2021年3月22日 文教委員会
県立高等学校再編計画後期計画(最終案)について
丁寧な説明と慎重な協議を求める請願に対する質疑(大要)
・地域から出された要望の受け止めについて
【斉藤委員】
今度の請願について、この請願の趣旨というのは、この請願書にも明確に書いているように、「新たな県立高等学校再編計画後期計画最終案は、議論が尽くされたとは言えず、最終手段の統合ではなく、学級減などの方法も検討し、拙速に決定せず、丁寧な説明と協議を重ね、検討を深めること」と。これが趣旨です。これは請願者は「他」となっていますが、統合が提起されている3つの地域から共同で出された請願です。
2月1日に最終案が公表されてから、県教委に出された要望書を皆さんに渡していただきました。盛岡市の市長・教育長連名のものは、これは4回目なんです。今度の後期計画に関わって4回目です。ここでも丁寧な説明と議論を重ねて慎重に判断していただきたいと。そして12月議会でしたけれども、盛岡市議会は全会一致で「白紙撤回」という強い中身でしたけれども意見書が提出されています。「県立福岡工業高校の単独校を求める」と、これも市議会の全会一致の意見書です。そして一関からは、工業高校統合の再考を要望する会、これは「地元説明会開催」の要請なんです。いわば、盛岡で開かれて、なぜ一関で開かれていないのかと。こういう要望で、私はまったく当然だと。
そこで教育長にお聞きしますが、この請願の趣旨、少なくとも2月1日以降、最終案が出されてから、統合が計画されている地域からこのような要望書が出ていることについて、教育長はどう受け止めていますか。
【教育長】
2月1日に最終案を公表させていただきました。そしてその後、3月に入ってからは盛岡市長と市の教育長の連名でもっての要望書が出されました。また、3月12日に、一関地区の工業高校を守る会の要望書ということで、この再考を求めると。さらには、説明会の開催ということも要請されました。また、二戸市議会からの意見書ということで、こちらも単独校での存続を求める意見書ということでありました。
これは大変私ども、これまでの地域検討会議や意見交換会等で説明をしてまいりましたが、その中でもさまざま資料等を用いてですね、説明を尽くしてきたところではありますが、このような形で要望等が出されたということについては、大変地域の思いということで、重く受け止めているところでございます。
この件に関しましても、先週17日に今月の教育委員会議定例会がございましたので、その際にもこの要望書等を委員にもお伝えを差し上げ、さらには今議会での質疑等についても、先ほども申し上げましたが、答弁内容、これは全て委員に提供する上で説明をし、今後の対応等についてもいろいろと協議をさせていただきました。
【斉藤委員】
教育長に端的にお聞きしたいんだけれども、こういう要望書が最終案についても出されていると。その前にもたくさん出ているんですよ。後期計画案についても。やはり説明が不足しているんじゃないか。地域に十分理解されていないんじゃないかと思いますが、この点について端的にお答えいただきたい。
【教育長】
昨年の後期計画案を公表以来、各地域での地域検討会議を開催し、その都度、これは教育委員にもそれぞれの地域で意見が出された内容はすべて報告をしてございます。これまでも10回にわたってやってまして、そして各委員の皆さん方からも常に意見をうかがいながら、今後の進め方についても対応していく必要もあるだろうということで、2月の定例会の際には、事後報告で取り上げさせていただいて、そして2月18日の盛岡地区での開催の前ということでありましたので、そこでも委員の皆さん方からは「丁寧な説明をしていただきたい」ということ、特に盛岡地区の内容になりました。委員からは、魅力の点についてさらに説明をして理解を深めているような取り組み、あるいはこのようなイメージですという、それで今回のような資料を作ってやりましたし、各委員さん方からも、内容については非常に大事で、これを進めていかないと先送りは難しいと。難しいといいますか、例えば専門高校でも…(斉藤委員:端的に答えてくれませんか、時間がないので)
