2020年10月14日 決算特別委員会
高田一郎県議の総括質疑(大要)
1.子どもの貧困対策について
【高田一郎議員】
子供の貧困対策について質問します。昨年県は大規模な子どもの生活実態調査を行ない、7月に「子どもの幸せ応援計画」を策定しました。これまでの子どもの貧困対応をどう総括されているのか、また今後取り組む基本姿勢をまず示してください。
【達増知事】
「子どもの幸せ応援計画」についてでありますが、「岩手県子どもの幸せ応援計画」の策定にあたり実施した「岩手県子どもの生活実態調査」では、特に母子家庭において厳しい生活実態が浮き彫りになったほか、公的支援施策の周知や活用が十分でないこと、子どもの居場所に対するニーズが高いことなどが明らかになりました。本年7月に策定した計画におきましては、これらに対応するため、子どもの授業の理解度や就学に関する支援などの「教育支援」、子どもの居場所づくりなどの「生活の安定に資するための支援」、ひとり親家庭の保護者の就労支援などの「保護者に対する職業生活の安定と向上に資するための就労支援」、ひとり親家庭等に対する「経済的支援」、「被災児童等に対する支援」の5つを重点施策に掲げ、具体的な推進方策を盛り込んだところであります。この計画に基づいて子どもたちが自分の将来に希望を持ち幸せを感じ理ことができるいわての実現に向けた施策を展開して参ります。
【高田一郎議員】
子どもの生活実態調査では、遠足・修学旅行に行けなかった児童は中央値二分の一未満及び就学援助世帯で36人、給食費等を払えなかった児童は657人にもなっています。同時に朝食を毎日食べる児童は83.1%です。知事はこの実態をどう受け止めているのでしょうか。給食費を払えない、遠足に行けない、朝食を食べられないという実態を改善するため、3つのゼロにどう取り組むのでしょうか。
【達増知事】
給食費や修学旅行等の課題については、全ての子どもに不利益が生じることがないよう、きめ細かに対応すべきことが基本でありますことから、学校と家庭、地域、関係機関が連携し、支援が必要な子どもを早期に把握して、適切な支援につなげることが重要と考えております。「岩手県子どもの幸せ応援計画」の推進に当たっては、持続可能な開発目標「SDGs」の理念であります「誰一人として取り残さない」の視点を盛り込んだところであり、この視点に立って子どもの学校生活等に係る相談体制の充実や、支援につなげる体制の強化、経済的な支援、食育などの取り組みを推進してまいります。
【高田一郎議員】
義務教育である修学旅行に行けない児童があってはならない。実態を把握して取り組んでいただきたい。学力の問題では「学校の授業が分からない」児童は、中央値の二分の一未満が24.6%もなっています。分からない理由は「授業が難しい」57.9%、勉強する気になれない38%であり、授業が分からないまま学校に登校しなければならない、こんなつらいことはないのではないか、「子どもの幸せ応援計画」では教育支援は重点支援の一番目となっていますが、具体的な取り組みが見えてきません。今後の具体的な取り組みについて示してください。
【達増知事】
岩手県子どもの生活実態調査において、収入が中央値の二分の一未満の世帯の子どもでは、授業の理解度が低い傾向が見られたわけであります。その理由としては「授業の内容が難しい」、「苦手・嫌いな教科が多い」と回答した割合が高くなっており、また授業の理解度が低い子どもでは、家で落ち着いて学習することができると感じている割合が低いことも明らかとなっています。これらの課題に対応するため「岩手県子どもの幸せ応援計画」では、学校において確かな学力を育成するためのきめ細かな指導を推進するとともに、家で落ち着いて学習することが難しいと感じている子どもに対しては、市町村や民間と連携し学習を支援する場を充実することにより、子どもが家庭環境に左右されることなく学力を身につけることができるよう支援していくこととしております。
【高田一郎議員】
