2020年10月23日 決算特別委員会
県土整備部に対する質疑
(大要)


・災害公営住宅の現状と課題について

【斉藤委員】
 災害公営住宅における高齢者世帯、一人暮らし高齢者世帯の数と比率はどうなっているか。

【建築住宅課総括課長】
 令和2年7月1日現在、県営災害公営住宅に入居している1327世帯のうち、65歳以上の高齢者を含む世帯は772世帯・58.1%であり、そのうち高齢者の一人暮らし世帯は448世帯で全体の33.7%となっている。

【斉藤委員】
 予算特別委員会のときには全体の比率を出していただいたが、9月末で災害公営住宅は5167戸・9105人入居しているが、これは分かるか。

【建築住宅課総括課長】
 手元に資料を用意しておりません。

【斉藤委員】
 高齢化しており、特に一人暮らしが3分の1を占めると。
 災害公営住宅には収入基準があり、低所得者向けである。政令月収15万8千円以下と。そして国の家賃軽減というのは、政令月収が8万円以下である。低所得世帯の中で、その約半分以下の方々が国の家賃低減の対象になっていると。国の対象になっている世帯はどのぐらいか。

【建築住宅課総括課長】
 令和2年7月1日現在の国の家賃特別低減事業の対象世帯は933世帯で、同じく7月1日時点での入居世帯数1327世帯における割合は70.3%となっている。

【斉藤委員】
 県営住宅はそうなるが、全体5646戸のうち3498戸・68%、約7割が災害公営住宅の中で低所得の半分以下と。だから災害公営住宅の特徴というのは、高齢化、生活苦―。だから本当にコミュニティの形成が大変切実になっているし、孤立化していると思う。
 災害公営住宅における孤独死の状況はどうなっているか。

【建築住宅課総括課長】
 県営および市町村営を合わせて、9月末現在で累計59名の方が亡くなられていると承知している。

【斉藤委員】
 仮設住宅での孤独死は46名だった。昨年度に数字が逆転した。昨年度は年間で16名、その前の年は18名、昨年度・一昨年度で急増している。今年はすでに9名ということで、災害公営住宅での孤立化・孤独化が大変深刻になっていると思う。
 そこで災害公営住宅におけるコミュニティ形成の大事な場所は集会所である。集会所の活用はどうなっているか。あわせて、生活支援相談員の配置はどうなっているか。

【建築住宅課総括課長】
 集会所の活用状況は、6月30日時点では、新型コロナウイルス感染症の影響があり、多いところで月4回程度の利用にとどまっていた。現在では、コミュニティ形成支援員によるアドバイスだとか、団地独自の感染予防対策などが行われており、9月末現在の集会所利用回数は、多いところでは月20回を超えるなど、感染拡大以前の水準に戻りつつあるところである。
 生活支援相談員の配置については、10月22日時点で、地域見守り支援拠点設置の取り組みにより、4団地で7名が配置されているところである。

【斉藤委員】
 6月末時点の資料をいただいたが、これを見ると、0回が4団地、1回が13団地、2回が7団地あり、全体30団地のうち2回以下が24団地・8割を占める。新型コロナの問題もあったが、岩手の感染状況を見たら大変落ち着いていて、ほとんどが県外由来。そういう中で、高齢者の孤立化・孤独化のリスクを考えたら、感染防止にしっかり取り組みながらコミュニティ形成の取り組み、とりわけ一人暮らし高齢者が孤立しないようにコミュニティを形成していくということが必要ではないか。
 最近は回数が増えてきたということはあるが、この災害公営住宅における集会所というのは、阪神淡路大震災の教訓からつくられた。阪神淡路大震災でも孤独死が10年以上にわたって続き、その教訓を受けてつくられたのが集会所である。この集会所が使われなかったら、本当に孤立化・孤独化は解決できない。
 そこで、これも災害公営住宅の自治会に任せていてはいけない。結局自治会の人が集会所にいなければ開かれない。いないときはカギがかかってしまう。いろんな地域から被災の痛みを持って入居している方々に対して、生活支援相談員を配置して、仮設住宅のように、いつでも誰でも受け入れるような集会所の活用が大事だと思う。
 県営団地だけでいくと、100戸以上の災害公営住宅は4ヶ所、50戸以上の災害公営住宅は12ヶ所ある。せめてこういうところには支援員を配置して、一人暮らし高齢者も含めて、いつでも集会所に来て、いろんな活動をする取り組みを推進する必要があるのではないか。

【建築住宅課総括課長】
 災害公営住宅の整備においては、ご指摘あった通り通常より広めの集会所を整備させていただき、そこの中に、生活支援相談員の方々が活動できるためのスペースを用意し、さらに机などの事務用品を揃えている。
 相談員の配置については、各市町村の方で社協にお願いしてきたところである。なかなか一足飛びに増えているわけではないが、徐々に数が増えてきたところであり、現在は4団地において配置いただいている。
 今後も、コミュニティ形成は災害公営住宅の最大の課題だと思っているので、市町村等と連携をとりながら相談員の配置についてお願いしていきたい。

