2021年3月9日 予算特別委員会
千田美津子県議の総括質疑(大要)
(千田美津子委員)
日本共産党の千田美津子です。会派を代表し質問いたします。
1.ジェンダー平等社会の実現について
1) コロナにおける貧困の拡大について
ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関である国連ウィメンは「コロナ危機の経済的影響が弱い立場にある女性に重くのしかかっている」と指摘しています。さらに、女性の貧困は子どもの貧困でもあります。「学校給食だけがまともなご飯」と言う子どもたちや、高すぎる学費のもと、生活費のためにアルバイトを余儀なくされている学生、年金を補うために働かざるを得ない高齢者の貧困も深刻です。厚生労働大臣の指定を受けて自殺対策の調査研究を行っている「いのち支える自殺対策推進センター」の分析では、経済的支援を行う事で自死の増加を抑制する可能性が指摘されています。
このように、コロナ禍において困難を抱えている方々が、現状では潜在化しているのではないかと思いますが、県では、支援を必要とされる方をどのように把握をされ、支援につなげていこうとしているのかお聞きします。
(達増知事)
新型コロナウイルス感染症の流行が長期化していることにより、経済的な打撃を受けた 県民の皆様に対し、県ではこれまで、関係機関と連携し、生活福祉資金の貸付、ひとり親世帯への臨時特別給付金や住居確保給付金の支給などにより、生活の下支えに取り組んでまいりました。
一方で、このような支援制度の利用につながらず、潜在化している方々については、支援の情報が行き届いていない、又は、自ら支援を求めることが困難な状態にあると考えられますことから、地域の民生児童委員や民間の支援団体、福祉、教育、税務、住宅等の窓口において、支援が必要な方を把握した場合には、支援情報を提供するとともに、生活困窮者自立相談支援機関等の相談窓口へ確実につなぐ取組が重要であります。このため、県では、こうした方々の情報を関係機関が共有し、早期発見や迅速な支援の開始につなげるため、生活困窮者自立支援法に基づき、町村部を所管する県や市が設置する「支援会議」の取組を各地域において更に進めるなど、地域における関係機関等の連携体制の強化を図り、様々な困難を抱えた方に対する包括的な支援の充実に努めてまいります。
(千田委員)
支援会議とか、様々な形で支援につなげるということで是非これは大変潜在化してると思われますので引き続きよろしくお願いいたします。
2) ひとり親家庭への新たな給付金の支給について
(千田委員)
コロナ禍で、特に非正規労働者の雇用環境が悪化しており、子どもの貧困が深刻化していると言われています。昨年11月独立行政法人労働政策研究・研修機構が実施した「新型コロナウィルス感染症のひとり親家庭への影響に関する緊急調査」によれば、ひとり親世帯で「生活が苦しい」は約6割、「直近1ヶ月間に必要な食料が買えないことがあった」は36%に上っています。貯蓄ゼロのひとり親世帯が24%。政府はこの調査に基づいて年末にひとり親家庭に臨時給付を行いましたが、1世帯あたり5万円、子どもがひとり増えるごとに3万円にとどまっております。そのあと、平時でも貧困状態だったところに、さらに追い打ちがかけられている深刻な状況があります。
このようなひとり親家庭の状況について、知事はどう把握されているでしょうか。また、これらへの対応として、新たな給付金が必要だと考えますがいかがでしょうか。さらに、県としての支援も急務と考えますが、いかがでしょうか。
(達増知事)
ひとり親家庭の状況については、広域振興局等に配置した母子父子自立支援員による相談や、市町村、母子福祉関係団体等を通じて、随時実態の把握に努めているところであります。
これまで、市町村等からは、就業などに関する相談が寄せられたと聞いているほか、先に開催した、母子福祉団体等で構成する「岩手県ひとり親家庭等サポートネットワーク会 議」においては、保育サービスや子どもの教育費などに関する相談が寄せられていると伺っているところであります。ひとり親家庭への給付金については、国では、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、補正予算の編成等により「ひとり親世帯への臨時特別給付金」を創設したところであり、 昨年12月末現在、県及び市を通じて10,336世帯に支給し支援しているほか、県内18市町村において、国の臨時交付金等を活用し独自の支援を行っているところであります。
県としては、収入の減少など、生活への影響を受けているひとり親家庭については、継続的に支援していく必要があると考えており、全国知事会を通じ、対策を講じるよう、緊急提言を実施したところであります。
今後も、引き続き、全国知事会と連携して、ひとり親家庭への継続的な支援など、将来世代等を応援するための対策について国に働きかけて参ります。
(千田委員)
