2021年3月15日 予算特別委員会
保健福祉部に対する質疑
(大要)


・新型コロナウイルスの県内感染者の状況と分析について

【斉藤委員】
 新型コロナウイルスのこれまでの県内感染者の状況と分析結果について質問します。
 年代別発生状況、重症となった患者数、死亡者の要因はどうでしょうか。

【医療政策室長】
 感染者の年齢層につきましては、20歳代が18%、50歳代が16%、40歳代が16%の順に多くなっておりますが、70歳以上の方の割合が全国の16%に対し23%ということで高くなっております。
 重症となった患者数については、累計で10名と報告されております。
 死亡者につきましては、30名と報告されておりまして、65歳以上の高齢者または何らかの基礎疾患のある患者に限られているところでございます。

【斉藤委員】
 岩手の場合には、70歳以上の高齢者が23%で多いと。これが死亡者の30の直接的な要因だったという風に思います。
 次に、感染経路の分析はどうなっているでしょうか。感染経路不明の患者数・比率を示してください。

【医療政策室長】
 感染経路につきましては、令和2年12月2日から令和3年2月6日までに発症等した患者等のうち分析可能な244名の集計となりますが、大きなクラスターが発生した影響もございまして、「医療機関」が28%、次いで「家族から」というのが21%、「職場等」が13%、「飲食店」が7%となっております。
 また、感染経路不明の患者につきましては、52名・21%ということでございます。

【斉藤委員】
 次に、感染者の中の無症状患者数の比率、無症状感染者からの感染、これはどうなっているでしょうか。

【医療政策室長】
 無症状病原体保有者でございますが、3月12日までに公表した558名中116名・21%が無症状病原体保有者となっております。
 また、少なくとも12名の無症状病原体保有者から感染が拡大した事例が20例ございました。

【斉藤委員】
 次に、感染しても他人に感染させない患者の状況、比率はどうでしょうか。

【医療政策室長】
 昨年12月2日から令和3年2月6日までに公表された患者のうち、分析可能な229名の集計におきまして、63名・28%が他者に感染させたと推定しております。残り166名・72%は他者への感染はなかったものと推定しております。

【斉藤委員】
 いま岩手県内の感染者の状況・分析をお聞きしました。だいたい全国的な状況に一致していると。ただ、最初の答弁あったように、高齢者の感染が多かったと。これは医療機関のクラスター発生が大変大きな理由だったのではないかと。

・検査体制について

【斉藤委員】
 そこで、これから新型コロナを封じ込めるためには、検査体制の抜本的な強化が必要だと思います。
 そこでお聞きしますが、PCR検査の体制・能力はどうなっているでしょうか。環保センター、民間センター、病院等、そしてそのすみ分けはどうなっているでしょうか。

【医療政策室長】
 PCR検査体制についてでございます。
 一日当たりのPCR検査の能力でございますが、県の環境保健研究センターで240件、民間の検査機関で420件、医療機関等ということで327件と承知しております。
 関係機関の連携につきましては、医療機関が自院で検査できるという場合には、自院でPCR検査や抗原検査を実施いたします。自院で検査を実施しない医療機関につきましては、民間検査機関に委託してPCR検査を実施する例が多いと。一方で、保健所が行う濃厚接触者等の検査につきましては、主に県の環境保健研究センターで行われます。ただし、クラスターの発生時など検査検体数が非常に多い場合、県の環境保健研究センターの能力を上回る場合も含めてですが、民間の検査機関に委託をして検査を実施する場合もございます。

【斉藤委員】
 合計すると987件なんですね、一日最大能力は。この間拡充されてきたといってもですね、無症状患者の早期発見なんかを考えたら、もっと思い切って検査体制を強化することが必要だと思います。
 実はいま、全自動PCR、これはロボットシステムの移動式自動PCR検査システムというのが開発をされてまして、一日最大16時間の稼働率で2500検体できると。これ1000箇所で設置すれば250万一日で日本でできるという。そういう点でいくと、どんどん技術が進歩していますから、ぜひこういう新たな検査システムなんかも考えていただきたい。
 そこで、無症状感染者の早期発見が新型コロナ感染を抑止・予防するうえで重要だと考えますが、そういう戦略、方針、岩手県はどうなっているでしょうか。

