2021年3月24日 復興特別委員会
安全の確保、暮らしの再建の課題等に対する質疑
(大要)


・安全の確保の課題について

【斉藤委員】
 来年度の予算、事業に関わって、それぞれの分野でお聞きをします。
 一つは、安全の確保の課題でありますけれども、防潮堤や水門工事など海岸保全施設の来年度以降に残された箇所と完成の見込みはどうなっているか示してください。

【まちづくり産業再生課総括課長】
 海岸保全施設につきましては、県が整備する防潮堤や水門などの海岸保全施設のうち、令和3年度以降の完成が見込まれる事業箇所は15箇所でございます。これらの完成の見通しにつきましては、令和8年度の完成を予定しております宮古市の閉伊川水門を除きまして令和3年度の完成を目指して工事を進めているところでございます。

【斉藤委員】
 海岸保全施設は、閉伊川の水門以外は来年度中にということでありました。
 それで、水門・陸閘の自動閉鎖システムというのが今度の防潮堤に整備されたわけですけれども、どういう時にこれは稼働するのか。新たな負担が出てくると思いますけれども、この新たな負担、これに対する国の支援はあるのかないのか示してください。

【河川課総括課長】
 いま津波対策施設で整備しております水門・陸閘自動閉鎖システムにつきましては、気象庁が発表する津波注意報・津波警報を、全国瞬時警報システム=Jアラートにより受信することを契機にしまして、水門等が自動で閉鎖されるものでございます。
 そして、これらの稼働にかかる維持管理費の部分については、基本的に県の単独費、あるいは所管する市町村での単独費になるものでございます。

【斉藤委員】
 具体的に水門・陸閘の維持管理費について示してください。どのぐらいの負担になるのか。県分、市町村分。

【河川課総括課長】
 予算の関係でございます。令和3年度の水門・陸閘自動閉鎖システムにかかる県の維持管理の予算について、これは大きく衛星通信にかかる経費とそれ以外にかかる経費がございます。そのうち県が管理する水門等の衛星通信にかかる経費につきましては約8400万円、それ以外の経費として水門等の本体の電気料金や点検費用などが約3億2400万円、合わせて約4億1千万円となってございます。
 また、衛星通信にかかる経費のうち、市町村が負担する分については約1600万円となってございます。ただ市町村はこれに自分たちが管理する部分の維持管理費、それはまた別途かかるといったところでございます。

【斉藤委員】
 県と市町村合わせると約5億円ぐらいの新たな維持管理がかかると。本当に復興で整備したこれらの維持管理費については、やはり国の交付税措置なり、これは絶対必要なので、ぜひこのことは国に強く求めていただきたい。

・暮らしの再建の課題について

【斉藤委員】
 来年度ということになると思いますけれども、住宅の自立再建の見通しはどうなっているでしょうか。
 あわせて、100万円の補助、県産材・バリアフリー、こういう支援策というのはいつまで続けられる見通しなのかも示してください。

【生活再建課総括課長】
 住宅の自立再建の来年度の見込みということでございますが、令和3年2月末現在で、被災者生活再建支援金の基礎支援金を受給した方のうち、加算支援金を受給し住宅再建を行った方や、それから災害公営住宅に入居中の方などを除きますと、住宅再建準備中の世帯としては74世帯となっているところでございます。このうち、県営南青山アパート入居予定者の28世帯を除きますと、46世帯が今後の加算支援金の申請を予定している世帯と把握しているところでございます。
 それから、被災者住宅再建支援事業につきましては、加算支援金の方が令和4年4月10日まで、陸前高田市に限りますけれども延長されたことに伴いまして、令和4年度いっぱいまで延長をするということで現在進めているところでございます。

・いわて被災者支援センターの取り組みについて

【斉藤委員】
 次に、いわて被災者支援センターの取り組みについてお聞きします。
 沿岸に新たないわて被災者支援センターの設置というのは、県議会でも取り上げられて高く評価された事業です。ただ、行うべき事業とそれを実行すべき人員体制・予算には大きな乖離があるんじゃないと思うんですよ。それで、いわて被災者支援センターの事業の中身、人員体制、予算はどうなっているでしょうか。

【生活再建課総括課長】
 いわて被災者支援センターにつきましては、沿岸と内陸、県外に関わらず、恒久的住宅に移行された後に、経済的な困窮や健康上の問題を抱える方、被災者への伴走型の支援を行うために設置しようとするものでございます。そのほか事業内容としましては、弁護士の無料相談や被災者生活設計アドバイザー、ファイナンシャルプランナーの派遣といったものを予定してございます。
 それから、来年度におきましては、県外および内陸避難者の実態調査も実施させていただきたいと思っております。
 その他、市町村や関係機関との情報共有や県外の避難者との交流会、相談会などにも参加するというようなことを考えております。
 それから、配置の人員につきましては、職員が4人程度ということで想定をしております。予算につきましては3941万5千円ということで、予算の方からは、予算で計上している分から県の職員の旅費とかそれを除いたものでこのぐらいの額ということで考えております。

