2021年3月10日 予算特別委員会
復興局に対する質疑(大要)
・被災者の状況について
【斉藤委員】
東日本大震災津波から丸10年を迎える被災者の状況について質問したいと思います。
今日2月末の被災者の状況という資料をいただきました。2月末の県外在宅というのが779世帯1532人となっていますが、この実態をどう把握しているでしょうか。
【生活再建課総括課長】
県内在宅とありますのは、内陸への避難をされている方のことでありますけれども、その方々につきましては、避難先の居住市町村からの報告により把握しているところでございます。親類宅とか賃貸住宅等に入居する方、あるいは内陸に自宅を再建された方など、令和3年2月末現在で、779 世帯1,532 人が被災地から内陸に避難されているという風に把握しているところでございます。
【斉藤委員】
例えば、その中での自立再建とか、民間アパートとか、そういう内訳は分かりますか。
【生活再建課総括課長】
申し訳ありません。そこまでの統計はとっておらないところでございます。
【斉藤委員】
ぜひ実態を正確に把握していただきたい。
被災者の状況の中で、県外に移動している472人となっています。これは基本的には岩手に戻る意思のある方々と聞いていますが、この状況をどう把握しているでしょうか。
【生活再建課総括課長】
県外への避難されている方の数につきましては、避難された方が避難先の自治体に届け出た情報、それから昨年度行いました避難者実態調査等により把握しているところでございます。令和3年2月末現在で472人となっております。
令和元年度に県外及び県内市町村に避難している方々の帰郷希望の有無を確認するため、「県外及び県内避難者実態調査」を行ったところ、回答いただけなかった世帯もあったことから、来年度改めて実態調査を行いまして、避難者の状況を把握して、ふるさとへの帰還意思を確認した上、帰還への支援など避難者のニーズに応じた支援を引き続き行ってまいりたいという風に考えております。
【斉藤委員】
他県にいる472人というのは、基本的には県内に住民票があると。そして岩手に戻る意思があると。そういうことでいいですね。
【生活再建課総括課長】
住民票につきましては、県内に残したままと考えておりますけれども、必ずしも472人全員が帰郷の意思があるという風には確認できていないところもございます。それもありますので、来年度実態調査を改めてやらせていただきたいと思っております。
【斉藤委員】
内陸被災者支援センターがこれまで県外のこういう被災者を含めて、直接訪問したり面談したり、意向をしっかり掴んでいるんだと思うんですけれども、内陸被災者支援センターの取り組みはどうなっていますか。
【生活再建課総括課長】
平成28年5月に設置しました、いわて内陸避難者支援センターでは、内陸及び県外に避難されている方の住宅再建に係る意向の把握、それから相談対応等を行うほか、恒久的な住宅に移行した後においても、課題を抱える被災者の方々の支援を行ってきたところでございます。令和3年2月末までの間で、延べ7587人、それから12716件の相談に対応したところでございます。
【斉藤委員】
内陸被災者支援センターが令和2年度も812人の相談を受けているわけで、先ほど実態は分からないと。内陸被災者支援センターは今年度末までですよね基本的に。来年度の調査はどこがやるんですか。
【生活再建課総括課長】
来年度行います避難者の実態調査につきましては、今回議会の方にお願いしております「いわて被災者支援センター(仮称)」でございますけれども、こちらの方で引き続きやるということで考えております。
【斉藤委員】
いわて内陸被災者支援センターは本当に5年にわたって、他県に避難した方々を直接訪問するなど、かなりきめ細かい支援と相談をやってきたと。これは大変膨大な資料だと思うので、これはしっかり受け継いで来年度の新たな被災者支援センターにつないでいただきたい。
・災害公営住宅のコミュニティの確立について
【斉藤委員】
災害公営住宅のコミュニティの確立についてお聞きをいたします。
2月末段階で、災害公営住宅には5249世帯、9252人が入居しています。65歳以上の高齢者、高齢者一人世帯の状況をどう把握しているでしょうか。
【生活再建課総括課長】
災害公営住宅の65歳以上の高齢者および高齢者一人世帯についてですが、把握している直近の数字によりますと、令和2年12月末現在で、災害公営住宅に入居している9,145人のうち、65歳以上の高齢者の数は4,071人となります。
また、災害公営住宅に入居されている5,184世帯のうち、65歳以上の高齢者を含む世帯は3,153世帯、そのうち高齢者の一人暮らしの世帯は1,743世帯となっております。