ということで、丁寧な対応等について、教育委員共有して対応していくことを共有しているところでございます。
【斉藤委員】
丁寧な対応をしていくと、こういう答弁でありました。当然だと思います。
盛岡地区には説明会を開いたと。一関からも「説明会を開いてほしい」と。二戸地区からもそういう要望ですから、ぜひ丁寧な説明を尽くすべきだと。
岩手県議会を見ますと、本会議の一般質問で議論がありました。文教委員会で最終案の説明があって文教委員会でも審議をしました。予算特別委員会でも審議をしました。そして今日は請願の審査で、県議会これだけ議論しているんですよ。
問題は当事者なんです。統合の一関、盛岡、二戸で、どれだけ説明しているかというと、私は少なくともその説明はまったく不十分だと言わざるを得ない。民主主義というのはプロセスですから、そして今日も皆さん方こういう新たな資料も作っていただいた。だから、こういうあなた方の考え方が伝わるような説明をすべきだと思うけれども、端的に、そういう説明、必要性を感じますか。
【教育長】
今回の県議会での審議等を踏まえまして、これら資料を作らせていただきまして、そして本日丁寧な説明をさせていただいているところでございます。
【斉藤委員】
教育長、噛み合わないんですよ。県議会への説明を言っているんじゃないんですよ。請願は、それぞれの統合が提起されている地域での丁寧な説明なんですよ。県議会はあらゆる場で議論してきましたよ。これぐらいの議論をすれば、私は認識も深まるんだと思うんです。
それで前期計画のことをお話しされましたけれども、前期計画は基本的には学級減の計画でした。だからあまり大きな反対はなかった。統合計画は部分的な計画で、遠野高校・緑峰高校、これは遠野市の努力によって生徒を確保して、今回の計画から抜けました。久慈東と久慈工業についても、統合せずにこの間続いてきているんですね。私はそういう柔軟な対応を県教委はやってきた。それもまた評価をされてきた。しかし今回の統合は違うんですよ。ブロックを越えた統合とか、大規模な不来方と南高校の統合とか、福岡工業と一戸なんて校舎制という地域も離れた統合と。そういう意味では、次元の違う統合計画を出しているというのが今回の計画の特徴。それだけに、新型コロナの下で十分な議論ができなかった。私はコロナ禍のどさくさ紛れにこういうことをやるべきでない。それだけに丁寧な説明が必要だと。
・盛岡南高校と不来方高校の統合について
【斉藤委員】
それで、具体的な問題についてもお聞きします。まず盛岡南高校と不来方高校の統合なんですが、2つ問題があります。なぜ盛岡南高校と不来方高校の統合なのか。その合理的な理由が示されていません。何よりも、人口・世帯が増加している地域の高校を統合してなくすことは、生徒の希望する進路実現という後期計画の基本的な考え方にも反する。これは盛岡市議会でも教育長もそう述べています。紫波郡の校長会の会長も地域検討会議で述べています。矢巾北中学校のPTA会長もその懸念を述べています。盛岡南高校も不来方高校も特色ある高校です。いわば30年ちょっとぐらいのところで、新しい歴史と伝統を築いてきた。盛岡周辺からも、盛岡ブロック外からも生徒が来るということは、この魅力の表われなんだと思うんですよ。2つともそれぞれ違った特色を持っている。いま高校改革の1つの方向は「特色ある高校」なんですよ。特色ある高校、魅力ある高校をなんで1つ無くしてしまうのかということは、もっと丁寧な説明が必要だと思います。
もう1つ、盛岡一極集中の是正は統合によって解決されるのか。これは単純な話じゃないと思います。盛岡の大規模な高校が1つなくなったら、私学に流れる可能性の方が大きい。そのことも検討すべきですよ。単純な話じゃない。