【斉藤委員】
 今まで、いわて内陸避難者支援センターは5年間取り組みがありました。これは全国から「岩手モデル」として高く評価をされて、県外・内陸の被災者を個別に訪問したり、さまざまな住宅再建や生活再建を含めて使用してきたと。本当に高い評価のある取り組みでありました。
 ところが今回、皆さんからもこの趣旨をもらったんだけれども、いわて被災者支援センターというのは、「恒久住宅へ移行後も生活面や経済面等の複雑かつ複数の課題を抱え、生活が安定していない東日本大震災津波の被災者に対して、関係機関や専門家と連携して支援を行う」と。その支援の内容については、「個別支援計画を立てて、伴走型の支援をする」と。だから、複雑・多様化する被災者の悩みや生活支援をやるという点では、今まで以上に大変な課題だと。ところが今聞いたように、人員はたった4人で3900万円ですよ。そして今度の被災者支援センターの中には、専門家の支援というのもあるんだけれども、これは例えば、弁護士の相談会というのは年間60回、ファイナンシャルプランナーの相談会は48回。そしてこの謝金も全部この委託費から支払うと。そうすると、こういう専門家の相談会のセットだけで、仕事が終わっちゃうんじゃないかと思うぐらいなんですよ。大事なのは、専門家が相談して、解決方法を示せるかどうか簡単ではないんですけれども、しかしそれを受けて個別支援計画を作るのは相談員なんですよ。伴走型の支援をするのは相談員なんです。さらには、県内外の被災者の実態調査も来年度は2度やると。これだけの新たな複雑な課題をたった4人でできるのかと。まったく無理だと思いますよ。
 内陸避難者支援センターは、今年度どういう人員・体制・予算でやりましたか。そしてその評価も示してください。

【生活再建課総括課長】
 内陸避難者支援センターにつきましては、今年度は予算上の人員としては6.5人ということで配置をさせていただいております。予算につきましては5600万円余ということでやっております。
 評価につきましては、当初設置のときには、県外と内陸避難者の住まいの意向把握というのをメイン業務ということで進めていただきました。ここ2年ばかりは、沿岸の応急仮設住宅から退去が難しい方に個別に支援していただくような事業も追加してやっていただきまして、非常に退去の支援をしていただいたことにより、今年度中に応急仮設住宅の皆さんが恒久的住宅へ移行できるとつながったと思っております。

【斉藤委員】
 内陸避難者支援センターは6.5人の体制で、5600万円余ですよ。今回、複雑・多様化する被災者、そして専門家の派遣、これも委託費なんですよ。それで体制がたった4人、3900万円と。これ縮小して仕事はもっと大変なことをやっていただくという、こういう風になっっちゃうんじゃないかと思います。
 そこで、盛岡の復興支援センターの取り組みも聞きました。来年度、今ある内丸センター、あそこは7人体制。南青山災害公営住宅に5人配置して、これで12人ですよ。シェアハートという学生に対する住宅を提供するというところに2人です。盛岡単独でこれだけの取り組みをやっているんですよ。だいたい委託費は6000万円です。盛岡市が2箇所でこれだけの取り組みをやっているときに、県は、県外・県内の内陸の被災者をどちらも対応しながら、4000万円にも満たないわずかたった4人でというのは無理なんじゃないでしょうか。せめて今年度以上の体制が必要なんじゃないでしょうか。そう思いませんか。

【生活再建課総括課長】
 内陸センターが今まで主に行っておりました県外とか内陸避難者の支援につきましては、みなし仮設住宅に入居しておりました避難者が恒久的住宅に移ったことによりまして、今後は新しいセンターで行っていただく実態調査に基づいて、本県に帰還の意思のある避難者を中心に支援することとなっております。そのためですね、対応しなければならない人数が大きく減少するということも考えておりまして、規模につきましては今と比べて一定程度の経費が圧縮されるものと考えております。
 こうしたことから、当センターの運営につきましては、計上した当初予算額での運営が可能であると考えておりますけれども、被災地の実情や被災者のニーズを踏まえてですね、まだスタートしておりませんので、実際にスタートした上で今後支援のあり方を継続的に検討しながら必要な見直しを行ってまいりたいと考えております。

【斉藤委員】
 今までの内陸支援センターの実績、盛岡の復興支援センターのことも紹介しました。いわて被災者支援センターというのは、ある意味被災者支援の目玉事業ですよ。やることは立派だ。ただ、専門家の派遣が多すぎて、もっとあそこは吟味して、もっと個別の相談だとか計画作成だとか伴走型支援ができるような体制でないと実効性がないと思います。
 それで、これはインクルいわてに内定されたということで、私はこれは評価したいと思うんですよ。いわば内陸避難者支援センターをやってきたのもインクルいわてです。ですから、これまでの実績・経験が生かせると。
 それでせっかく県外の方々も対象にすると。これは昨年度の県外・県内避難者実態調査とありますが、この調査結果を見ると、県外避難者で「もう戻らない」と言っている人は50.5%なんですよ。すでに戻ったという人もいました。「戻りたい」は20%、「未定」という人もいまして、こういう人たちに引き続き必要な相談・支援というのは大事な課題になっている。だから内陸の被災者も大事だけれども、この調査からいっても、そういう点でいくと、おそらく今までの実績から見れば、沿岸だけではなくて内陸にもそういうセンター機能が必要になってくるのではないかと思いますが、インクルいわてを委託事業として内定した理由を示してください。