教育支援については県も具体的な支援をして、この学習支援を全県に広げていく、そういう具体的な取り組みが必要だと思いますが、この点についていかがでしょうか。
【菊池副知事】
ご指摘のような取り組みがいろいろと用意されておりますので、市町村や民間と連携して、様々な展開について、いろんな情報提供したり、技術的な支援をしながら進めていきたいと考えております。
【高田一郎議員】
母子家庭の就労環境は土曜勤務が35.9%不定期を含めると79%、日曜出勤は18.4%不定期を含めると59.6%にもなっています。そのため子どもに居場所がなく「平日一人」が40.5%にもなっています。これまでも居場所づくりが大事だと指摘してきましたが、「子どもの幸せ応援計画」での基本方向は「子ども食堂を全市町村での取り組みを図る」としており、あまりに不十分ではないでしょうか。
【菊池副知事】
県では子ども食堂を含む「子どもの居場所」の全市町村への拡大を「岩手県子どもの幸せ応援計画」にも位置づけ、「子どもの居場所ネットワークいわて」にコーディネーターを配置し、解説運営に関する支援を行なっていることに加え、県単補助による立ち上げ等の支援を行なっているところでございます。こうした支援の結果児童の多い市部を中心に取り組みが進んできておりまして、令和2年8月末現在では20市町村49ヶ所まで取り組みが拡大してきているところでございます。県としては引き続きこれらの支援施策を実施するとともに、市町村等関係機関と連携し広く県民の理解と参画を促しながら、全市町村への取り組みを拡大していきたいと考えております。
【高田一郎議員】
子ども食堂は、滋賀県は現在132ヶ所(300ヶ所目標、歩いて通える場所)、沖縄県144ヶ所になっています。「全市町村」ではなくせめて中学校区などを目指して取り組むべきでないか。
【菊池副知事】
子ども食堂のさらなる拡大についてでありますが、岩手県子どもの生活実態調査では「住んでいる学区内」での子ども食堂の実施に対するニーズが高いことが明らかとなっております。子ども食堂などの「子どもの居場所」は、様々な事情を抱える子どもが安心して過ごせる場であるとともに、家で落ち着いて学習することが難しいと感じている子どもに対する学習支援の場としても有効な取り組みと考えており、より身近な地域において「子どもの居場所」を確保することが望ましいと考えております。このため県としては関係機関と連携し、先ほど御答弁いたしました県補助金の一層の周知や解説可能な施設の情報提供など、積極的な広報活動に努め未実施の市町村において取り組みが行なわれるよう支援していきたいと考えております。
【高田一郎議員】
沖縄県では子どもの貧困対策支援員を全市町村に118人配置しています。子どもの貧困に関する地域の現状把握、学校、NPO法人との情報共有や就学援助、子どもの居場所等の支援に取り組んでいる。また食事、学習、生活指導を受けながら日中や夜間に子どもが安心して過ごすことのできる居場所を運営し、学校と連携し朝食提供や子どもの見守りを実施し、学習姿勢を改善するなどの成果を上げています。こうした取り組みに学ぶべきでないか。
【菊池副知事】
子どもの貧困対策の関係で沖縄の例を挙げられてのお話でございますが、まず委員御紹介の取り組みにつきましては、内閣府が「沖縄県特有の子どもを取り巻く厳しい状況」を踏まえて、内閣府沖縄振興局により実施されているものと承知しております。本県では市町村ごとに設置している、子どもの安全確保と人権擁護を総合的にコーディネートする要保護児童対策地域協議会において、民生児童委員など地域の支援者が支援が必要な子どもたちの状況を共有し、学校や関係機関等と連携し適切な支援につなげているところでございます。今後におきましても本年度策定した「岩手県子どもの幸せ応援計画」に基づき、教育の支援や生活の安定に資するための支援など、子どもの貧困対策のための施策を推進してまいる考えでございます。
【高田一郎議員】