そして、盛岡周辺の高校を守ることも大事です。盛岡周辺の高校を守るときに、2つの取り組みから学ぶべきだと。1つは葛巻高校です。葛巻高校というのは、地元の生徒だけでは維持できない高校、それでも全国から内地留学で集めて、今年は20人、希望した生徒を不合格にせざるを得ないような状況をつくってきた。公営住宅もつくった、寮もつくった。いわば、町が本気になって、自分たちの高校という取り組みをやって、そして地元の進学率が8割を超えるようになった。もう1つの例は遠野です。遠野高校と遠野緑峰高校、生徒減少からいったら統合せざるを得ない。しかしそこをどう乗り越えたか。遠野市が高校魅力化アクションを作って、一番の問題は、中学生に遠野高校・緑峰高校の魅力が伝わっていなかったということなんです。遠野市は、それを毎年中学生のアンケートをやって、そういう疑問に答えて、お金を出して、高校の立派なパンフレットを作ったんですよ。そして地元の2つの高校を守る取り組みを遠野市が進めてきた。
盛岡周辺も、1つ大規模な高校をなくしたら生き残れるなんて単純な話じゃないです。その地域に本当に必要な、その地域の子どもたちが行きたいような学校を、やはり自治体と高校が地域が一緒になってつくるという努力がなかったら、高校1つ潰すぐらいで盛岡周辺の高校を守るなんてことはできません。この取り組みの経験からしっかり学ぶべきだと思いますけれども、教育長いかがですか。
【教育長】
盛岡地域での周辺校の、特に葛巻高校の取り組み、これは素晴らしいものがございます。それから遠野地区の取り組みもご紹介ありました。
昨年、令和2年度の当初予算のときに、小規模校の魅力化促進事業ということで、地域に根ざした、いろんな地域との連携をしっかり取り組んで、そして地元小学校、中学生にもそれを伝えて、地元の学校に入って、地域ともどもいろんな貢献をしてまいりましょうと。そういうことで魅力化促進事業をしてきたところでございます。
盛岡地域あるいは今回の都市部ですね、ここは、一定の規模のあるところの、また複数校ある地域での統合ということで、私は県全体の教育行政の中で、県立高校の配置についても、やはり全県的な視点でもって対応をしていかなければならないということで、今回の最終案のような形にさせていただきましたし、統合する場合もですね、「発展的な統合」ということで、それぞれの歴史・伝統をしっかり引き継いで新たな校風、歴史・伝統を作っていっていただきたいと。それを子どもたちに託したいという思いでございます。
【斉藤委員】
私の2つの問題提起に噛み合っていないというか、説得力がないと思いますよ。やっぱりこれだけの大規模な統合を提起するんだったら、本当にそれだけで盛岡一極集中、周辺の高校が守られるのか、そんな単純な話じゃないですから。私は不来方と盛岡南も、隣同士だから統合するぐらいの理由しか見えない。特に、特色ある高校というのは高校改革の方向性じゃないですか。なんで2つともそれぞれ特色ある高校を無くして1つにしなくちゃいけないのかと。その点でも、全国的な高校改革の方向性とも矛盾するんだと思いますよ。
・一関工業高校と水沢工業高校の統合について
【斉藤委員】
時間がないので次に進みますが、一関工業高校と水沢工業高校との統合について、ブロックを越えた統合について疑問と懸念が出ています。1つは通学の便です。もう1つは、地元の業界からは、地元企業の人材確保に対する懸念が出ているんですね。皆さんの狙いは、立派な工業高校をつくって、産業人材を養成するという発想だと思うんです。ところがそれが理解されていないんです。一番肝心なところで。私はもっと突っ込んでこれは議論されるべきだと思います。特に、このブロックを越えた統合の場合には、場所が一番問題なんです。場所についての考え方も示すべきだと。あなた方が統合進めるんだったら。やはり水沢か一関だと思いますよ。中途半端なところに高校をつくるというのはあまり交通の便が良くないですから。そういうところも踏み込んでやらなかったら、奥州からは「胆江地域に高校を残してほしい」という要望が出ているわけで、一関も「一関の高校を」と。これは、それなりの地元の企業との連携があるからなんです。連携があるから、その連携が無くなってしまうんじゃないかという懸念をどう打開していくか。
・福岡工業高校と一戸高校との統合について
【斉藤委員】