【医療政策室長】
 無症状者の早期発見ということでございますが、感染していることを自覚していない感染者の方を明らかにするために、PCR検査を無症状者を含めて幅広く実施することにつきましては、二次感染を防止するなどのメリットが考えられます。一方で、感染が確認されても、7割以上の方が他者に感染させていないということに加えまして、市中感染のリスクが高くない状況下で無症状者への検査を行うことについては、感染していないのに結果が陽性となる偽陽性が多く発生いたしまして、必要のない方が入院対象になるという大きな課題がございます。岩手県新型コロナウイルス感染症対策専門委員会においても推奨されていないところでございます。
 県としては、県内の感染拡大の状況を見据え、無症状者に対するスクリーニング検査のメリットとデメリットについて、引き続き専門委員会の意見をうかがいながら、適切な行政検査を実施し感染拡大防止に取り組んでまいりたいと考えております。

【斉藤委員】
 無症状感染者早期発見というのは、世界の封じ込めた国の教訓であり、このPCR検査の強化というのは、日本だけなんですよ消極的なのは。これ本当に異常なことで、専門家の中でも意見が分かれていると思いますけれども。
 そこで、無症状感染者から感染をしたというのが、これはオックスフォード大学の論文なんですけれども、発症前の無症状者からは46%、最後まで無症状の方からは10%、感染者の56%ですよ。先ほど、クラスターや感染が明らかになった方々を調べたら、その濃厚接触者・接触者、それで21%なんですよ。いわば、感染したつながりで21%。やはり4割5割は本当に無症状の方々がまだ放置されているんじゃないかと。そういう意味では、PCR検査というのは、医療の中では確立された検査方法で、もっとも感度の高い検査方法だと思います。
 実は、全国知事会もやっと無症状者に対する検査をやるべきだと提起をしました。これは緊急事態が宣言されたところは、3月末までに高齢者施設は全部検査となりました。それだけではなくて、全国25の都道府県で独自の社会的検査、これは高齢者施設・医療施設などでやられています。お隣の秋田県、宮城県、岩手よりも感染者が少ない鳥取県もやっています。いま幅広くこういう検査をやって、早期に無症状患者を発見をして、保護・隔離・治療に結びつける。厚労省もやっと遅きに失したながら、それをやらざるを得ないということになっているというのが特徴で、このPCR検査の無症状者の早期発見に、やはり消極的というのが、全体としては積極的な取り組みをやっていることは私は評価していますけれども、この検査体制については残念ながら世界の流れにも全国の流れにも、ちょっと背を向けたことになっているのではないかと思いますけれどもいかがですか。

【医療政策室長】
 県では、国の新型コロナウイルス感染症対策分科会での提言ですとか、国からの通知といったものを踏まえまして、2月19日に開催した岩手県新型コロナウイルス感染症対策専門委員会で協議のうえ、新型コロナウイルス感染症の蔓延期における検査方針を定めたところでございます。この方針の中で、本県が緊急事態宣言の対象の地域となった場合ですとか、あとは特定の地域における網羅的な検査として、市中感染のリスクが高いというか、地域において多数の感染者または複数のクラスターが発生した場合には、当該地域を対象として同様の行政検査を行うという方針を立てたところでございます。県としてはこの方針のもと、引き続き専門委員会の意見をうかがいながら、適切な行政検査を実施し、感染拡大防止に取り組んでまいりたいと思います。
 そして、行政検査とは別に、医療機関におきましては、それぞれ自前の検査体制によって医療従事者の検査を行っていると。あるいは、高齢者施設におきましても、県の補助金を利用して検査を行ったという例がございます。そういった例も参考にしながら、引き続きPCR検査の拡充に努めてまいりたいと考えております。

【斉藤委員】
 先ほど、この間の感染者の分析を聞きました。最大の問題・教訓というのは、鶯宿温泉病院におけるクラスターだったと思います。118人が感染をしたと。これは高齢者の多い病院で、それが死亡者数にも反映したんだと思います。だから、医療機関でそういうクラスターを発生させない。医療機関や高齢者施設での定期的な検査というのは、本当に必要なんじゃないでしょうか。岩手の教訓からいっても。
 そしてもう1つ、これは高田一郎県議が一般質問で取り上げましたけれども、新型コロナに対応した看護師さんが、約9割が「自分が感染するんじゃないか、させるんじゃないか」、そういう不安、精神的な苦痛を感じていると。そしてこういう医療関係者は、会食もしない、旅行もしない。一年間そういう努力をして頑張っているんですよね。岩手のそういうクラスターの教訓からいっても、第一線で頑張っている、精神的な苦痛を感じながら頑張っている医療関係者にとっても、ここは定期的な検査に岩手も他県のように踏み込む必要があるんじゃないでしょうか。これは部長に聞きましょう。

