2021年3月18日 予算特別委員会
農林水産部(第2部)に対する質疑
(大要)


・危機的な大不漁の実態と対策について

【斉藤委員】
 それでは危機的な大不漁の実態と対策についてお聞きをいたします。
 2020年のサケ・サンマ・スルメイカの主要魚種と県内魚市場の水揚げ量・水揚げ額、そして震災前比を示してください。

【漁業調整課長】
 県内魚市場の水揚量と水揚額ですが、令和2年の水揚量は8万5,166トンで震災前比48%、金額が148億3,400万円、震災前比63%となってございます。
 主要魚種別にみると、
・サケは、1,729トンで震災前比7%、金額が12億8,600万円で震災前比16%、
・サンマは、7,527トンで震災前比14%、金額が31億2,500万円で震災前比84%、
・スルメイカは、4,271トンで震災前比23%、金額が23億3,700万円で震災前比70%
となっております。

【斉藤委員】
 サケが震災前比水揚量で7%、サンマも14%と、本当に危機的な状況だと思います。スルメイカは、前はサケ・サンマよりもひどかったんだけれども、今年度は前年比で206%になっているんですね。これは回復傾向と見ていいんでしょうか。

【漁業調整課長】
 国の研究機関の資源評価によりますと、スルメイカの資源状況は減少傾向にあると言われていて、このまま回復するかどうかというのは今後注視しなければならないと考えてございます。

【斉藤委員】
 あわせて、アワビ・ウニ・ワカメの生産量・生産額と震災前比も示してください。

【漁業調整課長】
・アワビは、97トンで震災前比28%、金額が9億8,100万円で震災前比43%、
・ウニは、74トンで震災前比61%、金額が7億4,400万円で震災前比98%、
・養殖ワカメは、1万3112トンで震災前比59%、金額が23億7,300万円で震災前比57%
となってございます。

【斉藤委員】
 ワカメは一番復旧が早かったんですけれども、今の答弁のように、震災前比で59%、額では57%ということで、これも前年比では122%になっています。そして昨日の新聞を見ますと、養殖ワカメの初入札、これは181トンで前年比かなり大幅に数量では9倍だったと。前年比から増えて、今回初入札もこういう形になっているんですけれども、ワカメはどうなんですか、回復傾向ということになるんですか。

【漁業調整課長】
 ワカメは、今季初入札がこれまでに比べて非常に多いという報道があったところなんですけれども、この要因としまして、今年非常に成長が良くて、その分量が増えたと聞いてございます。

【斉藤委員】
 気候が良かったということですね。まだまだ回復傾向ということには簡単には評価はできないということですね。
 なかなか大変厳しい状況になっていると思いますが、主要魚種の資源回復の取り組みについてお聞きをします。

【漁業調整課長】
 主要魚種の資源回復の取り組みについてでございますが、まず秋サケの資源回復に向けまして確実に種卵を確保するため、早期から親魚の確保を行うなど種卵確保体制の強化に取り組んでいるほか、高水温への耐性を持つ稚魚や遊泳力の優れた稚魚の生産技術の開発を進めているところでございます。
 また、サンマやスルメイカにつきましては、広域的に回遊する資源であることから、国が中心となり資源管理を推進しておりまして、県では国と連携しまして、魚種ごとの漁獲枠による管理に取り組んでいるほか、国の研究機関による稚魚の分布や親魚等の資源の調査研究に協力しているところでございます。

【斉藤委員】
 それで、サケ・サンマ・スルメイカのいわゆる岩手の主要魚種というのは大変危機的な状況にあるんですけれども、一方で、マイワシ・サバ・ブリの南で獲れるものが増加をしていると。獲れる魚で勝負するという点で、新たな取り組み、県の支援策はどうなっているでしょうか。

【漁業調整課長】
 いま増加しております資源の有効活用の取り組みについてでありますが、近年の海洋環境の変化等によって、主要魚種の資源量が減少する一方で、マイワシの資源量は増加しておりまして、令和2年における県内魚市場へのマイワシの水揚量は2万3,181トンと、震災前3ヶ年平均の241トンの約96倍まで増加しているところでございます。
 県では、この増加しているマイワシ資源を有効活用するため、市町村や漁協等が実施します、まき網漁船の誘致活動を支援しておりまして、令和2年におけるまき網船の水揚量は1万8,225トンと、平成23年の141トンの約129倍まで増加しているところでございます。
 また、令和元年漁期からは、増加しているマイワシを対象としまして、小型漁船による試験操業を実施しており、2年目となる今年6月までの漁期においては、効率的な操業方法や収益性等について確認することとしてございます。

【斉藤委員】
 獲れる魚で勝負するというので、もう1つお聞きしますが、イサダ漁は去年まさに危機的な不漁だったんですが、今年は若干獲れているようですけれども、その状況はどうですか。

【漁業調整課長】
 3月15日現在の水揚状況ですが、1307トンで、昨年に比べまして約4倍程度となってございます。

【斉藤委員】
 トレンドとしてこのままいくのかということを聞きたかったんだけれども、後でそれは触れてください。

・海面養殖の取り組みについて

【斉藤委員】
 それで、先ほども新たな海面養殖が議論になりました。それを踏まえて、試験操業から本格操業に移行する上での課題、そして県の支援策を示してください。

【漁業調整課長】
 マイワシの試験操業は、まだ開始しまして2期目というところで、まだ岩手県でどこに漁場ができたり、どのように獲れば一番効率的なのか、その場合どれくらいの収益が得られるかというような検証ができていないという状態でございます。
 そのため、試験操業を継続しまして、収益性とか漁場の特定、漁獲方法の確立などを行って、将来的には漁業許可での本格操業に向けて準備を進めたいと考えてございます。