ちょっと時間が無いので、福岡工業のこともお話をしますと、福岡工業と一戸高校との統合について、これ工業高校の縮小に対する懸念が大きいと。今年の入試の応募状況を見ても、福岡工業は2学科規模で応募が増えました。ここに希望があるんじゃないかと思いますよ。新しい校舎ができて、いま本当に福岡工業を充実させるという方向を県教委は出すべきなんじゃないか。予算特別委員会で五日市さんが紹介しました。ジュニアマイスター、3年生5人がこの特別表彰を受けた。その中の1人は、最高の経済産業大臣賞。いわば小規模な福岡工業でこういう成果を挙げているんですよ。だったらこの福岡工業、小規模でもこういう立派な、なんでこの拡充の方向を出せないのか。この記事の最後に何と書いているかというと、実はマイスター一番多いのは一関工業、6人表彰されているんです。いま統合の対象になっているところが、全国でもっとも素晴らしいジュニアマイスターという表彰を受けて、こういう実践をしているから、地域の方々は地元の工業に期待しているんです。私は応募状況からいっても福岡工業、県北唯一の工業ですよ。地域産業人材を育成するというんだったら、ここを縮小しないで拡充するという方向こそ打ち出すべきではないのか。
・後期計画の問題点について
【斉藤委員】
最後に言いますけれども、統合計画、資料の6ページに一覧表出ていますけれども、「水沢工業 一関工業 令和7年度」というのは、正確に言えば最終案は「令和7年度以降」です。もっと正確に書いてください。盛岡南・不来方も令和7年度、そして福岡工業・一戸は令和6年度。だったら、なんでいま拙速に決めなくてはいけないのかと。やはり半年・一年かけて丁寧に説明して、もしもっと充実したものが出るんだったら、それがベストじゃないですか。
もう1つ今度の計画の欠陥を言いますと、生徒減少を皆さん強調しています。統合計画がある以外のブロックは学級減もないんですよ。生徒減少が大変だと言いながら、統合計画がないブロックは全部学級減もない。5年間矛盾拡大するだけじゃないですか。こういう点でも本当にこの計画でいいのかと思いますが、教育長お答えいただきたい。
【教育長】
それぞれ地域の工業高校の子どもたちが積極的に活動している、そして非常に大きな成果を出して頑張っているということは私も重々承知してございます。
ただ一方で、近い将来生徒がどんどん減っていくという中で、どれだけ維持できるか。拡充というお話もございますが、一方では生徒の減少というのは避けられない状況の中で、どうやって施設の維持をしつつ、多様な学び、成果が出るような学びを維持していくか、保障していくかと。本当に学校現場を視察に行かれて、老朽化している施設・設備だということは重々ご理解いただいていると思いますが、こういうこの老朽化対応であるとか最新の学習資機材の整備を私ども進めていかなければならないという風に考えてございますが、子どもたちが、今の子どもたちも含め近い将来の子どもたち、さらにその先、10年15年後の子どもたちが自分の人生、将来のことを見て考えて、そこでそういったきちんとした学びをそのときにできるかと。私たちはそれをきちんと今のうちから、施設・設備は多額の投資を伴います。そのときに誤った投資をしてしまうと、その将来の子どもたちが、将来に負の遺産を残しかねないという懸念もございます。そういった中で、しっかり将来を見据え、子どもたちにとっての、岩手を担う子どもたちのために、県立高校をしっかり整備して残して、学びの場を、教育の質の確保も図りながらやっていくということを進めていかなければならないと。
非常に大変重い、重要な課題であります。そういった意味でも、今回のご議論をしっかり教育委員の皆さんと共有をして、そして将来に向けた県立高校の再編に向けた取り組みについてもしっかり、かつ慎重に検討を進めていきたいと考えてございます。
【斉藤委員】
県教委の案にも一理はあると思います。皆さんの考え方には。しかし同時に、劇的な統合計画に対する懸念、不安、課題もまたあるのもはっきりしています。それだけに、この請願の趣旨である丁寧な説明、県議会でやったようなこういう協議を膝詰めでやるぐらいのあなた方の思い、誠実な対応、それが必要なのではないかと。この請願をぜひ採択していただくように最後にお願いして終わります。