2021年5月24日 臨時県議会
新型コロナ対策にかかる補正予算に対する質疑(大要)
【斉藤議員】
日本共産党の斉藤信でございます。議案第1号、2021年度岩手県一般会計補正予算(第2号)について質問します。
補正予算(第2号)は、総額41億7100万円余の補正であります。新型コロナ感染の第4波が全国的に急拡大し、感染力が強く重症化リスクも大きいとされる変異株が広がっています。こうしたもとで、県内でも4月から5月にかけて新型コロナ感染が急拡大しています。今回の補正予算案は、感染拡大の防止を図りつつ、切れ目なく社会生活と経済活動を支えるために、感染症対策やワクチン接種に係る体制強化、飲食店における感染対策の推進、事業継続のための事業者支援などに緊急に対応するために提案されたものです。その具体的な内容について質問します。
・感染状況の知事の受け止め、定期的な検査等の対策について
第一に、知事に質問します。県内の感染状況は、4月に高齢者施設等10件のクラスターが発生し、感染確認は291人と月別ではこれまで最多を記録しました。5月には、23日現在、12件のクラスターが発生し、感染確認は431人とさらに急増しています。10万人当たりの1週間の感染者数は9.8人となっています。この感染状況をどう受けとめているでしょうか。ワクチン接種が始まったばかりの今こそ高齢者施設等の定期的な検査など新型コロナ感染を封じ込めるあらゆる手立てを講じるべきと考えますが、今回の補正予算を通じて感染防止の対策をどう講じようとしているのでしょうか。
【達増知事】
斉藤信議員のご質問にお答え申し上げます。
まず感染防止対策についてでありますが、岩手県の感染状況は、社会福祉施設等のクラスターが複数発生したことなどにより、4月下旬から新規感染者数が増加し、5月以降、人口10万人当たりの直近1週間の新規患者数は10人を上回る日が続いてきたことに加え、感染症や重症化リスクが高いとされる変異株の報告も増えており、一層の感染拡大防止の取り組みが重要と認識しております。
このため、今回の補正予算案に盛り込んだ保健師等専門職員の増員や、保健所を支援する本庁支援本部の設置、広域的なワクチン接種体制の整備や、ワクチン接種会場へのタクシー利用に要する経費への補助、飲食店を対象とした認証制度の実施、小中学校等の感染対策を支援するスタッフを増員―などを通じ、感染拡大防止策の一層の強化を図ることとしています。
なお、高齢者施設等に対する検査については、県の新型コロナウイルス感染症の蔓延期における検査方針に基づき、感染経路不明の患者が多数確認された一部地域において、入所型高齢者施設の職員を対象に網羅的なPCR検査を実施したところであります。今後も地域の感染状況やクラスターの発生状況を注視し、岩手県新型コロナウイルス感染症対策専門委員会等の意見も踏まえて、総合的に対策を検討していくこととしております。
・地域経済、事業者の実態について
【斉藤議員】
今回の補正では、「地域企業経営支援金」の第2弾など新たな事業者支援が提起されています。高く評価するものであります。地域経済、事業者の実態をどう把握され今回の支援策を提起したのでしょうか。
【達増知事】
地域経済の実態と支援策についてでありますが、日本銀行盛岡事務所が4月末に公表した岩手県金融経済概況によると、県内経済は引き続き厳しい状況にあるものの、基調としては持ち直しているが、サービス消費を中心に新型コロナウイルス感染症再拡大の影響の強まりを指摘する声が聞かれているとされています。また、商工指導団体と連携し実施している影響調査の直近4月末の結果では、前前年同月比で売り上げが41%以上減少している事業者が29%となっており、昨年末から横ばいないし微増の状況が続いています。さらに4月以降も、他の都道府県における緊急事態宣言の発出や延長、蔓延防止等重点措置の適用が相次ぎ、こうした状況は本県の事業者にも少なからぬ影響を及ぼしているものと受け止めております。
このため、感染症対策や業態転換等に取り組みながら事業を継続しようとする事業者にさらなる支援金を支給するとともに、こうした事業者を直接支援する役割を担う商工指導団体の体制強化を図っていこうとするものです。
・保健師の増員、検査体制について
【斉藤議員】