【保健福祉部長】
 委員ご指摘のとおり、医療関係者、介護施設、ここはやはりクラスターの起点となった場合に、やはり大規模になります。またやはり重症化しやすい方が入院されているということで、そこをきちんと封じ込めていくということでは全くその通りだと考えております。
 一方で、検査の方をどうしていくかということは、やはりさまざま議論がございます。いま現状、医療機関においては、かなりの独自の取り組みとして、従業員とか救急患者さんに対してかなり広く行われております。そうしたところについて我々もきちんと強化・支援をしていく視点は必要だという風には認識をしています。
 やはりその全県的に網羅的にやるかどうか、これはやるからには他県の事例もありますが、やはり必ずしも定期的にやっていいかというとさまざまあるという風に我々も理解をしています。やるからにはきちんとやらなければなりませんので、そのために専門委員会の見解としては、かなり感染者が増えてきた、蓋然性が高まった場合に実施をするという見解が示されましたので、我々もその方針にしたがって、きちんとその際には実施をしてまいります。この点については、やはり室長が答弁したとおり、非常に感染者が少ない状況でやった場合のデメリットといいますか、そういったものも一方でありますので、十分見極めながら、そうは言っても蔓延防止のための取り組み、これは引き続き重点的に取り組んでまいりたいと考えております。

【斉藤委員】
 私は、いま緊急事態、これは21日に政府は解除するんじゃないかと言われていますね。ところが首都圏は下げ止まりで、新たな変異ウイルスも全国に拡大していると。リバウンド、第4波というのが、本当に想定した対策をとらなくてはならない。だから、そういう第4波に向けて、こういう県内で感染が少ないときだからこそ、そういう検査体制の確立や取り組みが必要だと。このことは指摘をしておきたいと思います。
 それで、変異ウイルスの検査については、議会の中で、この間47例検査して、全部が変異なかったということでした。これは引き続き、遺伝子検査は全数やられるということで理解してよろしいですか。

【医療政策室長】
 全数といいますのは、PCR検査でそもそも陽性になった方々で、県の環境保健研究センターに検体が存在するものについては全数引き続きやってまいります。

・医療体制について

【斉藤委員】
 これまで新型コロナ感染者の入院を受け入れた病院数、病床を確保している病院数と病床数はどうなっているでしょうか。
 危険手当の対象の病院数と医療従事者数はどうなっているか示してください。

【医療政策室長】
 新型コロナウイルス感染症の患者を受け入れた実績のある医療機関でございますが、本日3月15日現在で20施設でございます。
 病床を確保している医療機関数につきましては、本日現在で24病院250床程度となっております。
 危険手当の支給対象となる病院数につきましては、病床確保計画におきまして、フェーズ3に至った場合に病床を確保する2病院を加えた26病院となっておりまして、その医療従事者数につきましては、およそ1万人程度となっております。

【斉藤委員】
 新型コロナ患者を受け入れた病院、このうち県立病院、公立病院、公的病院、どうなっていますか。

【新型コロナウイルス感染症対策監】
 県立、市町村立を含めた公立でございますが、受け入れた病院数は12、公的医療機関が3、民間医療機関が5というところでございます。

【斉藤委員】
 コロナ病床確保による一般病床への影響、入院患者、外来患者の減少、手術の延期や減少、健康診断等の減少と減収の実態をどう把握しているか。議会の答弁でありましたけれども、県単独で空床補償という答弁がありましたが、あれは国の補てんと合わせて「県単独」ということになるのか、そのことも示してください。

【医療政策室長】
 一般的な診療への影響につきましては、他県に比べて本県の感染者数は少なく、フェーズ2にとどまったため、感染拡大地域で見られたようないわゆる医療の逼迫には至らなかったものの、県立病院では新規の受け入れの制限ですとか不急の手術・検査の延期等の対応を行うなどの影響によりまして、今年度1月末までの患者数を前年同期と比較いたしますと、入院患者数で9.0%の減、外来患者数で9.3%の減となっております。
 県内医療機関の減収の実態につきましては、県立病院の今年度1月末までの医業収益を前年同期と比較しますと4.2%の減収となっておりまして、県立病院以外の医療機関においても同様の経営状況が続いているものと認識しております。
 空床確保でございますが、空床補償につきましては、国が実施している空床補償と県が上乗せして行っている空床補償がございます。