【斉藤委員】
 実は一番最後に整備される盛岡市青山の災害公営住宅(99戸)には、盛岡の復興支援センターが入って、そして入居者だけではなく、今まで面倒をみてみた近隣の被災者の支援も行うと。素晴らしい取り組みだと思う。そういう意味で、阪神淡路大震災の教訓、私たちは9年7ヶ月取り組んできて、この間の課題・教訓を踏まえて、お年寄りは1年1年が勝負である。そういう意味で、必要な課題にはできるだけ早く取り組むと。配置するのは社協だったり保健福祉部になるので、密接に連携をとって、私たちは50戸以上の団地には配置してコミュニティ形成を進めるべきだと提案してきたが、ぜひその立場で進めていただきたい。

・収入超過者の家賃軽減―みなし特定公共賃貸住宅の導入について

【斉藤委員】
 この問題は予算特別委員会で取り上げ、八重樫前部長は「一般公募について速やかに検討を進めさせていただきたい。その後に、みなし特定公共賃貸住宅制度の導入についても検討させていただきたい」と答弁していた。
 その立場に立って、1つは収入超過者の入居状況はどうなっているか。これまでの退去状況も含めて示していただきたい。

【建築住宅課総括課長】
 7月1日現在において、入居3年以内で収入基準を超過している世帯数は25世帯、入居4年目以降で収入基準を超過している世帯は94世帯となっている。
 これまでの退去状況は、累計で261世帯が退去している。

【斉藤委員】
 昨年の2月11日に、岩手と宮城の災害公営住宅自治会交流会、これは毎年1回開かれていて、県土整備部からも参加していると思うが、自治会の担い手―特に若い世代の方々が働くほど収入が増えて、収入超過世帯になり、大船渡の県営住宅でも自治会役員の方が退去せざるを得なくなった。いわばこのままでは担い手がいなくなるという切実な話が出された。
 災害公営住宅というのは「被災者は収入基準に関わらず入居できる」という特別の性格・意義をもった災害公営住宅である。しかし収入超過者は3年経つと一気に高い家賃になってしまう。そうなると、最高限度は今77400円だが、「こんなに高いなら中古住宅を買った方がいい」などとなってしまう。終の棲家として入られた方々も少なくないと思う。
 こういう収入超過者が引き続き生活ができるように、陸前高田市で「みなし特定公共賃貸住宅」という制度―15万8千円〜48万7千円までの中堅所得層の収入超過者も継続して入居できるという制度を、国交省とも協議した上で導入している。先日お聞きしたら、管理戸数55戸のうち42戸が入居、収入超過者34戸が継続して入居していると。陸前高田市の中には、県内最大の県営栃ヶ沢災害公営住宅がある。市営住宅ではそのように継続して入居できて、県営ではできないということになったら、これはやはり大変な格差ということになってしまう。
 陸前高田市に限らず、収入超過者は引き続き入居ができるこの制度を、できるだけ早く導入すべきだと思うが、その取り組みはどうなっているか。

【建築住宅課総括課長】
 公営住宅は、「本来対象としている所得階層の入居希望者に影響を与えないこと」が条件となることから、被災者の入居希望を満たしたうえで、被災者以外の一般の方々が入居できるようにする必要がある。このため、昨年度までに県内全域の被災者を対象に入居募集を行い、希望される方全員に対応したところであり、今年度は被災者の入居が見込まれる住戸を一定数確保した上で、残る空き住戸について、一般の方を対象とした募集をこれまで7月・8月の2回実施し、今年度はあと3回募集する予定としている。
 みなし特定公共賃貸住宅制度の導入については、この一般公営住宅としての運用を開始した後に生じる空き住戸の状況を踏まえ、入居者のニーズや市町村等の意見を参考にしながら検討を行っていくこととしている。

【斉藤委員】
 八重樫前部長の答弁よりトーンが少し弱いのではないか。
 やはり年内にも方向性をはっきり出すべきである。収入超過者は高い家賃で退去するかどうかの瀬戸際にきている。そうした方々に、県はこういう方向で検討していると示せば、無理して退去しないで同じ場所で、特に子育て世代などは転校する必要もない。これは年内にもそういう方向を出すべきではないか。

【建築住宅課総括課長】
 災害公営住宅以外の用途での使用にあたっては、先ほど申し上げた通り、前提条件として、本来の所得階層の方が入居し、なおかつ空いているということを確認する必要がある。これは陸前高田市は以前からかなり先行してそれを行い、手順を踏んで今に至っているという状況である。
 現在県としては、その一般入居の取り組みを始めたところである。また、それと並行して、やはり県がそういう取り組みをする以上は、岩手県の場合は宮城・福島と異なり、沿岸部に自らの県営災害公営住宅を用意している。ですから、当然そういったことをするためには沿岸市町村とのすり合わせ等も必要になってくると考えている。来月になるが、わたくし直接沿岸市町村に赴き、今後の課題や諸問題について意見交換をすることとしている。市町村等の意見を踏まえ、スピード感を持って取り組んでいきたい。

【斉藤委員】
 最後の答弁は非常に良かった。
 陸前高田市も一般入居をやったうえで、みなし特定公共賃貸住宅制度を導入している。それが被災地の実態でもある。そういう点で、必要な手続きを踏みながら、何としても年度内に方向性を出して、今悩んでいる、困っている方々に見通しを示していただきたい。
 そして災害公営住宅の新しい形を岩手から示していただきたい。そういう点で「前例にとらわれない」取り組みを岩手はやっていただきたい。