2021年3月18日 予算特別委員会
農林水産部(第1部)に対する質疑(大要)
・新型コロナによる県内農業への影響について
【斉藤委員】
それでは新型コロナ感染による県内農業への影響について最初にお聞きをします。
米に限らず、どういう影響を受けているか示してください。
【企画課長】
まずは価格の傾向でご説明いたします。
牛肉につきましては、枝肉価格が昨年10月以降前年並に回復しているというところでございます。
野菜・果樹につきましては、昨年4月から今年の1月までの販売単価で見ますと、前年同期間を上回っているという状況でございます。
花卉につきましては、販売単価が昨年5月以降はおおむね前年を上回る水準で推移しているというところでございます。
一方で米につきましては、家庭での消費が増加しているが外食での需要が低迷しているというような状況でございます。
【斉藤委員】
それでは、米価暴落の状況と農家の減収の実態についてお聞きをいたします。
【県産米戦略監】
米価暴落の状況と農家の減収の実態についてでございますが、令和2年産米のJA概算金の引き下げ額であります60kg当たり800円と同額で米価が低下したと仮定し、それから国が公表しました本県の10アールあたり収量553kgに基づき試算した場合には、前年と比較しまして、県の平均規模である約1ヘクタールの生産者では7万4千円の減、それから10ヘクタールの規模では74万円の減と試算されます。
【斉藤委員】
10ヘクタールで74万円の減収と。100ヘクタール規模の集落営農であれば740万円ということになりますね。これが大変大きな影響・打撃を与えたものだと思います。
そこで、生産費が賄えない農家の状況について示してください。
【水田農業課長】
農家の現状についてでございます。国の農業経営統計調査によりますと、最新の値となる令和元年産の東北の米生産の作付規模別の自作地地代等を含む全算入生産費は、1ヘクタールから3ヘクタールの作付規模で、10アール当たり13万85円、3ヘクタールから5ヘクタールの規模で、10アール当たり11万6,689円となってございます。
また、令和2年産の県産ひとめぼれの相対取引価格をもとに、国が公表した令和2年産の本県の10アール当たりの収穫量553キロを用いまして、10アール当たりの収入額を試算しますと12万6,473円となり、3ヘクタール以上の規模で生産費を上回る状況となってございます。
【斉藤委員】
3ヘクタール以下の農家が、この生産費だと赤字だということになりますが、その農家戸数と農家比率どうですか。
【水田農業課長】
農家戸数でございますけれども、3ヘクタール規模未満の農家戸数は約31,900戸となってございます。割合は92%でございます。
【斉藤委員】
農家の92%がこの生産費だと赤字だということになります。本当に大変な事態だと思いますけれども、国の対策でナラシ対策―収入保険の対策がありますが、この加入状況と補てんの見込みはどうなっていますか。
【水田農業課長】
ナラシ対策の加入状況と補填の見込みについてでございます。令和2年産のナラシ対策の加入面積は、国の公表資料によりますと、主食用米の作付面積48,200ヘクタールの約36%、17,507ヘクタールとなってございます。
また、ナラシ対策の補填の見込みでございますが、加入者が令和3年4月末までに交付申請し、国において補填金の算定を行って、6月中に加入者に対して補填金を支払うということになりますので、現時点では補填金の額をご答弁申し上げることは難しいところでございます。
【団体指導課総括課長】
収入保険についてでありますが、加入状況は、主食用米の作付面積に対して8,810 ヘクタールであり、割合としては約18パーセントとなっております。
また、保険金の支払いについて、農業共済組合においては、税の確定申告後から申請を受け付けるため、保険金額を把握できるのは令和3年6月頃になる見込みでございます。
【斉藤委員】
ナラシ対策は、作付面積の36.3%、収入保険は18.3%で、作付面積で見れば54.6%がその対象になるんですが、農家戸数、比率で見るとどうですか。
【水田農業課長】
ナラシ対策の戸数の関係でございますけれども、加入者の対象が認定農業者、集落営農と限られておりますので、戸数としては把握してございませんけれども、件数としては約2,000件となってございます。
【団体指導課総括課長】
収入保険についてでございますが、収入保険の場合、いろいろな農家全体の収入についての補てんになってございまして、戸数がはっきり概算でしか捉えられない部分があるんですが、約1500戸となっております。
【斉藤委員】
そうすると、先ほど聞いた減収に対する対策、どこまで補てんされるか今日答えなかったんですが、合わせて3500戸ぐらいですよ。補てんされるのはほんの一部にすぎないと。農家の全体で。本来なら、新型コロナによる需要減は別枠にして、米の暴落から回避させるというのが国の責任だったと。国が米の需給から手を引いたために、新型コロナの影響が全部農家にいくという風になってしまったのではないかと。大変残念な事態だと思います。
そこで今日は、水田フル活用農業高度化プロジェクト事業についてもたくさんの質問がありました。この具体的な、例えば飼料米、園芸も含めてもいいんですけれども、その内容と価格補てんの見込みについて示していただきたい。
【水田農業課長】
飼料用米に対する補てんについてでありますが、主食用米の実際の手取額につきましては、令和2年産の概算金をもとに試算しますと、10アール当たりでは約11万円となります。
一方、令和3年産の飼料用米で平均的な10アール当たりの手取額については、販売額9,000円(令和2年度実績)に加えまして、令和3年度当初予算案に盛り込んだ水田フル活用農業高度化プロジェクト事業によって5,000円を補助します。
さらに、国の都道府県連携型助成を合わせますと、トータルで12万4千円となりまして、主食用米11万円と比較しますと、同等かそれを上回る水準になると見込んでございます。