「子どもの幸せ応援計画」を推進する体制を抜本的に強化拡充すべきです。子どもの貧困対策に取り組む部署を新設し、知事が本部長に対策本部を立ち上げるなどの取り組みが必要ではないか。
【達増知事】
子どもの貧困対策の推進に当たって支援が必要な子供たちを早期に把握し、適切な支援につなげるための教育と福祉の連携強化や、保護者に対する職業生活の安定と向上に資するため就労支援などに取り組んでいく必要があると考えております。本県では、福祉、教育、労働、女性活躍など関係部局で構成する「子供の貧困対策連絡調整会議」を設置しておりまして、まずはこの会議を庁内における子どもの貧困対策の推進組織として、部局峰団的に取り組みを進めていきたいと思います。
2.国民健康保険税について
【高田一郎議員】
次に高すぎる国保税について質問します。中小企業の労働者が加入する協会けんぽと比べれば、年収400万円で子ども2人いる方働きの世帯主が40歳未満の4人家族の場、協会けんぽでは20万円の負担なのに対し同所得の国保では40万の負担になっている。同じ所得であっても2倍の開きがある。不公平な税ではないか。知事はこの数字をどう受け止めているのか。
【達増知事】
国民健康保険は構造的に被保険者の年齢構成が高く療費水準が高いことに加え、年金生活者や無所得世帯の割合が高く所得水準が低いことが、保険税負担が被保険よりも重くなっている原因であると認識しております。現在の国保制度においては国の財政支援の拡充により財政基盤の強化が図られ、保険税負担の伸びの抑制が図られているものの、こうした構造的な課題の解決に対応したものとなっているとは言えないと考えております。このため全国知事会を通じて国に対し国庫負担率の引き上げなど、様々な財政措置の方策を講じ構造的な課題を解決し、医療保険制度間の公平性を確保するとともに、今後の医療費の増嵩に耐え得る財政基盤の安定化を図るよう要望してきたところであります。県といたしましても政府予算提言・要望において、同様の要望を行なっているところであり、今後も他の都道府県と連携しながら財政措置の拡充について、様々な機会を通じて国に働きかけていきたいと思います。
【高田一郎議員】
県内では高すぎる国保税に対して子どもの均等割減免や、一般会計からの繰入(8市町村1億7千万円)となっているが、このような取り組みについて県はどう評価しているのでしょうか。
【達増知事】
これまで国による段階的な公費負担の拡充による国保財政の基盤強化により、県内市町村の法定外繰入は平成27年度の12市町村から令和元年度には8市町村に、金額では6億8千万円から1億7千万円に減少しており、財政の健全化が進んでいるところであります。昨年度に法定外繰入を行なった市町村のなかには、子どもの国保税均等割の免除を目的としたケースが含まれており、子育て支援施策の観点から市町村独自の判断で繰入が行なわれたものと認識していますが、県としては岩手県国保運営方針において、決算補填を目的とした法定外繰入は解消に努める必要があるとしているところであります。本来子どもの均等割り軽減措置等は、個々の市町村が財源負担を行ないながら導入するものではなく、また各自治体の財政力の差などのよらず全国どの地域においても同等な水準で子育て世代の負担解消が行なわれるべきであり、全国知事会を通じて子どもに係る均等割り保険料軽減措置を導入するよう国に要望を行なっているところであります。
【高田一郎議員】
岩手県国民健康保険運営方針素案では「段階的な赤字削減及び決算補填目的とした法定一般会計繰入の解消に努める必要がある」、「保険料は将来的に統一をめざし第2期運営方針機関(令和5年まで)に影響及び課題を協議する」としています。これは国保税の値上げにつながるのではないか。
【菊池副知事】
