2021年3月4日 文教委員会
岩手県教職員働き方改革プランに対する質疑
(大要)


・長時間勤務の問題について

【斉藤委員】
 今度の改革プランの「はじめに」のところで、この位置づけがすごく大事なんだと思うんですね。2行目のところに、「全国的に教職員の長時間勤務の実態が看過できない状況にあります」と。そして3つ目のパラグラフでありますけれども、「学校における働き方改革を推進していくことは、引き続き県教育行政の最重要課題と捉えている」と。この立場でね、真剣に改善をしていただきたいと。
 A3の資料でも、この本文でいくと8ページでもこの間の実績が出ていますけれども、令和2年度の実績というのは、特殊事情と見た方が正確なのではないかと。新型コロナ禍の下で、さまざまな部活動含め行事も制限をされたということですから、皆さんの努力でこの結果になったのではないのではないかと。ただ、もう削減する、縮小する事業というのを今年やって、思い切って削減・縮小を継続するものは継続すると。こういう風に生かすべきではないのかと思いますが、まず最初にこの点からお聞きをいたします。

【教職員課総括課長】
 まさにそのように考えておりまして、その考えを3の環境変化のところにも明記したところでございます。あわせてですね、14ページで、「3:学校における業務改善」ということで、1つの例ですけれども学校行事の見直しということで、学校でもかなり今年度見直しを等を行われたということで、これを今後も継続可能なものについてはやっていくということが非常に大事だと。このコロナでの経験を繋げていくということが非常に大事だと考えております。

【斉藤委員】
 実は私もいただきましたけど、働き方改革に関する教職員アンケート調査結果というこので、「職場でもっとも改善してほしいものは何ですか」と。第1位「業務の全体量を減らしてほしい」と。第2位は「非効率な業務の多さ」、これで約60%ですよ。だから圧倒的に業務量が多いと。非効率な業務が多いと。だから今回、コロナという特殊事情の中で、やれなかった、縮小した、それを安易に戻さないで、やはり思い切ってこれを契機に業務量の縮小改善につなげていただきたい。
 第2点目に、しかし深刻な実態の把握というのが、ちょっと正確ではないのではないかと思うんですね。100時間以上の教員、80時間を超えた教員、パーセンテージ出てますが、実数を示してください。

【教職員課総括課長】
 人数で見ますと、月平均100時間以上の職員は令和元年度154人、今年度は10人でございます。80時間・100時間の間の人数については、令和元年度は179人、今年度は120人となっております。

【斉藤委員】
 それで実は、人事委員会が毎年超過勤務の実態調査、事業所調査をやっているんですね。
 最初から驚くんだけれども、教職員の場合は「月100時間以上」の調査なんですよ。その他の職場は「30時間以上」の調査なんですよ。分かります、この落差。教職員だけが100時間以上の調査になっているんです。
 それで、今年の調査は令和元年度の実績調査です。これ昨日もらった調査ですけれども、100時間を超えた令和元年度の実数は668人・19%、これは一月でも100時間を超えた、19%というのは5人に1人ですよ。先ほど、月平均で言うんだけれども、この月平均という評価が曖昧なんじゃないかと思いますよ。
 それでこの本体の資料の中に、6ページなんですけれども、良いこともやっているんですね。「令和2年4月より、時間外在校等時間月100時間以上の者は必須とした」と。これ保健指導、医者の面接を受けるという。これやっと令和2年度から実施をされて、県は2年度は60人受けています。だからおそらく月100時間を超えたのは60人以上なんですよ。だから把握できているんです。平均なんて曖昧なことじゃなくて、やはり月100時間を超えた教職員の数で見て、100時間を超えたら医師の面接指導をしっかり受けると。やっとこうなってきたので、今まで100時間を超えてもほとんど面接指導を受けてこなかったのが学校の実態です。やっとこういう風に必須化・義務化されましたので、これは一歩前進ですけれども、正確にそういう深刻な実態を把握することが必要なのではないかと。いかがですか。

【教職員課総括課長】
 正確な状況の把握が取り組みの基本だと思います。ただ、人事委員会の数字は実人員で、まさに1回でもやったことがある人が昨年度668人いたと。私が説明したのは、一月で平均すると去年だと154人がやっていると。これが平均で減っていけばそういう人も減っているということですので、働き方改革を進める観点では、一月でもやった人を1と数えるよりは、全体の中でそのぐらいの人が長い時間働いているんだと。その割合を減らしていくという方が適しているのではないかと。そこはそういう考え方でございます。

【斉藤委員】
 私はそう思いません。一人一人の数で把握すべきですよ。いわば一人でも100時間を超えたらなくすと。これが目標なんじゃないですか。平均じゃないんだと思いますよ。100時間というのはそれ自身異常なんだから。過労死ラインを超えているんだから。それは平均という問題ではなくて、一月でもそういうことがあったら異常だと感じて無くしていくと。平均の話じゃないですよ。生身の、一人一人の人間の100時間を無くすという、そういう風に、リアルに正確に、そして人事委員会の調査と合うような実態を明らかにしていくことが必要なんではないかと。

