2020年10月26日
復興特別委員会での質疑(大要)
・生業の再生の現状と課題について
【斉藤委員】
10月13日に、東北経済産業局の被災4県グループ補助金活用企業アンケート調査結果が出ている。ここで岩手の現状と課題はどのように示されているか。
【経営支援課総括課長】
売り上げの状況を見ると、震災直前の水準まで回復している事業者の割合は、東北4県で44.0%、岩手県では44.6%となっている。売り上げが震災直前の水準まで回復していない要因としては、岩手県では「既存顧客の喪失」32.4%、「新型コロナウイルスによる影響」が23.7%となっている。
現在の経営課題としては、岩手県では、「販路の回復・開拓」28.8%、「従業員の確保・育成」19.9%、「資金繰り」15.3%となっている。
【斉藤委員】
この調査の中で、売り上げの状況、売り上げが回復した要因についてはどう提起されているか。また、各業種ごとの状況はどうなっているか。
【経営支援課総括課長】
売り上げが回復した要因については、岩手県の中で回答の割合が多いのが、復興需要やその他の要因による「新規顧客の確保」で24.9%、次いで「新商品・新サービス開発等によるもの」が14.5%となっている。
業種別では、売り上げの状況で業種別に見ると、岩手県で業種別の調査結果はないが、東北4県では、旅館・ホテル業30.2%、水産・食品加工業31.2%、卸売サービス業33.0%の割合で「震災直前の水準まで回復していない」と回答している。したがい、このような業種での回復が遅れているととらえている。
【斉藤委員】
正確に言うと、24.9%で一番多かったのが「新商品・新サービス開発等による新規顧客の確保、既存顧客のつなぎ留め」となっている。この指摘はとても大事だと思う。
10月20日に、「三陸産業復興セミナー〜水産加工業の危機対応事例に学ぶ〜」という取り組みが行われている。この成果と今後の取り組みにどう生かすか示していただきたい。
【まちづくり産業再生課総括課長】
これは今般の4号補正でお認めいただいた事業だが、新型コロナウイルスや不漁の影響に苦慮している水産加工業者の方々が、経営のあり方を抜本的かつ集中的に見直す取り組みを支援する「地域基幹産業サプライチェーン等再構築事業」の一環として開催したものである。このような水産加工業者の方々が経営戦略の見直しを考えるきっかけとして、身近な実践例をもとに、小野食品さん等の事例・経営戦略の活用法用や、会社が危機的状況に陥った際の対処方法などについて議論を行ったものである。当日は、水産加工業者や産業支援機関、行政機関から定員の50名を上回る申し込みがあり、アンケートでは、約93%の方々が「役に立った」と回答しており、好評だったと認識している。この評価をいただいた理由としては、やはり同業者の経営戦略や事業内容を聞く機会が実はあまりなく、そういったものを深く紹介いただいたことや、事業の転機を図り経営判断のポイントを分かりやすく伝えることにあったのではないかと分析している。
このセミナーにより、経営戦略の重要性を具体的にご認識いただけたものと思っているので、今後は専門家の派遣などにより、水産加工業者における経営戦略の策定を通じた収益力の向上などに取り組んでいくほか、コロナの関係で販路に影響が生じていることから、オンライン商談会のようなものも進めていきたいと考えており、これらを通じて三陸の基幹産業である水産加工業の振興を図っていく。
【斉藤委員】
水産加工業について言うと、危機的な大不漁、新型コロナウイルスと、今までと同じような業態では対応できないと思う。それだけに、この経産省の調査でも、新商品・新サービス開発等による新規顧客の確保ということに真剣に取り組んで、県も積極的に支援すると。もう1つは、宮古の若手グループなどが、水産加工業者の協力・共同で、そこで知恵も出る。これは気仙沼の業者もそうした共同で新しい商品を開発して得意分野を生かしたということがテレビでも紹介されていた。やはり同じ形では復活・復興できないと。危機的不漁と新型コロナに対応した新しい対応―魚種転換や新商品開発といった取り組みにぜひ県が音頭をとって強力に進めていただきたい。
じつはこの資料で、「再開・一部再開」が86%とあるが、これは正確ではないと思う。商工労働観光部審査でも取り上げたが、商工会議所・商工会の数ヶ月に1度の調査で見ると、4341事業者が被災し、これは全体の56.4%、今の営業再開は2987事業者で68.8%であり、かなり差がある。そしてこれは毎年残念ながら減っている。1年間で46事業者ぐらいが減り、廃業が増えている。復興局の調査では毎年同じように86%が再開となっている。それは実態を反映していないと思うので。そこはよく調整してやっていただきたい。例えば、商工会議所・商工会の調査だと、陸前高田市の営業再開は50.8%、大槌町が54%、山田町55.5%と半分ちょっとである。だとしたらどうやってやるかというと、やはり「起業」を支援することが重要である。再開の支援とあわせて、新しい起業が次々につくられると。
そこで、今までチャレンジ事業や三陸なりわい創出支援事業、これは規模は小さいものだが「起業」を支援してきた。その実績と累計はどうなっているか。
【まちづくり産業再生課総括課長】
