発議案に対する高田一郎県議の賛成討論
<核兵器禁止条約の批准を求める意見書>
日本共産党の高田一郎でございます。
発議案第1号「核兵器禁止条約の批准を求める意見書」に賛成の討論を行います。
発議案第1号は、@政府が核兵器禁止条約に署名し批准をすることA核保有国に対して核兵器禁止条約への署名と批准の手続きを進めるよう促すこと―であります。これは被爆者及び核廃絶を願う多くの県民の声です。
2017年に国連で採択された核兵器禁止条約は、人類の意思を明確に示した条約であり、発効に必要な50ヶ国まであと4ヶ国となりました。いよいよ核兵器禁止に向けたカウントダウンになるもとで、年内発効も見通せるようになりました。発効ということになれば、核兵器は法的に違法となり、核兵器保有国を政治的・道義的に追い詰め、核兵器廃絶に追い込む新たな段階に入ることは間違いありません。日本政府が被ばくの実像を訴え、核兵器廃絶の先頭に立つこと―これは唯一の被爆国に課せられた大事な責務だと思います。
ところが今、被爆者が怒りを募らせているのが、唯一の被爆国である日本政府が核兵器廃絶に背を向けていることです。
今年8月の広島、長崎式典での安倍前総理のあいさつでは、核兵器禁止条約には一言も触れず、繰り返したのは「立場の異なる国々の橋渡しに努める」ということだけでした。しかしこの「橋渡し」は全く欺瞞と言わなければなりません。
第一に、そもそも日本政府は「核のない世界」という言葉を口先で言いますが、それを実現する立場にはありません。日本政府が「橋渡し」として国連総会に提出した核兵器問題の決議では、核兵器廃絶を「究極目標」と位置づけ、永遠の将来に先送りする立場をあからさまにしました。また、核兵器禁止条約への参加は「核抑止力の正当性を損なう」と繰り返し、核兵器保有国がよりどころとする「核抑止力論」にしがみついています。「核抑止力論」は、核兵器を「使用するぞ」と言って脅して止めさせる、脅しで要求を貫くものです。核兵器は人道に反する非人道的な兵器であり、核兵器の危機を排除するには核廃絶以外にありません。
第二に、そもそも核兵器をめぐる国際政治の構図は、「核兵器廃絶」か「核兵器固執化」の対決になっています。この両者は立場を180度異にしています。その間に「橋渡しする」ことなどできません。これまでの「核兵器のない世界」をうたいながら核兵器廃絶を「究極目標」として将来に先送りする姿勢は、核戦力の維持・強化を図る核保有国大国の意向に沿ったものとなっています。
今あの原爆投下でかろうじて生き残った被爆者は、健康被害に苦しみながら、自らの体験を語り、核兵器廃絶を訴えてきました。被爆者の高齢化は進み、平均年齢は83才。今「生きているうちに核兵器廃絶を」との悲痛な願いは一層重みを増しています。
いまヒバクシャ国際署名は、県内では20万筆を超え、全国では1261万2798人になり、今月6日国連に提出されました。日本世論調査会の世論調査(7月実施)では、72%が「核兵器禁止条約を批准すべきだ」と回答しています。県内では、県議会と33市町村議会のすべての議会で「核兵器禁止条約の批准を求める請願」を採択しています。日本政府は、こうした被爆者や核廃絶を願う県民の声を真摯に受け止め実現に取り組むことこそ「国民のために働く内閣」ではないでしょうか。
私たちは、広島・長崎の被爆から75周年の夏を新型コロナ・パンデミックの下で迎えました。パンデミックが明らかにしたものの一つは、軍事力、とりわけ核兵器がウイルスと戦ううえで何の意味も持たなかったことであります。いま、世界の核兵器保有9ヶ国の核兵器予算は年間7.6兆円と言われています。これだけのお金があれば、医師・看護師などの医療従事者を100万人以上増やすことができます。パンデミックを収束させるために国境を越えて力を合わせること、そして核兵器予算を削り、医療をはじめとするケアに、暮らしに、途上国に、一人一人の命と尊厳を守るために充てることこそ必要な時代ではないではないでしょうか。
以上の理由から発議案第1号に賛成するものです。ご清聴ありがとうございました。