2021年1月13日 文教委員会
教育委員会に対する質疑(大要)
・令和元年度問題行動・不登校等調査結果について
【斉藤委員】
いつもは県の調査結果にも記述がある「重大事態」がない。全国のものにはきちんとあり、723件(小学校259件、中学校334件、高校124件、特別支援学校6件)と、いじめ防止法に規定する重大事態の発生件数に示されている。なぜ先ほど説明のあった県の調査結果にはないのか。
【生徒指導課長】
いじめ重大事態については、問題行動等調査では都道府県別の重大事態の件数が公表されていないことから、先ほどの配付資料においては掲載していないところである。
ただ、いじめ防止対策推進法の第30条では「地方公共団体の長にいじめ重大事態が発生した場合は報告する」となっていることから、令和元年度に県立学校で発生した重大事態については3件あったと報告を受けている。
市町村立学校の発生件数については、相談等により県教委が把握することはあるが、基本的には本調査により把握するもので、公表はできないと考えている。
【斉藤委員】
公表できないということは改めていただきたいが、令和2年3月6日の文科省通知では、「本調査によらない調査等で把握した数値についてはこの限りではない」と。いじめ防止法に基づく重大事態というのは、調査に関係なく対応しなければならない。だから今まで通りきちんと、法律に基づいて対応しているのだから、それを県が把握するのは当然のことではないか。市町村の小学校・中学校のいじめ件数を報告しておいて、重大事態だけ分からないということはないのではないか。
行政に対する信頼というのは、透明性、情報公開である。これを閉ざすような対応の仕方は正しくないと思うが、市町村立のものも示していただきたい。そして、県立学校の3件というのはどういう案件だったか。どういう対応をして、現状はどうなっているか。
【生徒指導課長】
県立学校の3件については、いじめ対策推進法の重大事態の第1号にかかるものが3件であり、命・財産等に重大な被害というのが3件、それから長期欠席等によるものが1件で、重複しているものが1件あるので、計3件ということである。
市町村立学校の部分については、対策推進法で地方公共団体の長に報告するとなっているもので、県立ではない部分については報告が全てこちらに上がってきていない状況であるので、問題行動等調査で県としては把握する状況であるので、この場では公表できないということである。
【斉藤委員】
そういう中途半端なことをしないで、小中学校で発生したもっとも深刻な重大事態については把握していないと。市町村の対応で把握できることである。今回の調査をやって初めて重大事態が分かったということではない。市町村からきちんと報告があるのではないか。本調査とは別に、市町村教委から重大事態については報告があって当然ではないか。
【生徒指導課長】
重大事態については、複雑化した場合、市町村から相談等を受ける場合はあるが、それ以外の部分については報告義務はないので、こちらでは把握していない。
【斉藤委員】
あなたがそういう対応をするのだったら、いじめ対策に全くならない。命に関わる、いじめによって30日以上長期不登校になった。この子どもたちに対して、小学校・中学校がどう対応しているか、それを把握・解決せずして県教委の役割はないのではないか。もっとも深刻なケースに一番重大な問題点・教訓が凝縮されている。本当に市町村教委から報告はないのか。把握していないのか。
【生徒指導課長】
対応に苦慮したもの等については報告や相談等を受けているが、結果的にいじめにより転校といった場合については、もうそれで解決しているという場合は方法がない場合もあるので、ですのでこちらの方では把握していないということである。
【斉藤委員】
繰り返し言いたくはないが、例えば岩手県のいじめ防止対策委員会があるが、そのときに小中学校の重大事態の案件が報告されなかったらおかしいではないか。県教委だから県立学校だけということではないのではないか。いじめの件数だってこれだけ詳しく小中学校も出ている。一番深刻な重大事態について、いじめ防止対策委員会に報告されていないのか。
【生徒指導課長】
委員会については、必要がある場合について相談し調査していただくということであるので、こちらの方では把握していないで進めているところであり、各市町村教育委員会が適切に指導のもと、学校と連携し解決に導いていると考えている。
【斉藤委員】
県教委には2つある。重大事態が発生したときに恒常的に調査するというのと、あとはいじめ防止対策協議会というのがある。県内のいじめ対策がどうなっているか、それに報告しなかったら役割など意味がない。県教委が対応するのは県教委だけなのか。岩手県の教育全体に責任を持っているのではないか。重大事態は小中学校は分からないと。県の2つの対策委員会・調査委員会に報告されないというのは本当か。こんなことは考えられない。
【教育長】
基本的に課長が答えた通りになるわけだが、各市町村教委でもそれぞれ重大事案等についての発表があり、その解決等もされる場合も当然あるわけで、そこで完結しているものについては報告等はないと。それから、重大事案等での指導などが求められることがあるが、そういった場合は支援チームを組織しており、そこから各市町村教委や学校現場にも入って対応しているということで、例えば協議会での報告等についてもそういった事案等について共有するということでの対応はあると認識している。
【斉藤委員】
県教委と市町村教委はもっと緊密に連携して、特に重大事案というのは本当に県が責任をもって解決と教訓を全体に返していくということをしなかったらいけない。そういう規定が重大事態だと思う。
県立学校の3件というのは解決されたのか。解決されたとすればどのように解決されたのか。