【斉藤委員】
いま飼料米の補てんの状況が示されました。主食用米を上回る試算になります。問題は、単年度の取り組みなのか、何年続く施策なのか、そこを示してください。
【水田農業課長】
この水田フル活用農業高度化プロジェクト事業ですけれども、これの今申し上げた水田緊急対策、国の都道府県連携型助成は、今年度限りということでうかがっております。これは国の方なので、情報としてはまず今年度ということで。
県の予算もですね、決定しておりませんけれども予算要求しているところですが、水田転換緊急対応ということで、令和3年度一年ということでいま考えているところでございます。
【斉藤委員】
令和3年度の施策としては良いんだけれども、転換してみたら翌年から梯子外されたということだったら、とてもじゃないけど転換進まないんじゃないでしょうか。せめて5年続けるとかやらないと、飼料米だってこれから改良されて良くなるかもしれないけれども、国も県もハシゴを外したらやっていけないでしょう。こういう場当たり的な緊急対策でいいのかと。単年度で転換させて後は終わりと。これはあまりにもひどいんじゃないでしょうか。
【水田農業課長】
いま申し上げたのが国の緊急的な助成と、県単の方で予算に盛り込んでいるこの事業ということでご説明しましたけれども、そのほかにも内訳としましては、国の交付金である戦略作物助成だったり産地交付金の関係ということで交付金もございまして、そちらの方で特別にメニューですとかそういうのも考えていく可能性もございますので、令和3年度は緊急的にこのような予算化をして考えておりますが、来年度以降につきましても、この交付金等を活用して、さらに飼料用米の推進に取り組んで参りたいと考えているところです。
【斉藤委員】
本当に今の答弁だと、まず単年度のみと。あとはいろいろ考えると。これでは農家を説得できないと思いますよ。やはり水田フル活用というんだったら、例えば飼料米でもそれなりに経営の見通しが立つような方向性を、せめて5年ぐらいのスパンで提起されなかったら、1年は面倒見ますということでは、それこそ”猫の目農政”と言われてしまうんじゃないでしょうか。
それで例えば、いま乳製品は輸入が大幅削減しています。牛乳も余っているんです。それがチーズとかバターなどに転換をされています。これは国の施策で乳製品の輸入を大幅に削減しているからなんですよ。
米はどうかと。米はミニマムアクセス米が77万トンも入っている。米が余っているというのは36万トンですよ。余っている米の2倍輸入しているんですね。そして主食用に輸入しているSBS米が10万トン、これは在庫分の増加分と同じです。私は、乳製品でやれることがなんで米でやれないのかと。やはりミニマムアクセス米を大幅に減らすとか、これは法的根拠ないのだから。条約上の根拠ないんだから。SBS米だって主食用米ですからね。そういうことをしっかりと国に要求をして、少なくとも新型コロナによる需要分は国が責任を持って対応するということが必要だと思うけれども、部長いかがですか。
【農林水産部長】
米の関係は、やはり都道府県単独の中で完結するものではないと。コロナの関係も全国的な問題ということもございます。
本県としましては、いまミニマムアクセス米等のお話もございましたけれども、国に対しまして、需要に応じた米生産ということで、ミニマムアクセス米やTPP11協定に基づいて国内産主食用米の価格低下が懸念されることから、国内需要に影響を及ぼさないための対策を講じることといったような要望とかですね、そういったことを国に強く申し上げているところでございますし、今後ともそういう体制でいきたいと考えてございます。
【斉藤委員】
先ほど最初に県内農業への影響ということで、牛肉については前年並にという答弁がありました。皆さんからいただいた資料で見ると、牛肉の枝肉卸売価格、和牛去勢A-5前年比93%、A-4は94%。例えば交雑去勢、これはB-3になりますけど88%、B-2は86%と。全然前年比じゃないんじゃないですか。かなりの影響・打撃を受けているんじゃないでしょうか。違いますか。
【企画課長】
いま委員からご指摘いただいた価格につきましては、令和2年4月から年度で見ている数字でございます。先ほど私がご答弁したものにつきましては、10月以降で前年並に回復というご説明をしたものでございまして、4月から9月までにつきましてはA-5・A-4ともに前年同期比よりもマイナス数%から最大マイナス30%程度ということでございましたので、そこでの齟齬、違いがあったということでございます。
【斉藤委員】
私がいただいた資料はあなたが作ったんだと思うけれども、令和元年度と令和2年度2月までの比較で、A-5で93%ですよ。7%というのは結構な影響ですよ。そして今日の新聞を見ましたら、米国産牛肉、セーフガードを18日に発動と。輸入もどんどん増えているということですよね。岩手の畜産農家が大変なときに、どんどん輸入が増えてセーフガードが発動されるという状況じゃないですか。
・日米貿易協定の問題について
【斉藤委員】
最後に聞きたいのは、この新聞で私が大変だと思ったのは、「昨年1月に発効した日米貿易協定は『発動後10日以内に日米両政府が基準数量を上方修正する協議を始める』と規定している」と。いわば発動されたら基準を引き上げて、もっと輸入できるようにすると。これじゃ問題なんじゃないでしょうか。
【企画課長】
米国との協議によってセーフガードの発動基準が引き上げられた場合には、今よりも低関税率が適用される牛肉の輸入量が増加することにつながるということについては、県としても懸念しているところでございます。
これまで、県では、国に対しまして、日米貿易協定の発効に伴う農林水産業への影響等につきまして、十分な情報提供を行うこと、それから「総合的なTPP等関連政策大綱」に基づく施策を着実に実施することなど、万全の対策を講じるよう要望してきたところでございます。引き続き今後も、そうした動向を注視しながら、国に対して要望を行うなど必要な対応を実施してまいります。