知事の継続的な支援が必要だということで、全国知事会として要望してきているということですが、市町村窓口等への相談があった方だけではない積極的な調査が求められているというふうに思うわけですが、その点いかがでしょうか。
(菊池副知事)
委員ご指摘のとおり、様々な場面において地域、地域で気づき、そして連絡し、連携して対応していくということが基本になってございますので、例示的に窓口等での相談があった場合ということでお話をしましたが、常にアンテナは張って察知できるように、また気軽に安心して相談できるような体制を作っていく必要があると認識しているところでございます。
3) 雇用への影響について
(千田委員)
厚生労働省は3月1日、新型コロナウィルス感染拡大に関連する解雇や雇い止めは、見込みを含めて2月26日時点で累積9万185人になったことを明らかにしております。
また、総務省の労働力調査によると、今年1月の非正規雇用労働者は前年同月比で91万人減少し、11か月連続減少、女性の減少数は男性の倍以上となっています。新型コロナの影響で、雇用に大きな影響を受けた女性の26%が「精神的に追い詰められた」と回答しており、全労連の無料相談には、昨年の春は解雇・雇い止めの不安を訴える電話が多数寄せられましたが、秋になると「死にたい」と言う電話まであり、大変深刻な実態となっています。
このような状況に対し、どのようにお考えか、また県内の状況をどう把握されているでしょうか。
(保副知事)
まず、現状についてでございますけれども、今、委員からお話のありました解雇等見込労働者数が90,185人というのは、そのとおりでございます。これは、全国の数字でありますので、これに対応する岩手県の数字ということで申し上げますと、722人ということでございます。
岩手労働局によりますと、12月以降は、伸びが鈍化している傾向でございます。
今、委員からお話のありましたとおり、非正規の方の状況というのは重く受け止めたい と思います。
県では、解雇や雇止めとなった労働者等の早期の再就職に向けまして、これまでも各種の職業訓練を実施しておりますけれども、「ジョブカフェいわて」、あるいは県内9か所においております「地域ジョブカフェ」においてカウンセリングやセミナーの開催等により、できるだけきめ細かな個別支援を行っていきたいということでございます。
また、11月以降は、県内2地区において離職者向けの企業面談会なども実施するなど、 再就職の支援を強化しているところであります。
国の雇用調整助成金等の特例措置が4月30日まで延長になっておりますが、引き続き関係機関と連携して県内企業等へ活用を促して、非正規労働者を含む労働者の雇用の維持を図ってまいります。
また、国に対しては、今後も必要に応じ特例措置の更なる延長を働きかけていくという考えでもあります。
(千田委員)
本県の非正規労働者の7割が女性で、その多くを占めるパートタイムの労働者の賃金は、正規労働者の6割程度の水準にとどまっています。安く使えて、首にしやすい非正規雇用を雇用の調整弁として増やし、フリーランスを含めて、無権利状態を広げてきました。女性活躍だ、多様で柔軟な働き方だと、たいへん聞こえのいい看板のもとで押し付けてきた雇用破壊の矛盾が、いまとりわけ女性に集中的に表れています。これらの解決のためには、格差と貧困を解消し、誰ひとり取り残さない社会の実現(まさにSDGs実現)が求められるのであり、人間らしく働くことが出来る「働くルール」を確立することだと考えますが、知事はどのようにお考えでしょうか。
また、常用雇用の労働者でも、男女の賃金格差が存在しており、女性労働者の4割は年収200万円以下のワーキングプアとなっています。ジェンダー平等1位のアイスランドは2022年までに男女の賃金格差をゼロにしようと取り組んでおりますが、世界121位の日本は全くやる気がないとしか思えませんが、この状況について知事はどうお考えでしょうか。また、県内の状況について、どう把握されているかお聞きします。
(達増知事)
労働条件は、労働基準法や男女雇用機会均等法の趣旨を尊重し、労働者が人間として価値ある生活を営むための必要を満たし、男女の均等な機会及び待遇の確保が図られたものでなければならないと認識しております。
同一労働同一賃金の原則についても、これが遵守されるよう、国を挙げて取り組んでいくべき重要な課題と捉えております。
本県においては、平成29年就業構造基本調査によれば雇用者に占める非正規の職員・ 従業員の割合は男性で21.4%、女性で52.2%となっているほか、令和元年賃金構造基本統計調査では女性の所定内給与は男性の78.3%となっています
このことから、女性の所定内給与が男性の8割程度にとどまっているのは、女性労働者に占める非正規雇用者の割合が高いことが一因と考えられますことから、県では、岩手労働局などと連携し、県内経済団体に対して正社員への転換や処遇改善の促進について継続的に要請しているところであります。
