2020年12月4日 文教委員会
文化スポーツ部に対する質疑
(大要)


・文化芸術分野に対する支援について

【斉藤委員】
 新型コロナによる文化芸術団体への影響・実態調査の内容と、国・県の支援事業の執行状況を示していただきたい。

【文化振興課総括課長】
 10月に県内5地域で、9月臨時議会で創設させていただいた文化芸術活動支援事業の説明会において、文化芸術団体や市町村など現場の意見をお聞きした。主な意見としては、「今般の県の補助事業については大変ありがたい」という貴重なご意見をいただいたほか、コロナ禍において集合して練習することへの自粛などがあり、小規模な団体においては活動に苦労しているというような話をいただいた。
 また11月には、一般社団法人岩手県芸術文化協会の加盟団体等に対して、アンケート調査を行った。その概要については、「大きく影響がある」が8割だった。具体的なものとしては、「公演・展覧会の中止・延期がある」が3割、「団員等の活動意欲の低下」が約2割、「稽古・練習等の自粛」が約2割という回答をいただいた。国や県・市町村に対する要望としては、「会議室等の使用料への補助・支援」「コロナ禍におけるウェブ配信、動画撮影等の補助・支援があれば良い」というご意見をいただいた。
 国の支援事業については、チケット収入等を上げることを前提に、プロの実演家、団体の活動の再開・継続の取り組みへの補助を国が行っているところだが、文化庁事業のホームページ情報では、全国で応募件数が54236件、そのうち採択されているものが35364件(11/27現在)である。本県の状況については、文化庁に照会したが現時点では非公表ということだった。なお、国の支援事業の募集期間が9月30日までとされていたが、運用の見直しを図った上で、11月25日〜12月11日までの期間で追加募集を行うこととされている。
 県の支援事業の申請・支給状況について。文化芸術活動支援事業については、これは県内の文化芸術団体等の活動の継続・再開に要する補助対象経費の3分の2を補助する事業だが、11月26日現在で、舞台や演奏会など13件の申請があり、10件を採択、3件を審査中である。文化施設利用促進事業は、これは県民会館および公会堂のホールおよび附属設備の利用料金の半額を補助するものだが、県民会館・公会堂の使用あわせて34件の支援を行っている(11/26現在)。
 予算枠に対する執行状況は、文化芸術活動支援事業については20.3%、文化施設利用促進事業は25%であり、引き続き両事業の利用を促し、文化芸術活動の支援に取り組んでいきたい。

【斉藤委員】
 引き続き文化芸術団体の実態・要望をよく把握して対応していただきたい。
 県の事業については積極的に活用されるように推進していただきたい。

・スポーツ・部活動における暴力・パワハラの根絶について

【斉藤委員】
 学校で発生した部活動の顧問によるパワハラ事件、11月16日の教育委員会では、盛岡市内中学校の男性教諭が停職5ヶ月の大変厳しい処分が行われた。
 ご承知のように、不来方高校における自死事件では、第三者委員会の詳細な報告書も出されて、特にスポーツ・部活動における顧問教師の暴言・パワハラの深刻な事態が明らかになったと思う。
 スポーツ活動を所管する文化スポーツ部として、こうした事件をどのように受け止めているか。 

【文化スポーツ部長】
 県では、7月の県立学校児童生徒の重大事案に関す第三者委員会の調査報告書を重く受け止めているところである。いずれ、指導者による選手に対しての暴言・叱責・一方的で威圧的な言動等の不適切な指導は、個人の尊厳を損ない、基本的人権を侵害するものであって、いかなる場合であっても決して許されるものではないと考えている。
 部活動を含めたスポーツ指導時において、選手が安心して競技に取り組める環境を整備するためには、プレイヤーズファーストの視点が非常に大事だと考えている。選手を支える全ての関係者に対して一層浸透することが重要と考えており、今後においても県教委等と協力して、スポーツ医科学に立脚した指導の普及に全力で取り組んでいきたい。

【斉藤委員】
 この後の教育委員会の審査で、再発防止「岩手モデル」策定委員会の設置についての報告・説明があり、それはそれで議論するが、その中に「スポーツ・インティグリティの視点を踏まえて、部活動のあり方、部活動指導者に対する研修を進める」とある。スポーツ・インティグリティの確保ということについては、2018年6月15日に、スポーツ庁長官がメッセージを出している。スポーツ・インティグリティというのは、まさにスポーツ活動の高潔さ、誠実性、品位―これが完全な状態を意味するということで、とりわけスポーツの指導者におけるこうした研修が必要だと提起されており、このメッセージでは、@アスリートや指導者に対する教育・研修の強化、Aアスリートの相談体制の充実・利活用の促進―この点については「アスリートからの相談窓口等の整備やスポーツ仲裁自動応諾条項の採択に努める」ということも提起されている。そして、B問題事案にかかる公正・迅速な調査と説明責任の履行、C運動部活動の安全確保に向けた大学の取り組みの充実―と、この時点では大学ということになっていたが、このスポーツ・インティグリティの確保、これをスポーツを所管する文化スポーツ部としてどのように、今まで取り組んできたのか、これからどう取り組んでいくか。とりわけ深刻な県内における2つの事件が発生したことを踏まえて、このことをお聞きしたい。

