2020年10月22日 決算特別委員会
千田美津子県議の農林水産部に対する質疑
(大要)


・コロナが提起した食糧自給率の向上について

(千田委員)
 コロナショックで露呈した食の脆弱性という観点で3点お聞きします。
 まず食糧自給率の向上が必要だという観点でお聞きします。新型ウイルス感染症の世界的な蔓延を受けて輸出規制に耐えられる食糧自給率の向上の重要性がクローズアップされ、具体的かつ着実な食料自給率の数字が示される必要性が深まっています。
 そういう中で、国も舵を切り始めているという話が部長からありました。不可欠な生産要素として飼料、種子だけでなく労働力の海外依存の問題も認識されており、2008年には食糧危機と国際的な食糧価格高騰があり、メキシコでは主食のトウモロコシの国内生産が激減し、価格高騰で米国から買えなくなり暴動も起こりました。ハイチでは米生産が減少して米の輸出規制でお金を出しても米が買えなくなり、暴動で死者まで出ています。
 このような教訓に学び、今やるべきは過度な貿易自由化に歯止めをかけ、各国が自給率向上政策を強化することが大事です。今回のコロナ問題はこのまま貿易自由化を進めていいのか、国の未来のあり方が正に問われています。そこでコロナが提起しているこれらの問題についてどのように認識しておられるかお聞きします。

(鈴木企画課長)
 食料自給率のお尋ねです。国の食糧・農業農村基本計画は食糧自給率の向上に向けた課題と重点的に取り組むべき事項として、国内農業生産基盤の強化、消費者と食と農のつながりの深化を掲げ、講ずべき施策して国内の農業生産の増大を図り、輸入の途絶等の不測の事態が生じた場合にも国民が必要とする食糧の供給確保を図ることが必要とされています。県としても岩手県民計画に基づき、農産物の生産拡大や生産基盤の着実な整備、地産地消による農林水産物の消費拡大等による取り組みを進めており、本県が食糧供給基地としての役割を担い、持続的に発展できるよう取り組んでいくことが重要と考えています。

(千田委員)
 県の姿勢も取り組み方もわかりました。そういう中で自給率が決して上がらないどころか、下がり続けているという問題があります。これからどうやっていくかが重要になってきますが、自給率はカロリーベース、生産額ベースで平成10年以降どのようになっているかお知らせください。

(鈴木企画課長)
 国の自給率の推移は、カロリーベースの食料自給率で平成10年度は40%、平成20年度は41%、平成30年度は37%となっています。生産額ベースでは、平成10年度は71%、平成20年度は66%、平成30年度も同じく66%となっています。

(千田委員)
 いずれも下がっていますが、基本はカロリーベースで、これをしっかり引き上げていくことが求められています。そういう意味で岩手県の農業の基盤をしっかり作り、守っていく点で是非宜しくお願いいたします。

・コロナによる県内農業現場における海外研修生の実態について

(千田委員)
 2つ目、コロナで県内の海外研修生などの実態がどのようになっているか、影響についてお聞きします。

(中村農業振興課総括課長)
 海外実習生についてですが、農業分野における外国人の技能実習生はJA等からの聞き取りによると、本年3月末現在ですが約370人となっています。影響ですが、外国人実習生の出入国等で、現時点で把握可能な募集から受け入れまで手続きをしている県内の主な管理団体等から伺ったところ、入国が制限された4月4月以降、これまで20人が帰国したということであり、一方で入国という実績は今のところはないと聞いております。

(千田委員)
 3月末で370人ということですが、直接的な把握は難しいと思いますが、国ごとにはわかりませんか。

(中村農業振興課総括課長)
 国ごとではフィリピンが265名、ベトナムが84名、中国が約20名となってございます。

(千田委員)
 今回大きく影響を受けたということは、岩手県ではないということでいいですか。

(中村農業振興課総括課長)
 県内のいろいろな経営体から聞き取り等もしました。人手不足を心配する声も実際にはあると承知はしていますが、帰国が難しい実習生については、国の特例措置を活用しながら在留期間は延長し、実習を続けているという事例もございます。また受け入れ経営体が作業の効率化を図りながら対応している事例、また入国の目処もある程度ついているという経営体もあるなど、現時点では大きな影響がないと経営体から伺っています。

(千田委員)
 今回のコロナショックは岩手県のみならず、日本農業がこのような海外研修生の皆さんに支えられているという現実があったということで、予定していた方々の来日がストップするとかで影響が心配されていました。そういう中で農業生産を大きく減少させる危険が炙り出されたように思います。今後ともそういう研修生の方々の待遇改善、条件整備等含めて頑張っていただきたいと思います。