【斉藤委員】
そうすると、これは12月末段階で、65歳以上4071人、そして一人暮らし世帯は3153世帯だけれども、高齢者の一人暮らし世帯は1743世帯ということですか。
【生活再建課総括課長】
1743世帯ということになります。
【斉藤委員】
今まで高齢者の一人暮らし世帯というのが約3分の1を占めると。そうすると今の話とちょっと違ってきますね。一人暮らし世帯は3割を占めるけれども高齢者世帯はそうではないということですか。
【生活再建課総括課長】
入居世帯が5184世帯で、そのうちの3割の1743世帯が一人暮らしの高齢者世帯ということになります。
【斉藤委員】
3153世帯というのは何の世帯ですか。
【生活再建課総括課長】
3153世帯は、65歳以上の高齢者の方の世帯ということになりますので、60%ちょっとということになります。
【斉藤委員】
それで、災害公営住宅のコミュニティの確立が大変重要な課題であり、高田一郎県議も本会議でこの問題を取り上げました。
災害公営住宅の集会所の活用状況というのを復興局は把握しているでしょうか。
【生活再建課総括課長】
災害公営住宅の集会所の活用状況につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響もありまして、利用を控える傾向にございましたが、昨年12月末時点の集会所の利用回数は、感染症対策を講じながら、多いところでは月20回を超えるなど、感染拡大以前の水準に戻りつつあると把握してございます。
【斉藤委員】
それは全然実態を把握していることにならないんですよ。12月末段階まで、月に1回〜2回しか集会所が活用されていないのが17県営住宅ですよ。月に1回から2回ということはほとんど閉まっているということですよ。
20回のところはどこかと言いますと、支援員が配置されているところです。だから、生活支援相談員が集会所に配置されて、いつでも入居者が来れるようになっているところは20回利用されているのです。
だから私は、この集会所に生活支援相談員をしっかり配置して、災害公営住宅のコミュニティの確立に今取り組まなかったら、本当にコミュニティのない、すさんだ高齢者住宅になってしまうと。そういう認識ありますか。
【生活再建課総括課長】
集会所につきましては、委員おっしゃった通りですね、住民同士の交流を促進する場として非常に大事なものと考えております。ここの活用の促進が新しいコミュニティ形成につながるものと考えております。
また一方で、必ずしも集会所だけではなくて、たとえば屋外でラジオ体操を週1回やっているとかですね、そういういろんな形のコミュニティの作り方というか、集まり方というのもいろいろなところで工夫されているようですので、そういったものも含めて進めていきたいと思っております。
【斉藤委員】
集会所の問題をなんで繰り返し取り上げるかと言いますと、阪神淡路大震災で、復興住宅で20年余2000人を超える孤独死を出したんですよ。その教訓から、災害公営住宅には集会所支援員の事務室が設置をされたのです。集会所というのはそういう意味なんですよ。ところが今聞いたら、圧倒的に鍵が閉まって使われていないという。使われているところは生活支援相談員が配置されているところだという、このぐらいはっきり違いが出ているわけです。
集会所への支援員の配置は、復興局と地域福祉課と建築住宅課の3部局にまたがりますよ。だからこそよく連携をして、そして第二期復興創生期間はあと5年ですよ。この5年の中で、本当に入居者自体でコミュニティがつくられるような支援を今やらなかったら大変なことになると。そういう意気込みで復興局長、本気で今こそ災害公営住宅のコミュニティの確立に、県が行政が本気になって取り組むべきだと思いますがいかがですか。
【復興局長】
災害公営住宅における集会所の関係でございますけれども、委員おっしゃるとおり、実際に支援員がいるところが利用されているのはそのとおりだと思います。ただ市町村によっては、災害公営住宅の近隣の空き家を活用する例もあるということで、そちらの方が人が集まる場所になっている場所があるとは思っています。
ただ、結局どういう形でコミュニティをつくっていくかということが大事だと思っておりまして、特にコミュニティづくりには生活支援員の個別での対応のほかに、そこの住民を巻き込んだうえでの実際の行事をやってのコミュニティを作っていくと、その両輪が必要と考えておりますので、予算的には、例えば保健福祉部関連の予算だったり、復興局の予算、県土整備部の予算があったりという格好になっているんですけれども、この辺を十分調整をとりまして、そこの地域にコミュニティができるような方策、どういう風にしたらいいのかということを十分協議させていただいて、集会所せっかくあるのに空いているのがもったいないという部分もございますので、十分活用してもらうような格好で取り組みをさせていただきたいと思っております。