【斉藤委員】
 サケ・マス類の海面養殖試験も、さらに来年は山田町もやろうとしているという話がありました。この点についても、試験操業から本格操業への課題、県の支援策を示してください。

【水産担当技監】
 サケ・マス海面養殖については、現在、4箇所でやられておりますが、令和3年度に事業化したいという希望を出しているところが久慈と宮古と大槌町から今いただいております。事業化に際しては、いわゆる漁業権という、海面で漁業を営む権利を知事から免許を受けなければいけないんですが、これは例年5年サイクルで、現在のところ令和5年を予定しておりますけれども、急ぎそういう生産を上げるという視点もございますし、事業化を希望しているところもございますので、丁寧にお話を聞いて、県は令和5年を待たずに、令和3年の秋に向けて、適正な手続きを踏んで漁業権の免許ができるように進めていく考えでございます。

【斉藤委員】
 分かりました。試験操業から本格操業となりますと、これは本当に経営が問われることになると思うので、全国的にもこれはやられていることなので、全国との競争ということにもなると思いますので、よく県が支援をして進めていただきたい。

・新型コロナの水産物への影響について

【斉藤委員】
 あわせて、新型コロナの影響というのが水産物にどう表われているか。アワビ・ウニ・ホタテガイ等でどういう影響が出ているか示してください。

【水産担当技監】
 アワビについては今シーズンの漁期が終わっておりますけれども、前年度比で価格が24%の減となっております。
 ウニについては、昨年の4月が前年同月比で50%の減ということで、業界団体の方では、4月下旬から6月末にかけて漁獲回数等を制限するなど、いわゆる出荷調整によって価格の維持を図ろうと動いたところでございます。
 また、ホタテガイについては、昨年の4月からこの1月まで前年同月比で約11%から52%の範囲で価格が低下しているところでございます。

【斉藤委員】
 この新型コロナの影響に対する対策はどうなっていますか。

【水産担当技監】
 県では、令和2年度の補正予算によりまして、新型コロナウイルス関係の対策事業として、まずは「県産農林水産物学校給食提供緊急対策事業」によりまして、県内小中学校等へ県産ホタテガイを延べ5万5千食提供したほか、「県産農林水産物販売促進緊急対策事業」によりまして、昨年の10月中旬から12月下旬にかけて、県内量販店 150 店舗で水産物販売促進キャンペーンの実施したところです。
 さらに、「県産水産物需要創出緊急対策事業」によりまして、昨年の9月下旬に本県水産物を利用した水産加工品を、地元の新聞広告に掲載しまして、水産物の販売応援を行ったところで、令和2年度補正予算で対策を進めたところでございます。

【斉藤委員】
 先日、岩手日報の折込で、3割引の沿岸の海産物のキャンペーンもありましたので、私も大変注目しておりました。こうした取り組みをしっかり進めていただきたい。

・漁業センサスの結果と漁業就業者、担い手確保について

【斉藤委員】
 漁業センサスの結果と漁業就業者、担い手の確保について、漁業就業者と経営体数の推移はどうなったか。担い手確保の対策と取り組み、県・市町村の担い手確保支援策、実績を含めて示してください。

【漁業調整課長】
 本県における漁業就業者数は、漁業センサスによると、平成20年が9.948人、平成25年が6,289人、平成30年が6.327人となっており、直近の平成30年は10年前の平成20年と比べ36%減少し、5年前の平成25年と比べると、ほぼ横ばいとなっております。
 また、漁業経営体数は、平成20年が5,204、平成25年が3,278、平成30年が3.317となっており、直近の平成30年は10年前の平成20年と比べ36%減少しているが、5年前の平成25年と比べると、ほぼ横ばいとなっております。
 県では、漁業担い手の確保・育成を進めるため、市町村や漁業関係団体と連携しまして、@漁業就業イベントへの出展などによる漁業就業情報の発信、Aいわて水産アカデミーを核とした人材育成、B漁業経営体の法人化や協業化など、雇用型就業の受け皿となる周年雇用環境の整備、C市町村の就業者支援制度や国の長期研修制度などによる新規就業者の定着と独立の支援に取り組んでいるところでございます。
 また、県と市町村の担い手確保支援策についてでございますが、県では、令和3年度当初予算案に「いわて水産アカデミー運営支援事業費」と「漁業担い手確保・育成総合対策事業費」を盛り込んでおりまして、水産アカデミーの運営や漁業後継者の確保対策等に取り組むこととしてございます。市町村においては、生活支援を含めました就業奨励金や、定住支援となる住居費補助などを実施していると聞いてございます。

【斉藤委員】
 漁業センサスでは、10年前と比べると漁業者・経営体36%減だけれども、この5年間は横ばいと。大変厳しい状況の中で頑張っているということになるんじゃないか。
 担い手確保策でいくと、資料では市町村も10市町村がさまざまな生活支援をやっていて、陸前高田市などでは他県からも若い人たちが入ってきているということもありましたので、ぜひ厳しい中でこの危機的な大不漁を乗り越える対策に全力をあげていただきたい。
 終わります。