・食の安全保障について

(千田委員)
 3つ目ですが、食の安全保障という点で厳密に言えば他の部局かもしれませんが、農業政策の一環として見解をお聞きします。食の安全には量とともに、質の問題が大変重要です。成長ホルモン、除草剤、防カビ剤などの残留などでリスクのある食糧が輸入基準が緩い日本にどんどん入っています。質の安全保障も今回本当に危機に瀕していると言われますがどのように認識されていますか。

(高橋技術参事兼流通課総括課長)
 県内で流通している輸入食品の安全性ということのお尋ねです。第一義的には国、厚生労働省ですが、水際対策としまして、検疫所における検査等における食品衛生法に違反する食品が輸入されないよう、食い止めるのが基本と認識しています。県においては先ほど委員からも話がありましたが、環境生活部が所管をしております。県内に流通する輸入食品を対象に残留農薬や抗菌性物質、ホルモン剤等について毎年50件程度のモニタリング検査を実施しており、これまでに基準に違反するような事例はなかったと伺っています。

(千田委員)
 水際対策の話がありました。所管が別だということもありましたが、水際対策で検査できるのは何万分の1とかっていう状況で、ほとんど大事な部分がなされていない実態が明らかになっています。そういう意味で自給率を米以外に様々も高めていく必要があるという観点でお聞きしましたのでよろしくお願いします。

・湛水防除事業の現状と今後の対応について

(千田委員)
 最後ですが、湛水防除事業の現状と今後の対応についてお聞きします。湛水防除事業は農村地域の防災・減災対策事業であり、立地条件の変化により湛水被害を生ずる恐れがある地域において行われている事業です。排水機や排水調節池等の新設及び改修により湛水排除の恒久対策を講じられているものであります。昨今、台風や豪雨災害が多発している中で、湛水被害を生ずる恐れがある地域においてこれらの施設の整備は大変重要となっています。そこで県内の湛水防除事業の実施状況と、それぞれの設置年度、耐用年数、改修工事等の見通しはどのようになっているのかお聞きします。

(千葉農村建設課総括課長)
 湛水防除事業の実施状況についてですが、昭和51年度から平成29年度まで奥州市ほか北上川沿いの奥州市ほか、2市の12地区において事業を実施し既に完了しているところです。最初の事業から40年間経過した地区もあります。耐用年数については揚排水機については20年間ということで法定的に定められています。これを経過した施設についてもございます。それら施設については今後施設管理者の市町村等からの要望も踏まえ施設の状況を把握するとともに、維持・更新が可能な国の事業も活用しながら、農村地域で安心して営農ができるよう引き続き施設の健全化を支援していきたいと考えています。

(千田委員)
 耐用年数が超えているところがかなりあります。設置者である市町村等からの要望を踏まえて対応していくということでありましたけども、現時点で要望は来ていませんか。

(千葉農村建設課総括課長)
 今現在で施設全体の補修という形の要望には至っておらず、施設自体をモーターとかエンジンとかそういったもので構成されており、それらの老朽化した時の更新には補修等行う基幹水利施設ストックマネジメント事業とか、土地改良施設の維持管理適正化事業こういうもので施設のメンテナンスをやりながら今までも補修、更新等しているところです。大々的に故障するとなるとそれ相当の事業費がかかりますので、こういう維持管理事業を使いながら長期化を図っていくということで市町村と話をしているところです。

(千田委員)
 例えば奥州市姉体町の施設はやはり老朽化し、この間2度ほど改修事業を行っていただきましたが、もう本体を替えなきゃならない状況にあるようです。市としては要望していたと聞いておりが、話あったように各地の状況をしっかり点検して、整備計画を立てていくことが必要ではないかなと思いますがいかがですか。

(千葉農村建設課総括課長)
 湛水防除施設に限らず県内のこういった施設については、施設の保全計画というものを作成してございます。そういった中で長期的視点で市町村等と協議をしながら、その計画を策定しておりますが、そのスケジュールにより今後計画的に補修や更新なりに取り組んでいくよう今後も適正な判断を行い進めていきたいと考えてございます。

(千田委員)
 北上川の水門が閉まると内水が溢れてくる状況で、これらの施設は大変重要でありますので、保全計画が作られているということではありますが、それをさらに進めた検討がきちんとなされるように要望したいと思います。