第二に、保健師の増員やPCR検査体制の強化を図る「新型コロナウイルス感染症対策保健衛生人材確保事業」に3300万円余計上されています。昨年度の増員分、当初予算での増員分と合わせ、今回の増員で累計でどれだけ保健師が増員されるのでしょうか。クラスター対策はどう強化されるのでしょうか。環境保健研究センターのPCR検査の体制はどう強化され、検査件数はどう拡大されるのか示してください。
【総務部長】
保健師の増員についてでありますが、新型コロナウイルス感染症対策保健衛生人材確保事業によりまして、会計年度任用職員として任用した保健師の数は昨年度末時点で13名でありました。今年度は5月15日時点で、新たに採用した保健師を含めて14名を任用し、今後さらに当初予算を活用し2名増員する予定でございます。
また今回の補正予算案には、保健所の支援体制を強化するため、本庁に保健所支援本部を設置し、積極的疫学調査や健康観察など、現在各保健所が行っている業務のうち、リモート対応が可能な業務に従事する保健師を15名増員する経費を盛り込んだところでございまして、累計で31名の増員となる見込みでございます。
県といたしましては、保健師を増員して体制強化を図り、引き続き新型コロナウイルス感染症への対応に注力してまいります。
【保健福祉部長】
クラスター対策と検査体制の強化についてでありますが、ただいま総務部長からもご答弁申し上げました通り、今回の補正予算案において保健師を増員し、新たに本庁に保健所支援本部を設置するなどによりまして、積極的疫学調査や健康観察などを行う保健所の支援体制を強化することとしております。これによりまして、保健所業務の負担軽減を図るとともに、各保健所が実施している業務の集約化などを通じまして、感染拡大を早期に防止するなど、クラスター対策の強化に取り組んでいくこととしております。
また、環境保健研究センターのPCR検査については、今回の補正予算案による3名の増員により、これまで検査員5名体制であったものを8名体制とし、1日当たりの検査数は常時160件程度まで対応可能となることに加えまして、検査員1人を変異株の検査に専従させることによりまして、検査体制の強化を図ることとしております。
・タクシーを利用したワクチン接種会場への輸送に対する補助について
【斉藤議員】
第三に、タクシーを利用したワクチン接種会場への輸送に対する市町村補助が1億100万円余計上されています。これはワクチン接種に係る国庫補助対象外となるタクシーを利用した接種会場への輸送に要する経費について県が市町村に補助し、タクシーの利活用の促進を図るものです。ワクチン接種の促進にとっても、タクシーの利活用にとっても積極的で重要な事業であります。すでに一関市では高齢者に4000円のタクシー券を配布しています。こうした市町村の取り組みをどう把握しているでしょうか。市町村への配分基準はどうなるのでしょうか。
【ふるさと振興部長】
新型コロナウイルスワクチン接種市町村輸送機能強化事業費補助についてでありますが、国の新型コロナウイルスワクチン接種体制確保事業では、公共交通機関による移動手段がないなどといった地域事情がある場合で、市町村が接種場所までの送迎バス等を用意した場合などの費用について補助対象としており、市町村では送迎バスを用意するなどして移動困難者の接種会場までの移動手段の確保を図っていると承知してございます。このうち、タクシーによる送迎につきましては、身体的理由により、真にやむを得ず必要な方の送迎や、地域事情によりバスによる送迎よりも効率的・経済的な場合など、国庫補助対象となるケースは限られているところでございます。一方、高齢者の中には、ワクチン接種会場までの移動手段がタクシー以外では難しい方などさまざまな状況が想定されますことから、円滑かつ迅速なワクチン接種を図るため、市町村が行うタクシーによる接種会場への送迎にかかる経費について支援いたします本予算案を提出させていただいたところでございます。
市町村のタクシーによる輸送手段確保の取り組みについてでありますが、委員ご指摘の通り、一関市では高齢者にタクシー・バス乗車券を配布する取り組みや、軽米町では高齢者単身世帯等にタクシーチケットを配布する取り組みなどが行われていると承知してございます。今後、他の市町村におきましても、タクシーによる送迎について検討されることが見込まれますことから、予算成立後速やかに市町村長と調整のうえ、配分額を決定してまいる考えでございます。
・地域企業経営支援金支給事業について