また、「いわてで働こう推進協議会」を核として、仕事と生活の両立に向けた環境整備 につながる働き方改革の取組を展開し、女性を含めたすべての人が働きやすい雇用労働環境の整備を推進しているところであり、このような取組を通じ、女性の労働環境の改善を促進してまいります。
(千田委員)
今、現状認識についてお答えいただきました。一つだけ質問しますが、女性労働者の多い看護師とか介護士、保育士などのケア労働について、補助的業務、女性の家庭労働の延長だとしてこの間評価されてきませんでした。岩手県のこれらの人材不足は特に深刻でありますので、ケア労働者の抜本的な処遇の改善が今こそ求められるとていると思いますが、どうでしょうか。知事にお聞きいたします。
(達増知事)
看護、介護等のケア労働者の待遇でありますけども、岩手県の中のことだけで考えても県民の政策的な関心は、医療・健康の問題というのがアンケートでもトップです。
そういう県民の最も関心のある分野を支える重要な仕事でもありますので、そういった仕事がいわゆるブラックな働き方になっていて、非人道的な扱いがなされているということではこれはもう県民生活の全てが根本から崩れることと考えます。いま新型コロナウイルスの流行の中で平素からそうそういったケアの働く現場の大変さということがあるということが改めて見える化されているわけでありますが、好材料としては県で呼びかけている医療現場等の苦労している皆さんへの励まし、激励のメッセージというものが非常にたくさん寄せられています。県民にも看護や介護の現場で働く皆さんには人間的でやりがいをもって、そして人間として尊厳ある生活が可能になるような収入が得られるということは、これは県民すべての意志であると言っても過言ではないと思いますので、県としてもそういうふうに進めていきたいと思います。
2.コロナ対応と医師・看護師等の確保策について
1) コロナ感染症対応の過酷な状況について
(千田委員)
感染拡大が収まらない中で、とりわけ新型コロナ感染症患者等に対応されている医師始め関係者の皆様には、心から感謝と敬意を表するものです。今年1月に岩手医労連がコロナ患者に対応している看護師に実施した緊急アンケートには、想像以上の悲痛な声、実態が寄せられています。「子どもが通っている保育園の先生で自分を医療関係者と知っている方が、地域で感染者が出た際に自分から距離を取るようになった」「家族に移さないよう気を遣い、自宅では食事も離れて食べたり、寝室も別にしている」「一般病棟のスタッフに院内で会わないように気を遣った」「コロナ患者の対応をしていると言ったら、歯科受診を断られた」「自分が留守の間に洗濯物を燃やされた」「病院でコロナを受け入れているとわかると、子どもの試合の応援に来ないように言われた」等々。本当にどんなにか辛く、肩身の狭い思いをしながら、防護服やN95マスクを付けながら、過酷な状況の中で日夜働いていたかと思うと、本当に心が痛みます。これが県民の生命を守るために、頑張っておられるスタッフの実態であり生の声であります。
知事はこのような状況に対し、どのような感想をお持ちかお聞きします。また、現場で頑張っておられる皆さんに改めて、メッセージをお願いいたします。
(達増知事)
まず、コロナ患者に対して、適切な医療を提供するため、自分自身が感染する危険がある中で、日々奮闘している県内の医療関係者の皆様に感謝を申し上げたいと思います。
県では、これまで知事メッセージにより誹謗中傷や差別的扱いをしないよう発信してき たほか、定例記者会見では誹謗中傷等に対して「鬼になる必要もあるかもしれない」とい う表現で、厳格に望む姿勢を示すなど、県民の皆様に対して、強くお願いしてきたところであります。このような中、県内の医療関係者から寄せられた声は、想像する以上に大変辛く、悲しい気持ちになるものであり、医療従事者の方々が受ける精神的・身体的な苦痛は、計り知れないものがあると言えると思います。
県では、県民の皆様の感謝と労いの言葉が大きなものとなって医療関係者等の励みにな るよう、公式LINEアカウントで、医療関係者等に対するエールを募集し、ホームペー ジやLINE等で公開しているほか、エールをまとめたテレビCMを放映するなどしております。
今日、本県における新型コロナウイルスの感染が落ち着いている状況となっていることも、医療関係者の皆様の活躍が非常に大きいと考えており、改めて感謝申し上げるとともに、県民の皆様も、引き続き医療関係者等の皆さまにエールを届けていただくようお願いしたいと思います。
(千田委員)
県ではエールを募集しているということですが、募集しなくてもそういう自然とそういう言葉が言葉が伝わるような優しい県民性があると思いますのでそれにさらに期待をしたいと思います。ただ現場は使命感だけではすまされない、まさに命がけで対応しているのが実態であります。引き続き危険手当の支給はもちろんですが一層の支援策が必要だなと思います。また岩手医労連がこの間求めたようですが、PCR検査体制のルール化を是非やるべきだと思いますがこの点お聞きをいたします。?
