2020年10月22日 決算特別委員会
農林水産部(水産関係)に対する質疑
(大要)


・危機的不漁の現状と対策について

【斉藤委員】
 東日本大震災津波からの復興の途上で危機的な不漁に直面している。主要魚種であるサケ、サンマ、スルメイカの生産量、生産額の震災前との比較をパーセンテージだけでいいので示していただきたい。

【漁業調整課長】
 サケについては、生産量は震災前の約1割、金額は約2割となっている。
 サンマについては、生産量は震災前の約2割、金額は約6割となっている。
 スルメイカについては、生産量は震災前の約1割、金額は約4割となっている。

【斉藤委員】
 正確に答えてほしいのだが、サケは生産量で震災前比9%、金額は18%。あなたから資料をもらっているのだから、曖昧ではなく正確な答弁をしていただきたい。サンマは生産量が15%で生産額は61%、スルメイカは生産量が11%、生産額は37%である。大変な危機的な不漁で、昨年度は前年比よりもさらに落ち込んだと。二重の危機的な状況だと思う。
 そこで、その原因の解明はどこまで進んでいるか。県としての対策はどうなっているか。
 サケについては先ほど議論があり、本会議の議論では、北上川のサケの解析の答弁があった。しかし北上川のサケも2〜3割しか戻っていないという話もある。ですから、そういう点も含めてサケについては答えていただきたい。

【漁業調整課長】
 これまでの国や県の調査研究では、サケについては、近年の海洋環境の変動に伴う春先の海水温の上昇等により、放流した稚魚の生残率が低下していることなどが原因と考えられている。
 サンマやスルメイカについては、環境変動による資源量の減少などが原因と考えられている。
 このため県では資源量の回復に向けて、サケについては、計画的な種卵の確保や健康な稚魚の育成・放流に取り組むほか、北上川水系のサケの遺伝子情報等を活用した環境変動に適応する稚魚の生産技術の開発を進めている。
 サンマやスルメイカについては、国等と連携し、漁海況情報の提供や資源管理の推進などに取り組んでいる。

【斉藤委員】
 北上川も2〜3割しか戻っていないと指摘したが、これについてはどうか。

【水産担当技監】
 サケについては大変な状況になっている。委員ご指摘の通り、昨年度は沿岸のみならず、北上川のサケも非常に少なく、中津川のサケの遡上さえ稀にしか見えなかったような状況である。ただその中でも、これまで水産技術センターを中心に、サケの環境変化に対して、高水温に対する耐性の試験研究を進めている中では、北上川の資源は沿岸の資源よりも耐性があるということが分かってきた。ただ、大きな海況変動の中で、これだけサケにとって厳しい環境になった4年前の状況が、岩手のみならず、宮城も青森も、北海道は例年10〜12万トンの半分の5万トンだったと。ですので、太平洋海域全体で同じ現象が起きているという形で、国の研究機関あるいは都道府県の研究機関が同じ認識を持っているところである。そういう状況を踏まえると、全体で非常に厳しい環境であったという状況の中で、これまでの調査の中では、沿岸より北上川水系のサケの方が、その中でもまだ暖かい環境に適応する能力があるというところが分かってきたので、大きな海況変動に対しては、広域的に厳しい状況になるが、ある程度の温暖化に対しては耐性をもつというようなところから、サケの資源の再構築をこれから試験研究の結果を踏まえて進めていく必要があると考えている。

【斉藤委員】
 徹底した解明はぜひやっていただきたいが、おそらく専門家も、今の状況は簡単に変わるものではないということも指摘している。だとすれば、獲れるもので対応すると。やはり魚種転換に真剣に対応することが必要ではないかと思うが、県は、巻き網もかなり岩手の魚市場に呼び込んでやっているわけだが、この魚種転換の取り組みはどうなっているか。

【水産担当技監】
 現在の岩手県の水揚げ状況は、令和元年度の水揚げは10万3千トンで金額で約150億円、前年比で数量は同程度だが金額は下がっている。この中身については、これまで主要魚種のサケやサンマが少なくなって、イワシやサバといった大量に漁獲されて比較的安い魚が揚がっているという現象である。そういう魚種の大きな転換点にあるので、巻き網船の誘致により、水揚げの増強を図るとともに、それが加工原料として使われるように、水産加工業者との勉強会等を開催し、原料転換を啓発しながら、あるいは原料転換を進めようとする企業に対しては、国の補助事業制度等を導入して支援していくという考えで進めている。

【斉藤委員】
 実際に昨年や今年は巻き網船が来ているわけで、水揚げされたもの、イワシやサバは、県内の水産加工でかなり利用されているのか。それともそこから首都圏へという流れなのか。

【水産担当技監】
 水産加工組合等からの聞き取りによると、水揚げされたサバ・イワシの大部分は、一旦県内の加工業者に凍結される。その後の流通はそれぞれによるが、1つは地元で加工原料となる分、もう1つは海外へ輸出される分、それから国内では西日本のマグロとか養殖用のエサとして使われると。あとは缶詰加工や、大きさや時期、脂の乗りによって仕向けが変わっているので、すべて県内の加工業者が使われている状況ではないと聞いている。

【斉藤委員】
 危機的な不漁の中で、やはり即効性のある対策、中長期的に本格的に魚種転換に対応する体制の構築は必要になってくると思うので、ぜひその取り組みを強めていただきたい。
 養殖の関係でも、例えばアワビだったら震災前の生産量で35%、金額で69%、ウニでも生産量で61%、金額で98%と。養殖関係はワカメ・カキ・ホタテはどうなっているか。