沿岸地域における起業、あるいは第二操業という形の補助だが、平成25年度から県で行っており、平成25年度からのトータルの採択件数は157件、そのうち起業が107件、新事業50件となっている。また、採択者のうち女性が51名、40歳未満の若者が30名となっている。
【斉藤委員】
最大200万円の補助のようだが、女性や若者の起業もそうした形で支援されていると。令和2年度を見ると、おそらく新型コロナウイルスの関係だと思うがまだ5件にとどまっているので、古里で、被災地で起業したいという方々を強力に支援していただきたい。新しい力、新しい血が流れてこないと地域経済は回らないので、そうしたことで起業支援に取り組んでいただきたい。
・東日本大震災津波伝承館について
【斉藤委員】
日本展示学会賞の受賞ということで素晴らしい成果だったと思うが、何が評価されたのか。これをどのように生かすのか。
【震災津波伝承課総括課長】
日本展示学会賞は昭和57年に設立され、現在の会員数は約500名で、展示に関わる大学研究者、博物館・美術館の職員、自治体などで構成されていると聞いている。日本展示学会賞は平成15年に創設され、社会的・文化的水準が高く、芸術や技術の総合的発展に寄与する優れた展示作品に贈られる賞である。
伝承館の受賞については、学会がホームページで公開している理由では「津波のメカニズムの映像装置、津波の巨大なパワーを示す変形した橋りょうや大破した消防車両の実物展示など、バランスのとれたコンテンツと抑えられた展示デザインが震災の実相を正確に伝えている」と評価いただいた。
今後は、評価いただいた展示を生かすために、我々職員も努力していかなければならないと思っている。展示解説のスキルアップに努め、震災津波の事実と教訓を学ぶ施設として、児童生徒あるいは観光ツアーの方をはじめ、多様な方々に満足いただけるよう震災の伝承に努めていきたい。
【斉藤委員】
本当に日本展示学会賞を津波伝承館が受賞したということは素晴らしい皆さんの努力の成果だと思う。ぜひこれを最大限活用していただきたい。
そこで、来館者の現状・特徴、修学旅行の実績はどうなっているか。今後の見通しはどうなっているか。
【震災津波伝承課総括課長】
昨年9月の開館から1年が経過し、9月末で22万人、昨日(10月25日)までに24万人台が来館されている。今年度予約いただいた団体の状況では、9月末で487件。内訳は、県内257件、県外230件となっている。団体の種類では、小中校生・大学まで含めて186件・38.2%、観光ツアー177件・36.3%、そのほか地域団体や行政などの視察が多くなっている。都道府県別では、岩手県257県・52.8%、東京都103件・21.1%、以下宮城県・愛知県などが多くなっている。
教育旅行の実績は、修学旅行や課外学習を含む数で、小中校生・大学まで含めて4〜9月までで94件である。内訳は県内76件・80.8%、東北15件・16%、その他3件となっている。
今後の見通しについては、10月以降では、学校からの団体予約数は92校となっており、11月も多くの予約をいただいている。
【斉藤委員】
昨日の段階で24万人ということで、大変順調ではないかと思う。私も10月に陸前高田市の調査で伝承館と道の駅に寄ってきたが、その時にも修学旅行や観光バスが来ていた。
そこで、修学旅行については、例えば県内の小中学校が県内に行き先を変更したと。これを一時的なものにしないで、やはり修学旅行のあり方もまた変わっていいのだと思う。無理して遠方に行かなくてはいけないということでもないと思うので。これは教育委員会の関係なのでここでとどめるが。
もう1つは、ゲートウェイ機能について。隣の大船渡市に行ったら「全然来ないんだ」と。陸前高田には行くが隣の大船渡には行かないと。あとは釜石市のように追悼施設があるところ、宮古にも施設があるが、これはどうゲートウェイ機能で全県的に波及効果が発揮されているか。これからどう発揮させていくか。
【震災津波伝承課総括課長】
大船渡市に波及効果がないというお話があったが、例えば、実際にきた修学旅行で、伝承館の後にキャッセン大船渡にあるお菓子のファクトリーに寄ったり、水産加工会社で氷点下40℃の冷凍施設に入る体験をするということが組み合わせとしてあったり、多様な修学旅行のコースも出始めている。
ゲートウェイ機能の発揮については、現在も伝承館では、エントランスに観光案内や沿岸市町村の観光物産パンフレットを50種類以上置いている。それで情報収集の場として利用いただいているが、さらに三陸を周遊するようなお客さんを増やすには、個人客に加えてバスで移動する団体ツアーを確保していく必要があると考えている。伝承館や道の駅高田松原、奇跡の一本松という有名な観光地もあるので、旅行会社からの認知度も徐々に上がり、三陸を縦断するようなツアー商品や、盛岡から来るツアーも出始めているので、そういった旅行商品に使う伝承館の写真や情報を求めに応じて対応しており、実際に来たバスの添乗員さんやバスガイドさんにも直接お話を聞きながら、何とか繰り返し来ていただけるように要望している。
来年度は4月から東北ディスティネーションキャンペーンもあるので、引き続き市町村や関係者と連携し、三陸へのゲートウェイ機能が発揮できるよう取り組んでいきたい。