【斉藤議員】
第四に、昨年度の2月補正に続く第2弾となる「地域企業経営支援金支給事業」は、売り上げ減少の基準は前回と同じで、前前年同月比50%以上の減少または連続する3か月の売り上げが30%以上減少している事業者が対象です。1店舗当たり30万円、上限150万円で支援しようとするものです。27億5300万円余計上されています。2月補正による「地域企業経営支援金支給事業」の申請状況と支給状況はどうなっているでしょうか。今回の事業では対象事業者が拡大されていますが、具体的にどの業種がどれだけ拡大される見通しか、全体の対象事業者数を含め示してください。
また、県の認証制度に対応した飲食事業者に対し、1店舗に10万円の感染症対策補助も行います。対象事業者数をどう見込んでいるでしょうか。昨年度の感染症対策補助は飲食業だけに限定せず活用されました。認証制度も補助対象も飲食業に限定せず、感染症対策補助を実施すべきと考えますがいかがでしょうか。
【商工労働観光部長】
地域企業経営支援金支給事業についてでありますが、2月補正による支援金については、5月14日現在、県内の商工会・商工会議所において、3986事業者からの申請を受け付け、9億7488万円の支給となっており、当初の見込みのベースで受け付けで51.1%、支給で31.2%の状況となっております。
今回の支援金につきましては、新たに卸売業約3400社を追加したほか、無店舗営業の事業者や自宅等を拠点に活動するフリーランサー等も支給の対象に加えたことにより、対象事業者数は、2月補正による約28000社から約44000社に拡大しております。このうち、前回同様一定の減収要件を満たす事業者を補助の対象としており、その対象期間は来年3月末までとしていることから、今後の状況に応じて必要な対応をとっていく考えであります。
【企画理事兼環境生活部長】
飲食店における第三者認証制度についてでありますが、全国の新規感染者数の増加が続く中、先般国の新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針が改定され、飲食店の認証制度の導入に可及的速やかに着手するよう求められたところであり、本県においても感染防止対策をより一層推進するため、認証制度を導入し、取得事業者に対してインセンティブを付与するものであります。
認証制度の対象となる飲食店は、食品衛生法に基づく許可を取得している約9000店舗としており、より多くの飲食店に認証を取得していただきたいと考えております。
なお、飲食店以外の生活衛生関係事業者につきましては、引き続きそれぞれの業種別ガイドラインに沿った感染防止対策を一層徹底していただくよう関係団体を通じて周知を図ってまいります。
・観光・宿泊業への支援について
【斉藤議員】
第五に、観光宿泊施設緊急対策事業費補助に4億4000万円が計上されています。宿泊事業者が行う感染症対策機器の導入やワーケーションスペースの設置等に要する経費を上限500万円、2分の1で補助しようとするものです。具体的にどういう要望があるのか、対象件数をどう見込んでいるのか示してください。併せて、いわて旅応援プロジェクトの実績はどうなっているでしょうか。
【商工労働観光部長】
観光宿泊施設緊急対策事業費補助についてでありますが、宿泊事業者においては、宴会場や大部屋をWi-Fi環境が整ったビジネススペースに改装することや、仕事用の机や椅子の購入、また非接触チェックインシステムの導入、空気清浄機の設置などついてのニーズが高いと承知しております。
補助対象件数につきましては、昨年度実施した観光宿泊施設緊急対策事業の利用実績をもとに200施設程度を想定しております。
また、いわて旅応援プロジェクトの実績については、4月16日から5月13日までの4週間で、宿泊・日帰りを合わせて約10万人の利用があったところでございます。
・商工団体への体制支援について
【斉藤議員】
第六に、感染症の影響を受けている事業者に商工団体が伴走型で支援を行えるように体制強化の補助として「事業継続伴走型支援事業費補助」が1億3200万余計上されています。
商工会議所、商工会連合会に実際にどれだけの人員の配置ができるのでしょうか。
【商工労働観光部長】
