2021年3月19日 予算特別委員会
県土整備部に対する質疑(大要)
・災害公営住宅のコミュニティ形成の課題について
【斉藤委員】
それでは災害公営住宅のコミュニティ形成の課題について質問します。
災害公営住宅の高齢者の一人暮らし世帯、高齢者のいる世帯の数と率はどうなっているでしょうか。
あわせて、災害公営住宅と仮設住宅の孤独死はどう把握されているでしょうか。
【建築住宅課総括課長】
災害公営住宅の高齢者の一人暮らし世帯、高齢者のいる世帯の数と率についてでございますけれども、令和2年12月末現在で、災害公営住宅に入居されている5184世帯のうち、65歳以上の高齢者を含む世帯は3153世帯で60.8%、そのうち高齢者の一人暮らし世帯は1743世帯で33.6%となっております。
また、災害公営住宅および仮設住宅における孤独死の状況についてでございますけれども、災害公営住宅につきましては、県営および市町村営あわせまして、令和2年12月末現在で累計で63名の方、仮設住宅につきましては累計で46名の方が亡くなられていると承知しております。
【斉藤委員】
一人暮らしが多くて、3世帯に1世帯で、孤独死はついに仮設住宅を大幅に災害公営の孤独死の方が超えてしまっていると。
実は警察庁の、震災10年で孤独死の発表をいたしました。これは保健福祉部の把握とちょっと違ってですね、いわば災害公営住宅に入居している方が外で亡くなっても、自殺された方も入っております。それによると、仮設住宅は75人、災害公営住宅は79人です。この3年間を見ると、平成30年災害公営住宅は18人、31年20人、令和2年20人と。大変高いレベルで孤独死が発生していると。やはり私はこの問題に真剣に取り組むべきだと。
実はこの問題は、阪神淡路大震災で大問題になったんです。その教訓を踏まえてですね、災害公営住宅の集会所や支援員の事務室が整備されると思いますけれども、その理由・意味、集会所の利用状況はどうなっていますか。
【建築住宅課総括課長】
災害公営住宅におけます集会所の支援員の事務所を整備した理由とその意味、集会所の利用状況についてでございますが、まず、災害公営住宅を建設するにあたりまして、通常の公営住宅より広い集会所ですとか、入居者の支援に携わる方が活動できる事務スペースを整備したところでございます。これは、自治会ですとか、支援者の方々などが集会所を活用して、入居者間の交流を促進するイベントを開催することなどを考慮して、私ども建築住宅課が設計を行ってきたところでございます。
この集会所の利用状況でございますけれども、集会所を併設しております28団地すべてで利用がございまして、1ヶ月あたりの使用回数で見ますと、少ないところでは月1回程度ではございますが、多いところでは月20回を超える集会所もあるところでございます。
【斉藤委員】
いま答弁あったように、集会所、支援員の事務室というのは、阪神淡路大震災の教訓を踏まえて、災害公営住宅のコミュニティを確立していくと。そういう形で大変立派な集会所がどこにでも整備をされています。
いま答弁はきわめて曖昧でしたが、もっと正確に言いますと、集会所の利用状況は、28団地のうち、県営でたった月1回というのが13団地・46.4%、たった2回というのが6団地・21.4%、あわせて67.8%、いわば月に1回〜2回、あとはほとんど閉まっているというのが残念ながら今の集会所の実態です。これは阪神淡路の教訓が生かされていない。
そして20回程度やっているところがあるんですよ。山田の大沢、大槌の上町、そして大船渡のみどり町、陸前高田の栃ヶ沢、このうち3つは支援員を配置しているところです。かたや1〜2回、かたや新型コロナの下でも20回、支援員の配置がまさに集会所を軸にしてコミュニティ形成の力になっていると。
2月の末に大船渡の県営災害公営住宅の自治会長さんにお会いしてきました。2人配置されていて、週3回なんですけれども、朝9時から集会所の掃除から始まって、自治会の会長さんとも連携しながらいろんな活動に取り組んでいます。会長さんはこう言っています。「本当に助かっている」と。そして「もっと増やしてほしいぐらいなんだ」と。こういうことなんですよ。
第二期復興創生期間が5年間延長になりました。この5年の間に、本当に災害公営住宅のコミュニティをつくらなかったら、コミュニティのない錆れた高齢住宅になってしまう。その点で、今の配置と、これから増やすべき、私は50戸以上の災害公営住宅には支援員を配置すべきだと考えますがいかがですか。
【建築住宅課総括課長】
生活支援相談員の配置の効果でございますけれども、やはり災害公営住宅の入居者に対する見守りですとか、来訪者への相談対応、また公営住宅内の入居者相互の交流、入居者と近隣住民との交流の促進を図るためのサロン活動など、災害公営住宅のコミュニティ形成に資する取り組みを行うことにより、被災者の方々が生活する上で必要な支援を行っていただいているものと認識しております。