国保税水準を統一することで過渡的に医療費水準が低い市町村の納付金が増えることになりますが、人口減少等により市町村国保が小規模化する中にあって統一的に納付金や保険税率の不安定化の懸念を払拭することは、国保財政を安定的に運営していくため重要なことであると認識しております。このため市町村と合意の上で保険税水準の統一に向けた議論を進めることとしたものでありまして、統一により医療費水準の低い市町村の納付金増加などの影響について、第2期運営方針の中で検証、協議を行なうこととしております。
【高田一郎議員】
国が5月に示したガイドラインでは「市町村ごとの医療水準や医療提供体制に差があることを留意しつつ、あくまで将来的に保険料水準の統一を目指す」とされている。国保の構造的な問題を解決しないまま、運営方針素案を先にやってしまうことは更なる矛盾が拡大するのではないか。
いま国保税の引き下げ、協会けんぽとの格差を是正していくことに全力を挙げるのが県の役割ではないか。
【菊池副知事】
先ほど知事からご答弁したとおり、国民健康保険制度の構造的に、被保険者の念連行性が高く、医療水準が高いことに加え、年金生活者や無所得せた宇井の割合が高く、所得水準が低いことが、保健税負担が被用者保険よりも重くなっている原因であることを認識しております。今般の国保制度改革においては、国の財政支援の充実により財政基盤の強化が図られ、保険税負担の伸びの抑制が図られているものの必ずしも、こうした構造的な課題解決に結びついていないものと受け止めております。
県としては、国民健康保険制度が国民皆保険を支える重要な役割であることから、国の財政責任の下、安定的な財政基盤を確立することが不可欠であると考えてあると考えておりまして、将来にわたって持続可能な制度となるよう、他の都道府県と連携しながら,国に対し。さらなる財政措置を求めていく考えであります。
【高田一郎議員】
コロナ禍にあって安心して受診できるようにすることが感染拡大を防止することになるのではないか。資格証明書でも受診可能となり傷病手当の支給、減免要綱の拡充など制度上の改善もありました。一時的なものでなく恒常的なものにしていくことが必要だ。
3.障がい者の就労継続支援事業所について
【高田一郎議員】
次に障がい者の就労支援事業所について質問します。障がい者就労支援事業所ではコロナ禍によって厳しい経営を強いられていますが、県は同実態を把握されているのでしょうか。新型コロナウイルス感染対策となる50%以上の売り上げる事業所、「生産活動活性化支援事業」の県内における実績についても示してください。
【菊池副知事】
岩手県社会福祉協議会が実施した本年8月における新型コロナウイルス感染症の影響調査によると、回答があった75事業所のうち6割弱が前年同月比で商品販売や役務・請負業務の売り上げが減収となっており、受注の減少やイベントの中止による販売機会の減少等の影響が出ているものと認識しています。生産活動の再起に向けて必要な費用を助成する「生産活動活性化支援事業」については、国への報告期限であった7月中旬時点で、本事業の助成要件である生産活動収入の前年同月比50%以上減少などに該当するかの見極めが困難だったことから、事業の活用を要望した事業所は4事業所にとどまっている状況にあります。
【高田一郎議員】
活動事業所はわずか4事業所(220事業所中)だ。実態調査では「日々の仕事量が減少し3割、4割減で55%になっている。支援が届かない事業所が殆どではないか。県の支援が必要ではないか。生活保護や地域活動支援センターなどは対象外、就労支援事業所のみで50%以上の減収の要件が厳しいのではないか。
【菊池副知事】
県内事業所からは販売機会の拡大や受注作業の情報提供などのほか「生産活動活性化支援事業」について、感染拡大の影響を踏まえた中長期的な事業継続や生産活動収入の増加に向けて創意工夫し努力している事業所を対象とするなど、拡充を求める要望が出されています。県としては今後より一層官公需の促進や農福連携によるマッチング支援などに取り組み、請負業務の確保や販売の拡大に向け支援を行なっていくとともに、就労継続支援事業所の状況把握に努め、国に対しては「生産活動活性化支援事業」の継続実施や助成要件の緩和などを求めていく考えであります。