2021年2月16日 議会運営委員会
海区漁業調整委員の選任に関する質疑
(大要)


【斉藤議員】
 海区漁業調整委員会の役割はどうなっているか。漁業法の改正で何が変わったのか。

【海区漁業調整委員会事務局長】
 海区漁業調整委員会は、漁業者および漁業従事者が一体となって秩序をつくる観点から、地方自治法および漁業法の規定に基づいて、各都道府県の海区ごとに設けられている行政機関であり、漁業権の免許等に関する更新や、漁業調整のための漁業者等に対する指示などの役割を担っている。
 今般の漁業法の改正により、海区漁業調整委員会の役割は大きくは変わっていないが、新たに資源管理方針の策定や漁業環境に関する調査、審議事項等が増えている。

【斉藤議員】
 海区漁業調整委員会の委員は、これまでは漁民の選挙だったが、今回から知事の任命ということになった。なぜこれが選挙ではなく知事の任命ということになったのか。

【海区漁業調整委員会事務局長】
 国では、海区漁業調整委員会の漁業者委員の選任にあたっては、従来の選挙においては、漁業者等の多い地区、あるいは漁業種類から委員が選ばれやすいということで、また投票実施率が低いことがあると。それから、選挙を実施しない場合においても、選挙人名簿に、調整等の行政コストが発生するというような問題が生じているためとしている。
 このため国は、漁業者または漁業従事者を主体とした海区漁業調整委員会の職務を適切に行うことができる者が、透明なプロセスを経て選任されるよう、議会の同意を得て知事が任命を行うこととしたところである。
 これにより、水面の相互利用や中長期的な漁業の活性化といった観点から、漁業種類や操業区域等にも著しい偏りが生じないよう配慮し、幅広く委員を承認することが期待されるとしている。

【斉藤議員】
 海区漁業調整委員会は「海の県議会」といわれるように、漁民の選挙で選ばれた、これは一番民主的だったと思う。今言われたような弊害というのは、少なくとも岩手県においてはなかったと思うがいかがか。

【海区漁業調整委員会事務局長】
 国では、これまでの選挙状況について、漁業者等の多い地区や漁業種類から選ばれやすいということで、先ほど言った通り投票の実施率が低いと。最近は1割程度というレベルまで低下しているということもあり、今般の選任方法にしたというところである。
 直近、平成8年以降の岩手県内における状況を見ると、過去6回選挙があったが、3回投票が行われた。

【斉藤議員】
 3回選挙があった。そこで公正に選ばれたのだと思う。だから、言われているような問題は岩手の場合はなかったのではないか。公正な選挙で選ばれてきたのではないか。

【海区漁業調整委員会事務局長】
 直近6回のうち3回は選挙があったが、あくまでも全国的な状況の中での選任制度の見直しということであり、国の方としては、全国的には1割程度しか投票がなされていないということで今般の制度改正になったと理解している。

【斉藤議員】
 岩手では問題なかったということを事実上認めた。
 漁業法の改正は、国会でも10日もかからない審議で通されてしまった。漁民に説明もなく、本当に重要な法案が強行されたのが実態だった。これは改悪だった。
 海区漁業調整委員会の選任の基準方針はどうなっているか。

【菊池副知事】
 海区漁業調整委員会の委員の選任基準については、漁業法第138条第1項の規定により、「漁業に関する識見を有し、海区漁業調整委員会の所掌に即する事項に関し、その職務を適切に行うことができる者のうちから任命すること」とされている。県では、この規定の趣旨に則り任命したいと考えている。

【斉藤議員】
 基準はもっと具体的にあるのではないか。

【総務部長】
 いま副知事が答弁したように、法律、法律の解釈等を踏まえたガイドライン等を受け、県の方で審査基準を設けている。県の審査基準においては、法定要件のほかに、漁業に関する識見だとか職務の適切な遂行能力、あるいは地域振興への貢献等を鑑み、審査基準等として選任している。

【斉藤議員】
 今まで3度選挙があり、公正な選挙で選ばれてきたと。その中には、漁協の組合長だけではなく、文字通り漁民からの立候補で選ばれた漁民組合が推薦した候補が9人中2人選ばれてきた。
 今回の選任にあたって、4年前の漁民の選挙の審判を踏まえて選任すべきだったのではないかと思うがいかがか。

【菊池副知事】
 漁業者または漁業従事者から任命される委員について、公募により推薦または応募があった委員候補者については、先ほど来申し上げている国が定めたガイドラインに従い、岩手海区漁業調整委員会委員候補者審査委員会を設置し、候補者の適正等について審査を行っている。
 漁業者または漁業従事者から任命される委員については、審査委員会における審査の結果、いずれの委員候補者も法定要件を満たしていることを確認している。この委員については、14名の推薦があったものであり、審査委員会においては、あらかじめ設けた審査基準により候補者の適正について審査を行い、多くの団体から推薦があったことなども考慮し、今回の人事案をご提案申し上げたものである。