災害公営住宅の生活支援相談員の配置につきましては、一定規模以上の災害公営住宅に配置していただきますよう、関係者間で情報共有を図るとともに、私ども県土整備部といたしましても市町村の社会福祉協議会設置事業に協力するなど、集会所で関係機関が活動しやすいように努めてまいりたいと考えております。
【斉藤委員】
ぜひ集会所への支援員の配置、時間との勝負なので、地域福祉課、復興局、今度は復興防災部になると思いますけど、本当に連携して思い切った手立て、神戸市は10年経ってから復興住宅に支援員を配置したんですよ。本当に今が勝負なので、しっかりやっていただきたい。
それと、自治会も作られていますけれども、作られたからといってうまくいっていないというのが実態です。岩手大学の船戸助教が今年度も地域の担い手に関するアンケートをやりましたが、ここでは「担い手が足りない」というのが69.3%、「3年も担い手不足で機能が低下する」というのが63.3%でした。こういう自治会の担い手をつくっていくという点でも、機能強化するという点でも、行政の支援が必要だと思いますけれどもいかがですか。
【建築住宅課総括課長】
災害公営住宅におきます自治会の担い手不足についてでございます。こちらの実態につきましては、自治会ですとか、災害公営住宅の入居者を支援している団体、また指定管理者等から、担い手の不足が課題であるということを、会議ですとか自治会交流会などの機会を通じて聞いているところでございます。この背景には、災害公営住宅の空室の増加、そういった諸々の背景があると考えてございます。
まず私どもとしましては、住宅の方に若くて新しい方々にどんどん入居していただくようなこういった取り組みを考えていく必要があると考えているところでございます。
【斉藤委員】
いま大変大事な「若い方々の入居を考える」と。これは本当に大事なんだと思うんですよ。
・災害公営住宅の家賃問題について
【斉藤委員】
そこで、災害公営住宅の入居者の方々の生活の不安の第一の問題は「家賃・生活費」の問題です。これは同じ船戸助教のアンケート調査の結果です。
そこで、国の特別家賃低減事業の対象世帯、すでに家賃が引き上げられている世帯、県の家賃低減制度は国の家賃低減とほぼ同等の素晴らしい制度ですが、その周知と県の家賃低減の活用状況はどうなっているでしょうか。
【建築住宅課総括課長】
国が行っております特別家賃低減事業の対象世帯およびすでに家賃が引き上げられている世帯についてでございますが、令和3年1月4日時点の数字で申し上げますと、特別家賃低減事業の対象世帯は919世帯で、全入居者世帯1365世帯における割合は67.3%。すでに家賃が引き上げられている世帯数は、災害公営住宅管理開始から6年目以降を迎え段階的に低減措置が縮小世帯になりますけれども、こちらの世帯数は434世帯で、全入居世帯1365世帯における割合は31.8%になってございます。
また、県の独自の家賃低減制度の周知と活用についてでございますけれども、県の独自減免につきましては、チラシを作成いたしまして、公営住宅の家賃決定通知書、これは各戸に通知するものでございますけれども、その送付に際しましてそのチラシを同封いたしまして周知を図っているところでございます。現時点で県の独自減免を活用しております世帯数は、令和3年1月4日時点でございますけれども、126世帯となっており、全入居者世対数1365世帯における割合は9.2%となっております。
【斉藤委員】
家賃値上げに対しての不安が大変強いので、岩手県も沿岸市町村も独自の家賃減免の制度を持っていますから、周知徹底と活用をぜひ働きかけていただきたい。
そこで家賃の問題で焦眉の課題になっているのは、収入超過者の問題であります。災害公営住宅というのは、公営住宅の家賃の基準を超えても入れると。しかし4年目からは近傍家賃に値上げされるんですね。しかし終の棲家として入っている方々は少なくないのです。
私は2月末に大船渡の災害公営住宅の自治会長さんに聞いたときに、実は2月に40代50代の働き盛りの世帯2世帯が退去してしまったと。役員の担い手でもあったと。だから先ほど技術参事は「若い人の入居を進めたい」と。実態は追い出しているんですよ。収入超過者には「退去に努めてください」と毎年こういう通知が行っているんです。
収入超過者も安心して入居が続けられるような、陸前高田市が行っているような「みなし特定公共賃貸住宅」の制度や、その他の制度があればそうで、いち早くやらないと、若い世代がいなくなってからこれやっても意味ないので、収入超過者の実態、一貫してこの問題を取り上げてきましたが、この打開の検討状況、目途、具体的に示してください。
【建築住宅課総括課長】
まず収入超過者に対する割り増し家賃の制度についてご説明させていただきます。災害公営住宅におきましても、基本は入居に際して収入要件が設定されているところでございますが、東日本大震災津波で建設しました災害公営住宅におきましては、復興特区法の制度によりまして、入居の時点では収入要件を除外するという規定になってございます。ただ、入居した後、ずっとその家賃が継続するという制度設計にはなってございませんので、制度上3年が経過すると、委員おっしゃった通り家賃が上がる世帯が出てくる状況になってございます。