(菊池副知事)
県としても専門家会議等での検討をベースに、それぞれ医療関係者に対しても、手厚い 支援が出来るよう考えていきたいと思います。
また、PCR検査を含め、医療現場のタイムリーな課題について、専門家会議等に検討いただきながら対応していきたいと思っているところであり、今後も危険手当はこれから功を奏してくる対応だと思っているところですが、国や全国知事会に対し、引き続き医療現場の環境改善のため要望していきたいと考えております。
(千田委員)
岩手県内では、県立病院をはじめとする医療機関における看護師不足が深刻ですが、岩手の医療を支える看護師の確保策についてお聞きします。
(菊池副知事)
医療の高度化や働き方改革の進展に伴いまして、看護職員の需要の増加が予想されるこ とから、県では、いわて看護職員確保定着アクションプランに基づき、県内就業者の確保に向けた取組を推進しております。
具体的には、中高生向け進学セミナーなどの「養成確保対策」、看護職員修学資金の貸付や就職説明会などの「定着対策」、未就業者を対象とした復職支援研修などの「潜在看護力の活用対策」、認定看護師養成研修などの「資質向上対策」が行われているところですが、今年度は、学生や県外で働く看護師などを対象に認定看護師等によるオンラインでの講演会の実施、医療関係者等に対する県民の皆様からのエールをまとめたテレビCMなどの取組を行っております。
今後におきましても、こうした取組に加え、SNSを活用した情報発信などによるきめ 細かな就業支援等を推進し、看護職員の確保定着に努めてまいります。
2) 医師確保策―JOYサポート及び仕事と家庭の両立のための支援制度について
(千田委員)
1月13日に環境福祉委員会が開催した県内女性医師とのWEB会議は、子育てしながら現場第一線で働く女性医師の皆さんの「女性医師から見た県立病院の課題」について率直な声をお聞きすることが出来、非常に有意義でありました。
特に、県医療局の院内保育所が充実しており、JOYサポート利用者は職せず働けるため、女性医師が減少していないこと、さらに多くの女性医師が育児短時間勤務を取得し働き続けており、課題はあるものの心強さを痛感したところです。また、他県出身の医師が一昨年12月に飛び込みで就職について相談に来た際、時短勤務があることから県内への就職を決めたと語りました。彼女は、「たまたま岩手に来た人を取り込める力が岩手にはある」と語ってくれた事が印象的でした。
岩手のJOYサポートプロジェクトは、知事に対し女性医師が「子育て中の女性医師の現状と課題」についてのプレゼンテーションを行った事がきっかけとなったとお聞きしましたが、JOYサポートプロジェクトについて、知事はどのように評価しておられるかお聞きします。
(達増知事)
全国の医学部進学者に占める女性の割合の増加に伴い、特に若い世代における女性医師の割合は3割を超えており、医師確保が課題となっている本県において、女性医師が出産、子育てをしながら働き続けることができる環境の整備は極めて重要であると考えております。医療局が平成28年度から取組んでいる「JOYサポートプロジェクト」においては、女性医師との意見交換を重ねながら、仕事と家庭の両立のために必要となる支援策として、他県に先駆けて育児短時間勤務制度の対象となる子どもの年齢の拡大や柔軟な勤務時間の設定、病児保育の導入等に取組んできたものであり、これまでの取組によって、今年度は、20名の女性医師が育児短時間勤務制度等を利用して勤務を継続しているほか、育児短時間勤務を前提に新たに採用した女性医師が、県外からの採用者2名を含めて4名となっているところであります。
また、先月行われた「知事と県立病院に勤務する医師との懇談会」において、勤務医の方からJOYサポートプロジェクト利用者を対象とした満足度調査の説明をいただきました。プロジェクトの満足度は10点満点中8.4点と高い評価であるとの報告を受けました。