【斉藤議員】
 岩手漁民組合から4人の推薦があったが、現職の蔵徳平さんだけが再任になり、現職であった菅野修一さんは外された。おそらくこの間の海区漁業調整委員会で一番発言してきたのは菅野修一さんではなかったか。議事録を見ているか。

【海区漁業調整委員会事務局長】
 お話の通り、委員会においては菅野修一委員の発言が多かったのはその通りである。

【斉藤議員】
 一番漁民の立場に立って発言してきた委員をなぜ外すのか。選挙で選ばれた人である。そして年も68歳で比較的若い。蔵徳平さん以外は全て漁協の組合長である。これだったら組合長会議をやっているようなものである。
 先ほどの選出基準のところで、法定要件、漁業に関する識見、職務の適切な遂行能力、その他・地域振興への貢献というのもある。県漁連の会議をやるのではないのだから、漁協の組合長だけで構成したらまともな議論にならないのではないか。実際になっていない。なぜ漁民の立場に立って発言してきた委員が今回外されたのか。どういう審議がされたのか。

【総務部長】
 この選任にあたっては、審査基準に則り審査を厳正にしてきたところである。その際に、委員からもご指摘あったように、これまでの委員の経験の有無についても審査基準の中に置いて、漁業に関する識見を有し職務を適切に行うことができることということに該当するということで、審査項目の中でも審査の観点としているところである。その他にも、斉藤委員からもご指摘あったように、漁業の知見・精通度、業務の適切な遂行能力、地域振興への貢献等さまざまな点を勘案し、適切な者を選任したという流れである。

【斉藤議員】
 構成からいっても、それぞれの地域の漁協の組合長だけで構成するといった場合、県漁連の会長がいてモノが言えないと。実際に発言していない。
 そして、例えば漁業権、これは大変重要な権だが、実質個人が経営する定置網の漁業権というのが今までそれが優先されてきたこともある。だから、本当に漁業をやる漁民の代表に立って意見する方々がこういう漁業権の審議には必要だと思うがいかがか。

【海区漁業調整委員会事務局長】
 漁業権の話が出たが、漁業権の審議に関しては、委員会においても重要な審議事項ではあるが、決して組合長の委員が多いからといって審議が深刻になるというようなことはないと考えている。

【斉藤議員】
 法定要件では「90日間以上漁業に従事する」となっている。90日間以上従事していない方々がいるのではないか。

【総務部長】
 公募により推薦または応募があった委員候補者については、国が定めたガイドラインの助言にしたがい、岩手海区漁業調整委員会委員候補者審査委員会を設置し、法定要件、候補者の適正等について審査を行っている。
 漁業者または漁業従事者から任命される委員候補者については、漁業法第138条第5項に定める法定要件について、所属する漁協等に確認を行っており、いずれの委員候補者についても同要件を満たしているということで回答を得ている。

【斉藤議員】
 それは違うと思うので説明してください。

【総務部長】
 ご指摘は「90日間以上漁業に従事している」かどうかだと思うが、これについては、国の方でも確認しているが、組合等に従事された役員の方については、海区漁業調整委員会委員の要件を有することは当然のことであるということで国の方から回答を得ており、他県でも同様の整理をして取り扱いをしていると聞いている。

【斉藤議員】
 解釈はいろいろあるかもしれないし、その法的根拠も聞きたいが、実際に90日以上従事していない人は何人いるか。

【総務部長】
 役員等をされている方で3人と聞いている。

【斉藤議員】
 90日間以上漁業に従事するのが原則である。漁協の組合長の場合には「それで良い」というような解釈になり、そこに法的根拠がどれだけあるか分からないが、本来90日間以上従事している人を選ぶべきではないか。

【総務部長】
 この整理は、実は法改正の旧法の時からもそういう形の整理が一定されており、まさに斉藤委員からご指摘あったように、役員等をされていた方は現実には漁等に実際従事されていない場合もあるが、それは社会通念上、漁業者または漁業従事者であることは明らかであるということでこれまでも解釈されてきたところである。
 今回法改正されたが、新法においてもこの考え方は変わらないということで、これは我々もしっかり国に確認しており、あるいは他県の運用などもきちんと調べた上で、適法な取り扱いだと確認している。

【斉藤議員】
 推薦名簿の中には、三陸漁業生産組合の瀧澤英喜さんも推薦されていた。マスコミでも紹介されるような地域振興の役割があったが、なぜ外されたのか。

【総務部長】
 先ほどから答弁申し上げている通り、法定要件、国のガイドライン、それを受けて審査基準で厳密に項目を選定して、それに基づいて項目を満たされるかどうかにより適正な方かどうかを厳正に審査委員会で審査した上で、選任させていただいた。