【スポーツ振興課総括課長】
 県では、7月の第三者委員会の調査報告書を踏まえ、県体育協会とともに、7月から9月にかけて県内競技団体関係者との個別ミーティングを実施した。その中で、加盟チームの指導者を対象としたスポーツ現場での暴力・暴言等の根絶に向けた独自の研修会を開催するよう強く要請した。また、9月25日には、県内競技団体代表者、国体監督などを集め、部活動におけるパワーハラスメントにおいて執筆されているスポーツ・教育ジャーナリストの島沢優子さんを講師に招き、パワハラにかかる研修会を実施した。また、今月発行予定の県スポーツ指導者競技会会報において、県内の日本スポーツ協会公認指導者約2000人において、スポーツ・インティグリティの確保について呼びかけることとしている。
 県としては、今後とも県体育協会や競技団体などと連携し、スポーツ現場での暴力・暴言を排除し、コーチングやスポーツ医科学に基づく指導の徹底を図っていく。

【斉藤委員】
 2つの事件の調査報告書を見て、やはり共通する問題というのは、生徒の人権無視・人権侵害である。本来スポーツ活動、部活動もそうだが、生徒たちが主役・主人公であるべきである。ところが、部活動を私物化し、指導者の言うことを聞かなければ暴言を吐く、差別をすると。盛岡市内中学校の陸上部顧問は”虐待”というべき対応で、本当に将来有望な選手が1年生の段階で退部をせざるを得ないところまで追い込まれた。いまだにそこから立ち直れないでいるという深刻な状況も報告書の中にあったが、そういう生徒の人権無視・人権侵害。
 もう1つ、「部活動の私物化」というのは、スポーツ医科学の理論にまったく反する我流の指導が行われている。大会で生徒が実績をあげたりすると、それが顧問の実績になって我流を貫くというような、スポーツ医科学の理論と到達点をしっかり踏まえたスポーツ活動・部活動でなければならないと思う。
 3つ目に、そういう一部の顧問による横暴が、学校の中で、スポーツ界の中で解決されない。問題にされない。ここに深刻な問題があったと思う。だから問題が解決されずに、不来方の場合には自死にまで至ると。盛岡市内の中学校の場合でも本当に深刻な被害を受ける事態になったと思う。
 そういう意味で、本当にスポーツのコンプライアンス、スポーツ・インティグリティの確保という概念が今もっと発展して充実されていると思うが、本当にこの問題はしっかり受け止めて、岩手こそ、本当に選手・子どもたちが主役となって、今の新しいスポーツ医科学の到達点を踏まえた、意欲が出るようなスポーツ活動にしなければならないと思うがいかがか。

【文化スポーツ部長】
 この件については、県教委との合同の会議もあり、総合教育会議にも私参加させていただき、今回の報告書の内容も理解させていただいている。
 お話しあった通り、生徒の人権、部活動の私物化の問題、顧問による言動は重要な課題だと考えている。何よりも、学校現場では学校の方からしっかり取り組んでいただくものと考えているが、我々は競技団体としっかりネットワークを持っているので、指導者の皆さんの意識改革を行動に移すということも非常に大事だと考えているので、スポーツ・インティグリティは本県の競技力向上にとっても重要な観点だと考えているので、しっかり取り組んでいきたい。

【斉藤委員】
 総括課長からも答弁あったように、この間さまざまな研修が行われていることも承知しており、資料もいただいた。先ほど紹介したスポーツ庁長官のメッセージでは、教育・研修の強化とあわせて、アスリートの相談体制の充実・利活用の促進と。これは各団体においてアスリートからの相談窓口の整備ということが提起されている。やはり学校の問題は学校の中でなかなか告発しにくい。そういう意味でいくと、そういう競技団体の第三者といえる相談窓口があって、しっかり対応できる体制が必要だと思うが、県内ではどのように相談窓口が設置されているか。

【スポーツ振興課総括課長】
 県の体育協会に相談窓口を設置している。そこで相談を受けて、場合によっては保安機関に誘導するなどして対応している。

【斉藤委員】
 体育協会の相談窓口の体制、実際の相談件数、対応状況はどうなっているか。

【スポーツ振興課総括課長】
 スポーツ少年団ほか競技団体等から年に4〜5件と承知している。

【斉藤委員】
 年にその程度では機能していない、期待もされていないのではないか。ここにあるように、各団体においてきちんとした相談窓口を設置して、それが機能すれば期待もされるし利用もされる。年に4〜5件では窓口を知らないということもあると思う。本当に今回の事件をしっかり踏まえて、そのような各団体ごとに相談窓口をしっかり設置して、そしてそれが期待される、しっかり対応されるそういうことでスポーツ・インティグリティが確保されるようにぜひ取り組んでいただきたい。

【文化スポーツ部長】
 今回調査報告書に取り上げられた事件は非常に悲しい事件であったと認識している。
 この事件を今後の対応に生かししっかり取り組む必要があると考えており、岩手にとってどういう形がいいのか、そうした案件があった場合にどういう解決方法が一番良いのか、体育協会ともしっかり相談しながら取り組んでいきたい。