【斉藤委員】
阪神淡路の教訓をもう少し学んでほしいけれども、例えば神戸市では、10年経ってから支援員を配置しているんですよ復興住宅に。その教訓で集会所がつくられたんですよ。
だから災害公営住宅にとって集会所がどういう役割を果たすかというと、町内会でいけば公民館、公民館が閉まっているようなもんなんですよ。それはもう自治がないということなんですよ。そういうことをしっかり受け止めてやっていただきたい。
・生業再生の取り組みについて
【斉藤委員】
最後に、生業再生の問題についてお聞きします。
水産加工業への支援のこれまでの実績と来年度の取り組みを示してください。
三陸なりわい創出支援事業、これは今年度で終了するという話のようですが、若者や女性等の起業・創業を支える実績と、私はこういう取り組みこそ継続すべきだと思いますけれどもいかがですか。
【まちづくり産業再生課総括課長】
まず水産加工業へのこれまでの実績等についてでありますが、県では水産加工業の復興に向けまして、設備投資、人材不足対策、商品開発、さまざま取り組んで参りました。その中で復興局では、人材不足の解消に向けた支援を行っておりまして、地域基幹産業人材確保支援事業によりまして、水産加工事業者が行う従業員向け宿舎の整備、職場環境の改善に対しまして、市町村を通じて補助金を交付しております。平成27年度から令和元年度まで、延べ22社に対して8,100万円余、約180名の雇用創出につながっております。
また、水産加工・障がい福祉マッチング事業によりまして、5件のマッチングを行い、水産加工事業者における障がい者の就労拡大を推進しております。
また今年度については、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた水産加工事業者に対する支援策といたしまして、経営戦略の見直しを図るための専門家派遣や販路開拓を支援するオンライン商談会などを開催いたしました。専門家派遣につきましては、12社が活用を希望しておりまして、現在調整を行っておりますとともに、オンライン商談会については10社が参加し、活発な商談が交わされたところであります。
来年度につきましては、引き続き人材不足対策を市町村とともに支援するほか、水産加工業と障がい福祉の連携を進めて参ります。また、水産加工事業者に対するヒアリングをきめ細かく行いながら、復興庁や関連部局と連携を図り、オンライン商談会で得られた成果ございます。それらも生かしながら、各社の課題に応じた取り組みを行って参ります。
また、さんりくなりわい創出支援事業についてでありますが、これは令和元年度から実施しておりまして、事業計画の策定支援、起業、新事業に対する補助、クラウドファンディングの活用支援などを行っております。
このうち起業、新事業に対する費用に係る補助でありますが、平成25年度から同様の事業を行っておりまして、平成25年度から今年度までの8年間で164者に対して補助金を交付しており、このうち約半分に当たる86者が若者または女性となっております。
被災市町村のまちづくりが進みます中で、今後は、それらで立ち上がった事業者の方々が地域経済活性化の担い手となりますよう、事業の継続と成長を重点的に支援していきたいという考えで、令和3年度は新事業といたしまして「沿岸地域起業者等成長支援事業」を実施いたします。
具体的には、岩手県商工会連合会に専門経営指導員を配置しまして、沿岸地域での起業、新事業に取り組む方に対して経営指導を行います。また、新たな事業展開を行う方々に対して専門家の派遣などで支援は継続して参ります。
また、先ほどの答弁と重なりますけれども、クラウドファンディングを活用しまして、例えば、事業者の方が新商品を販売してマーケティングを行う、新商品の販路開拓をする、ということにもクラウドファンディングを使えます。また、まちづくり会社の中心市街地活性化の取組についても、クラウドファンディングを使えるような支援を行って参ります。
これらの取組に加えまして、これから起業・創業に取り組もうとする方については、商工団体を通じまして、先輩起業者の方のお話を紹介して、計画づくりや人脈づくりをサポートします。また、多くの市町村で設けております補助制度を始めとする支援制度の活用を図りながら事業の立上げを支援して参ります。