まずこの県営災害公営住宅における実態でございますけれども、本年1月4日時点で、収入要件を超過している世帯は122世帯ございます。そのうちすでに割り増し家賃が課せられている世帯は85世帯になっているところでございます。
次に、収入超過者が安心して入居できる手立てについてでございますけれども、県は平成30年度から収入超過者の割り増し家賃の上限を低減する措置を講じておりますが、収入超過者の退去などに伴いまして、空き家の増加ですとか、被災者のみならず災害公営住宅を管理する私ども公共団体にとりましても重要な課題だということは重々認識してございます。
このことを踏まえまして、昨年沿岸部の災害公営住宅を管理します市町村と意見交換を行いました際には、この追加対策の必要性ですとか、具体の手法、また実施する場合の時期等に関しましてさまざまな意見を頂戴したところであります。県といたしましては、早期にこれらの意見の集約を図るとともに、有識者意見等もうかがいながら、できるだけ早期に沿岸地域の復興にふさわしい制度の検討を進めてまいります。
【斉藤委員】
できるだけ早期に意見集約を図ると。本会議でも高田一郎県議の質問に部長は「沿岸地域の復興にふさわしい制度となるよう検討を進める」と。この観点が大事だと思います。沿岸地域の復興にふさわしい、岩手からそういう新たな取り組み是非示していただきたい。期待していますので、時間との勝負で対応していただきたい。
・高田松原津波復興祈念公園について
【斉藤委員】
最後になりますけれども、高田松原津波復興祈念公園について、この整備完了と一部活用の見通しはどうなっているか示してください。
【都市計画課総括課長】
高田松原津波復興祈念公園の整備状況についてでございます。公園の主要施設である国営追悼祈念施設の一部、道の駅高田松原、そして東日本大震災津波伝承館につきましは一昨年9月にすでに供用されておりまして、それ以外の国営追悼祈念施設周辺の中心エリアが高田海岸とともに4月に供用する見込みとなっております。残る周辺の一部エリアにつきましては、引き続き園路ですとか植栽等の整備を進めまして、12月までには全面供用できるように取り組んでまいります。
次に公園の活用についてでございます。来年度は、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会関連といたしまして、5月に東京2020日本フェスティバルの会場として、6月には聖火リレーのルートとして活用される予定となっております。その他、当公園の一部である高田松原運動公園を中心といたしまして花火大会が開催される予定となっております。さらに令和5年度には全国植樹祭の会場として利用される予定となっております。
【斉藤委員】
高田松原津波復興祈念公園、130ヘクタールと大変大規模なものであります。それで、高田松原海水浴場については4月1日から一般公開、そして夏には海開きが行われると。海開きに向けた駐車場の整備の見通し。
もう1つは、震災遺構が4つあるんですね。この広い中で、震災遺構をめぐりながら活用するという活用の仕方、これはどのように検討されているか。陸前高田市では、土日だと思いますけれども、電動の自動車を使って、震災遺構をめぐるというような構想もあるようです。そういう点で、活用をどう考えているか。そしてこの管理運営については、基本計画の中で「市民との協働による管理運営体制を検討し目指す」となっていました。管理運営の見通しを含めて答えてください。
【都市計画課総括課長】
まず海開きのための駐車場の整備ですが、古川沼東部分につきましては、いま4月以降も工事を進めるということにしておりまして、7月には供用できるという方向で工事を進めていくこととしております。
遺構の活用につきましては、陸前高田市におきまして、公園ガイドによる遺構の内部県学ができるように現在準備を進めているところでございます。ただ、遺構だけでなくて、公園には東日本大震災津波伝承館がありますので、来園者には伝承館と震災遺構の両方をめぐっていただけると、震災の事実と教訓をより深く理解していただけるということから、今後両方を見ていただける方策・工夫を、公園を担っております国・県・陸前高田市で構成する管理運営協議会において検討していくということにしております。
さらに、協働による管理運営の部分についてでございます。公園の基本計画では、NPO等との協働による管理運営の構築を掲げておりますことから、これまでその団体を募集してきたところ、27団体の登録をいただいております。この公園の利活用など、協働による活動の内容、進め方につきましては、今後各団体の代表者会議等を開催して検討していくこととしております。