【水産担当技監】
 養殖ワカメは、生産量は震災前比59%、養殖コンブは38%、養殖ホタテガイは16%、カキは69%という状況で、いずれも震災前の水準を下回っている。

【斉藤委員】
 養殖の関係も軒並み震災前比で減少しているということで、本当に三陸の沿岸漁業は大変な状況になっていると。

・小型漁船漁業の現状について

【斉藤委員】
 物が獲れない中で、小型漁船漁業の現状はどうなっているか。

【漁業調整課長】
 漁業センサスによると、平成30年における総トン数20トン未満の小型漁船漁業の経営体数は2017経営体と、平成25年に比べて5%減少している。
 小型漁船漁業の経営については、近年のサンマやスルメイカ等の不漁に加え、今年の春のイサダ漁においても、漁獲量が前年比15%にとどまるなど、厳しい状況にあると認識している。

【斉藤委員】
 小型漁船漁業の経営体数は平成20年比で80%になる。
 イサダ漁が前年比で15%に激減した具体的な理由があるのか。

【漁業調整課長】
 現在、水産技術センターでこの原因について調査しているが、隣県においても、コウナゴなどについても減っており、海況に関係するものなのかを今後調べていくところである。

・後継者対策について

【斉藤委員】
 漁業の問題で後継者の育成・養成が大変大事だと思う。先日、新聞報道で陸前高田市が後継者対策で若手の後継者を育てているということが出ていたが、水産アカデミーの取り組みと後継者対策はどうなっているか。

【漁業調整課長】
 平成31年4月に開校した岩手水産アカデミーでは、漁業就業希望者を対象に、漁業の基礎知識や技術のほか、ICTなどの高度な技術の習得を支援することにより、将来の本県漁業をけん引する人材を育成することとしている。平成31年4月に入校した第1期生7名は、令和2年3月に研修を終了しており、全員が県内の定置網やカキ養殖業等に就業している。現在は、第2期生が久慈市や陸前高田市等で定置網やカキ養殖などを研修中であり、今月から第3期生の募集を始めたところである。
 担い手の確保については、熟練漁業者による技術や経営のノウハウの指導、養殖業の漁協自営や共用化などによる新規就業者の終年雇用環境の整備、市町村と連携した新規就業者に対する生活面での支援、空き漁場を対象とした漁業権行使や、中古資材などの斡旋システムの整備などに取り組んでおり、岩手水産アカデミーを核とした後継者対策を積極的に進めていく考えである。

・新漁業法と県の対応について

【斉藤委員】
 昨年、漁民への説明も本当に不十分で、国会でも十分な議論もしないで漁業法の改悪が強行された。
 県の対応すべき課題はどうなっているか。また、国の政省令や技術的助言の内容は示されたか。

【漁業調整課長】
 平成30年12月に交付された新漁業法は、令和2年12月1日に施行されることとなっており、これにともない各都道府県において規則等の改正が必要となっている。具体的には、資源許可の管理について県資源管理方針の策定や、漁業許可制度については県の漁業調整規則の改正、漁業権制度については、県の取り扱い方針の改正や密漁の罰則強化について法の適用除外の許可にかかる取り扱い方針の策定、海区漁業調整委員会の委員選出方法の変更による委員選出等にかかる諸手続きが主なものとなっている。県では、この制度改正等に関する国の助言指導をもとに、漁業者や関係団体等から意見を聞くとともに、新たな制度の周知を図りながら、円滑に進めていきたい。
 政省令や技術的助言については、国の政省令は令和2年7月8日に交付されたところであり、これにより漁業法の施行日が令和2年12月1日と定められている。

【斉藤委員】
 漁業権の制度については、岩手県にとっては何の矛盾もなかったので、漁民の漁場の管理を基本にして、従来通り進めるべきだと。
 特に質問したいのは、海区漁業調整委員会の選出で、これは公募して最終的には知事が任命するということで、公選制が廃止された。今までは「漁民の議会」と言われていたが、任命制に変わったので、今の海区漁業調整委員会にも漁民の代表が2名選ばれている。現状の海区漁業調整委員会の構成をしっかり踏まえて選任されるべきだと思うが、そして選任の基準をどこから見ても分かりやすいように、恣意的な選任にならないようにやるべきだと思うがいかがか。

【漁業調整課長】
 新漁業法により公選制が廃止され、すべての委員は公募により知事が議会の同意を得て任命することとなっている。委員の構成は、漁業者委員、学識経験委員、中立委員となっており、委員の定数は現行と同じ15名と考えている。また漁業者委員については、定員の過半数以上を占めることが法で定められており、これに基づいて進めていきたい。

【斉藤委員】
 海区漁業調整委員会というのは漁民の代表が過半数となっている。やはり漁民の代表の機関なので、そして今の構成の中には選挙で選ばれた漁民の方々がいるので、本当に漁民の代表が選任されると。そのためにも、どこから見ても恣意的ではないと分かるような選任の基準を明らかにして、日本学術会議のようなことに絶対にならないようにやるべきではないか。

【水産担当技監】
 今般の漁業法改正に基づいて、海区漁業調整委員会の委員の選び方も公選制から公募制になったという大きな転換になった。法の改正に至るまでの国の議論、水産庁の担当との意見交換をした中では、全国の都道府県にある海区漁業調整委員会は、漁業の調整機能を持つ漁民中心の委員会だが、公選制であったが実質的には立候補する人がほとんどいなくなり、10年同じ委員が務めるというようなこともあり、硬直化しているという議論が国であったようである。もう1つは、本県は選挙も度々あったが、西日本では立候補する人もいないという状況もあり、そういうことも総合的に勘案して制度改正に踏み込んだと聞いている。