・学力テストについて

【斉藤委員】
 3番目に今後の改善の方針なんですけれども、全体の業務量を減らすということの中で、私がこの間繰り返し言ってきた岩手県版学力テスト―学習状況調査、これは私たちの提起もあって、いろいろ市町村教委と意見交換したりやってきた。私はてっきりこれはもう来年度から無くなると思って確信を持っていたんだけれども、科目を減らすだけにとどまりました。きわめて残念。全国的には17県ぐらいがやっていないんですよ。やらなくても弊害ないと思うんですよ。やっぱりテスト漬けの教育を見直すというのが、本当に日本の教育を歪めているんだと思いますよ。
 不登校の議論も本会議でありましたけれども、子どもたちのアンケートをやったら、何が不登校の原因かと。「テストを受けるのがつらい」と。「授業が分からない」と。そして「テストでランク付けされるのがつらい」というんですよ。これが不登校の子どもたちの生の声です。本当に何でも点数で評価されて、行きづらくなってきている。そして全国学力テストもそうですけど、やってから何ヶ月も経ってから結果が出て、それが本当に生かせるかといったら、生かせないですよ。これは現場の声ですよ。県の学習状況調査も、建前は活用していると言っても、現場の先生は「そんな活用できるものではない」と。少なくとも、傾向をつかむような試験、何年に1回やれば、あとは教員が責任を持って一人一人に行き届いた教育、到達度が違うんだから、理解度も違うんだから、それを一番分かっているのは学校の先生ですよ。それが教師の力量なんでしょ。私はそういう、直接子どもたちに接している、教えている教師が、一人一人の理解度・到達度に合って、やはり指導する、教育する、そういう余裕こそ一番大事なのではないかと。
 なんで県の学力状況調査は科目を減らすだけにとどまったんですか。なんで無くせなかったんですか。

【学力向上課長】
 市町村教育委員会等との意見交換で、やはり採点業務、調査結果も含む負担が大きいというご意見を頂戴しました。あわせてその一方で、児童生徒一人一人のつまづきの把握であったり、授業改善に活用しているという意見もやはりありました。そのような意見を踏まえて、
 児童生徒の一人のつまづきの把握、教員の授業改善と、でも負担もあると。その両立を図りまして、ご提案申し上げたところでございます。
 議員おっしゃる通り、各学校、市町村でも、さまざま学力向上の取り組み、実態把握をしております。その学力向上の取り組みを、県教育委員会としても何とか後押しをしたいと、支援をしたいということで、県としても一つの手段として調査をしながら、やはり学力向上の取り組みをしているんですが、苦労している学校もございますので、なんとか一緒に歩んでいきたいというところで、2教科ということで進めていきたいと考えていたところです。

【斉藤委員】
 全国学力テストも、県版の学習状況調査も、一番の弊害は何かというと事前学習なんですよ。結局、結果・成績が出るとランク付けされるんです。これ学校ごとに。だから学校の目標というのは「平均○点にしましょう」と、これが学校の目標になるんですよ。そして、例えば全国学力テストは今まで4月にやってきましたから、3月4月は特別期間で、過去問をやるんですよ。だからそういう形で歪めているのが今の教育の実態だと。そしてそのことは何度も言いますけれど、国連子どもの権利委員会で「異常な教育的競争制度になっている」と。「子どもたちの正常な発達を阻害している」とまで何度も繰り返し指摘されていたのが日本の教育の実態なんですね。だからそういう点で、このテスト漬け・競争教育というのが子どもたちを苦しめ、教育を歪めていると。ぜひ子どもの権利条約、国連の勧告、何度も出されている勧告のこの部分を、1つは教育委員会議でしっかり受け止めていただきたい。岩手の教育の実態と合わせて。このことは提起をしておきます。ぜひ、これはグローバルスタンダードから見てそうだということなんですから。テストがない国が、PISAの試験で世界のトップクラスだということもあるのですよ。だからテスト神話に陥らないでやることが必要なんではないかと。

・部活動の問題について

【斉藤委員】
 最後ですけれども、先ほど小西さんも取り上げたけれども、この超過勤務のところでですね、土日の部活動の時間は超過勤務の時間に入れないと。じゃあこれは何の時間なんですか。これだったら一週間、本当に教員が働いた時間の把握はできないんじゃないでしょうか。こんな例外をつくるようなことではだめなのではないかと。部活動が弊害だというなら、土日、やむなくやっているんでしょう。ボランティアでやっているわけではないでしょう。教師としてやっているわけでしょう。なんでこれが除外されるのか。除外すべきじゃないんじゃないか。除外する根拠はどこにあるのか。このことを示していただきたい。

【教職員課総括課長】
 時間外在校等時間には当然週休日の部活動も含まれますし、これの把握も行います。それから、今回の働き方改革プラン、今後3年間のプランの中での取り組み目標としては、除いた形で集計して、その部分を45時間以内に抑えましょうと。含んだ形では100時間はいかないように、それはゼロにしましょうと、そういう形で設定したものです。これについては先ほどご説明したように、実際の状況として、遠征や練習の引率などをすれば、それだけでも時間がカウントされてしまうという本県の実情等もあり、そういった声もうかがった中で、この働き方改革を実際にどのように進めていくかと考えて、このプランの3年間の目標としてはこのように設定したものでございます。

【斉藤委員】
 そうするとダブルスタンダードということですね。これは岩手県だけの取り組みなのか、文科省もそういう風に指導しているのか。こんなダブルスタンダードだったらだめですよ。実態は歪められますよ。それを入れれば多くなるから入れませんなんていう、こんな労働時間の把握は絶対ないと思うので、岩手だけの取り組みだったらそれは見直して、やはり正確な事実に基づいて改善を図っていくということが必要だと思いますけれどもいかがですか。

【教職員課総括課長】
 在校等時間については、今まで通り部活動も含めて正確に把握いたします。ただ、このプランで指標とするときには除いた形でまず45時間の実現を図っていこうということで、こういうプランのやり方については岩手県独自、我々が考えてそのようにしようというものであって、在校等時間の把握を、部活動を除くとかそういうことではございませんし、プランの取り組みを進めるための目標の設定として、説明した通り2つの時間を設定しながら取り組んでいくということでございます。