事業継続伴走型支援事業費補助についてでありますが、事業継続に向けた取り組みを行う事業者からの相談に対応するため、9つの商工会議所に各1名の相談スタッフを配置し、また商工会につきましては、商工会連合会に2名を配置し、各商工会を巡回してもらうこととしており、合計11名の相談スタッフを配置することとしております。
また、さらに多くの専門相談スタッフを確保していくことは難しいことから、外部の専門家による無料相談などを行うための経費を計上しており、引き続き商工指導団体と連携し、感染症の影響を受けている中小事業者の事業継続に向けた取り組みを支援してまいります。
<再質問>
・高齢者施設等に対する定期的な検査について
【斉藤議員】
答弁ありがとうございました。
知事に私お聞きしたいんですけれども、新たな感染拡大を封じ込める戦略が重要だと思います。クラスターが発生してから対応する、これも大事ですけれども、奥州市の高齢者施設の現状を聞きましたら「無症状者から広がった」と、こういう話であります。そして奥州市では、一部の地域で県が判断して一定の高齢者施設のPCR検査をやったとうかがっています。また奥州市自身が、高齢者施設2200人の職員の抗原検査を今月からやるという話も聞いております。盛岡市は、4月に市の補正予算で、感染拡大の兆候があったときには高齢者施設や保育施設などで定期的な検査を行うと。すでにそういう準備にも入ったと聞いております。
私は、いま変異株が広がっているだけに、ワクチン接種はこれからという状況だからこそ、先手を打った取り組みが必要なのではないかと思いますが、改めて知事にそのことをお聞きをいたします。
【達増知事】
高齢者施設に対する検査でありますけれども、高齢者施設は感染が広がりますと大きなクラスターになりやすいこと、また重症化のリスクが高いこともあり、この高齢者施設における全員の検査というのは非常に重要であると考えます。
県では、先ほど紹介したような一部地域での網羅的なPCR検査をすでに実施しているところでありますけれども、今後におきましても地域の感染状況等を注視ながら、岩手県新型コロナウイルス感染症対策専門委員会等の意見も踏まえて、総合的に対策を検討してまいりたいと思います。
・地域企業経営支援金の対象拡大について
【斉藤議員】
企業経営支援金の問題ですけれども、今回卸売業やフリーランスに拡充をされました。これは評価したいと思います。ただ、岩手県が行っている事業者の毎月の調査によりますと、これ4月の調査ですけれども、製造業は「感染拡大の影響が継続している」というのが75%、卸売業は69%なんですね。製造業も卸売業を超えるような影響を受けていると。特に、地場産業であるアパレル関係は大変深刻だというお話も聞いています。この製造業についても、特に深刻な地場産業なんかはやはり対象に加える必要があるのではないかと思いますので、その点もぜひ検討していただきたいと思いますがいかがでしょうか。
【商工労働観光部長】
議員ご指摘の通り、4月末で取りまとめました事業所影響調査によりますと、製造業も非常に厳しい状況ということは承知しておりますし、ご指摘の通りアパレル、あるいは酒造等ですね、先日も話うかがっております。
今回、卸を対象にしたわけでございますけれども、私どもとしてもなるべく広く対象を、影響受けているところ広く支援してまいりたいと考えております。一方で、製造業等を加えた場合に、今時点ですと、事業規模の大きいところが非常に多くなっておりますので、ちょっとそういう問題もございますので、今回卸とフリーランスという拡大にしたんですけれども、やはり持続化給付金の再支給のようなものを国にしっかりまた継続して要望していくことと合わせて、今後の状況を見ながら検討してまいりたいと考えております。
<再々質問>
・事業者支援について
【斉藤議員】
今の商工労働観光部長の答弁で、前向きだったと思いますが、地域企業経営支援金の枠に入らないのであれば、製造業の場合もですね、やはり地場産業、これに限定してでも独自の支援策を県としても考えるべきではないのかと。
国に持続化給付金や家賃支援金を再給付させるというのは絶対必要だと思いますけれども、それ待ちにならないで、そういう点もぜひ検討していただきたい。これ最後の質問です。
【商工労働観光部長】
ただ今の議員のご指摘を踏まえまして、そういう中で対象業種をどう絞るかとか、そういうことも含めて今の制度の中でやっていけるかどうかということを含めまして、いろいろ検討してまいりたいと思いますのでよろしくお願いいたします。