【生徒指導課長】
3件のうち2件は解決している。1件については、現在調査委員会で対応し調査を進めている。
解決した2件については、「冷やかし」「からかい」というのが1件、もう1つは「悪口」や「嫌なことを言われる」というような内容である。
【斉藤委員】
本当に透明性・情報公開、プライバシーに配慮しながら、どういう事態が起きているのか明らかにしながら、その問題を共有しながら解決に当たらなければいけない。子どもたちの命と安全を守るというのは教育が直面している中心課題の1つなので。
・不登校の問題について
【斉藤委員】
小学校で319人、中学校958人、高校515人となっているが、その要因はどのように分析されているか。
【生徒指導課長】
要因については、複雑に絡み合っていることが非常に多く特定することはできないが、本調査によると、小学校においては「無気力」とか「不安傾向」「生活の乱れ」等が要因になっていることが多く、中学校に入学すると「無気力」「不安傾向」とともに「学業不振」というものが出てくるととらえている。
【斉藤委員】
以前は不登校の要因についても資料にあったと思うが、今回からなくなったのではないか。これは学校の側が判断した理由で、実際に不登校に陥った子どもたちの声を聞いたものではないと思う。特に中学校が深刻なので、一番多いのが「無気力」「不安」、「学業不振」と。これは子どもや親の責任ということではないと思う。
日本財団が2018年に膨大な実態調査を行い、不登校の子どもたちからの声を聞いたものがあるが、これは把握しているか。
【生徒指導課長】
日本財団の調査結果については把握しているところである。いずれ、2018年のときと違うような傾向が出ているということが報道されているということも認識している。
【斉藤委員】
日本財団はかなりの数、中学生6450人を調査しており、「中学校に行きたくない理由」として、身体的症状以外の要因では、「授業がよく分からない」「良い成績がとれない」「テストを受けたない」と学習面での理由が主だった。ここに子どもたちの切実な声があると思う。授業がよく分からないまま一日授業を受けなければならない。テストで序列化されて、良い成績がとれないことが苦痛になってしまう。だから受けたくないと。これが不登校の子どもたちの調査結果である。
ここに何が表われているかというと、競争と序列化が子どもたちを苦しめていると。実はこれが国連子どもの権利委員会から何度も指摘されている、岩手の教育、日本の教育の根本的な問題だと思うが、どう受け止めているか。
【生徒指導課長】
日本財団の調査については私ども勉強させていただき、2018年10月に中学生を対象にインターネットで行った調査の推計で、不登校の生徒は約10万人いるという結果が出ている。これについては、この年の問題行動等調査においても約10万人の不登校がいるということは確認しているところであり、日本財団の調査と文科省の調査は整合性があると認識している。
ご指摘の中学校に行きたくない理由については、たしかに「テストを受けたくない」「授業がよく分からない」という回答もあるが、「身体症状」の方が上になっており、「疲れる」「朝起きられない」というようなことの方が上位を占めている傾向であるので、問題行動等調査による「無気力」という回答と合致しているととらえている。
【斉藤委員】
日本財団の調査では、文科省が定義した「30日以上欠席」の不登校が当時で10万人、今は12万人と言われている。当時で10人に1人だったので、今はもっと比率が高くなっている。
もう一方で日本財団は、「学校に行っても授業に出られない」とか「授業に出ても心底にあらず」というような「隠れ不登校」という子どもたちの調査も行った。それが2年前は33万人だった。合わせて43万人、7人に1人が不登校傾向にあるという調査結果を出して大きな衝撃を与えた。それを受けてNHKが特集を組み、中学生18000人に調査を行い、「不登校群」「不登校傾向群」「その他」と分け、不登校傾向にある中学生は23.6%・74万人に当たると。こういう「隠れ不登校」の実態という把握も私は一昨年指摘したが、実態をどう把握しているか。
【生徒指導課長】
毎年実施されている問題行動等調査においては、年度内に実態を把握しており、ご指摘の隠れ不登校と言われる「保健室登校」「別室登校」などについては、本調査では把握していない。ただ、現在文科省においては、不登校児童生徒の実態把握等に関する調査というのを進めており、直接文科省に回答を出していくというものを行っており、3月締め切りということになるが、この調査結果を注視していきたい。
・学力テストについて
【斉藤委員】
不登校、隠れ不登校が多いというところに日本の教育の矛盾が表われていると思う。一言で言うと競争と序列化が子どもたちを苦しめている。国連子どもの権利委員会が2019年3月に「ストレスの多い学校環境から子どもを解放するための措置を強化すること」という勧告をしている。
全国学力テストは見直すべきだと思うが、せめて岩手県が実施している学習状況調査は中止すべきだと繰り返し指摘してきた。市町村教委との意見交換・調査も踏まえて今年度中には方向を出すとなっているが、この点についてはどのような検討状況になっているか。
【学校教育課総括課長】
これまでに各市町村教委で調査を行い、「児童生徒一人一人のつまづきの把握」や「授業改善に活用する」といった学力調査について意見をいただいた一方で、「採点業務や調査結果等にかかる負担が大きい」「調査結果のフィードバックまでに時間がかかる」といった課題が改めて浮き彫りになったところであるので、こういった課題について現在どのように対応するか検討しており、令和3年度予算と合わせて最終的な検討・調整をしているので、来月には方向性をお示しできるようにしたいと考えている。