2021年3月25日 2月定例県議会最終本会議
県立高校再編計画後期計画(最終案)について
丁寧な説明と協議を求める請願の不採択に対する反対討論全文
日本共産党の斉藤信でございます。請願陳情受理番号第41号、「県立高校再編計画後期計画(最終案)について、丁寧な説明と慎重な協議を求める請願」が文教委員会で不採択されたことについて反対の討論を行います。
「県立高校再編計画後期計画」案は、昨年2月6日に公表されました。その内容は、5つのブロックで8つの高校を4校に統合するという、統合計画のみの劇的な計画でありました。それだけに、県教委には統合計画にかかわる地域の自治体、学校関係者や経済界等に丁寧な説明が必要でしたが、残念ながら丁寧な説明は行われてきませんでした。
新型コロナ禍のもとで、県内9ブロックにおける地域検討会議は7月から9月にかけてわずか1回だけの開催でした。胆江ブロック・両盤ブロックでは、一関工業高校と水沢工業高校のブロックを越えた統合案に「反対の意見が多数出された」と県教委の資料でも明記されています。盛岡ブロックでは、盛岡南高校と不来方高校の統合計画に、統合地域の校長やPTAの会長から「統合により中学生の選択肢が狭まる」という反対、懸念の声が出されました。二戸ブロックでは、二戸市長から福岡工業高校の存続を求める強い意見も出されました。宮古ブロックの宮古商工高校と宮古水産高校の統合には、宮古市長や漁協関係者等から反対の声が上がりました。
しかし、県教委はこうした地域、学校関係者、経済界・業界等の反対の声、懸念の声に耳を傾けることなく、説明会も開かずに、今年2月1日、後期計画最終案を示しました。最終案では、唯一宮古商工高校と宮古水産高校の統合は見直しましたが、それ以外の統合計画はそのままとなりました。
盛岡南高校と不来方高校の統合計画には、盛岡市長と教育長名の「丁寧な説明と議論を重ね慎重な判断」を求める要望書が4回にわたって県教育長あてに提出されています。盛岡市議会からは「盛岡ブロックの大規模統合計画の白紙撤回を求める意見書」が提出されました。盛岡南高校の存続を願う会からの嘆願書は15354筆の署名を添えて提出されています。2月18日に盛岡地区の統合計画に関する住民説明会が開かれましたが、そこでも多くの疑問と反対の声が出されました。こうした自治体、市議会、地域住民の声に誠意を持って対応し、丁寧な説明を行うことは当然のことではないでしょうか。
盛岡地区の統合計画には二つの大きな問題があります。第一に、盛岡南高校と不来方高校の統合の理由、合理性への疑問であります。都南・矢巾地区は世帯数も生徒数も増加している地域であります。生徒の進路希望に大きな影響を与えるものであります。また二つの高校はそれぞれ特色のある魅力ある高校です。だからこそ地域からも盛岡ブロック内外からも生徒が集まっている高校であります。こうした高校を突然統合して一つにする合理性がありません。特色ある高校という高校改革の方向からも逆行するものであります。
第二に、盛岡への一極集中をなくすために統合するというのも合理性のないものです。特色もある魅力ある高校をなくせば盛岡周辺の高校は守られるのでしょうか。かえって盛岡中心部の私立高校に流れるのではないでしょうか。盛岡周辺部の高校を守るためには、葛巻高校を守る葛巻町の内地留学の取り組みや公営塾の設置や寮の建設などの並々ならぬ取り組みから学ぶべきであります。遠野高校と遠野緑峰高校の存続に向けた遠野市の高校魅力化プランの独自の取り組みも参考にすべきであります。
一関工業高校と水沢工業高校の統合計画に対し、両市の市長がそれぞれの地域の工業高校の存続を求めていることと合わせ、商工会議所や建設業協会など経済界からは、統合によって通学の困難から工業高校への進学希望が減少するのではないかという懸念と地元企業との結びつきと人材確保への懸念が指摘されています。ブロックを越えた工業高校の統合の意義と内容が全く伝わっていないのではないでしょうか。また、どの地域に新たな工業高校を整備するのかの考え方をもっと立ち入って示すべきではないでしょうか。「工業高校統合の再考を要望する会」は、盛岡地区のように地元説明会の開催を求めていますが、あまりにも当然の要望ではないでしょうか。県教委はしっかり対応すべきです。
福岡工業高校と一戸高校の統合計画最終案には、二戸市議会が「福岡工業高校の単独校での存続を求める意見書」を提出しています。
統合計画には重大な問題があります。第一に、福岡工業校の新校舎が26億6千万円かけて整備されたその途端に工業高校を縮小するということです。新校舎の整備に当たっては統合の対象とはなっていないとして整備されたものであります。県北唯一の工業高校であり、県北地域の振興と人材育成にとっても工業高校の充実をめざすべきであります。第二に、福岡工業高校の生徒がジュニアマイスターに5人も表彰されています。最高の経済産業大臣賞も受賞しています。こうした高校生の活躍が今年の入試の応募者・合格者にも反映しているのではないでしょうか。こうした努力と成果にこたえて工業高校の存続と充実を図るべきではないでしょうか。第三に、一戸高校と福岡工業高校との校舎制という統合も、生徒に負担をかけるだけになるのではないでしょうか。どちらの高校も地域と結びついた高校としての取り組みを強化すべきと考えるものであります。
今回の高校再編計画後期計画最終案全体にも重大な問題点があります。県教委は生徒数が大幅に減少することを統合の最大の理由としていますが、統合計画のない5つのブロックでは、欠員も生徒減少も続くにもかかわらず、学級減の計画がありません。全体の合理性を欠く計画となっています。
高校再編計画最終案について「丁寧な説明と慎重な協議を求める請願」は、あまりにも当然のことであり、本来請願が出されていなくても行われるべきことであります。2月県議会では、本会議での一般質問、予算特別委員会、文教委員会での2度にわたる審議が行われました。こうした説明と議論は、統合計画の当事者である地域でこそ行われるべきではないでしょうか。請願を不採択として、こうした民主的な手続きを県議会が否定することは県議会の自殺行為ともいうべきものではないでしょうか。
最後に、高校再編の統合計画は早くても令和6年、7年からの計画です。拙速で独断で決めるべきではありません。県教育委員会は、直接県民に責任をもって教育行政を進める機関であります。県教育委員会に提出された各地域の要望に誠実に丁寧に答え、高校再編後期計画を練り上げるよう強く求めます。
県議会議員各位の良識ある判断と請願の採択への賛同を求め、請願の不採択に対する反対討論といたします。ご清聴ありがとうございました。