このようなことから、これまでの「JOYサポートプロジェクト」による仕事と家庭の両立のための支援制度の充実に向けた取組により、女性医師の新規採用と離職防止が図られ、全体として本県の医師の増加につながっているものと考えております。今後とも医療局には医師が働きやすい環境整備に向けた積極的な取組を期待しています。
(千田委員)
私は今回の女性医師との懇談を通じて、女性医師が働きやすい環境は、男性医師にとっても働きやすい職場につながると確信しました。そのため、医師全体への支援を充実させていくことが、医師不足の解消を図り、医師定着に大きく影響するものと考えますが、知事はどのようにお考えでしょうか。
(達増知事)
全ての職場において、性別や年齢、障がいの有無にかかわらず働きやすい勤務環境が求 められており、こうした視点が、医療現場における医師の確保定着にも重要と認識しております。
このため、県では、先ほど答弁いたしました「JOYサポートプロジェクト」などによる女性医師への支援のほか、医師を始めとする医療従事者の勤務環境を改善するため、岩 手県医療勤務環境改善支援センターを設置し、社会保険労務士等のアドバイザーや研修講 師の派遣、勤務環境改善に係る設備整備等に対する補助などの支援を行って参りました。
また、令和6年度から医師に対して時間外労働の上限規制が適用されますことから、地 域の医療提供体制を確保しながら医師の労働時間短縮を強力に進めていく必要があります。このため、今般の補正予算及び当初予算案に、二次救急医療機関が実施する勤務医の労働時間短縮のための取組を支援する経費を計上したところであります。今後も、医療機関における勤務環境の改善の取組を支援し、医師の確保・定着を図って参ります。
3) 医師の養成と確保策について
(千田委員)
地域医療充実の上での課題は、医師の養成と確保及び定着であります。そのため、この間強化してきたのが奨学金等医師養成事業、医学部進学者の増加対策、奨学金医師の計画的な配置などでありますが、それぞれどのような状況にあるでしょうか。
また、この間、医師をめざすこれらの方々との懇談はどの程度実施されてきたのでしょうか。その手ごたえを知事はどう感じているかお聞きします。
(達増知事)
県では、平成20年度から、岩手医科大学の臨時定員増に対応して、県、医療局、市町 村の3つの奨学金制度により最大55名まで貸付枠を拡充し、これまでに在学生を含めて590名に対し奨学金の貸付を行っています。
この結果、県内の公的医療機関に配置される養成医師は、平成28年度の配置開始以来、年々増加し、来年度は100名となる見込みであります。県内高校生の医学部進学者の増加対策としては、地域医療に関する講演等を内容とする医学部進学セミナーを開催し、医師を目指す動機づけを図ってまいりました。
令和2年度からは県教育委員会と連携して、高校や地域に関係なく医学部進学を目指せ るよう、学力向上や意識醸成のための体系的・集中的なプログラム「岩手メディカルプログラム」を行っています。
また、医学生等との懇談については、例年、医学奨学生サマーガイダンスにおいて、県 民の期待や県の取組について理解を深めてもらうため私が自ら講演しているほか、卒後1 年目の臨床研修医に対して、合同オリエンテーションにおいて、激励や意見交換を行っております。
これらの医学奨学生や若手の医師からは、地域の医療に貢献したいという強い意思が感 じられ、将来、本県の地域医療の核となり活躍してくれるものと期待しています。
(千田委員)
知事としては手応えを十分感じられているということですが、新年度から100人が義務履行になるということですが、現在99人が猶予されているわけですがこれらの方々の見通しについてはどのようにお考えかお聞きします。?