【生活再建課総括課長】
 その点にあたりましては、応募していただいた事業者の方から企画提案書をいただきまして、内容についてヒアリングしたうえで、審査委員会の方で選定させていただきました。
 インクルいわてさんに選定した大きな理由としては、内陸避難者支援センターの実績ということが一番大きなものだと考えております。

【斉藤委員】
 この課題の最後に私は復興局長にお聞きしたいけれども、今までの素晴らしい、全国からも評価される岩手モデルと言われるような取り組み、これをぜひ継続していただきたい。そして新たな複雑化する課題にも対応すると。そういう点で、やはり今までの内陸避難者支援センターや盛岡の復興支援センターと比べて、あまりにも人員・体制・予算が少なすぎるんじゃないか。これをぜひ、必要な体制に考え直すことが必要なんじゃないかと思いますけれどもどうですか。

【復興局長】
 被災者に対する支援というのは、継続的にやっていかなければならないという風には考えております。それで、その中で何よりもこのいわて被災者支援センターが担うべき役割というのは、多分これは一番大事なのは、困難な状況に陥っている方に対するオーダーメイド型の支援だと考えているんですけれども、実際にはこれまでの沿岸での支援センターの相談状況等々を見ますと、かなり既存の窓口の方でも対応できるようなものがかなり増えてきておりまして、そういった部分でコアな部分を支援していかなければならないのかなと。そういった意味では、まず来年度、県外や県内の内陸の方に住んでいる方で、地元にお戻りになりたいという方の数の把握をしっかりさせていただいて、中には「もう古里の情報を送ってくれるな」という風な被災者の方も、生活地盤が内陸の方に移ってしまってという方もいらっしゃいますので、そういったところもしっかり選別をさせていただいて、そのうえでそれぞれの方で困難な事情に陥っている方については、まさに専門家でなければ一人一人のオーダーメイド型の生活再建策というのは作れないでしょうから、そういった部分で県の役割を果たしていきたいと考えてございますし、一般的なもう少し緩やかな相談についてはですね、やはりこれは各市町村、避難元の市町村さんの方のご協力も得ながら、連携をとりながら、被災者に寄り添った対応をしていくというのを、二重に必要なのかなと考えてございます。

・災害公営住宅の自治会の担い手問題について

【斉藤委員】
 先ほど災害公営住宅の自治会の担い手問題がありました。実は岩手大学の船戸特任助教が自治会の担い手問題を調査しまして、昨日の新聞報道でも出ておりました。こういう結果です。「担い手が不足している」という答えが69.3%、そして「3年後の自治会の状況は担い手不足で機能低下する」というのが63.3%と。大変これは深刻な状況なのではないかと。だから作られた自治会もそういう困難に直面している中で、自治会を支援し、そして高齢者世帯が3分の1を占める中でのコミュニティ形成というのは、あと5年が勝負だと。第二期復興創生期間でどれだけ行政が支援して、自治会やコミュニティが作られるのかという点で、先ほどコミュニティ形成支援事業が今年度で終わりだと聞いて私もショックを受けたんだけれども、終わるんじゃなくて、今まで以上の行政の支援が必要なんじゃないかと思いますけれども、その支援、対策を示していただきたい。

【建築住宅課総括課長】
 災害公営住宅の自治会の担い手不足の関係でございます。こちらに対しましては、自治会、支援団体、指定管理者、また先ほどお話がございました船戸先生から直接お話をいただいて、そういった自治会の担い手不足が今後の大きな課題であるというお話を頂戴しておりまして、私どもも同様な認識を持っているところでございます。
 まずもって、この担い手不足の対策につきましては、災害公営住宅の空室の増加が背景にあると考えてございます。ですからまずここの担い手となる若い世代が入居できる取り組み、これを何とか形として制度化していく必要があるということは考えているところでございます。
 また、お話がありましたコミュニティ形成支援事業の関係でございますけれども、こちら当初、私どもこの事業の立ち上げに際しましては、県営住宅の管理者として災害公営住宅に被災者が方方から集まってくる方々のものですから、なかなか現地でも自治会ができない、作るのが困難だと。やはりそこは、災害公営住宅を管理している立場の者として、立ち上げの支援は必要だろうということで事業として取り組まさせていただいたところでございます。現在、県営30団地のうち25団地で自治会は組織されてございまして、残り5団地につきましても、世話人会が発足しているとか設立に向けて動き出しているところでございます。コミュニティ形成支援事業につきましては令和2年度で終了という形になりますけれども、来年度以降につきましても、これまでコミュニティ形成支援事業を委託しておりました、たまたま県営住宅の指定管理者が同業務を担当してございましたけれども、こちらに今般管理人業務を追加で業務を委託している形になってございますので、これまでの経験当を踏まえましてですね、残る団地につきましても確実に自治会ができるように側面からサポートしていきたいと考えているところでございます。