(菊池副知事)
元々地域に貢献するという意思で修学されておりましたので、県としても順次就業されるように努めてまいる考えでございます。
4) 地域医療を担う医師の確保をめざす知事の会について
(千田委員)
達増知事が呼びかけ12県の知事によって発足した「地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会」は、昨年8月に厚労省に対し「医師不足や地域間偏在の根本的な解消に向けた実効性のある施策の実施を求める」提言を行いました。医師不足に悩む地方の声を率直に伝えるという点でまさに大きな一歩を踏み出したと思いますが、ここからが肝心だと思います。コロナ禍であるからこそ、私は次の一手に期待したいと思うのですが、知事はどのようにお考えかお聞きします。
(達増知事)
今般の新型コロナウイルス感染症の対応にあたっては、病床の確保とともに、医師をは じめとする医療従事者の確保の重要性が、改めて全国的に認識されました。
「地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会」としても、昨年7月に取りまとめた提言において、医学部の臨時定員増の恒久化などの医師確保に向けた内容のほか、新興感染症等に備え、医師だけではなく、看護師・薬剤師・臨床工学技士など、チーム医療を担う 医療従事者の養成・確保に向けた取組の強化についても提言を行いました。これらの提言の実現に向けては、国への働きかけとともに、医療・行政関係者の理解を得て、国民的な議論とするための機運醸成を図っていくことが必要と考えています。
このため、今年度は、自由民主党の「医師養成の過程から医師の偏在是正を求める議員連盟」における講演や、日本専門医機構との意見交換などを行ってきたところであり、来 年度は、更に全国の病院事業管理者会議において、知事の会の提言等について発信する予 定としています。
引き続き、医師少数県や医療関係者と連携しながら、実効性のある医師確保・偏在対策 の実現に向けた取組を進めていく考えです。
3.子ども食堂など子どもの貧困への対応について
(千田委員)
子ども食堂と学習支援の県内全市町村への拡大について、お聞きします。
子どもに食事や居場所を提供する「子ども食堂」が全国で5000箇所余りと去年6月と比べて40%近く増えたことがNPOの調査で分かりました。失業や収入の減少で生活に困窮する人が増える中、子どもへの支援や地域で居場所を作ることが重要だとして新たに開設する動きが広がっているそうです。
そこで、県内の子ども食堂開催状況はどうでしょうか。また、開設準備の状況は如何でしょうか。私は、コロナ禍であるからこそ、今こそ全市町村への拡大に向けた準備を進める必要があると考えますが如何でしょうか。また、今、開設できないところについてなぜ開設できないのか、その理由についてお聞きします。
NPOの湯浅誠理事長は、「子ども食堂は子どもと地域をつなぐ支援の拠点となっているため、小学校の校区ごとに子ども食堂があるのが理想で、今後広がるよう取り組んでいきたい」と語っていますが、県の目標を全市町村目標ではなくて、小学校単位で実施できるような積極的な県の取り組み姿勢が必要だと思いますので、併せてお聞きします。もいますのでどうお考えでしょうか。
(菊池副知事)
まず、いわゆる子ども食堂を含む子どもの居場所の拡大等についての御質問等について ですが、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴いまして、昨年12月現在では、「子どもの 居場所ネットワークいわて」に加入する37か所のうち、25か所が活動を休止しているも のの、そのうち11か所では、代替の活動として弁当配布などの食料支援を実施していると 聞いております。
また、県の補助を活用し、新たに、奥州市では1か所の開設が予定されております。今月中旬の活動開始に向け準備を進めていると聞いております。県では、いわて県民計画 (2019〜2028)政策推進プランにおきまして、子どもの居場所の全市町村での実施を掲げておりまして、開設等の経費への補助や、ネットワークに配置したコーディネーターによる立ち上げ・運営に関する支援などを行っております。これら、子どもの居場所の開設に向けては、運営団体等との意見交換などから、課題として、立ち上げに要する経費、安定的に運営するための物資や財源等の確保、食事や遊び場等における安全確保、運営等に関するノウハウの不足、スタッフの育成などが課題として認識されているところでございます。
次に、いわゆる子ども食堂の整備についてのご質問でございますが、本県では、本年1 月末現在、20市町村52か所の取組に拡大しているところでございますが、一方で、御案内のとおり広大な県土を有し、人口の集積度合いや、いわゆる都市機能の分布密度などが、先生御指摘のような、いわゆる都市部との状況とは大きく異なっている状況にあります。そうしたことから、まずは市町村域レベルでの取組が実施されていくよう支援しているところでございます。また、子どもの居場所につきましては、いわゆる子ども食堂のほか、放課後児童クラブや放課後子供教室、児童館などございますので、関係機関と連携し、住民の参画も促しな がら、多様なニーズに応じた子どもの居場所の確保に努めていく考えでございます。
(千田委員)
今の答弁を進めていただきたいと思いますが、子どもの権利として是非見える形での推進をお願いしたしということを申し上げて終わります。